三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが   作:ケツアゴ

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恥知らずに再びリメイクです。変更を比べやすい様に旧と一緒です


リメイク版 第1章
リメイク版 プロローグ


 世の中、真面目な人間が損をするという事が多々あるものだ。他の者なら表面上は取り繕って誤魔化す場合でも真面目な者はそうはいかない。ほぼ確実に徒労に終わる状況でさえ万が一の可能性を危惧して動いてしまうのだ。

 

「……あー、ついてねえ。あのスカポンタン三人組を捕まえた時にちゃんと見とけよな」

 

 昭和の時代から存在する小学校、その今は使われなくなった旧校舎を宿直の教師が歩いていた。少し水を飲み過ぎたのか慌ててトイレに行った帰り、強くなる雨音にふと窓の外を見てみれば旧校舎三階廊下側の窓が幾つか開いている。

 天気予報では降水確率が低かったにも関わらず窓を打つ雨粒の勢いは激しさを増して行き、これでは窓から吹き込んだ雨水が老朽化で歪んだ廊下に水溜まりを作っていると考えたら今から気が重い。

 

「此処に毎日通ってたんだよな。当時からボロボロだったけれど。……来年には取り壊しか」

 

 旧校舎の門を閉ざしている南京錠の鍵を慌てて探し、大雨の中、傘を広げて旧校舎へと走る。彼が小学生の時に使っていた建物も当時から更に老朽化が進んで如何にも何かが出そうな雰囲気を醸し出している。

 実際、肝試し目的で入り込んだ事が切っ掛けで怒られても怒られても中に侵入する三人組が今も通っている。窓の鍵が壊れていたりと身軽な子供なら入り込み口になる場所は何ヵ所もあり、修繕費用も出ないので教師が見回って捕まえるしかないのだ。

 

 実は彼も夏休みの夜に友達と侵入して花火をしたせいでボヤ騒ぎにまで発展した思い出があり、スカポンタン三人組と呼んでいる悪戯好き三人組を含む代々の侵入常習犯達に少し共感を覚えながら一抹の寂しさを感じていた。

 

 

 思い出の場所が失くなっていく事に自分の加齢を感じつつ扉の鍵を確認するが問題は無く、中に入った後は一階の侵入ルートを隈無く調べていった。

 入り込んだ者が潜んでいる事も考え、他の教師なら三階の窓を閉めて終わりにする所を念入りに調べた所で立ち止まる。

 

「おっと、先に窓を閉めりゃあ良かった」

 

 どうせ既に大量の雨水が入り込んでいるのだから同じとは思うものの、今も窓を激しく打つ雨音に失敗を悟りながら階段を上れば三階は悲惨な光景が広がっていた。

 

「うげっ……」

 

 懐中電灯で照らした廊下は窪みに雨水が溜まって想像通りの光景が広がっており、足を踏み入れるとジャバジャバと水音がする。

 ただでさえ痛んでいる木製の床がこのままでは腐ってしまいそうで、ますます生徒の侵入に目を光らせねばと深く溜め息を吐き出した時、旧校舎全体を揺るがす轟音と共に稲光が廊下を照らした事で壁には彼の影が現れた。

 

 それと同時に教室一つ分離れた場所にも何かの影が現れる。針金のように細く、そして柔らかい動きをするその影の持ち主の姿は無く、彼も気が付く事無く窓を閉めながら廊下を進めば床に溜まった雨水が飛び散り表面に生まれた波紋が広がっていく。

 

「誰だっ! ……なんちゃって」

 

 背後から迫る気配を感じ取った気がした彼は勢い良く振り替えるも当然の様に誰も居ない。懐中電灯の少々頼りない灯りが照らすのは水浸しになった廊下と閉ざされた教室の扉だけだ。

 雰囲気で敏感になってしまっただけかと昨夜見たホラー映画を思い出して苦笑する。

 

 偶然にも……と言うにはホラーの舞台として夜の学校は定番だが、今の様に誰かが居た気がして振り替えるも誰もおらず、気のせいかと思って歩き出すと背後からオバケが出てくる定番の演出だったが、この様に水浸しの廊下では浮いてない限り水音を立ててしまうものだ。

 

 それが無いなら何も居ない、普通ならそうだろう。……普通だったら。

 

 彼が通り過ぎ波紋も収まった場所でも無数の細長い何かが水溜まりの中を動く様に水面が波打ち、再びの稲光に廊下が照らされた瞬間、水面に姿が映し出された。

 

 それは頭の先端が二股に分かれた針金虫を思わせる姿をしているが、その全長は二メートルを越えているだろう。それが約十匹以上、水溜まりとなった廊下を泳ぎ徐々に徐々に目の前の男へと近付いて行く。

 姿が見えたのは稲光が照らしている間だけ。存在が確かだと示すのは水溜まりの表面と旧校舎のかび臭さに混じる腐敗臭。

 

「臭うな。何か入り込んだか? それともスカポンタン共が変な物でも……」

 

