三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが 作:ケツアゴ
普段使うサイトに行ったら取引ある人が漫画辞めてたり数ヶ月ログインしてなかったり
暗闇の中、目が慣れる程に時間が経っても続く浮遊感。
一体何処から伸びて来たのか分からない程に長い通路の奥へと続く絨毯によって俺達は引っ張られて宙を舞い続けていた。
おいおい、何処まで連れて行く気だ? それに、どう見ても……。
幽霊屋敷は元になった建物を再現すると聞いていたが、今まで移動した距離や方向を考えると既に壁を突き破ってしまう計算だ。
核を除いて構成する全てが常時霊力を吸い続ける領域なんて出鱈目な性能をしている分、そんな制限があるからこそ階級が抑えられているって話だが、今は少し話が違う。
間取りも面積も無茶苦茶にも程が……あっ。
「きゃぁああああああっ!? 落ち、落ちるっ!?」
大きく開いた扉の先、飛び出した先は広間を見下ろす三階部分、絨毯が伸びるのは一階の通路の奥だった。
浮遊感に加えて真下に向かう感覚にルサルカさんはパニックを起こしたのか未だに強化して絨毯を振り払う様子も無い。
つまり今の彼女は多少動ける程度の女の子が二人分の体重を楽々引っ張れる勢いの負担を受けているって不味い状態だ。
これはあまり長い間振り回され続けたらヤバイか……?
「ルサルカさん、強化を!」
「む、無理ですぅううっ!」
無理? いや、今は落ち着いて事態をどうにかする所だろう!?
昨日今日に力に目覚めた訳じゃなく、動画を何度も投稿する程度には経験を積んだ筈なのにどうも妙な感じだ。
妖精達が置き去りになっているのが不安で混乱しているとも思ったが、どうなっているんだろうか分からない。
覚えた違和感に従って彼女が纏う霊力に意識を向ければ殆ど強化がされていないであろう微弱な量。
まさか強化が苦手? どっちにしろ今のままってのは不味いか……。
「悪い。ちょっとだけ我慢してくれ」
「へ?」
手すりを飛び越える寸前、手を離すと同時に手すりを蹴り付けて前へと加速、ルサルカさんを空中で抱えると同時に絨毯に向けて手を伸ばす。
「貫気っ!」
放つのは霊力を込めた空気の弾丸、狙うのは小姫によって付けられた切れ目の先だ。
命中と同時に裂け目が広がり、駄目押しとばかりに体を秘めれば完全に引き裂かれる。
「さてと……」
自由にはなったが今は空中、しかも二人分の体重を易々と宙に浮かせる程の勢いを乗せた状態で三階の手すりから勢いを加えて飛び出した状態。
下手な着地をすれば足を挫きそうだが、下手しなければ良いだけだな。
ルサルカさんを肩に担いでそのまま体勢を整えて着地、衝撃が幾らか膝に来たが特に問題は無い。
「それでこれからどうす……します?」
おっと、年上なのにタメ口使う所だったぜ。
この人なりに信念があっての行動なんだろうが、それでも動画投稿とかによって零課の仕事が増えているのもあってか敬語を使うのが少し嫌だったが、流石に失礼だからな。
「その、先に降ろして頂ければ……」
それもそうか。
状況が状況だったから担いだが、手を繋ぐ事さえ限界ギリギリな箱入り娘だし、今の状況は恥ずかしいのだろう。
少し震える声で言われて慌てて降ろしたんだが、背中を向けて顔を合わせる気がないらしい。
「取り敢えず脱出か核の捜索かですけれど……入った人も探す必要がありますよね」
「え、ええ。発見した後で倒すのが一番でしょうけれど…。そ、その。年齢も近いですし、別に同じ学校の先輩後輩でもないですし敬語は要りませんよ?」
「そうか。助かる」
「早っ!? ……私も出来ればそちらの方が嬉しいですし」
使いたくないし、向こうの許可があるなら本当に助かるが……本当にこれからどうすべきだ?
