三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが 作:ケツアゴ
使い魔と式神、その辺の知識が薄いし、特に重要でもないと教えてもらえていないから詳しくないが、要は野犬とロボット犬みたいな違いらしい。
使い魔は自然発生した妖魔……もしくは呪いで妖魔にした人間を強制的に術で従わせる、もしくは契約で利害関係を結んだ相手。
対する式神は核となる呪具に霊力を込めて作る模造品の妖魔、コントロールのし易さが利点だが、術師の実力で力が大きく変わるらしい。なんかプログラムを作成する技術みたいなものが必要で、霊力とかが多かったり戦闘経験が多かろうが向いてない奴には向いてないそうだ。
俺とか全く適正無しだってさ。こうロボットとかモフモフの犬とかの欲しかったんだがな。
……所で二人がその辺詳しく教えてくれないのって、“使い”魔ってのが姫として嫌だったとか?
「まあ、肩の力を抜いて答えてくれれば良いよ。長年あの二人に問題を起こさせていない実績が有るからね。じゃあ、かなえちゃん。先ずは好きな食べ物は何だい?」
「こうぶつ、かー? あたし、あマいもの、すきだ」
そして当然だが俺も使い魔って呼び方を二人に、最近じゃかなえちゃんにも使いたくねえんだよな。
表向きは格上に口八丁で有利な契約を結ばせたって昔話みたいな事にしちゃいるが、実際は違うってのは蘭さんには見抜かれている。
肉体関係持った事まで見抜かれてるのは何でだよって感じだけれどな。契約無関係ってしたから繋がりで見抜けないってのに。
その上で上記の嘘を報告してくれているのは二人ともちゃんと話をしてくれて、妖魔としてだけでなく人間としての面も見てくれたから……ではあるんだが。
「そうか、甘い物が好きなんだね。僕の苗字の甘味から、仲間内では海外でのお菓子を意味するスイーツって渾名を付けられてくれていてね。でも、食べないでくれるかい?」
椅子に座るかなえちゃんにわざわざ視線を合わせて聞き取りをしながらメモを取ってるが、どうも書いてる量からして返答をそのままって感じでもねーな。
覗き込むのは……止めとくか。
「あたし、にんげん、たべない、ぞー? ちち、と、やくそく、したもんなー」
「……そうかい」
だから今回も簡単に済むと、そんな楽観視は出来やしない。二人が見逃されたのは実際に安全だと判断されたから。
かなえちゃんは良い子でも、その精神性は見た目よりも幼いし、戦国以前の価値観に妖魔が混じっている。
「じゃあ、妖魔は食べるんだね?」
つまりは危険性が高い可能性は否定出来ないって事だ、小さい子供故の癇癪を爆発させて、それも現代倫理とは無縁だってんなら当然だろうよ。
実際、笑顔で普通の子供みたいに接している蘭さんの目は笑ってねえんだよな。
そんな彼にかなえちゃんはニコニコと無邪気な笑みを浮かべて楽しそうに対応しているが、ちぃっと不味いか?
「くう、ぞ。ようマ、うマい!」
「そうかい。じゃあ、最近食べたのはどんなのかな?」
「あし、が、ない、おんな! てけてけ、って、なマえ、らしいぞ」
テケテケ。本来は有り得ない状況から怨霊になった女の子の都市伝説から誕生した妖魔で、狙われ呪われ殺された奴が次のテケテケになる。
要は元人間、姿だって下半身を失っている事を除けば普通だ、除く部分が大きいがな。
「……そっか。じゃあ、次の質問の前に僕の分のお茶菓子をあげよう」
「いいのか! おマえ、いいやつ!」
だから蘭さんはかなえちゃんに問題有りって判断したなら容赦せずに報告するだろうさ、其処に知人である俺への忖度なんて存在しちゃいけない。
