三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが 作:ケツアゴ
「おいおい、まさか影女が関わってるのか……?」
「影女? 確か日本では昔から暗躍しているという奴よね?」
「ああ、何故か通販番組みたいな喋り方をするイカれた奴だったよ」
「通販番組……え? 通販番組って化粧品とか蟹とかを売っているあの通販番組?」
自分で言っていても意味不明だ。本当に何を考えて通販番組みたいに喋るんだよ。
「今はこの話は終わりにしようぜ。……どうも相手の様子が変だ。何でわざわざ弱点を晒して動かないんだ?」
俺が知らない伝承の影響か、それとも罠か挑発の類いなのか、そのどれでもない何かなのかは分からないが、動く絵画の口の中に幽霊屋敷の核らしい物が見える。
それも重要だが、問題はもう一つ。煙々羅の時に影女が使った名称不明の呪具。
「あの嫌な感じの物を知ってるの?」
嫌な感じ、か。
思い出すのは俺の目の前で発動した時の光景。
嫌だと拒否する奴に取り憑いて……。
「ああ、何かパンダの前足が出て無理矢理共食いさせてた」
同じ妖魔同士であんな事を、とは思ったが、向こうからすれば元々同族意識なんて希薄なんだろうし、生物に例えるなら哺乳類って括りの感覚なんだろう。
しかし、俺は真顔で何を言ってるんだ?
「はい?」
予想通り、顔は見えないが声で伝わってくる、何を言ってるんだテメー的な感想。
当然、俺も全面的に同意したいが、されれも困る。
何故なら俺は正気だから。
いや、そんな風に反応されても本当の話なんだよ、俺が聞いても意味不明って思うんだろうけれどさ。
意味不明な演出だったが、あの霊力の球がヤバイのは実際に戦った俺が理解している。
まさか無茶苦茶な構造や聞いた話には存在しない行動をしたのも他の幽霊屋敷を吸収した結果なのかと迷う事、数瞬。
俺は核らしき物体に指を向けると貫気を放つ。
『オォオオオオオ!!』
唸り声と共に向こうも俺の攻撃を相殺すべく霊力を放つんだが、予想通りに俺の攻撃からは込めた霊力が失われていった。
さっき放った時も感じたんだが、体だけじゃなく放った霊力すら吸収の対象だって事かよ。
威力は当然減衰、動く絵画から放った単純な霊力弾は放った時の霊力量なら簡単に弾けるってのに、逆に俺の方が弾かれて、威力を下げながらも俺の方に向かって来たのを手で払いのければ軽い痺れが残るが、直撃を食らわなければそれ程でもないか?
「特に罠や呪いの類いは無いか」
指を数度開いて閉じるを繰り返して腕を軽くが違和感は無しと。
このまま戦えば苦戦はしなさそうだとは思うんだが、荷物を持ってる状態だからな……。
問題は此処が敵のテリトリーなのを通り越して体内だって事だ。
あの絵画も一部って事みたいだし、戦っている最中に敵の増援がわんさか到着、長期戦になって霊力を吸い尽くされる、そんな嫌な予感しかしねえ。
「そういやルサルカさん、さっき言い掛けていた提案がどうとかは?」
「ひゃぷっ!? そ、それはね、えっと……」
さっきは俺の勝手な判断を優先したが、この場を打破する方法があるなら助かる。
だから訊ねてみたんだが、帰って来たのは大慌てな反応だし、ちょっと遅かったか?
