三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが   作:ケツアゴ

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流れツイた物 ⑪

 コミュニケーションってのは技術の一種だと俺は思う。秘術だからはある程度のマニュアルが存在するし、上手な奴は本当に凄い。

 

 周囲の人間の中でコミュニケーション力が高いのは八雲の馬鹿だ。

 俺への態度には唖然とせざるをえない酷さだが、そんな馬鹿にも関わらず友達は多いし、直ぐに増えるから、距離の取り方とかを自然体で上手にやっているんだろうさ。

 

 打算とか上部とかその手の物を無しに向かって来るからな、俺にはもう少し遠慮とか身に付けて接しろ、馬鹿。

 

 反対にコミュ力が低いのは母さんで、空気を読まないと言うべきか、真実であるならズバズバと口から出るし、指摘されたとしても、本当の事でしょ? って感じだ。

 尚、自分の容姿や頭脳を誉められた場合も、そうね、それがどうかしたの? って風に似た感じだし、父さんも仲良くなるのは苦労しただろうってか、マジでどうやったんだ? 俺も他の人との関係で参考になりそうだから正直知りたい。

 

 俺? 俺も母さん寄りで人付き合いが上手な方ではないな。距離の取り方がどうも分からない。

 

 そう、距離の取り方ってのが重要なんだよ。人によって遠近への好みの違いがあるんだし、グイグイと急接近すれば良いって訳じゃない。

 

 

 

「それで私は思ったの。先人の教えを絶対視する剰り、思考を放棄しているってね。ニコラ・テスラだって他人のアイデアを使う事じゃなく自分のアイデアを持たない事を危惧していたし」

 

「ニコラ・テスラが好きなんだな……」

 

「勿論! お土産に混じっていた紙幣の絵と図書室の伝記の絵の人物が似ていたから試しに読んだ日から尊崇の念を向けているわ」

 

「そうか。俺はエジソンの方が好きかな。小学生の図書室に伝記の漫画がエジソンのだけ置いてあって……」

 

 その点、ルサルカさんはちょっと駄目じゃないか?

 敬語は使わずに話そうってなった途端にグイグイと身を乗り出す勢いで話し掛けて来られても出会ったばかりの相手じゃ戸惑うばかりで、この人のコミュ力もショボいんだって思わされる。

 

「エジソン……エジソンも良いよね。人類の文明を何歩も進めた偉人の一人だし」

 

 すまん、実は言う程好きじゃないんだ、漫画読んだから覚えていただけで。それにしても急にグイグイ来るな?

 

 事故とはいえ間近で全裸を見てしまってから少しだけ避けられている様子だったのに、記憶も消したから歩み寄って来たのかと思いきや歩み寄りを通り越して懐にダイブかます勢いで接近されたら調子が狂う

 

 俺の霊力が目当てで懐柔しに来た……のとは違うと思うんだが、出会ったばかりで詳しく知らない相手だしなあ。

 

 尊敬するニコラ・テスラとエジソンの不仲(ネガキャンで電気椅子作ったり)が理由なのか一瞬だけ微妙そうな顔をして直ぐに笑顔になった彼女に少しだけ警戒を向けそうになるも、それは今すべきじゃないとも思う。

 

 

「こっちもか……」

 

 俺達が今調べているのは二階と三階に続く螺旋階段のある開けた場所で、階段の反対側には長い廊下が続いて奥は果てしなく先、だから階段側の壁にある扉を開いてみれば繋がっていたのは廊下の左右にある部屋の扉。

 試しにその辺の椅子を半分突き出せば廊下側の扉の中から椅子の先が出ている。

 

「空間が歪んでいるけれど、幽霊屋敷ってこんなのが普通なのかな?」

 

「いや、聞いた話とは違う俺が教わったのは幽霊屋敷の元になった建物に噂が流れ出した頃を再現するってだけで、逃がす気が無い時以外は普通の構造の筈だったんだ」

 

 少なくても力業で引き込んだり此処までの異変は起きない筈、そう伝えればルサルカさんが緊張から息を飲むのが伝わって来た。

 

「じゃあ、幻覚?」

 

「元々おかしいし、その程度なら有り得る、のか? よし、試すか」

 

 元から中にあった物は信用出来ないからと、ポケットに突っ込んでいたメモ用のペンを取り出して扉から斜めに移動すれば扉の向こうから俺の背中が見える。

 

「試す? それってどうやって……」

 

「こうやって……だっ!」

 

 不思議そうな顔で向けられた疑問に答えると同時にペンを全力投擲、扉の向こうに吸い決まれたペンは廊下側の扉から飛び出すと俺の目の前を通り抜けて壁に突き刺さった。

 

 これ、結構良い値段したけれど使いやすい奴だったのにしくじったな。メモ丸めて投げれば良かった。

 

