三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが 作:ケツアゴ
「ふぅ。他人の膝を枕にするのも悪くはないね。おっと、他人じゃなくって恋人だったね。お詫びにほっぺにキスでもしてあげようか?」
建前上は恋人なのだから、そんな理由で呼び出されたのが昼休み、俺の膝を枕にした小姫は大盛り焼肉丼を平らげた後で寝転がる。
恋人が居るのにラブレターなんか貰った男への嫉妬とでも言わんばかりにねだってだ。
嬉しいんだか恥ずかしいんだか、膝枕は基本される側からすれば新鮮な感じなんだよな。
それにちょっと眼福で役得だし?
飯を食ったら眠くなったとばかりに目を閉じたら直ぐに聞こえて来た寝息に耳を傾けて、敢えて見ない様にしても時々横目で視線を向けてしまうのは上下する胸。
その存在感は彼女の小柄な体躯もあって……大きい。
それが至近距離で眺め放題、但し周囲の目もあるから見てないフリはしないとな。
おい、遠くからガン見している男子! 俺も我慢しているんだ、自重しろ!
「それにしても随分と食うもんだ」
丼の大きさからして男子でも満腹になるだろうに、この身長の何処に入るんだか、そして何処に食ったもんが行ってるんだ?
やっぱ胸……考えるな、意識しちまうだろ。
何度か密着して知った感触が鮮明に蘇る、同時に寝ているなら指先で触れるくらいなら、そんな下衆な考えが浮かぶ。
小姫はスキンシップが激しいし、そっち方面の冗談も多いからな。
「おや、触らないのかい? 人がわざわざ隙を見せたのに面白くないな」
「やっぱ寝たフリかよ。……寝ている女の体に好き勝手とか出来る訳がねえだろ。たとえ彼女……だってなっててもな」
「真面目だねえ。私なら受け入れちゃうのに」
そうだよ、俺が幾ら好意を向けていて、キスだって何度もしていようが一緒にいる事への理由付けの恋人ごっこ。
敢えて口にして意識する度に虚しく感じるのは、まるで本当の恋人みたいなスキンシップが悪戯と罪悪感からと都合上とかから。
身を起こして悪戯っ子の笑みを向けた此奴が抱き付く真似をしようが恋愛関係だからの行為じゃない。
「罪悪感とかでなら勘弁だからな」
だからさ、小姫に惚れているからこそ流されたら駄目だ。他の女と肉体関係持った奴が何を言ってるんだって思うけれどな。
霊力供給の効率化だとか都合の良い理由で欲望に流されたくない。なまじ気持ち良さを知ってるだけに流されそうだが……。
「ふぅ」
「うおっ!?」
変な方向に思考が向かった俺の耳に吹き掛けられる吐息、してやったりと笑う小姫は可愛らしい。
いっそ告白するか? でも、退魔士として俺の力が有用なのを盾にするみたいな形になるだろうからな……。
「君は可愛いなあ。私の物になってくれて本当に嬉しいよ」
「そ、そうか。俺も悪い気はしてねえよ」
これは恋人ごっこの延長線、もしくは仕事上のパートナーって意味!
自分に言い聞かせる間も小姫は俺にベタベタと触り、そして耳元で囁く。
「じゃあ、朝のラブレターを見せてくれるかい? 恋人じゃなく、退魔士としてね」
「……ああ、分かった」
冷や水を浴びせられたって云う奴か? 甘い空気が消え去って惜しいのか、浮ついた気分を正されて安心なのか、分かっているのはこの瞬間から考えるべきは妖魔、そして何よりも犠牲を広げない事だ。
「じゃ、人目のない所に行こうか。見られたら恥ずかしいからね」
「何度も言うが、その手の弄りは勘弁してくれ……」
「君が私を弄りたいからかい? 性的な意味で」
こんな冗談を平気で口にする癖に、実際は凄く恥ずかしいんだよな。
偶には乗ってみせても悪くねぇが、退くに退けなくさせそうだから止めとくか。
あー、本当にちゃんと恋愛相談出来る知り合いが欲しい。
なーんで俺の周囲には恋愛と無関係なのと肉食系しか居ないんだよ、畜生。
贈られたラブレターを他人に見せるのもどうかとは思ったが、目を離した数秒の間に呪いが篭っていたなら話は別だ。
専門家に見せるべきかと周囲の目が無い場所まで移動して見せたんだが、どう反応するのやら。
まあ、そんなに派手に反応もしないだろうな。最初は普通の手紙だった訳だし。
「うげぇ! 随分とおどろおどろしい。君、女難の相が出ているんじゃないのかい?」
何か予想以上に酷い反応が来たな。そんなに酷いのか? これ
『そこまでなのか。俺には分からねえな』