俺はこの子と知り合って仲良くなって守ってあげたいと思ったが、蘭さんだって守りたい物があるんだから。
それは地位とか実績じゃなくって……見知らぬ人々を守る為。俺の判断が間違っていて、かなえちゃんが妖魔として暴れた時に生ずる犠牲を防ぐ為だ。
当然だが俺の為でもある、だから口出しはせずに信じて見守る、全部の責任を背負って全部の犠牲を防げる筈も無い俺に出来るのはそれだけなんだ。
「でも、いらない、ぞー。うマいもの、わけあえば、もっと、うマい」
「おや、立派な考えだね。じゃあ、お昼に何をしているか聞きたいんだけれど……」
それから面談は一時間以上に及び、かなえちゃんがうつらうつらしだした頃に面談が終わったのか、蘭さんは筆記具を置いた後で立ち上がって伸びをしている。
バキバキゴキゴキ嫌な音が聞こえているし、デスクワークばっか続いてるんだろうな、この人。
「さてと、大体の話は分かったよ。……まあ、定期的な面談は必要だけれど今は大丈夫だね。良くも悪くも情緒が育ちきっていない子供だからさ」
つまり今後次第では存在を許さないってなる訳だな。やれやれ、ちゃんと教育しねえと。
「大和よ〜。面談は終わったか〜? 終わったなら余の相手をせよ。かなえも未だ一人で神を洗えぬし、二人揃って可愛がってやろうぞ!」
「教育に悪いのがいたな、そーいや」
「だねぇ。かなえちゃんは完全な妖魔じゃなくって混ざってる感じでしょ? 人に近い肉体もあるし、本当にその辺は大切だよ?」
「ですよね」
勝手に盛って大盛り上がりするドロシーの姿に頭が痛くなって来た頃、お玉による無言の飛び蹴りが事態を終息させる。
だが、ここからだ。かなえちゃんの全うな教育の為には敵の存在が大きすぎる、その敵が身内だけれども。
「小学校は無理でもちゃんと学習の場はあった方が良いし、オンライン学習の場を紹介するよ」
「色々とすいません、ありがとうございます」
多分合格した時の為に手続きはしてくれていたんだと思うと蘭さんには足を向けて眠れそうにない。
大人って本当に凄いよな。
「えー!? 例のお兄ちゃんの所じゃなくって小姫ちゃんの汚部屋に行くのー!? 部屋の様子をママに写メで送ったの見たんだからね。やだやだー!」
「ちょっと汚いだけじゃないか、汚部屋言うな!」
確かに大家さんに警告喰らってしまったけれど、報酬が結構入ったから断腸の思いでハウスクリーニングだって頼んだんだぞ!
「大体、自分の部屋を掃除した事が無いのはそっちもだろう?」
「えー? マニちゃんは小姫ちゃんみたいに無計画じゃありませーん!」
「どうだか」
偉そうな事を言っちゃいるが、お菓子の食べカスを溢したままにして蟻の大群を呼び寄せたのは一回や二回じゃないんだ、この生意気な妹は。
だからきっとハウスクリーニングの人に、うわぁあ!? って感じで驚かれるだろうさ。
私は、うわぁ……、で済んだけれどね、そこは姉と妹の違いって奴だよ。
「おーい。姉妹仲良くするのは良いけれど、暗くなる前に手掛かりを見付けようか。オジさん、夜には用事があるのよ」
裏飯さんはマニの馬鹿が考え無しに作った焦げ跡が残るアスファルトを撫でながら霊力の残りを探る。
そう、妖魔らしき奴は倒したのに僅かに残っているんだ。
「妖魔かと思いきや式神の類いかぁ。痕跡残すとかざーこだよね、小姫ちゃんみたい。頭に行く栄養が胸に行ってるのかも」
「ああ、背にも胸にも栄養が行かない何処かの天才児とは違うだろうね。でも、今は考える頭の足りない馬鹿が派手な術を使った場所を調べている所だから」
「はぁ?」
「はんっ!」
あー、下から睨まれても至近距離だと胸が邪魔で顔が見えないなあ、誰かさんは皆無な胸が邪魔で!
