三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが 作:ケツアゴ
ああ、こんなにも妖魔をぶっとばしたいと思ったのは何時以来かな?
それも格上で正体不明の相手にだから、淡々と作業として進めていた最近じゃ考えられないよ。
おじさんの実家は退魔士の……っと、こんな冴えない中年の過去なんて誰も興味無いか。
妹夫婦とは仲良いけれど、実家とは縁が切れているんだしさ。
『一部にはあるんじゃない? キャラ投稿を……』
「おっと、意味不明だがその辺にしときなさいな」
本当に意味は分からないが言わせちゃ駄目だと誰かが語り掛けて来る。
メタ発言がどーとかこーとか、流行に疎いおじさんにはさっぱりだわ、本当に。
「それで用件は残っているのかい?」
残ってないと良いなあ。
『いや、僕は他の
それも義憤とか復讐とか関係無しに、自身の快不快が理由だなんて、おじさんビックリだわ。
「はいはい。ささっと帰ってくれ」
『僕がパンダだけに笹っと?』
パンダ人形は気が付いた時には一ヶ所に集まり、瞬きした一瞬に一体になっている。
参ったな、目を離してしまったよ。
単純で何でもない事の様だけれど実際はとんでもない失敗だと頭を抱えたくなる失態だった。
一瞬目を離すだけで終わりだなんて理不尽をぶつけて来る妖魔だって存在するとは教わったし、運良く今まで遭遇せずに済んだ俺だって左右交互に目を閉じるのを無意識に行える。
でも、今の瞬間は同時に閉じた、目の前の存在から目を逸らした。
つまりだ、嫌な奴だからさっさと消えて欲しいけれど、その嫌な奴ってのは複数の意味なのさ。
「え〜? パンダさん、帰っちゃうのかよ。一緒に探検しようぜ」
『そう? 僕って絶賛求められてる?』
だから止めなさいって、少年。
幾らパンダが子供に人気で、その上に動く人形なんて夢中になるのも分からなくはないんだけれど、動く人形なんて厄ネタでしかない。
それはお巡りさんも同じなのか何か言いたそうにしているのに何故か言ってくれないし、お巡りさんなんだからどうにかして欲しいんだけれど?
『うーん。どーしようっかなぁ』
おい、糞パンダ。駄々を捏ねる子供の相手をしながら俺の方をチラチラ見るんじゃないよ。
絶対に面白がってるだろうが!
妖魔の性格ってのは言葉が通じても基本的に人間とは相互理解が不可能、価値観があまりに違う。
だが、目の前の奴は理解可能だ。
とことんな迄に愉快犯、最低最悪で自分優先ときたもんだし、元が人間じゃないのかって想いと、こんなのが元であっても同じ人間であって欲しくない想いが混在する。
『でも、そろそろ何か食べる時間だからさようなら! グッバイフォーエバー!』
「あっ、消えた。……また瞬きをしちまったか」
訳の分からない茶番を好き勝手にした後でパンダ人形は一瞬で姿を消して、気配が完全に消え去った所で安堵から息を吐き出した。
「パンダさん消えちゃった」
「消えて良いよ。ちゃんと見てた? あれの性格相当悪いから関わらない方が良いよ」
此処は化け物の腹の中で目の前には助けるべき一般人と何処かにいる将来有望な若者が居るんだけれど、出来るなら帰って全部忘れて眠りたい位に疲れてるんだ、精神的に。
四体に増える? 知能が高い? そもそもパンダ人形?
危険で意味不明で正体不明で、分かるのは途轍もなく強力な存在、その上で性格が矜持とかよりも快楽を優先するタイプだなんて本当に関わりたくないよ。
「あっ、所でお巡りさんは何って名前なんだい? 俺は裏飯とでも呼んでくれりゃあ良いさ」
「あ、ああ。日暮だ。君は分かっているみたいだが、見ての通りに警察官で……」
「え? おっさんも日暮って苗字なのか! 凄い偶然……って、そんな事よりも弟探してるんだ。俺は明で、弟は透って名前なんだけれど。デジカメって知ってる? それを持ってるチビなんだ」
日暮さんの苗字を聞いて驚く明君だが、直ぐに思い出した大切な要件に慌て始める。
兄として弟妹の心配をするってのは分かるよ、俺もお兄ちゃんだし、今は姪っ子が心配の対象になってるんだけれど。
「あっ、いや、見ていないが……一緒に探そう。構わないだろうか?」
「言っても聞かずに走り回られるよりはマシだし良いよ。その代わり、おじさんから離れちゃ駄目だよ、明君」
何となーく全容が分かったよ。分かりたくもない内容だけれども。
ああ、本当に世知辛い。明君を発見せずに終えられればどれだけ良かった事だろう。
「……でも、偶然じゃないんだろうね」
大体読めているよ。この件に何が絡んでいるのかをね。
あの糞妖魔、わざわざ連れて来る辺り、本当に性格が悪いな。
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こうして二人と一緒に行動している最中は特に怪奇現象もメイドも姿を見せず、あのパンダの名乗った名前に驚きつつも若者二人の居場所に辿り着いて今に至る訳なんだけれど……面倒な嫌われ役以外は全部任せても良いよね?
