三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが   作:ケツアゴ

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流れツイた物 二十一

「夢に干渉する術? そんなのがあったのか……」

 

 俺に関わった奴が何かしらの呪いを受けている事を見抜き、それでも興味は無いと断言したドロシーに何も言えず、そのまま頭を暫く撫で続けた後はマッサージにまで移行していた。

 

「いや、余も使っているぞ? 毎朝の訓練はどこで行っていると思っていたのだ、馬鹿者」

 

「……そうだったな。まあ、夢の中に現れるって怪談はそれなりに在るし、存在して当然だよな」

 

 うん、確かにスペースが必要な修行は夢の中だ、毎日体験してんじゃねぇか。

 

「全く呆れた、くぁ、奴で、ぁん、あるな……ひゃ」

 

 当たり前に使ってるから、ついつい頭から抜け落ちただけだよ、うっせえな。

 

「所でまだ続けるのか? 俺、そろそろ夕飯の準備を……」

 

「余は宅配ピザの気分である。生地厚めチーズコクのある奴で肉系Lサイズで頼むぞ。十枚は必要だからな」

 

 太らないからってバクバク食いやがって、受けとる俺の身にもなってくれよ。

 それだけの量を一人で受けとるとか、絶対変な目で見られるだろうが。

 

「俺は魚を米での気分なんだけどな」

 

「ひょわっ!?」

 

 海鮮丼が食べたい、と提案を却下しつつ指に力を入れればドロシーの体が小さく跳ねる。この辺が良かったらしいが、本当に何時まで続ければ良いんだよ、米炊いてねぇんだが? お前達が業務用炊飯器さえ空にする大食いだから準備にも時間が掛かるんだけれどなぁ!

 

 普段なら既に満足しているだろうに、本当に今回は不満が随分溜まっていたんだと、普段から我が儘が多いから調子に乗ってるだけじゃねーのかと疑念を持ちつつ続けた会話の途中で出た疑問。

 

「それはそうとして、二人が俺の夢に干渉出来るのは契約してるからだろ?」

 

 妖魔については二人から習ったが、契約する以外で夢に干渉するとか初耳なんだが? 少し考えれば存在しそうってのに思い当たらなかったのもそれが理由だろうし。

 だからうっかり聞いたってのに、呆れた視線を向けやがって。

 

 俺の抗議の念は一切通じた様子も無く、マッサージで蕩け顔のドロシーは教えてなかった事に思う事は何一つない様子だ。

 

「お主には余やお玉が居るし、そこまでするのは些か面倒な相手であるぞ。関わらぬのが吉だ。……あの小娘もそこまで見抜いたかどうは別として、何かされた者が居ても慎重になる程度には厄介な相手ぞ」

 

 多分面倒臭いってのが大半だよな、ドロシーだったら。

 

 何かされてから動いた方が楽で、何かされた時に動く対象は限定的、それ以外は興味無し、それがスタンスって分かっちゃいるんだが、なまじ俺が庇護対象なだけに忘れそうになる。

 

 生まれた国も時代も違い、更には妖魔にもなっているんだって、一緒に居たら意識しない位には仲良くやっているからな。

 

 それはそうとして、何もしない小娘ってのは……。

 

「あっ、そう言えば……」

 

 小姫から何も言われてなかったっけ。俺がヘッポコなだけで普通の退魔士なら気が付くのなら何か言われて当然だ。

 だって俺に引っ付いてたのは移り香だし、大元が居るはずだからな。

 

 となると、そんなに焦る段階じゃないのか? 八雲が居たからにしろ、何も伝えようとする素振りがなかった、と漸く気が付いた俺に再び向けられる残念な物を見る視線。

 

「うむ、肩の内側をもう少し強く揉んでくれ。胸が大きいと凝るのだ、お玉や隣の娘と違ってな」

 

「それ聞かれたら殴られるぞ。……そうだ。一応連絡……痛っ!」

 

 それでも気になるし、勇さんに相談しておいた方が良いかとスマホに伸ばした手が叩かれる。

 あー、はいはい。今は自分だけ見てろって事か。分かったから不満そうに頬を膨らませるなって。

 

「ったく、だらしない顔しやがって」

 

「お主のマッサージの腕は余が育てたからな。あー、気持ちよすぎてって体に力が入らないぞ。これはおそわれてもていこうできぬなー」

 

「最後、凄い棒読みになってんぞ」

 

 ドロシーの頬を数度突っついてマッサージを再開するが、ハグじゃないからか霊力は座れないし、故にそれによる快感も今は無い。

 身悶えして喘ぐ姿を見てるとこっちも色々と刺激されるし、こっちの方をしている間に落ち着かないとな。

 

 さっさと終わらせて一人になりたい。霊力を纏わなければプライバシーは守られるし、無理に部屋に押しかけはしないだろう。

 

「オカズに余のドレスの下を見せてやろうか? 代わりに其方もズボンの下を……」

 

「見せるか、馬鹿!」

 

 駄目だ、多分押しかける! そのまま押し倒される!