多分雑魚に囲まれていた状況ならどうにかなったが、今の強そうな奴がいるって分かった状態だとどうにもならないし、話せって言われても困るって所なんだろうな……。
ならば今の状況は非常に悪い、三流の俺には把握し切れなくても妖精使いとしての経験豊富で本来は俺よりも強いルサルカさんなら分かる程にはな。
いや、そうか。あったな、どうにかする方法が……。
「仕方ないな……」
「え? それって……」
「ルサルカさんにはちょっと負担を掛けるけれど我慢して貰えるか?」
こんな状況で選択肢なんてあってない様な物だろうが、それでも問い掛ける野は最低限の礼儀としてだ。
ルサルカさんを床に降ろし正面から顔を見て訊ねれば、少しの困惑の後に何かを察した顔になる。
流石は熟練、皆まで言わなくても、って奴か。
「そ、それってアレだよね? う、うん。ちょっと恥ずかしいけれど、状況が状況だから……うん」
「本当に助かる」
これは彼女の評価を改めて……いや、そもそも他人を評価しても良いほどの奴でもないだろ、俺なんて。
これから掛けるであろう負担、それを察しながらも快く受け入れてくれる人なんだからな。
「じゃ、じゃあ……」
「ああ……」
様子見なのか動けない理由があるのかは知らないが、動く絵画が向こうから攻撃を仕掛ける様子を見せず。
それが何時迄なのか、それこそ何かの準備なのかも分からないがモタモタしていてる訳には行かないし、俺としても恥ずかしい頼みなのでさっさと終わらせよう。
「じゃあ早速……」
「は、恥ずかしいから君からキスしてくれるかな!?」
「倒した後に動けない程度にはちょっと無茶するから、動けなくなった後は……うん?」
「へ?」
鱚? いや、キス……ああ、成程。そりゃ恥ずかしそうにする訳だ。
何か妙だとは思っていたんだが、これで合点がいったな。
あの手を繋ぐとかハグですら限界だって様子だったルサルカさんがキスをするとかまで追い詰められたんだし、それは恥ずかしいに決まっているだろう。
つまり彼女からすれば俺は平然とキスを迫る奴に見えたって……うわぁ。
「大丈夫大丈夫。無理すんな、恥ずかしさで限界だろ?」
「いや、えっと…。」
「伏柄流古武術奥義……」
色々と思う所はあるんだが、今は敵の前だから後にしろ、とばかりに瞳を閉じれば意識は自らの肉体の隅々にのみ向けられる。
外との繋がりが絶たれる寸前に誰かの好奇の視線を感じたが、それに思考を割く余裕は無かった。
今までは使えると堂々と口に出来るレベルじゃ無かったこの技だが、最近になって会敵した中位との戦い、そして小姫に霊力を供給した事が切っ掛けなのか何かが変わり、今なら使える気がしたんだ。
産毛の一本一本、体を流れる血液の一滴一滴にさえ意識が届く感覚を覚え、俺の思考は急加速すると同時に脳が警鐘を鳴らすが、それに構わずにイメージするのは自分が他の何かへと変わる瞬間。
「
『!?』
叫ぶと共に俺は動く。自分でさえ目で追い切れない程の速度で床を蹴り、幽霊屋敷の核を口に入れた動く絵画が俺の動きを認識するよりも先に拳を突き出して粉微塵に粉砕……。
「ふぃぃ~。危ない危ない。ギリギリセーフって奴だよね。焦った焦った。おじさん、心臓バクバクよ」
「裏飯さん?」
……粉砕する寸前、動く絵画の背後から迂回する様に飛び出した札を中心に展開した光の壁に阻まれた。
「ごめんごめん。ちょっと理由があってさ。取り敢えず……封っ!」
懐から取り出したとっておきの札に幽霊屋敷の核らしき物を吸い込ませ、再び懐中に仕舞い込んだ。
倒した相手を呪うとか一定のルール下のみ完全に倒せる妖魔対策の高級品、それこそ今回の報酬でも三割賄えれば御の字って所だけれど、間に合わせる為だから仕方がないね。
……別途で補償とか出ないかな?
正直今後必要になった時に備えてストックを五枚以上にキープしておきたい身からすれば封印は無駄な作業でしかないんだけれど、それでも必要だとヒビが広がって砕ける障壁が教えてくれる。
この障壁も随分と金を注ぎ込んだ札による物なのに、それに術も使わずに単純な強化のみで破壊する程に優れた若い芽が枯れるのは避けたいから必要経費さ。
「一体何が……」
「おおっと。悪いね、日暮さん。彼等も含めて此処で説明させて貰うと」
この場の誰よりも状況を把握しておらず、同時に誰よりも深く関わる男に笑い掛ける。
その背中には目の前の光景に目を輝かせる明君……自分のせいで死ぬべき時に死なせ損ねた子供を背負っていた。
やれやれ、本当に大変な事になったもんだよね。
深く溜め息を吐き出したい気分を押し殺しながら想起するのは少し前、事態が手遅れになった時の事。
その場のノリで行動すると大抵録な事にならないって教訓だってさ。
「
「むっ。人間……か?」
「こんな場所だから気持ちは分かるけれど、見たら分かるでしょ」