ぶっちゃけ腰が少し痛い……。
何でわざわざ倒すのを邪魔してまで幽霊屋敷を封印したんだ?
探しに来た人は見つかったみたいだから後で聞けば良いけれどよ……。
大まかな情報しか知らない俺じゃあ分からない何かを裏飯さんは知っているんだろう、と救助対象が見つかった事への安心感からか疑念はそれ程強くはない。
寧ろ深夜徘徊で補導されかけた日暮さんが俺に気付いて怪訝そうな顔を向けている方が気になるんだが……。
勇さんに説明しても貰った方が良いよな。俺だったら何を言うべきか分からないし、公的な立場が高いあの人の方が……あっ。
「あだだだだっ!?」
「どーしたのさ? 少年」
全身の筋肉からブチブチと嫌な音が響くと同時に激しい痛みに思わず悲鳴が漏れ出す。
この痛みだけならギリギリ耐えられる、問題は精神でどうにかなる状態じゃないって事で……。
「ちょっと無茶が過ぎて体に力が入らない……」
「わわっ!?」
立っていられなくてフラフラと左右に揺れて崩れ落ちそうになった瞬間、ルサルカさんが咄嗟に支えようとしてくれたんだが、此処で問題が起きた。
「あっ、今の私って……」
そう、今の彼女は妖精がいないから力は多少鍛えた小柄な女の子そのままでも、俺は鍛えている百九十近く。
「ふぎぎぎぎっ!」
それでも多少は持ち堪えているのか、必死に俺を支えてくれているのが体の下から伝わって来たし、ちょっと酷い評価とか悪い印象を抱いていたのは反省すべきだよな。
それはそうとして、このままじゃ不味いだろ。俺の下敷きになるのだけは……。
「ふんぬっ! あ、あれ? 私、今男の子に正面から抱き付いて……ひわっ!?」
多分全身の筋肉が負荷でやられているし、骨だってヒビが入っているのは経験した痛みだから分かっている。
でも大柄な男の下敷きにしては悪いし、倒れる寸前に体を捻ればどうにかなるだろうか?
「ぎにににに……」
それはそうとして、ルサルカさんがヤバそうだよな。体力的にも乙女の尊厳的にも。
今の顔だけは絶対に見ないでおこうと思いつつ、何故か幽霊屋敷を即座に倒さず封印しただけの裏飯さんに視線を向ければ何故か迷った様子で連れて来た二人、特に子供の方を見る時は……。
それと、俺を補導しようとした時を見る限りじゃ随分と真面目そうなお巡りさんだった日暮さんがどうして他人の所有物件に入り込んだのか、子供を見る時の眼差しが泣きそうにも見えるし、色々と疑問の種は尽きない。
でも、今は……。
「裏飯さん、さっさと脱出しましょう。……正直限界が近くて……」
未だ幽霊屋敷の体内のままだし、脱出の為に壁をぶち抜いても構わない筈だから、本当に早く終わらせて欲しいんだよ。
全身の筋肉が引きちぎられそうに痛くて今にも意識が……。
「そーだよね。おじさん、希望も絶望も無駄に与えるべきじゃない派だしさ。……まあ、本来ならとっくの昔に終わってたとしても、ちょっと調べる間に悔いが……っ!?」
俺達の方を見て安堵した様な、日暮さんの方を見て憐れむ様な眼差しを向けながら取り出したのは幽霊屋敷を封印した札。
金や赤といった鮮やかな色を使って複雑な模様や文字が描かれた物で強い霊力を感じたんだが、どうも様子がおかしい。
それは札を持った本人の様子を見れば正しいことが証明される。
札のその中央が徐々に黒ずみ、幽霊屋敷の霊力が発せられるようになってきたのだから。
「こりゃ不味いな。今にも出て来そうだ。封印用の札、もう手元に残ってないって……はぁ」
裏飯さんは動けない状態の俺とルサルカさんに視線を向けて、続いて少年の方を向いて肩を落としながらも黒ずみが半分にまで達した札を摘まむ指先に霊力を集めて、最後に日暮さんに視線を向ける。
一体何を悩んでいるんだ? いや、研究やら調査に必要なんだとは分かるんだが、それにしては無関係な二人を気遣って悩んでいる風にも見えるよな?
