三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが   作:ケツアゴ

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流れツイた物 十五

 幽霊屋敷退治後の後始末は本当に厄介そうだとは思ったが、それは公務員である零課の仕事であって俺は関わりにはならない。

 それに相当な重症だからと急いで病院に向かったんだ。

 

「十ヵ所以上の筋肉が断裂、骨もあっちこっちが疲労骨折やらヒビが入ってやがるし……馬鹿だろ、お前」

 

 ベッドを蹴る小さな足、あまりの威力に数センチベッドが動いた。

 

「返す言葉も無いです……」

 

 病院のベッドに寝かされた俺はたんぽぽさんの鋭い眼光を浴び、何か言いたいけれど何一つ言い訳が思い付かなかった。

 

 だって正論だからだ。心配と呆れが混じる言葉を誰が否定出来るんだ?

 生憎、そんな恥知らずにならない様に育てて貰った身だ。

 

「そうやって診断を聞いたら本当に凄いな……」

 

 あの痛みからして相当な怪我だとは思っていたんだが、まさかそれ程までとはな。

 

「言ったよな? 前から何度も何度も無茶するなって言ってんのに脳味噌まで筋肉か? あぁん?」

 

 他人事か、とばかりにベッドがなん度も蹴られて時々床から浮かぶ。

 怪我に凄く響いた。

 

「い、いや、流石に……」

 

 本当にガラ悪いよな、この人。

 背が低いのもあってベッドに座る俺を真下から睨め付ける姿はヤンキーみたいで、実際にヤンキーだった。

 

 看護師の学校とか就職の時とか面接があっただろうに、その時だけ猫を被ったのか?

 想像しようとして即座に止める。他の事を考えてると見破ったのか更に目つきが悪くなるし、そもそも欠片も想像出来ない。

 

「じゃあ分かってて俺の忠告無視したってか? 良い度胸じゃねぇか。チッ!」

 

 もう何度目かの舌打ちをしながら俺の寝ているベッドを蹴り続け、カルテで俺の頭をバサバサと叩き続ける辺り、これは相当にキレてるぞ。

 元々短気な人だとは思ってたんだが、今回ばかりは反論の余地が……いや、普段から殆ど無いか。

 

 俺、普段からわりと無茶してるからなあ……。

 

「ですが、今回は割と危ない状況だったので多少に無理は……」

 

「無理しなきゃ駄目な雑魚がしゃしゃり出るからそうなるんだろうが。人手不足だからって餓鬼使う公安もアホだが、テメェもアホだっつってるんだよ、俺はよぉ!」

 

 苛立ちをぶつける様に俺の頭を拳で挟み込んでグリグリと締め付けるんだが、身長が足りないので爪先立ちになっている。

 微妙に体がプルプル震えていて、入り難い力は霊力による強化でカバーだ。

 つまり凄く痛い。

 

「んじゃあ迎えのタクシー呼んでやったから帰る準備しとけ。忘れ物は送ってやるから」

 

「え? もう?」

 

 俺が重症だって言ったばかりなのに、帰らせる気だよ、このヤンキーナース。

 職業倫理を忘れないで欲しい。

 

 取り敢えずの処置としてギプスやら包帯とかでガチガチに固定された状態で、普通なら全治まで数ヶ月。

 学校も休んだり、親にも連絡が行ったりと大事になる以外にも日常生活にも支障が出る。

 

 八雲の両親が彼奴を世話係にと送って来そうだし、下の世話まで他人にして貰うには年頃の精神的にキツい。

 

「じゃあ治療お願いします」

 

 そんな問題の解決法方は実は簡単だ、と言ってしまうと本人に失礼な話になるが、たんぽぽさんの術で治して貰えば良い。

 暫くは体が痛むだろうが、大怪我しましたけれど理由は言えません、とか無理があるし。

 

「いや、俺は他に霊力回したいからお前には使わねえぞ? ドロシーにやらせりゃ良いじゃねぇか」

 

「ぐっ! 確かに他にも必要としている人がいるんでしょうけれど……こんだけの大怪我だと対価がキツイから」

 

 

 下手すりゃドロシーが此処ぞとばかりに襲って来る。

 下手しなくても襲って来るし普段より抵抗できないからな……。

 

 

 

「ヤればいいだろ、年頃男子。てか、人外女二人と秘密の同棲生活とかエロラブコメやらエロ系ラノベみてぇな生活送ってて今更……え? まさかマジで?」

 

 

 

 端からすればそう見えるんだろうが、襲われ掛けた事はあっても助かってきたんだよ。

 だから何を察したのかは知らないが、その驚愕の顔でドン引きするのは止めれくれ!?

 

 凄く嫌な予感がするから!