怪訝そうな顔、それも警戒心だらけの表情を向けられるんだが無理はないとは思うんだけれど、出会い頭に化物扱いは酷いと思うよ。
お巡りさん、何となく分かってるんじゃないの? 妖魔関連の気配とかさ。
おじさん、無駄に年期入ってるから隠匿が上手でもなけりゃ霊力の大小とか微妙に分かるんだわ。
お巡りさんもこの反論には納得するしかないみたいだし、何かあって警戒心募らせたって所だろうけれど、多分それってアレだよなあ。
「子供の声が聞こえたけれど、その子は……聞いてる? おーい」
「……はっ!? す、すまない。それでなんの話……そもそも君は一体?」
自分だって名乗ってないが、職務質問の癖とでも思えばそんなもんか。
こんな場所で警察官の制服がどれだけの身分保障になると思っているのやら。
それでも救助対象に不審な眼差しを向けられているのは心外で、明君に向ける視線も気になるからさっさと説明をしようとも思ったが……相手は大人な上に交番のお巡りさんだよ、どうやって騙そうか。
「自分は……」
まあ、見回りに徒歩で来たから社員証やら運転免許書の身分証明に使える物は手元に無いとでも誤魔化して、あとはアドリブで不動産関係の人間とでも言ってりゃ良いか。
結構高価だけれど……いや、マジで札の製作経費がエッグいけれど精神や記憶に影響を与える札だってあるにはあるし、無事に脱出したら次は零課の仕事だと気を抜いて、それを見計らったかの様にメイドが両手に皿を掴んだ状態で現れた。
『お食事の支度が出来ましたぁあああ』
扉は反対側から無理にぶち抜いたのか破片が飛び散っているし、無理に大量の皿を掴んでるから指の隙間から落ちて粉々に割れる音が随分と耳障りだ。
「……助かったか」
警護対象が二人……いや、一人いるけれど今は随分と都合が良い。
「下がっ……」
その警護対象が前に出ようとしているんだけれど、お巡りさんとしては善良なんだろうし、その辺の所は好感触。
人としては間違ってはないんだけれども……。
「はいはい、下がるのはそっちだから」
でもさ、守る立場としては勘弁して欲しいんだよ?
身を挺してこっちを守ろうとした彼の更に前に飛び出して、そのままの勢いでメイドの腹に飛び蹴りを叩き込んで砕けた扉の向こうまで吹っ飛ばす。
地面を数度バウンドした後で壁に激突したメイドは消え失せて、それを呆然とした様子で眺める二人に振り返った。
「ご覧の通り、おじさんはああいう相手の専門家な訳よ。じゃあ、一緒に行こうか」
「あ、ああ。ちょっと待ってくれ。その専門の対象が私の頭の上に……居ない!?」
「え? おたく、こんな場所で化物と同行してたの? 肝が座ってるねえ」
その化物はどんな奴でなんて名前なのか知りたい所だけれど、わざわざ訊いてる暇がないのは肌で嫌でも感じさせられる。
おじさん達の周囲を囲む四体の小さなパンダ人形……人形ねぇ。
九十九神か一人かくれんぼ関連か、最悪の場合は
『力こそパワー! パンダ一号!』
『スピードis速度! パンダ二号!』
『何かのパンダ三号!』
『何らかのパンダ四号!
「後半二つが同じじゃないかい?」
何か別の意味で嫌なのが出た。
幾ら何でも雑過ぎるし、他にもあったでしょうに今さっき考えたみたいな低レベルな名乗りを上げちゃってさ。
思わず口から出たのは呆れを隠し切れないツッコミ、普段のおじさんなら相手にしないんだけれど、今日は心身共に疲れているから仕方がないさ。
呪の類いも使って来ないし、此処の情報を少しでも吐いてくれれば嬉しいんだけれども、愉快犯のお遊びにそれほど期待はしていないさ。
「いや、どうして四体揃って肩を竦めるのさ。失敬でしょ」
この時点で相手のペースに飲まれてしまっているし、退魔士としては残念賞を顔面に叩き付けられている状態なんだけれど、この腐れパンダにはツッコミを入れざるを得ないんだよね。
特にこの性悪妖魔に呆れられるのは人生最大の侮辱な気がするからな。
『違うよね?』
『全然違うよ』
『オーストリアとオーストラリア位違うよ?』
『もう少し落ち着いて考えなよ』
「よーし。今直ぐに両国の人達に謝って来なさい」
おい、こら。顔を見合わせてとんでもない事を言ってんじゃないっての。
幾ら人間と妖魔じゃ価値観が違うっつっても一定以上の知能があれば話は通じるし、元人間じゃなくても人間と恋愛関係になるのさえ、勿論友人にだってなれるんだよ、期待したら危険な存在だから希望は抱かない方が得策だけれども。
『人口ってどの程度だっけ?』
『知らなーい』
『そもそも喋るパンダのヌイグルミに謝られても困るんじゃない? 日本語の説明も要るし』
『無理難題吹っ掛けるとか性格悪いよ、おじさん』
ああ、こりゃ絶対に言える事がある。この妖魔とは絶対に仲良く出来る訳がないよ。
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