三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが 作:ケツアゴ
うーん、むにゃむにゃ、スピー……はっ!? 寝て…た……?
僕とした事が怪談パート前のプロローグ……この場合はプロローグで良いのかな? 僕には分から、グゥ。
まあ、章の初めなのにラブリーキュートで誰もが認めない理想の上司な僕が出て来なかったのは百回しか起こしに来てくれなかった影ちゃんが悪いとして、君達は風来坊ってどう思う?
笠を被って草を咥えて風の向くまま気の向くまま、歩き続ける旅鴉。
時代劇じゃそんな住所不定の無職が行く先々で悪事が更に悪化した時に姿を見せてはバッタバッタ人を斬り捨てて、次の土地でも刀に生き血を啜らせる為に旅立って行く安定を知らない……うん? 時代劇を馬鹿にするなって?
うんうん、そーだね。じゃあ脚本のアドリブに対応し切れずにと止められなかった影ちゃんの責任かな? どーだろ?
考えるよりも寝たいから続けるけれど、知らない場所から知らない誰かが……いや、何かがやって来るって恐ろしいよね。
閉鎖的な村、余所者に冷たい人達、大抵は悪役で時に狂気的な行動に出るけれど未知の物への怯えは人間なら持って当然なのさ。
他の土地から病を持ち込んだり良からぬ事を企んだり、疑ってたらキリが無いけれど、疑った方が楽だって人間もいるんだ。
口でどんな事を言って、どんな風に振る舞っても腹は読めない過去は見えない、自分の目で見て判断しろとか人によっては蟹の身をほじくるよりも面倒じゃない?
僕? 僕は当然ほじくって貰ってから食べるけれど?
そうそう、流れるといえば漂流物、川上からドンブラコって大きな桃が来るけれどい、沖から変な物やドザエモンが運ばれるのも同じだね。
土地によっちゃあ神の贈り物と思った所もあるんだろうけれど、パンダが僕はラブリーキュートなだけじゃなく喋って踊れるけれど踊るのが面倒だから踊らないパンダだけれど、そんなパンダばっかりじゃない。
流れツく物がどんな物なのか、それは来てからのお楽しみ。ネットでオリパを買って悲惨な事になったり、そこまで好きじゃないキャラのガチャで盛大に爆死した後で推しキャラの別バージョンのピックアップが起きた、とかみたいになるかどうかは……グゥグゥ。
『あっ、はい。影女です。腐れパンダ擬きは寝落ちしたので本編をどうぞ』
この世の何処かから通じる妖魔の領域、赤い空の下は一面の緑の海。小波の音だけが響く中に唯一存在する小島には五重の楼閣のみが建っており、世界の端から端まで見渡しても人工物らしき物は此所のみ。
その最上階、百鬼夜行図が描かれた襖に四方を囲まれた大広間の中心の円卓を取り囲む座布団は四つ、埋まっているのは二つ。
『相変わらず皆揃わないよね。折角の会合なのに怠けすぎじゃない? 和を守ろうとか思わないのかな? 僕を見習いなよね!』
プンプンと不満そうに振る舞うのはアンノウン。尚、陰女が持つタブレットを通してのリモート参加であり、巨大なパンケーキの上に寝転がって手掴みで食べ進めていた。
途中で面倒になったのか手に持つ事すらせずに顔を押し当てて食べる仲間、唯一の出席者は足売りババアの所に男を導いた少女。
『いや、アンタが言うなし。それと影女に“誰がヌイグルミを洗うんだ”って思われてるし』
『え? 僕の身の回りと部下の統率諸々と呪具の確保や製造に面白そうな子へのちょっかいと会合の出席とかは影ちゃんのお仕事でしょ?』
アイスティーをストローで飲みつつ山盛りになったマカロンをネイルでゴテゴテになった指先で摘みつつ同情の視線を影女へと向けるが、二人の時と違って勧誘はしなかった。
『アンタ、自分の仕事殆ど押し付けてるじゃん。無いわー』
『おいおい、僕はそういう妖魔、じゃあ、会合の続きはお願いね』
『ええっ!? 急ですね!?』
『このままお昼寝〜』
そう、呆れるだけ、ただ呆れるだけであり、その対象は早々に仕事を押し付けるとリモートの接続を切って画面は暗転。
数秒間、とても気不味い空気が周囲を支配した。