確かに呪具と呼ぶべきドロドロとした呪いを纏っていはするけれど、呪いなんてどれもこれも同じ様な物だろうにな。
今まで何個か見たけれど、それに比べれば其処まででも……。
「甘いね。最初から呪いを込める為に作られた物と、これみたいに好意っていう本来は陽の感情が籠った物を呪いに変える方が厄介なんだよ。滅多にない事だってのに、本当に君は面倒な女の子関わるね。妖精使いの彼女とかさ。……幽霊屋敷の件から接触はあったかい?」
「電話は何度か。……二人が会話の途中で切ってるが」
俺が電話に出ても相手がルサルカさんと分かった瞬間に奪い取ってだからなあ。
「交友関係に口出しはしたくないけれど、彼女はどうかと思うよ? 性善説を本気で信じているタイプだし、妖精使いは感情がブレるイコールで妖精の暴走だからさ」
小姫もそうだがお玉もドロシーもルサルカさんに悪い印象を抱いてるみたいなんだよな。悪い人ではないんだよ、退魔士や零課の仕事を増やしているだけで、それも善意で。
……いや、本当に嫌われて当然か、あの人。
「そーいや、あのパンダも女だっけか。女難の相とか否定出来ねえな。……お前に出会ったのは不幸とは思ってないからな」
元人間なタイプ以外で妖魔に性別とか関係有るのか? 確か人間と子供作った逸話が残ってるタイプとか色気で誘惑するタイプとかはいるんだが。
「呪いのラブレターか。愛憎は表裏一体って奴か?」
呪われる程に好かれる理由が俺には無いんだが、そんなに強く好かれるもんなのか?
「今回はそれ無関係だよ。この手紙は君に向けられた呪いじゃない。書いた本人に対する呪いだ。その呪いが何かまでは分からないけれどさ。……何かを奪われたらしい彼女かな?」
「一ノ宮か。いや、多分違うと思うぞ?」
霊力がある奴以外には見えない上に忘れられる、そんな悲惨な状況の彼奴以外にも妖魔に呪われている可能性は低いと思うんだが、俺が一ノ宮と出会ったのは昨日、とてもラブレターを贈る相手にはなり得ない。
だって、川に落ちた帽子を拾っただけだし、それも俺が勝手にやっただけだぞ?
「恋とは突然だからね。何が理由だなんて人による物らしいよ? 私は初恋が未だ……なんでもない」
こほん、と誤魔化しの咳払いをする姿も可愛いな。寧ろ可愛くない姿なんて存在しねえだろ。
「……良いかい? 私の初恋云々は忘れるんだよ?
「分かった。俺は何も聞いちゃいない」
そうか、小姫の初恋が未だなら初恋を捨てられずに他の男に興味が向かないってならないし、好きな奴がいるのに戦いの為に俺とキスしたり誘惑しているってなってないのか。
じゃあ、さっさと告白するかって問われたら無理と答えるんだが。
「さてと……蜘蛛織り」
……は?
思わぬ朗報に思考を奪われた間に体に絡み付く糸。霊力が篭ったそれは力技で千切るのは少し難しいし、そもそも俺を拘束する理由が分からず抵抗出来ない。
今の会話で何が引き金になったのか、それを問おうと視線を向ければ不満顔がお待ちかね。
俺、何をやった?
「いやさ、私としては都合が良いんだよ? 既に相手がいるなら組んでもらうには抵抗があるからさ。でも、ちょっとお説教の時間だ」
「お説教? 一体なんで……」
年齢差は一歳、でも身長差は三十センチ後半と大差があるせいで叱られるのも妙な感覚だ。
身長でそういうのは悪い気もするんだが……。
「君、異性からの異性としての好意に対して自信や自覚がないみたいだけれど、今までラブレターをくれたり好意を向けてくれた相手に失礼だよ?」
「……うっ」
そりゃあ今まで何度かラブレターを貰ったりしたのは確かだが、改めて指摘されたら痛い。
確かに失礼なんだろうが……。
「まあ、お説教はこの辺で……ちょっと罰をあげちゃおう」
「罰?」
縛られて棒立ちの俺を見上げる小姫は何処か息が荒くなって見えて、目も座っている。
明らかに様子が変だが、妙な既視感が……あっ。
「君とのキスの際に全身に走る快感。すっかり癖になっちゃって、自分で慰めても物足りないんだ」
そうだ、普段のドロシーや昨日のヤってる最中のお玉の浮かべた表情だよ!
それはつまり今の小姫が発情してる状態な訳で、俺には抵抗の術がない。
いや、発情って言い方はねーか。ドロシーに引っ張られちまった。
「大丈夫大丈夫。ちょっと霊力を貰うだけだし、終わったらお詫びに胸でもお尻でも揉み放題」
揉み…放題……!?