見せびらかす様に軽く揺らしてみせれば地団駄を踏むけれど、ガキだね、所詮はさ。
「いや、本当に君達いい加減にしなさいなって。お仕事の真っ最中だからね?」
マニが放った火来針は対象を焼き尽くしたかに見えたけれど、随分脆いのか食らった瞬間に破片が周囲に飛び散ってへばりついたのが残っている。
だからそれを集めているんだけれど、例えるならちょっとずつばら撒かれた噛んだガムの破片を剥がして集めているみたいに根気のいる作業、案の定戦犯が真っ先に飽きて話し掛けて来るしさ……。
「ねぇねぇ、小姫ちゃん。今日の晩御飯ってなーに? アタシ、駅前のファミレスに行きたいなー。コラボメニューで好きな作品のクリアファイルが貰えるんだー」
「カップラーメン」
「え? ごめん、もう一度言って」
「カップラーメン」
ファミレス? コラボメニュー? 行かない行かない、お金無い。報酬の振り込みが未だだもん。
そもそも可愛い弟と違って糞生意気な妹なんて。
「えー! カップラーメンってアレでしょ? 三分待つだけで出来るって奴。外でお仕事する時には食べるらしいけれど、そんなに美味しくないって聞いたよ? ハンバーグとかピザとかドリアで良いじゃん!」
「駅前のファミレスの料理もそこまで大した物じゃないだろ? 大体、勝手に家を出て零課に迷惑掛けたから暫くお小遣い減の奴が贅沢言わない」
「え? アタシ、小学生で小姫ちゃん高校生。お金出してくれるでしょ?」
「いや、見張りだし同行するから自分の分は出すけれど、そっちはそっちで……え?」
「え?」
「何かお互いに"何を言ってるんだ、コイツ?"って顔してるねえ。カップラーメンだけは栄養が偏るし、せめてサラダを追加した方が良いよ? さてと、オジさんが殆ど集めた分で足りそうだね」
あっ、ちょっと怒ってる。笑顔だけれど口の横の辺りがヒクヒク動いているし……。
「悪かったね、裏飯さん。妹はちゃんと叱っておくよ」
「いや、君も大概だから……って、もうこんな時間か。悪いけれど用事があるから頼んだよ!」
ポケットに入れていたスマホのアラームで時間に気が付いた裏飯さんは慌てた様子で自転車に乗り込むと爆速で去って行く、速度違反で捕まらなければ良いんだけれど。
じゃあ、迷惑掛けたんだし、残った仕事は終わらせるか。
八割は裏飯さんが集めた霊力の残りカス、それを捏ねくり回して一つにするのを例えるなら消しカスを集めて無理に文字を消そうとする感じ。
「伊弉諾流裁針技法・
ちょっと違うのは消すんじゃなくて探す、集めた霊力に針を刺せば直ぐに全てを吸収し、穴に通した糸を引っ張りながら北を指し示した。
「こっちか。これで居場所は突き止めた。正体も大体分かったし……スーパーに寄って帰るか」
財布の中を見ればお札が一枚、小銭が少し。報酬の振込が明後日だからギリギリ持つかな?
あー、肉食べたい。四日前に中途半端に豚肉の焼き肉しちゃって余計に牛肉の焼き肉が食べたいよ!
「ふぅん。小姫ちゃんも霊力はカスだけれど、コントロールと出力はそれなりだよね。アタシは全部凄いけれど」
「探知用の針の補充を忘れるって馬鹿みたいなミスがなければ凄い所を見せてもらえたけれどね、馬鹿みたいなミスがなければさ」
「うるさい! うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!」
「本当に癇癪持ちは嫌だね。余裕が無いとその内ヘマをするよ? わからせ、くらっちゃうかもね」
「わからせ? 何を?」
「お子ちゃまには早い話さ。スマホの検索にフィルター掛かってるから調べても無理だろうしね」
もし親に聞かれでもしたら小学生に何を教えてるんだって感じになりそうだな。
それと一応だけれど僅かに残っている身内の情でちょっと心配になる、この妹は天才だから挫折らしい挫折を知らないし、経験を積むための任務だって保護者同伴で安全対策はバッチリだ。
だから、その内に調子に乗ってやらかすんじゃないかって心配になるんだよ、口には出さないけれど。
「……さてと、探知は終わったから準備を整えて乗り込むとして……」
マニが家出同然に飛び出して向かった先がこっちだとは連絡が行っているけれど、立て込んでいるのと合わせて私が住んでいる所だからって迎えは明日、非常に面倒。
あれだね、実家の連中は頭がお花畑かな? お姉ちゃんに会いたくて出てきたと思っている節があるんだから呆れちゃうよ。
「あっ! そんな事よりも、マニちゃんは霊給者のお兄ちゃんに会ってみたいな」
「もう夕食前だし、アポも無しに会いに行くにはマナー違反じゃないかな」
ちっ! 薄々感付いちゃいたけれど、目的は彼か。
私が偶然遭遇した彼に目を付けたのと同じく、目の前でキッズスマホを弄くる妹も大和先輩を引き込むのが目的だと察し、ちょっと腹が立つ。
横合いからかっ浚う気なのが気に入らない? それとも独占欲?
彼と私は別に恋人じゃない、彼がその様な関係を望むなら受け入れるべき立場な私だろうけれど、だから嫉妬とかではないのかな? 多分。
だって能力目当てで近寄ったんだし……。
「マニちゃんの方が可愛いし、将来性もあるし、お兄ちゃんだって小姫ちゃんよりもアタシの方が良いよね」
「……彼はそういうので動かされる人じゃないよ」
まあ、受け入れるべきとは思うけれど、交換条件で恋人になれと要求するタイプじゃないんだよね。
立ち絵は活動報告で
敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず
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五凶星 ごきょうせい
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悪六烈 おむれつ
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七福塵 しちふくじん
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四従死地士 しじゅうしちし