 

「ギリギリ助かってます。一方的にされそうだし、そもそも二人に手を出したら何か負けな気がして……」

 

「性欲にか? 負けちまえよ。人間とのガキ産んだ逸話持ちの妖魔じゃなけりゃ避妊もしなくて良いんだろうしよ。ドロシーの方は胸デカいだろ」

 

「え? まさか俺の嗜好って……」

 

「バレてるぞ。胸のデカいのが好みだって。揉むなり吸うなり好きにしろや」

 

「そうは言いますけれど……」

 

 母さんはその辺の倫理観がガバガバで、結婚していないなら別に数人と関係を持って相性が良いのを探そうが問題成無し、但し避妊は必須、な感じだが、俺には生憎無理だ。

 

 いや、向こうから求められて悪い気はしないし、俺だって心は揺れるんだが……うん。

 

「お前って実は……いや、最近は治療法とか進歩してるし、役に立たなくても気にせずにだな……」

 

「何の話をしてるんですか!?」

 

「何って、ナニの話じゃねぇか。言わせるんじゃねぇよ。セクハラだろ、糞患者が」

 

 セクハラは其方だ、そう叫びたいのを必死で堪える。

 だって逆ギレするから、絶対に。

 

 あーもー! 本当にこの人はっ! そういう自分は……寒気がしたから止めておこう。これ以上は思考すら危険だ。

 

 

 

「まあ、冗談はこの辺にして、あの巨乳チビを抱く機会があった時、失敗してトラウマから本当に役に立たなくならない為にも経験重ねとけって。あの色ボケは経験豊富なんだろ?」

 

 

 巨乳チビって小姫の事だよな。え? 惚れてるのたんぽぽさんにまで知られてるのか?

 寧ろ何処まで俺の知り合いに知られてるんだ?

 

「経験豊富過ぎて怖いので嫌です」

 

「じゃあ、あの偉そうな貧乳で良いじゃねぇか。あっちも未貫通だろうし、ガンガン攻めて快楽堕ちさせて……童貞にゃ無理な話だったか。悪い」

 

 鼻で笑った所で他の部屋でナースコールが鳴った。

 

「無駄話も此処迄だな。急患来たら困るから速攻で帰ってベッド空けとけよ。んじゃ、お大事にー」

 

「心が籠もって無いですね」

 

「どうせ安静にしないしな。あっ、そうだ」

 

 たんぽぽさんは病室から出て行こうとして、ドアノブに手を掛けた所で振り返った:

 

「何なら俺が筆……」

 

「結構です」

 

 うん、マジで結構ですので。……冗談とは分かっているけれど、本当に結構です。

 

 つーか、青少年を保護するあれこれだって有るだろうに、何言ってるんだ、この人。

 

 

 

 

 

 

「……マジで帰り辛い」

 

 誰からとは言わないがアイアンクローを食らった部分を摩りながら呟くのは家の前、門の鍵は閉まっていないらしいので後は開けて入るだけなんだが、簡単そうで難しい理由があるんだよ。

 

 僅かに開いた摩りながら隙間から見えるドロシーの笑顔。

 満面の笑みで枕を抱き締めて俺を待っているんだが、どう見ても下着姿だよな?

 

 え? 俺の状態伝わってる? 治療の対価に今日こそ食われる?

 俺達、最近キスしたばかりなのに一気に進み過ぎだろ!?

 

 

「だ、大丈夫。普段から結局最後にお玉が助けてくれるワンパタだろう。うん、本当に頼りになるな」

 

 全身が痛い。更に付け加えるならアイアンクローを食らった部分が一番痛いし疲れているから治療をして貰って速攻ベッドに潜り込みたい。

 

 

 どうせ助かるんだし、さっさと入るか、と俺は完全に油断していた。

 

 

「ただいまー。悪いが何時も通りに怪我を治して……」

 

 門を開けた瞬間、言葉を言い終わるのを待たずに腕を掴まれて中に引き摺り込まれた俺は左右から挟まれる。

 右にドロシー、左はお玉。二人揃って笑顔だが、これはキレてる時の笑顔だと気が付いても時既に……。

 

 

「随分と苦戦した様であるな? まさか使うなと言っておいた奥義まで使うとは。ああ、それと妖精使いと仲が良さそうにしていたが、体の感触はどうであった?」

 

「あの様な技に頼らざるを得んとは未熟者めが。……今宵は貴様が我等の所有物と教え込んでやろう」

 

「おーい。俺って結構な重症……で? ありゃ?」

 

 二人に挟まれた時点で覚悟していた激痛は何故か感じないし、寧ろ動き難い感覚も消えている。

 今までは重傷を癒すにはもう少し時間が掛かったのに、少し触っただけで終わったのか?

 

 今まで手を抜いたとか、わざと時間を掛けていたって事は無い筈なんだが、急成長にも程がある。

 

 他の妖魔や霊力の高い相手を襲って強化するのも家からは出られないドロシーには無理な筈だと怪訝な感じで横を見れば、本人は得意そうに鼻息を出して胸を張った。

 

「……チッ」

 

 そしてお玉の舌打ち、多分胸を張った時に揺れたからだな。

 お玉じゃどれだけ張ろうと揺れる胸が無いから……あ痛っ!?