「あの時とは全くの別物か。ただ同じ種類の可能性が高いな。だが……」
幼き日、兄と生き別れになった場所に似ていると、初めて来た場所で覚えた既視感が告げている。
私有地の建物に正当な理由も無く無断で入り込むという行為は警察官でも許されない違法行為、我ながら馬鹿な事をしているものだ。
埃臭い部屋の中には蜘蛛の巣こそ見られないが数々の調度品には埃が積もり、机の上を指の腹でなぞれば埃の厚さが放置されていた時間の長さを語っていた。
「この埃も本来なら有り得ないんだろうな。一体何処から来たのやら」
懐中電灯には新品の電池を入れはしたものの何か起きて失くす……もしくは急に消える事もあるんだろうな。
事実、気配を感じる場所では電波の通りが悪くなり明かりも一時的に消えてしまって来たのだから。
その為、片目は閉じても躓く事もなく進める様にはなったが、中年の男が片目を閉じて薄暗い洋館を進む姿は側から見て奇異な物に見えるのは忘れようか。
うん、今だけでもそうしよう。
こんな事が世話になった先輩や慕ってくれる部下に知られれば失望されるのだろう。
幼き頃からの夢に費やした時間と努力を捨て去る事にさえなり得る。
私の名は日暮透、警察官になってそれなりの年月になる者だ。
小学生の時分、既に取り壊された筈の幽霊屋敷に入り込み、私の目の前で兄と共に幽霊屋敷は消え去った。
その日からだ、目に見えず声も聞こえない何かの存在を感じる様になったのは。
学校や病院に路地裏、夜中の公園や墓地に限らずいると思うのだ、正体不明な何かの気配を。
見えず聞こえず触れられず、存在を証明する物理的な何かは一切存在せず、それでも存在するのだと確信があった。
それは幽霊屋敷に行った事で何かしらの縁を結んだからなのか、そんな事は本を読もうが詳しそうな人に聞こうが分からないが、分からなくて良いとも思っているんだ。
「やっと、やっとだ。今までとは違って今回は本物の……」
もし私が感じている何かの気配を気のせいや精神疾患の類いなのだと切り捨ててしまえばどれだけ良かったか。
最初は必要だからと神社仏閣を回り、祈祷やお祓いの類いも受けて来たが気配が薄まる事は無く、財布ばかりは薄くなり、ストレスで年齢のわりに頭髪も少しだけ……。
あの日と同じく何も起きない屋敷の中を歩き回るが、普段とは比べ物にならない程に濃密な気配はまるで化物の腹の中に入り込んだのだと思える程。
「きっと、きっと手懸かりになる物が……」
感じる何かを幻覚だと、あの日の思い出を悪夢だと切り捨てるのは簡単で、幼き頃から憧れて職務に生き甲斐すら感じる今の生活を犠牲にしてまで得るものがあるという確証は無く、寧ろ失う数多くの物への執着はあるのだ。
今直ぐにでもあの日の自分と同じ行動をすれば外に出られるのではないのか、そんな考えが頭を過ると同時に懐のスマホに手が伸びるも頭を左右に振って止める。
「……忘れるな。否定するな。諦めるのか」
自分に言い聞かせ、光源もないのに足元が見える程度に薄暗い部屋を懐中電灯片手に探索を続ける。
あの日、兄が消えた理由を家出でしかないとし、私に何かを伝えようとして消えた彼女に無関心を貫く事、それは即ち兄が戻ってくるのを諦めるという事なのだ、諦めて堪るものか。
もう数十年が経過している? そもそも建物も土地も別物? だから全てが無駄?
ああ、普通に考えればその通り。では、解体された筈の建物が現れ、中で写真の画像を確かめた瞬間に同行していた兄と共に消えたのは普通の現象か? 風が吹いただけで開けた場所から人一人が消失するのは正常なのか?
違うだろう、普通じゃないだろう。つまり、何か異常な事が起きて兄に繋がる可能性だってあるじゃないか。
そう、何かしらの手懸かりだけでも手に入れられたらと一縷の望みに菅って今現在、という訳だ。
「本当に大丈夫なのか? いや、しかし……」
迷いが無い訳ではない。兄と離れてからの年月の方が遥かに長く、大切な存在となった人との出会いだって多かったのだ。
それに仮に兄が見つかったとして、その後でどうする? 兄を見付けて脱出した瞬間に消えた時代に戻ってハッピーエンド、そんな風に都合良く行くのか、それとも……。
この時代に兄を連れ出したとして、失踪していた間に何をしていたのか、信じられる筈のない答えしか用意できない以上、平穏な生活は送れないのは分かっているしな。
事件や災害や大事故の際にも好き勝手な噂が雑誌やネットで流れる現代社会で、今まで無関係だった兄は好機の視線に
迷いは思考を鈍らせて足を止める。先程まで周囲に向けていた警戒を疎かにしているのに気が付いた私がポケットに手を伸ばせば入っていたのは握り潰してクシャクシャになったメモ。
このメモは知らない間に警察手帳に入っていた物。保管状況からして誰も入れられる筈のないこのメモに書かれていた内容が私をこの場所へと駆り立てたのだ。
幽霊屋敷がまた出たよ