 引き抜いたペンは素の状態だったせいで先端が砕けて使い物になりそうにない。

 ゴミ箱はないが壊れたまま持ち歩くのも嫌だし、どうせ妖魔の体内みたいなもんだから捨てちまうか。

 

「ひぇ!? 本当に空間が歪んで……あれ? 今、霊力で強化してなかった気が。気のせい、だよね?」

 

「いや、してなかったぞ」

 

「なんでっ!?」

 

「なんでって言われても、破壊の規模によっては逃げられるからとしか」

 

 それに霊力の消耗を抑えたいというのもある。本当に微量だが屋敷の中に入った時から水漏れみたいに霊力が微量減り続けているからだ。

 寝れば回復量の方が上回るものの、此処まで異常事態が続いても通常と同様に直接危害を加えてこないと楽観する気にはならない。

 

 もう別の新種の妖魔が相手で、未知の敵として接した方が早いよな? 壁も盛り上がるみたいにして治ってるし。

 

「それを言うなら引っ張れている間、ルサルカさんも霊力の強化はしていなかったし試す為だから別に良いんじゃ?」

 

「いや、そうじゃなくって、霊力の強化も無しでこんな事が出来るの?」

 

 そう言われても出来る事は出来るんだから困ったな。

 こう、自転車に乗れる様になる前と後じゃ何が違うのか理論的な事以外でどう答えれば良いのか分からない、的な?

 

「もしかして妖魔の血を引いてる?」

 

「いや、俺が知る限りじゃ妖魔の可能性を持つ先祖はいないけれど、そんな正確な記録が何十世代にも渡って残ってる訳じゃないからどうだろう?」

 

「それと伝えるのに抵抗があるんだけれど……あれ? 誰か近付いて来たけど、誰だろう?」

 

 開いた扉の向こうから聞こえる音は廊下の奥から徐々に俺達に接近して来る。

 

 

 カラカラカラカラ

 

 小さな車輪が時折跳ねながら転がり、その音の正体は直ぐに姿を見せた。

 

 

「メイド……かな?」

 

「既に壊された屋敷にいる時点で普通じゃないけれどな」

 

 

 食事を運ぶ時に使うカートとそれを押して歩くメイド。

 廊下と俺達が居る部屋の境界線まで顔を俯かせて進むメイドはピタリと足を止める。

 

 仕掛けるか? いや、手の内が分からない以上は下手に刺激しない方が得策だな。

 

 何かをする気らしいのなら何かをする前に倒す、それが出来れば最善だが、生憎相手は未知の相手。

 女だと思われるとか細っこい見た目だとか、普通の生物相手ならある程度の基準になる見た目が役に立たない相手に動けずにいる中、メイドが顔をゆっくりと上げた。

 

「完全に化け物で助かった。メイドまで元の屋敷そっくりなら抵抗があったし」

 

 肌は血の気が失せて青白いのを通り越して土気色、鼻と耳は削ぎ落とされて存在せず、目と口は縫い付けられている。

 口の部分だけは縫合が甘いのか半分程度までは開くらしく、歯が一本も存在しない以外は口の中がよく見えない。

 これでメイド服は半袖ミニスカートなんだ、逆に不気味さが強調されていた。

 

 

『いらぁっしゃいませませ。おきゃあぁああああくさくさままぁあ』

 

 声もそうだが、この屋敷で働いている人と会っている全く違う事に安堵したぜ。

 元の構造だけじゃなく住人すら真似ていたら殴るのに抵抗があったが、そもそもメイド服すら違う。

 

「この屋敷に来た事があったの?」

 

「屋敷が取り壊される時に使用人は再雇用されててな。面倒見せられている馬鹿娘の家だから何度か家に行ってるんだ」

 

 その時に聞いたんだがメイド服はどっちの屋敷でも長袖ロングスカート、目の前の化け物メイドとは違う。

 

「さて、先ずは俺から仕掛けてみるか? 何かあったら援護を……」

 

 感じる限りじゃメイドの力は下位の中、俺が小姫と最初に戦った時に受け持った奴より少し弱い程度。

 これで絡め手が得意なタイプでも後ろから見てくれているのならどうとでもなる、筈だった。

 

 

 

「ごめん。今、妖精が一体も側に居ない以上はわたしは役に立たないの。正直言って一般人」

 

 非常に言い難くそうにするルサルカさんの言葉だが、さっき言おうとしていたのはこの事か。

 

 

「了解。じゃあ、方針は決定だ。悪いがこの場は逃げるから担ぐぞ」

 

「は、はひっ! 」

 

 守る相手が側にいるのなら無理に戦う必要は無い。

 戦えない味方がいるんなら、此処は逃げの一択だとばかりにルサルカさんを見るんだが、どうも様子がおかしい。

 真っ赤になって俯いてブツブツ早口で呟いているが、まさか既に何かをされたのか!?

