三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが 作:ケツアゴ
漫画や映画みたいにこの世の中には化け物が人知れず存在している。
それは神話の怪物だったり、伝承の妖怪だったり、都市伝説の怪異だったり、そのどれにも当て嵌まらなかったりと様々だ。そして、現代文明の中でそんな化け物が人知れずなままな理由だってちゃんとあるんだぜ。
霊力と呼ばれる力が無い限り見えないし触れないんだ。但し、それだけだと一般人には無害で存在しないのと同じに感じるが、其処に向こうが襲って来なければって嫌な言葉が付くんだ。
見えない聞こえない触れない相手が何処かに潜んで急に襲って来るかも知れない、そんな恐怖を万人が抱えていたら社会は大混乱で、だから秘匿されている。
化け物の総称は妖魔、更に個体や種類を識別する名前もあるが、今は関係ない話だろうな。
ああ、因みに俺には霊力がちゃんとある。そして妖魔に対抗する力を持った退魔士って奴だ。頭に三流が付く情け無い半人前ではあるんだけれどよ。
名前は伏柄大和、三流退魔士をやってる高校生だ。……え? リメイク二回目だから説明は不要だって? ナンノコトヤラ……。
「うぐっ。またかよ……」
その日、俺の目覚めは悪かった。微妙な息苦しさと香水独特の薬品っぽい俺の苦手な香り、そしてフワフワでモフモフした感触と視線を埋め尽くす白。
全て顔に乗ってる物が原因で、其れを除けようと掴めば指先がズブリと沈んでモフモフフワフワの感触が指を包み込む。癖になりそうなのを我慢して起き上がりながら除けた其れの正体はフクロウだ。
雪の様な純白の羽毛を持つ大型で、右脚にはドロシーという文字が彫られた輪っか。俺の顔の上で呑気にスヤスヤ眠っている其奴をベッドの上に置いた俺は寝巻きから着替えようとして手を止めた。
ボタンに指先を掛けた時に感じる視線。それを辿れば寝ていた筈のフクロウの瞳が薄ら開かれて海の様な蒼と月の様な黄金のオッドアイの瞳が僅かに見えていた。
「なんだ、着替えぬのか? 別に余は構わぬから着替えよ」
「俺が構うんだよ。素直に寝てろ、ドロシー。朝っぱらから発情すんな」
動きを止めた俺に向かってフクロウのドロシーから聞こえたのは俺と同年代の女の声。少し偉そうな感じで期待外れとでも言いたそうだ。そう、此奴は普通のフクロウじゃねえ、妖魔だ。だから頭も良くて人間の言葉も喋れるし……。
「フッ。余は妖魔でありフクロウぞ? 夜行性なのだから人の子が夜に発情するのと同じく朝に発情して何が悪いというのだ。故に着替えを続行せよ! パンツも替えて良いのだぞ?」
……こうして俺を性的な目で見て来てセクハラだって日常茶飯だよ、畜生
「テメーが朝から発情する事と俺が着替えを見せるのは別問題だろ、エロフクロウ、略してエロウ」
「余がエロで何が悪い! 動物など基本は 飯! 寝る! 交尾! であろう?」
なので今から存分に寝ると言ってドロシーは毛布の中にモゾモゾと潜り込んで行く。
よし! さっさと朝飯にするか! 昨日は疲れたし、偶にはゆっくり飯が食いたい。
着替えを小脇に抱えて部屋を出る。ウチは結構な敷地を持つ日本家屋で、祖父さんが生きていた頃は武術道場だってやっていた。庭の隅、松の木を挟んで父さん母さんの趣味部屋である小屋が二つ。
そんな無駄に広い家に今住んでいるのは俺だけだ。
郵便受けにはDM広告が一つ、読みもせずにゴミ箱に放り込めば昨日珍しく届いた国際郵便の封筒が目に入る。
「二人共元気にやってんのかな? 研究で無茶してなけりゃ良いけれど」
約三十年前、昆虫学者として渡米した父さんは招かれた研究所で法人類学者の母さんと出会い、姉さんの誕生を切っ掛けに結婚した。暫く経った頃に伯父さんの商売が上手く行き……順調過ぎて敵も増えたからって一旦日本に戻り、姉さんが就職して俺が高校に入学すると再びアメリカの研究所に向かい、忙しいのか特に問題が無いからか連絡は少ない。
まあ、時差もあるんだろうが家族仲に問題は無くても頻繁に連絡するタイプじゃねえしな、あの二人。
姉さんも仕事が忙しいから帰って来ない日が多いし、広い家の掃除はちょいと面倒だが気楽と言えば気楽か? 連絡しねえのに一緒に居るとベタベタしてくるしな、あの両親。