 

 どうやら俺の安息の場所は自宅にも存在しないらしい……。

 

 

 

「しかし夢に干渉する妖魔か。……お玉が家を追い出されそうになったのも、妖魔にされたのもその手の妖魔の仕業であったな」

 

「……そうなのか?」

 

 二人とも長い付き合いだが、その手の話題には踏み込むべきじゃないと思っていたから知らなかったな。

 呪いによって妖魔になったとまでは知っちゃいたが、どんな妖魔によってとか家から追い出される所だったとかは本人が話していないから、敢えて聞きもしなかったが、こうして断片でも知らされたら興味深いと感じてしまう。

 

 

「雇っていた退魔士が取り逃がした際の報復として縁談相手を殺し続けたらしくてな。それで自分の手で成敗せんと出たものの返り討ちにされたとか。……その様に野蛮な姫によくぞ縁談が来たものだ」

 

「姫だしな、歴史上に荒々しい女の記録なんて幾つかあるだろ。時代価値観を考えたらヤバイのは間違いないだろうが」

 

 その荒々しいのって戦乱の時代で、お玉が人間だったのは徳川が天下統一した後の時代だったってのは言わぬが何とやらって事で……。

 

「彼奴自体は美人だし態度は荒いけれど優しいのにな、横暴だけれど」

 

「故に自分を小馬鹿にされたと妖魔を追ったと話していたぞ。屈辱故に同じ境遇の余以外には話す気は無いらしいが、確か妖魔の名前は(あまの)……」

 

「いや、話すなよ。本人が俺に話したくないなら言っちゃ駄目だろうが。テメーだって妖魔にされた経緯を俺に話さないだろ? なら、言っちゃ駄目だ」

 

「ぐぬぬっ。た、確かに当時の事は余にとって黒歴史、あの様な策で陥れられるなど。……そのせいで兄上や義姉上達が革命の末にどうなったか人形の中で見続ける事になった訳だしな」

 

 ドロシーは珍しく落ち込んだ表情を見せるが、そりゃそうだ。

 人間を無理矢理辞めさせられた上に人形に封印、家族とも引き離されて、その最期を一緒に出来なかったんだからな。

 

 怨敵の名前は聞かずに終わったし、本人が話さない限りは聞こうとは思わないけれど、機会と方法があればぶっ飛ばしたい相手が増えた。

 何か最近は本当に自分の弱さが嫌になってばかりだし、勇さんや貞信さんに頼んで伏柄流の組み手稽古に付き合って貰いたい所だよ。

 

 

 問題は零課も教師もブラックな職場だって事だけれど……。

 

「ピザ十枚で良いんだな? お玉の方は……シーフード系にしておくか。彼奴は肉より魚派だし」

 

 明日明後日で急に強くなれる筈がないし、俺のヘッポコ退魔士っぷりは理解しているが、一日も早く今よりずっと強くなりたい。

 師範辺りが聞いたら焦るなって叱られる所だろうがな。

 

 

「……おい、少し良いか?」

 

 何だ? 雰囲気が変わったが……。

 

 ドロシーは珍しく真剣な表情で、少し戸惑いを見せつつも俺の顔を見据えている。

 何が琴線に触れたのかは分からないが、何か重要な事らしい。

 

 いや、こんな場合だし、その内容なんて決まっているだろ。

 お玉を妖魔にしたって奴と同様に夢に干渉する妖魔に関わる何か、興味が無いから放置するとは言っていたが、それでも何かを俺に教えてくれようとしているんだ。

 

 

 

「所で此処は抱き締めてからのキスであろう?」

 

「は?」

 

「何を呆けているのだ。慰めて良い雰囲気から一気に童貞を捨てるのがエロ系の漫画やラノベの通例であろう?」

 

 ……なーんちゃって、そんなわけがないよなー、しってた!

 

 

「この世界はエロ漫画とかの世界じゃないからなる訳ねぇだろうが。んじゃ、ピザ注文するからマッサージ終わりな」

 

 真顔で何を言ってんだよ、テメー!

 

 

 しかし、自分のヘッポコっぷりを再確認して思ったんだが、もしかして俺が気が付いていない事に気が付いて無いからじゃねぇのか? 小姫が何も言わなかったのって……。

 

 

 

「なぬっ!? せめて腰や肩に向かっていた指が本来は触らぬ場所に向かってエロい展開にすべきであろう!? 尻でも乳でも余は構わぬぞ!?」

 

 そんな思考を遮る発言、あまりにも酷い! これが姫様とか呼ばれてたんだぜ、驚きだな!

 

「本来は触らないなら触らないに決まってるだろうが、馬鹿」

 

 据え膳食わねば男の恥? 食おうとしたら逆に食い尽くされるタイプの罠じゃねーか。生半可な意思じゃ手が出せねえっての!