『いや、マジでウチには理解出来ないっしょ。アレがウチらより格上だなんて。ちょっと昔にはしぶといだけで糞雑魚だったのに』
『食生活の問題でしょうね。アメリカ以外でも深刻ですし。ほら、人間って色々大変じゃないですか。英和辞典にカロウシって有るそうですよ』
『うわぁ。マジでうわぁ……』
『貧困もでしょか? 健康的な食事ってお金が掛かるそうですし』
野菜も生鮮食品も値上げに次ぐ値上げ、低予算で腹を満たそうと思ったら質が悪い糖と脂だらけのジャンクな物に頼るしかない。
貧困は飢餓を産むが、同時に肥満も発生させる。それこそ社会問題に繋がる程に。
『マジで人間ってヤバいっしょ』
『妖魔が生まれ続ける訳ですよ、本当に』
怪談話には人間が一番怖いというオチの物だってあるのだが、怪談の対象となる存在の両者でさえ人間が怖いと思った瞬間だ。
『えっと、話を戻しましょう。雨虎の奴が例の町に出たみたいですよ。水嵩が増した川に流された数人程度しか犠牲者は出てませんが.…』
『仕込んでた下位妖魔が結構やられちゃって、空白地帯に野良の連中が流れ込むし、退魔士共もそれを追って来るってワケ? 地方でやってる計画が台無しになるっしょ。腹立つわ、マジで』
美味しそうにマカロンを食べていた表情が一変、羅刹悪鬼の如く気弱な者なら睨み殺せる程の物。
指先で摘んでいた物が砕けるのに続いて
『僕が前に日本屈指の観光名所での公開SMプレイの感想を聞いた時とどっちが……』
『本っ当に! すいませんでしたぁああああ!!!』
アンノウンの言葉が終わる前に影女の手が伸びてタブレットを両断からのジャンプ、そして空中で体勢を整えての見事な土下座。
このジャンピング土下座発動まで僅か一秒、凄く慣れていた。
『……労基って作れません? 天ちゃ……失敬、あの肉塊の言葉が移ったみたいです』
『今日は長くなったって事にして休みなって。それに影女なら、ウチの部下や他の二体の前以外なら
摘まんだマカロンの一つを影女の口に運ぶと内部に沈む様にして消えていく。
ズブズブと沈む様に消える様子が楽しかったのか下位妖魔の運んで来るマカロンを次々に入れていく……その裏、調理や既製品の盛り付けを行っている調理場にて……。
『このパンダ印のスイーツってカロリーヤバくね?』
『マカロンなんて一個五百カロリー以上。さっきから何袋食べて……』
『君達、それをあの方達の前で言ったら食われるからな? 前にカロリー凄いって言ったのが爪先から刻まれてジックリと……』
側近ではない下位達もそれなりに苦労していた。
『優しいなあ。私の糞上司以外は優しいなあ、四凶!』
四凶とは古代中国から伝承の残る四体の妖怪、或いは悪神であり、共工はその中の一体であり、炎帝の血族でもある人面蛇身の水神の名。
洪水を司るとされる存在だ。
これから暖かかくなる気候である日本だが、影女の心は上司であるアンノウンからの無茶振りと後始末に追われる日々。
駆け込む公的機関? 戸籍の有無以前の問題で動物愛護法にさえ規定されていない妖魔は誰も守ってくれねえんだよ! 両生類と同じでな! な感じなので諦めて、である。
故に人?の優しさが心に暖かかく染み込む影女は涙を拭う仕草を見せて、即座に座布団を枕に大の字に寝転がった。
周囲では料理を運ぶ為に忙しなく動く下位や中位の妖魔達。
『オヤツに貰いますね』
皿をテーブルに置いたばかりの数体に伸びた影が絡み付いて中へと引きこむ。尚、先程話していた連中だ。
数秒の間断末魔の叫びがか細く聞こえ、やがて静かになった部屋に溜め息が響く。
『知ってますか? 人間ってどれだけ激務でも仕事の出張の最中にさえ仕事が溜まるから、戻ってからも大変なんだそうです。……奇遇だなあ。ハハハ……』
『マジで人間社会ってどうなってんの!? ウチが知らないだけで妖魔が成り変わってる!?』
『いえ、正常です。昔から地獄にも病人とかを休ませない雇用者用のが有りますし、薬の宣伝でも熱があっても休めない人にって有りますよ? 異常なのが正常なんです』
『うわぁ……』
……影女と共工は同時に思う。人間社会ってホラーの極みじゃないのか、と。
時々思うんだが、この世界に地獄なんて本当に存在するんだろうか?