 

 

 

「か、担ぐって事はおんぶかな? 落とされない様に背中に胸をみ、密着させたり? それで支えて貰うから。それとも……ま、まさか、お姫様抱っこ!?」

 

「いや、その二つだと問題が有るから無理」

 

「へ?」

 

 おっと、話している間に向こうさんが動き出したな。

 

 

 

 

『お食しょしょしょくじのののよよよ用意を致しまししししたぁあああ!』

 

 目を離した一瞬でガチャンと乱雑な音と共にメイドはカートの上のカラトリーセットを掴んで振り上げていた。

 

 

『お食べべべべべべ下ささささいぃいいいいいいいいいいいいいい!』

 

「食器投げんな駄目メイドっ! 略して駄メイド!」

 

「きゃっ!?」

 

 

 俺がペンを投げた時とは比べ物にならないならない速度で向かって来るフォークやナイフ、フォームも投げる時の持ち方も雑なせいで鋭い方がこっちを向いていたりいなかったり。

 中には見当違いの方向にも飛んで来るが、もうメイドなのは服装だけだな。

 

 結論、あれには知性が殆ど無さそうだし逃げる選択肢を選ぶ意思強まった。

 どうせ緊急事態、ルサルカさんに手を伸ばし……俵担ぎにすると二階の手すりにまで飛び上がる。

 

 

「お姫様抱っこならぬお米様抱っこって事で勘弁してくれ。……

片手が使えるからな、この持ち方」

 

 いや、年頃の女をこんな荷物みたいに運ぶのは悪いとは思うんだよ。

 橋本と泉を担いで犬から逃げた時は別、あの二人がオカルト研究だって山の奥に行くのが悪い。

 

「そ、そうですよね。この持ち方が今は一番です……よね」

 

 何処か残念そうなルサルカさんだが、荷物扱いされた事への文句は既に受け付け期間は終了だ。

 不格好なフォームでの投擲の影響かナイフやフォークがこっちにまで飛んで来たのを避ければ柄の先端近くまで壁に突き刺さり、再生するのに押されてか弾き出された。

 あんな投げ方で威力や速度共に強化無しの俺以上、正面から向かおうにも投げられ続けたら接近は難しそうだ。

 

 

 

 ガチでやりあう時には接近して殴るべきか? 貫気を撃ちまくるにも限度があるしな。

 

 

「取り敢えず今はおさらばだ。散らかした食器を掃除しとけよ、駄メイド!」

 

 捨て台詞と共に扉を蹴り破れば違う廊下に繋がっていて、奥には扉が見える。

 俺の言葉なんて理解していないのか、今度は両手で大量のカラトリーセットを掴んだメイドから視線を外さない様にしながら扉の方へと飛び込んだ。

 悔しいが今は撤退第一、さっさと入り込んだお巡りさんを見付け出して脱出したら即座に屋敷を外から破壊、核が逃げる前にぶっ叩く。

 

 その為には一寸急ぎ足だ、急ぎ足!

 

 足に霊力を集中させ、足元が爆ぜる勢いで直進、当然担いでるルサルカさんは素の状態だから体が上下するのは最低限に、だ。

 

「もっと速くするから舌噛まない様に注意してくれ!」

 

 叫ぶ間にも扉は目の前、あのメイドが追って来て背後から投げられたら対処が大変だ。

 直進の勢いはそのまま、空いた手を扉に向かって付き出して掌打を叩き込む。

 

 

「鳴き撃ちぃ!」

 

 扉は内部で炸裂した衝撃によって粉々に砕け、飛び散った破片をそのまま手で払い除けてルサルカさんには一切当てない。

 そして飛び込んだ先は……。

 

 

 

「食堂……か?」

 

 大規模な宴、もしくはテレビとかで金持ちや権力者が使っている様な長いテーブルが先ず先に視界に入り、続いてて幾つもの椅子に気が付く。

 白かったであろうテーブルクロスはホコリやらで黒く薄汚れ、椅子と壁の間にはクモの巣が張っている場所さえある程だ。

 

 あまりの惨状に一瞬分からなかったが、あの駄メイドが掃除をしていないだけで此処は飯を食う場所で間違いなかったんだろう。

 今では誰も使わないから何の為の部屋だなんて考えても意味がないんだろうがな。

 

 

「取り敢えず次の部屋に……」

 

 行く為の扉を探そう、そう言い掛けて言葉を止める。

 ホコリで汚れ所々壁紙が剥がれた壁、今の今まで何も存在しなかった場所に無数の肖像画や写真が現れ、その中の人物が一斉に目を動かして視線を向けて来た。

 

 

 

「これは入る扉を間違えた……か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず

  • 五凶星 ごきょうせい
  • 悪六烈 おむれつ
  • 七福塵 しちふくじん
  • 四従死地士 しじゅうしちし
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