駄目だ、ヒントが少ないから流石に何も分からない。
関係があるとすれば日暮さんと少年が似ている気がするんだが、あの子を探しに屋敷に入り込んだのかも、と思うだけでそれ以上には進めない。
そうやって思考を巡らせていると裏飯さんの指先に霊力が集まり、札がボロボロと崩れて消える寸前、微かに断末魔の叫びが聞こえた。
「終わった……?」
風が強く吹いて思わず目を瞑り、直ぐに開ければ立っていたのは屋敷の中でなく屋敷が建っていた痕跡が僅かに残るだけの空き地。
周囲には勇さん達零課や小姫の安心した様な姿も見えるし、これで一先ずは……解決してねえな。
俺、ただいま絶賛抱き付く形でルサルカさんに支えられている途中だし、正直情けない上に惚れた相手の目の前で他の人に抱き付かれているのを見られるのはちょっと……。
「ぎ、ぎぎぎっ! そろそろ限界が……」
それと彼女の今の表情は見せる訳にはいかないし、見るのもちょっと悪いと思ったが、妖精達が集まって来ると俺を支える力も増したのを感じるので一番の問題はこれで解決だろう。
あっ、一応言っておけば俺に関わる問題限定な。他にも問題は多く残っていて、それは俺がどうこうする内容じゃないから別にしているだけだ。
「おーい! 透! 透は何処だー?」
今の俺の体には近くで叫ばれただけでも響く。
誰か探しているらしい少年は大声を上げながら周囲を見回して、その相手が見つからないのに焦った様子になって、探しに行こうとしたのか一歩前に踏み出した所で地面に転がった。
「ひぃ!?」
俺の下から聞こえるルサルカさんの悲鳴。
その時に力が抜けたのか俺共々崩れそうになった所を無言の裏飯さんに支えて貰ったが、正直礼を言える余裕は無かった。
「幽霊屋敷は倒したんだよな?」
だって数秒前まで普通に動いて喋っていた少年は骨になって転がったんだから。
靴も服も一気に時間が経過したかの様にボロボロと崩れて、僅かに残った靴も何の絵だったのかが分からない有り様だ。
俺はショックで思考が定まらない。それこそ警護を忘れてしまった程に。
そしてもう一度風が吹けば骨も大半が灰になって飛んでいった。
「ああ、倒したさ。倒したから在るべき状態になったんだ。霊力を食らう為に、そして今回みたいに入り込んだ相手のお荷物になる様に命を繋ぐ。勿論、倒せばそんな力の効果は消え失せてご覧の通り。……目の前で誰かが死ぬのは初めてかい?」
「死体なら見た事が……」
「助けられなかった子が死んだって教えられた事なら……」
「それは幸運だった。目の前で誰かが死ぬ瞬間、退魔士をやっていれば嫌でも目にするのさ。遺族の絶望に満ちた顔もね」
裏飯さんが浮かべた曇った表情からして彼が何度もそんな光景を見て来たのが伝わって、俺がどれだけ幸運だったのか自覚させられる。
視界の端、直視出来ないでいる少年の骨の残りの前で膝から崩れ落ちて涙を流す日暮さんの姿も俺が今までは見ずに済んだ光景で、当然の様に存在した光景。
ああ、俺は随分と恵まれていたんだな。
それは運だけでなく、俺にそういった光景を見せまいとしてくれていた人達にもだ。
そんな人には今日会ったばかりの裏飯さんも入るんだろう。だって、俺があのまま幽霊屋敷を倒していたら、その影響で少年が死んだのだと嫌でも心に刻む事になってしまうんだから。
「……あっ、やべぇ」
全身の痛みが急に引き、同時に意識が薄れて行くが頭にこびり付いて残る疑問が一つ。
どうして幽霊屋敷は俺達を中に引っ張り混んだ上で核をさらけ出していたんだ?
まるで倒される為だったみたいに思えてならなかった。そんな理由、俺にこの光景を見せたい誰かの意思が絡んでいるみたいだが、それでも幽霊屋敷が自分の命を投げ出してまで行う理由が不明……。
最近筆が乗らない ホラー思い付いたから次の章にいきたいので急ごう
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