冷蔵庫には昨日の残りのサラダとギリギリ一人前の牛乳とベーコン。朝は牛乳派なので一日中雨だが買い物に行かないといけないか、だりぃ。
トースターにパンを入れている間にベーコンを二枚焼き、そういや卵も無かったのを思い出す。ドロシーの奴が急に卵酒を飲みたいと言い出して残り全部使いやがったんだよな。
溜め息混じりに一般的な炊飯器……の隣にデンッ! と置かれた業務用炊飯器に視線を送る。尚、全部ドロシーが食う分だ。
「食費が凄いんだよな。質にも量にも拘るくせに自分では用意しねえしよ」
うちの親は稼いでいるし、別に食費に困るなんて事はないんだが、食材を買い求めて調理して後片付けして家計簿を付けるのは俺の役目だ。彼奴、俺の一ヶ月分の小遣い以上の食費が必要だし……。
「もう少し欲しいんだよな。でも、バイト代の管理は姉さんがしてるしよ」
子供にあまり大金を持たせたくないってのは分かるんだが、せめて五千円上乗せして欲しいと交渉内容を考えつつテレビを付けるんだが、映し出されたのは話題の店の紹介。
商業施設にオープンしたばかりの飲食店内部の様子が画面に広がるんだが、アナウンサーの明るい声が響く中、俺の目には壁一面に張り付いて蠢く異形の虫の姿が見えていた。
カエルの頭を持つ蝶に脚が人間の指の蜘蛛、握り拳大のダンゴムシの体には歯垢だらけでガタガタの歯が覗く口がパックリと開いている。
『見て下さい! この色鮮やかな料理!』
「その皿の横で七色のカメムシが背中の目玉をギョロギョロ動かしてるんだけれどな……」
他の妖魔の餌にしかならず近くに寄っても何となく不愉快な感じがするだけの雑魚だが、こうやって力の流れやらで集まりやすい場所が飲食店だと関係者にはご愁傷様。
俺みたいに見える奴は勿論のこと、何となく居心地が悪いからと見えない人も二の足を踏む。有名店で修行して開業資金だって随分と注ぎ込んだだろうに。
妖魔ってマジで糞だわ。
「なかなか美味そうな店ではないか。底位妖魔を摘みつつコース料理を味わうというのも悪くはないな」
不意に肩に顎を乗せて現れる金髪に蒼い目の少女。指先は脇腹から腰までを撫でる様に動き、耳に軽く息を吹き掛けられた。
「何度も言ってるだろうが音も無く背後に立つな、ドロシー」
「フクロウの狩りとは無音であるぞ? それでだ、昨夜の報酬を貰っておらぬからな。デートだ、デート」
フフンと得意そうに鼻を鳴らして胸を張ると双丘が揺れる。この女、ドロシーは全裸だった。
「だから人の姿の時は服を着ろっつてんだろ」
「……普段から全裸であるのに面倒であるな。人の街で遊ぶのも貴様を誘惑するにも此方の姿の方が良いが、どうも布を纏う感覚は落ち着かぬな」
渋々といった様子で自分の体の上から下まで指を這わせていくと白い服が現れて行く。見るからに高価そうなフリル付きのドレスで、これで良いかと不満を隠そうともしていなかった。
「下着は別に着けずに良かろう?」
「外に出るなら着けろ。下着も含めて服だ、ボケ」
ドレスの裾を指先で摘んで少し持ち上げ、もう片方の手で胸を真下から揺すれば先程同様に揺れる。まるで水風船みたいな柔らかい動きだ。
「つまり家の中ならば下着は要らぬのだな? ほれ、捲ってみせようか?」
「……家の中でも着けとけ」
人の姿をしていようがマジで話が通じねえ……。
「デートっつんなら別の場所にしてくれ。虫だらけの場所で飯食うのは勘弁だ」
この二時間後、俺はラブホテルの駐車場にまで来ていた。
敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず
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五凶星 ごきょうせい
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悪六烈 おむれつ
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七福塵 しちふくじん
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四従死地士 しじゅうしちし