 

 心を読まれて足は踏まれた。凄く痛い。

 

「それで余がどうして成長したのか知りたいか? 知りたいのであろう? 知りたいなら教えてやろう!」

 

 自分から意識が逸れたのが嫌だったらしく、構えとばかりにドロシーが強く腕に抱き付く。

 さっき胸の揺れ具合からもしかしてと思っていたんだが、まさかドロシーの奴、今は何も付けていないのか!?

 

 

 腕に押し当てられた感触に足の痛みなんて忘れてドロシーを見れば満面の笑みで渾身のドヤ顔、褒めれば褒めるだけ鼻が高くなるだろう。

 

「いや、別に良いや」

 

「なぬっ!? 余だぞ!? 余のパワーアップした理由を知りたくないとは世迷言を申すでない! 知りたいのは分かっておるのだからな!」

 

 実際は興味が有るんだが絶対に調子乗るので否定しておくか。

 

 得意げな顔してたのにピシッて感じに固まって、信じられないとばかりに俺に強く抱き付きながら縋って来る姿はちょっと面白可愛い。

 この手ので弄ると本当に楽しいから偶にやるんだよ。

 

 

「はいはい。それで実際どうしたんだよ? ……俺が何したのか知ってたし、それ関係だとは思うんだがな」

 

「……むぅ。少しは察したのか。驚かせようと思ったのだがな」

 

 それでも続けるのは悪いから話は戻すけれど、実際は大体予想出来てるんだよなあ。

 だって、俺達の間で起きた変化ってキスした事だし……。

 

 俺の予想は多分当たりで、それを言い当てたのを肯定するかの様にドロシーは唇に人差し指を当てて不満そうだ。

 

「以前までの余なら暫し時間が掛かる怪我であったが、ちゃんと応急処置を行い変な風に治らぬ様にしている状態ならば即座に癒せるのだ」

 

 それは助かるな。小姫が癒してくれなかったのも下手な治療をすれば後遺症が残る可能性があるからだったし、重症は何度も日に分けて治療しないとって話だったから

 

 

 

「……ぬあ!?」

 

「どうした?」

 

「どうせ治療の名目でベタベタする事が不可能になったと気が付いたのだろう。放っておけ」

 

「しまったぁー! わざと時間を掛ければ良かったものを!」

 

 頭を抱えてその場に蹲るドロシーを無視してその場から俺を引っ張って行くんだが、本当に放置して良いのかなあ?

 一応、俺を直ぐに癒すのを優先してくれた結果だったし……。

 

「何ぞ文句でもあるか? 明日も学校だろうに早く寝ろ」

 

「お、おう……」

 

 でも、お玉がマジギレ寸前だから逆らえない。

 後ろで踞ったままのドロシーが気にはなるものの、振り返る事も出来ずに庭を通り抜けて玄関の戸を潜る瞬間、背中にドロシーが飛び付いて来た。

 

 俺の頭を胸に抱えるように抱え、両足を体に絡めてしがみ付かれて重いやら頭にダイレクトに胸の感触が伝わって悪い気はしないやら、色々とあれだ。

 

 

「余を置いていくとは不埒な奴め! 構え! 成長を誉めて撫で回せ!」

 

「ちょっと暴れるな。それと耳元で騒ぐんじゃねぇ。分かった分かった。撫でれば良いんだろ?」

 

「然り。さあ、存分に撫でる事を許そうではないか!」

 

 だから耳元で大きな声を出すなと言いたいんだが、言っても無駄だよな、分かってる。

 顔だって見なくても浮かべている表情がどんななのか頭に浮かぶし、構って欲しい時に構わないと駄々をこね続けるのだって知っているから面倒だ。

 

 

「ほらほら、凄い凄い」

 

「……」

 

 だから空いてる方の手で頭を存分に撫で回せば、何が起きたのか理解出来てないのか抵抗はされない。

 うん、この呆けた顔は面白いし、相変わらず髪の艶が良いから触っていて楽しいな。

 

 

 

「ぬぉお!? おい、大和。余だ! お玉でなく余を撫でるのだぞ!?」

 

 うん、分かってるけれど素直に従うのも調子に乗るから嫌だった。

 

 だから俺が撫でたのはドロシーじゃなくてお玉の方だ。突然自分が撫でられた事に固まっているが、多分このままだとドロシーが面倒なレベルまで拗ねるんだよなあ……。

 

 でも手触りが良いし、今回みたいに不意打ちじゃないと髪を触らせて貰えないから暫く堪能をしたいけれど、流石にそろそろ怒られそうだから弛みが生じた拘束を振り払って……。

 

 

 

 

「余だぞ! 余を撫でるのだぞ!」

 

 逃げる前にドロシーに頭を撫でていた手を掴まれて逃げられなくなった。尚、お玉は動揺から復活しています。

 つまり……終わった。

 

敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず

  • 五凶星 ごきょうせい
  • 悪六烈 おむれつ
  • 七福塵 しちふくじん
  • 四従死地士 しじゅうしちし
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