 腐った鶏肉と卵を混ぜ合わせた様な悪臭が鼻に届いたのか彼はふと足を止め、野鳥かネズミの死骸でも腐っているのかと振り返って懐中電灯を向けるものの僅かな明かりが照らすのは何もなく誰も居ない廊下だ。

 本格的に老朽化が進んで彼方此方が腐っているのかと考えて再び歩き出した時、足に何かが絡み付く感覚に襲われて足を止めて懐中電灯で照らすと何も無いが何かが妙だと気が付いた。

 

「何もない場所から水が垂れてる……?」

 

 既に雨水で服が水を吸って雫が滴り落ちているが、目を凝らして見れば透明の糸か何かを水が伝う様に動き空中で滴り落ちて居る。

 何が起きたのか理解出来ないでいるともう片方の足にも何かが絡み付く感覚、それが体に巻き付きながら登って来る様な感覚を覚えた時、再びの稲光と共にソレは姿を表した。

 

 

 両足だけでなく胴体や腕に絡み付き、明かりが鬱陶しいとばかりに指の間に入り込んだ一匹が無理やりに懐中電灯を手落とさせる。そのまま右腕に巻き付いた一匹が胴を伸ばし彼の顔に頭を近付ければパクパクと口を開閉させる事しか出来ない姿を不思議に思う様に頭を傾げ、何処に在るのか……存在するかどうかさえ不確かな目で彼を観察するかの様に動きを止め、そっと右目を覗き込む。

 

 

「あっ……化…物……」

 

 漸く出せた声はそれだけ、後は動く事も出来やしない。声量も少なく、掠れた虫の鳴く様な声で、次の瞬間には虫達が一斉に頭を激しく震わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 シュルルルルルルルルルル!

 

 

 

 それは威嚇か、それとも歓喜か。一匹一匹が出す音は小さくとも十匹集まれば耳元を飛び回るハエの羽音程に膨れ上がり、微妙にずれている事で不協和音を奏でていた。

 彼が腰を抜かすと同時に虫達は彼の体を這い上がって行く。焦らすように、なぶるように、ゆっくりと、じっくりと。

 

 ある一匹は口を覗き込み、ある一匹は服の中へと侵入し、ある一匹は耳の中に頭を突っ込もうとする寸前だ。

 

「あっ……」

 

 恐怖からか、それとも絶体絶命の状況でせめて最期に苦痛を和らげる為なのか彼の意識は暗転する。股間が雨水以外の理由で濡れ、背中から勢い良く倒れた事で虫達の侵入は遅れるもそれは一瞬でしかない。

 

 

 

 この虫達の姿を見た時、彼は何処かで見た覚えがあるも思い出せなかった。それは大学生の時に調べた日本の地獄に関する資料。その中にこの虫達の姿が描かれていた。

 

 

似髻虫(にけいちゅう)

 

 地獄の亡者を内部から喰らうとされる虫。それが今まさに生者である彼の体内へと侵入しようとした、その時だ。

 

 

 

 

 

 

 

ホッホッ ホッホッ

 

 廊下にフクロウの鳴き声が響き渡り、似髻虫達の前から彼の姿が消える。一瞬の困惑の後、似髻虫達の体が激しく震え出した。

 

 

シュルルルルルルルル!!

 

 それはご馳走を直前で奪われた事による怒りからの威嚇、そして目の前に現れた相手から感じる力への恐怖だ。全身を震わせながら激しく蠢きながら何処にあるか定かでない目を向ける先には一人の少年が立っていた。

 

 

「ご苦労さん、ドロシー。後は俺がやるから見といて……あっ? 手間賃? へいへい、ちゃんと支払いますっての」

 

 二メートルにはやや届かない背丈と引き締まった体、オールバックにした黒髪といった見た目だが、特徴的なのは鋭い目付きだ。少年の肩には白いフクロウが乗っていたが、彼の言葉を聞くなり翼を広げて飛び上がる。

 その際に軽く出した鳴き声に彼は面倒臭そうに返事をした後で似髻虫達へと向き直った。

 

 

「虫だし殺虫剤でも効くのか? いや、妖魔だから無理か」

 

 どうでも良さそうに呟いた彼は脱力した様に両手を下げてブラブラと揺らす。その姿は恐ろしい化け物を前にした時の物とは到底思えず、ある程度の知能があれば不振に感じて警戒しただろう。

 

「やっぱり虫は虫か」

 

 だが、似髻虫は虫だ。目の前の新たな獲物が無防備な姿を晒したと見るや我先にと飛び掛かる姿に彼は呟き、指を微かに曲げる。その場から動かず、似髻虫が寸前にまで迫った瞬間、彼の姿は似髻虫の前から消え去り背後に現れて……似髻虫達の体はズタズタに切り裂かれて床に散らばると同時に消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「伏柄流古武術・居刈り(いかり)。……体液が指に着いた上に切り口がズタボロだ。姉さんには未だ届きそうにねえな」

 

 指先に残る不愉快な感触を振り払うかの様に少年は手を軽く振り、浅く息を吐き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず

  • 五凶星 ごきょうせい
  • 悪六烈 おむれつ
  • 七福塵 しちふくじん
  • 四従死地士 しじゅうしちし
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