俺は出会った事は無いけれど、鬼の姿と名前を持つ妖魔は存在するし、伝承の存在だって本の中だけの虚構とは限らない。
何かしらで生まれた妖魔や呪いによって妖魔に変わった人間や獣……母親の胎内に長く居たってされてる酒呑童子も妖魔に成った存在の可能性が高いそうだけれど、その手以外のは誕生してから伝承に残る程に暴れたのか、それとも伝承に暴れた記録が記されたから誕生したのかは不明。
幽霊は存在せず、幽霊だと自己認識しているだけの世界でも、自分を閻魔大王だと認識して幽霊擬きを地獄を模した領域に閉じ込める妖魔は居るんじゃないかとは思う。
逆に天国もその理論上は有りそうだけれど、それはそうとして今の俺は天国で地獄な状態なんだが……。
「むふふふ〜! 余を好きにして良いのだぞ? 寧ろ余がお主を好きにしたい!」
「お、おう。そうか……」
「具体的にはチューだ! 舌を絡め合う激しい奴を楽しんだ後は体を絡め合って欲望のままに互いを求め合うのだ」
ドロシーとの契約で許可した添い寝、だから目の前で寝転んでいても問題は無い。
ベッドの中で向かい合うドロシーは上機嫌でニコニコと笑って密着しようとするのを手で制しようとしたら指を絡めあって捕まった。
俺、絶賛貞操のピンチ!
性的な事での経験値が段違い。強さも段違い。俺が勝てる訳が無いよな?
正にまな板の上の鯉、皿に乗った料理って所だ。
「俺は好きな相手が出来たし……」
「向こうは気にしておらんだろう? 従えた妖魔が人型の場合、肉体関係を持つには契約を強める意味でも珍しくもないからな」
「ぐぐっ!」
平然と言われる図星の言葉。そりゃあ何度かキスしたが必要な行為だからだし、嫌われてはいない、寧ろ好意的ではあるが異性としての好意とは違う。
それ所か他の女と関係有ると聞いても平然としてたしさ……。
「良いではないか、良いではないか。余とて本命の恋人以外にも愛人は男女問わず大勢居たぞ? それにだ……大和とて満更ではあるまい?」
「……」
否定はしないが肯定の言葉を吐いた瞬間に据え膳と判断される。
身の危険を感じつつも目が離せずドロシーを見るしかなかった。
だって下着姿だし……。
十年来の友人だろうが相手は美少女、しかも関係を強引に迫って来る。
思わず視線が深い谷間に向かって生唾を飲み込んだ瞬間には絡めた指を外され両手で頭を抱え込まれ、向かう先はその谷間。
「気になるのであろう? ならば存分に味わえば良いぞ。それで契約を強めれば余にも大きなメリットがあるしな!」
顔に押し付けられる胸、その圧力は息が苦しくならない程度の絶妙加減かつ鼻腔にドロシーの体臭が充満する程度。
ここ迄は天国。なら地獄は……? 地獄は背後に存在した。
背後から刺すを通り越して貫き殺す視線と殺気、壁に背を預け腕組みで俺達の様子を見るお玉による物だった。
「えっと、お玉……さん?」
「別段畏まった呼び方をする間柄でもあるまい。好きにすれば良い。ああ、それとも……我に何ぞ文句でも有るか?」
「いや、別に……」
やべえ、大分不機嫌になっている。これは説得が通じない奴だ。頭が怒りで支配されてやがる……。
「見られながらも悪くは無いな! よし! それでは最後まで進めるぞ」
「出来るかぁ!!」
そしてドロシーには常識が通じない! 頭が完全にピンク色の思考で支配されてやがる……。
うぉぉぉい!? 服を脱がそうとするな! 自分も脱ごうとするな!
「添い寝だけって約束だっただろ!?」
「下着姿で同じベッドに入っておいて手を出さぬ筈がなかろうに初々しい奴め。良いぞ、それでこそ余の色に染め上げる価値がある。……まあ、今宵は余の玉の肌が染められるのだがな。何色か? それは勿論白……」
「お玉、助けてくれ!」
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいっ! 確実に食われる!
恥も外聞も捨てて、既に手遅れかも知れないが叫んで助けを呼ぶ間もドロシーの顔がゆっくりと近付いて来る。これはキスから一気に強姦する気だと身構えた時、俺の襟首が引っ張られてドロシーと間が開くと同時にお玉が入り込んだ。
「世話が焼ける奴だな、貴様は。添い寝は契約故に邪魔はせぬが……こうして我が間に入ろうと不履行には成るまい」
掛け布団の上に寝転がって俺を見ながら笑うお玉の腕が首に絡み付き、俺の鎖骨にお玉の顔が密着する形で抱き締められた。
「余はお主の尻を撫で回す好機故に構わんがな!」
「きゃっ!?」
そして次の瞬間、尻を撫でられて驚いたお玉に絞め落とされた。
「気絶か。これは下半身を観察するチャンスであるな。お玉もするであろう?」
「知るか、勝手にしていろ。我は貴様が行き過ぎぬか見張るだけぞ」
そして翌朝、何故かお玉が顔を真っ赤にして顔を会わせてくれなかったんだが、何があったんだろうか……。
敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず
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五凶星 ごきょうせい
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悪六烈 おむれつ
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七福塵 しちふくじん
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四従死地士 しじゅうしちし