 

「あまりにも無体ではないか!? 余は既に準備万端だというに!」

 

「そうガツガツ来られたら俺は萎えるんだよ!」

 

「……余が一方的に攻められる方が良いのか? 抵抗する演技程度ならしてやるぞ? もうムラムラが止まらんのでな。正直限界である」

 

「黙れ。自分で発散してろ」

 

 

 

 そもそもシリアスな流れになったのに色ボケ挟むな! こっちがその気になっても口にされたら萎えるだろ!

 

 

 今回の件、お玉が方は手助けをして貰えそうにないだろう。 

 何せ厄介だの面倒だのと評価した相手から守るのは彼奴にとって興味の欠片も持たない相手だし、そんな奴の為に俺が何かしようってのも気に入らないだろうしな。

 

 仲が良くて普段から頼みを聞いて貰っていても、気に入らない仕事を頼むとなれば報酬は跳ね上がる。

 友人割引なんて無いさ、何せ王族としてと上位妖魔としての誇りが関わり、その報酬は契約に大きく関わるレベルになるんだろうから。

 

 

「取り敢えず今回は手助け無しだな?」

 

「うむ! 助けたくば勝手にやれ。余はお主を助ける以外で基本的に手助けはせぬからな。それが今まで通りの関係性というものだ」

 

 そんな気に入らない仕事で関係性を変えたくない、だから手を貸さないなんて言われれば俺も無理に手は借りられないじゃねえか。

 兎に角、明日にでも小姫に相談して零課に報告して、そうして妖魔に関する情報を集めて対策を考えて行動する、それだけだ。

 

 

 

 

 

 

「」

 

 

 

 

 

 

「ほほぅ。何やら興味深い話をしているではないか」

 

「お…玉……?」

 

 声が聞こえて、空気が一変した。巨大な腕に押し付けられている様な圧迫感、世界そのものが歪んでいるのかと錯覚する程のプレッシャーを与えて来るのは目の前の存在。

 

 霊力の量自体は変わらないが、質は大きく変化して同じ姿の別人かと思った程だ。

 

「我以外の何者かに見えるのか? まあ、別に良かろう。

 

 廊下の先から一歩近付く、圧力が段違いに増えて冷や汗と共に膝から崩れ落ちそうだ。

 そんな俺の姿が面白いのか満足そうに更に近寄り、圧力が増すばかり。

 

 

 倒れそうだが、倒れるのはちょっと悔しいよな。

 

 虚勢を張って上部だけを取り繕い、俺も笑みを浮かべながら倒れそうなのを堪え続ける。

 膝やらが震えそうなのを力を入れて無理に止め、平気だと表面上だけでもそう見せればお玉は俺の頬に手の平で触れていた。

 

 

 何時の間に? いや、そうか……。

 

 

 お玉が進む速度は変わっちゃいない、プレッシャーに耐えるだけで限界な俺じゃあ何処まで近寄ったのかさえ分からなかったんだ。

 

 

「もう一度問い掛ける。何の話だ? 構わん、話せ」

 

 隠し事は許さない、全て分かっているぞ、そんな意思を声と眼差しから暗に伝えられる。

 興味深い話……つまり因縁の相手に似た力を持つ妖魔に関わる事を話せって事だよな。

 

「あ、ああ、実は……」

 

 仕方無い、此処は素直に……。

 

 

 

 

 

 

「聞いてくれるか、お玉。大和といっつぇあ余を慰めるついでに抱こうともせず、あまつさえ一人で制欲を発散させろと言うのだ!」

 

「……ふん。不愉快な移り香が漂っている。貴様の稚拙な感知能力では言われるまで認識出来ずにいたのだろう? 愚か者め、鍛え直してやらねばな」

 

「お、おう……」

 

 無視した、そしてちゃんと何があったか重要なポイントを見抜いているんだな。

 

 俺の顎に指を添えて顔を近付けながら数度鼻を動かすその表情は普段通りの不機嫌、一体何が面白くないのかって思わせる奴だが、この時ばかりは何が理由か丸分かりだな。

 

 

「さて、どうすべきか。有象無象の生き死に等、至極どうでも良いのが正直な感想ではあるが……気に入らん女の事を思い出させた不敬には罰を与えるべきだろう。……漸く契約が可能な段階まで進んだ事だしな」

 

 俺の返事は聞いている様子も見せず、言いたい事だけ言うとその手に骨の刀を出現させたお玉は八重歯を晒しながら獰猛な笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

「我が命ずる。大和、その移り香の持ち主を探せ。褒美は存分に取らせよう。無論、果たせないのならば相応の罰を与えるが」

敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず

  • 五凶星 ごきょうせい
  • 悪六烈 おむれつ
  • 七福塵 しちふくじん
  • 四従死地士 しじゅうしちし
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