また出た。そう、この内容は私が一度遭遇している事を知っていて、それが本当の事であると理解している相手からのメッセージという事なのだと理解したならば動かずにはいられない。
見つかった後の事? その様な事は本当に見付けてから考えれば良いのだ。此処で何もせずに兄との再会のチャンスを不意にしてしまう事の方が耐えられず、それでも迷いは残ったまま。
そもそもメモを入れたのは誰で目的は何なのか不明ではあるのだが、思い当たるのは兄と私に幽霊屋敷について教えた例の少年。
あの時と同様に私を誘い込むのが目的なのだとすれば……。
「……来た」
あの日、兄と私の前には何も現れなかったが今は違う。この場所から感じる物とは別物の気配。
来るか来るかと思っていたが、本当に来ると恐ろしいな。
扉の向こうから近付く気配に対して懐中電灯を消すと物陰に身を隠し、役に立つのかどうかは分からない警棒に手を伸ばせば伝わって来るのは訓練を重ねて握り慣れた硬質な感触……ではない。
「何が、何が起きている……?」
暴漢相手から市民を守れる様にと警棒術の訓練は欠かしておらず、手に馴染んだ柄とは太さも長さも材質自体が違い、そもそもホルスターから抜いた時に伝わる重量に十倍では利かない差がある。
先端部分も言うに及ばず、形成する材料も別物で、黒い物を塗りたくられた表面には色鮮やかな物が散りばめられており、酷く湾曲しているではないか。
此処が尋常ならざる場所なのは私自身が理解している筈だったが、これは幾ら何でも予想の斜め上にも程があるだろう。
いや、もうジャンル自体が違うと言うべきか。
使い慣れた武器が全くの別物にすり替えられた事に今の今まで気が付かなかったという事態。
恐怖以上に困惑を手にした物に向ける中、私は己の失策に気が付いていなかった。
『お巡りさん、お巡りさん』
「しまっ……!」
手にした物に意識を奪われた数秒で気配は直ぐ間近へと迫り、中性的な子供の声が足元より聞こえると同時にズボンの裾を引っ張られた。
今まで存在を確認したのは気配のみ、今は聴覚と触覚での知覚。
暗順応した目を足下に向ければ私を見上げる無機質な瞳と視線が重なり、口が存在しないのに其奴から声が聞こえて来るが、そもそも相手は常軌を逸した存在なのだ。
だが、私が手にした物と目の前の存在、それは余りにも受け入れがたい。
『その手に持ったチョコバナナ、お一つ僕に下さいな!』
怪物とのファーストコンタクト、その相手は小さなパンダだった。
それと手にしているのは紛う事なきチョコバナナ、表面には大量のチョコスプレー。
『ねぇねぇ。ちょーだいちょーだい』
「幾らなんでもこれはない……」
私は別にオカルトマニアで恐ろしい存在との出会いを求めていた訳ではなくて、今までその手の噂を追い掛けて来たのは兄の手懸かりを求めていたからなので正直言って化物がどんな姿でも心底どうでも良い。
いや、まあ、幾ら大人になっても幼少期の体験がトラウマになっているから恐ろしい見た目の化物は見たくないんだが。
それでも、それでもだ……。
私の足を掴んでよじ登りチョコバナナの元へと向かおうとするパンダのヌイグルミを見ているとどうしても思ってしまう。
「喋るヌイグルミとか勘弁してくれ。もう色々な何かが台無しになるだろう」
『……酷くない? 僕は清廉潔白で善良で人畜無害な大熊猫だよ』
何故だろうか? 長年警察官として大勢の悪人や悪ガキ、仕方無く犯罪に手を染めた人々を見てきたからこそ感じるのだが……このヌイグルミの言葉は詐術を得意とする連中、もしくは手遅れになってから欺瞞を明かして楽しむ快楽犯の類いにしか思えないのだ。
ホラーの極みは人間である、それを体現した奴を思わせるホラーの存在、間違いなく関われば破滅が待っていそうな存在。
『チョコバナナをくれるなら、お兄ちゃんの居場所まで案内してあげるよ』
それでも私にこの存在を突き放すという選択肢は与えられていない。
それは兄を探す為だけではなく……。
「分かった……」
「むふふふふー! じゃあ、行こうか。そうそう、僕の名前だけれど、普段名乗っている偽名じゃない方を教えてあげる。僕の名前は……
その名前は知っている。確か四凶と呼ばれる中国の怪物の一体であり、善を嫌い悪を持て囃す虎の怪物だった。
「虎の怪物ではなかったか?」
『パンダの方が人気じゃないか』
「……そうか」
頭の上でモチャモチャとチョコバナナを食べるヌイグルミに対して、私は色々と考えるのを止めた。
疲れるだけだからな、絶対。
最近どうも筆が遅い 仕事忙しいにで昼休みも少ないんだ
敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず
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五凶星 ごきょうせい
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