漫画であれば瞳の中にハートが浮かんでいそうな表情で顔を紅潮させて俺の首に腕を回すが、何時の間にか胸元を開いてブラがチラッと見えている、因みにピンク。
……はっ!? 俺まで流されているだと!?
昨日卒業(意味深)したばっかりのせいか、今の小姫同様に味わったばかりの快楽に溺れそうな状態、しかも小姫の場合は今から戦闘とかの危機迫った状態だから余韻を味わう暇も無い生殺し状態だった訳で……。
俺もシャワー浴びたら飯を作らされたけれど……。
周囲の木を結んで張られた糸に爪先立ちに乗った小姫はそのまま俺にくっ付き、抵抗出来ないまま顔がゆっくりと近付く。
「学校で人目を盗んでこんな事をするだなんてね。私も随分と……ちっ! あの貧乳っ!」
だけど唇が触れ合う寸前に響いた着メロ、番宣CMで聞いた事があるが、確か幼児向けアニメの曲だった、が流れた瞬間に表情が一変、虫唾が走った顔になった。
この顔まで可愛いとか言い出したら末期だな……。
「ごめん、センパイ。実家のメスガキからの電話だ」
「メスガキ……」
酷ぇ呼び方だな、おい。人様の家の事情に口出ししない主義だから詳しくは聞かないけれど、仲が悪い年下が居たんだな。
俺の所は母さんの両親が数十年前に失踪してて父さんが実家から絶縁されている以外は親戚仲が良いから……ウチも結構ボロボロかぁ。
「はぁ!? 零課の支部に来ただって? 小学校はどうするんだ、馬鹿。算数の小テストがボロボロで放課後常連組の癖に。家出の届けが出る前に……そんな訳がないじゃないか。彼はロリコンでもペドでも……え? ロリコンやペドの意味が分からない? はんっ! だからお子ちゃまなのさ」
いや、小学生なら知らなくて良いだろ、ロリペドとか。最近はネットの影響で知っていても不思議じゃないが、知らないなら知らない方が良いんだし、教えるなよ?
今まで妖魔相手に向けていた敵意とは違う悪感情を電話の向こうの相手に向ける姿は妙な感じだ。
あれも彼女の一面だって分かってるんだが、素顔を見せる程の関係にはなれたって事で良いんだろう。
うん、そう思おう。ギスギスの態度も人の一部だ。
「兎に角! さっさと家に帰るんだ! 私の邪魔を……切られたか」
電話の向こうの相手に怒鳴っていたが、通話を切られたらしく苛立ちながら再びの舌打ちの後で張っていた糸から飛び降りて、同時に俺の拘束も解かれる。
糸が食い込んで痛いとかはなかったが、糸に縛られて動けないってのも妙な感じだよな。
「ごめんね、家の糞生意気でチビで同じ年齢の時の私と比べてあまりにも貧相な体の妹がラブホテルにいるらしくってさ。それも初対面の男性の車に乗り込んでっていうんだから呆れちゃうよ」
「事実なんだろうが言い方には気を付けような? その言い方だと運転してる車に乗り込まれたあの人がヤバい人に聞こえるぞ」
零課の支部って言ってたんだし、この街の支部だってのは予想可能、更に状況からして裏飯さんが一ノ宮を乗せた車に乗り込んだんだろうな。
誰の目にも見えなくされた状態の女子高生をラブホテルに連れていく最中に小学生女児を同乗させた交番のお巡りさん、真実でも一覧したらヤバいが、あの人にやましい所はないんだから勘弁してやってくれ。
「まっ、支部に乗り込んで今回の一件は自分に任せろとか言い出したらしいけれど、実家の方から連絡があったらしくってね、それで慌てて逃げ出して籠城中らしい。あの馬鹿に対して連絡が来ないって事は零課は相当忙しいみたいだね」
「そりゃあ、なあ……」
普段の業務だけでも大変なのに余計な仕事が増えて連絡すら不可能とか、人員が増えたばかりだってのに……。
「あの支部は他の支部なら被害が拡大寸前まで放置する案件にも取り掛かってるらしいからね。……お金がないけれど菓子折りでも持って行こうかな」
「報酬が入っただろ? 金がないって何に使ったんだ?」
「寿司とゲームと焼き肉、ついでにマッサージチェア。……来胸だと肩が凝るから」
そう言いながら軽く動けばタユンと揺れる、視線を思わず向ける俺であった。
敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず
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五凶星 ごきょうせい
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悪六烈 おむれつ
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七福塵 しちふくじん
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四従死地士 しじゅうしちし