三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが 作:ケツアゴ
ネット上の評価星2・3、口コミでは掃除が行き届いていないやら料金が部屋の広さや古さの割りに高いなどと散々で交通の便も悪い立地に建てられたその建物はラブホテル『ラブキング』。日本の城っぽいデザインにピンクの外壁とイライラしたネオンと少々近づきたい見た目で、そもそも高校生の俺が近づくの憚られる場所だ。
「ふふーん。デートすると言った後だし、遂にこの場所で余と一つになるのだな?」
「ならねぇ」
「なぬっ!? 拘束、いや、監禁プレイをしながら此処まで連れて来たのにか!?」
「そりゃ外に連れ出す時は鳥かごに入れるべきだろ、フクロウ」
俺が乗っているのは外からは中の様子が違って見える特別仕様、座る後部座席の横には中でクネクネ動いているドロシー。
この会話を聞かれてるってのに色ボケやがって恥ずかしい。人の姿になれるって知られているってのに少しは自重してくれと心の中で頼みはするけれど収まる気配が無い。
「すいません。この色ボケの発言は気にしないで下さい」
「ははは……。君も色々な意味で大変だね」
俺を此処まで連れて来たのは中年男性……決してホモじゃねえし、未成年に手を出す外道じゃねえからな? 彼は倉持さん、妖魔に対処する極秘組織・公安零課の職員だ。
ドロシーとのやり取りに苦笑いしつつ彼が地下駐車場に入って進めば壁が開いて秘密の通路が出現する。其処を少し進んで降りた先こそラブホに偽装したこの建物の真の姿が待っている。
カップルだのが利用する如何わしい目的の為の場所、日常を裏から守る前線基地。車を降り、扉を開けば其処には……。
「あははははははは! ボクチャン絶好調! もう馬鹿が出入りする心霊スポットを破壊する為にミサイルでも発射しちゃおうっかな! ヘイヘイヘーイ!」
「眠い……なのに目が冴えて仮眠も出来ない。そもそも仮眠する時間も無い」
「何奴も此奴も好き勝手に普通の事故を心霊現象だって騒ぎ立てやがって。妖魔が増えるだろうか妖魔が増えるだろうが妖魔が増えるだろうが……」
「課長、新人は、新人は何時来るんですか? 妖魔が見えて事務作業と体力を持ち合わせた子プリーズ! 一緒に地獄に落ちる同士は何時来るの……」
「ひゃっほー! 買い出し係だぁ! レジ待ち中に立ったまま眠れるぜい!」
扉の先には死屍累々の地獄が広がっていた。死んだ魚の目と過労に満ちた空気を身に纏う彼等こそこの地域を守る為の守護者。
全員妖魔を知覚可能な霊力を持っているだけでなく過酷な業務に耐えられる体力と優秀な知能や得意分野を持つプロフェッショナル集団。別の部署ならエース扱いされる人材の宝庫が公安零課なんだ。
「相変わらず酷いな、此処は……」
問題があるとすれば……致命的な人材不足だって事だな。
コバルトブルーの髪色をした動画配信者みたいな女の人が複数のパソコンを同時に操作しながら狂った様に笑い、他にもテンションがおかしくなった人や机に突っ伏した状態で呪詛を呟く人達。
目が血走り汗の臭いが充満する中、一番奥で書類の山を数十倍送りみたいな速度で終わらせている机から声が掛けられた。
「あっ、来てくれたんですね、大和!」
声の主は黒髪を括った二十歳程度……に見える実際はアラサーの女が元気そうに手を振ってる。尚、机の上の書類からして一番仕事量が多いだろうに声にも元気が籠っているし、目の下にも隈が無い。
この人は
「休日だからさっさと終わらせたかったしな。昨日の記録の報告もだけれど……ドロシー、頼む」
休日、そのキーワードを耳にした零課メンバーが一斉に反応する。どれだけ連勤してんだ? そういや姉さんが家に帰って来たのって何時だっけ……。
此処では禁句だったかと目を見開いた姉さんから目を逸らしドロシーの鳥かごを開けば飛び出したドロシーは俺の肩に停まって耳を軽く咥えて引っ張ってきた。
「余の力は人の為に使う物ではないのだがな。余の事を便利屋だとでも思っているのではないのか……?」
「へいへい。俺と契約してくれて感謝しているよ」
ブツブツと文句を言いつつも片翼を広げれば動きに合わせて金に輝く光の粒が部屋中へと広がっていくと零課メンバーの体に吸い込まれて行き、その顔から疲労が消えていった。
癒しの力、退魔士の術でも妖魔でも珍しい力だ。広範囲の人間の傷と疲労を回復するらしい。何処まで回復するのかはドロシーの全力を知らないので不明だ。
あっ、一瞬だけ絶望した顔をしたのが数人いる。気絶出来ないからな……。
「これでまだまだ元気に働ける! 働かないといけない……」
「助かったよ、畜生!」
大人って大変だな。俺は絶対に零課にだけは就職したくねえ。
「さーて、褒美は何を請求するか。前回は徹底的な毛繕いをさせたが、此度は人の姿で肩と足を揉ませるのも悪くないが……手の甲に口付けでもさせてやるか? うーむ、悩む」
「皆さん、一旦リフレッシュ休憩にして下さい。報告は私が受けておきますので」
姉さんの言葉に割れんばかりの大歓声が上がり、複数のパソコンで全て違うネトゲを始める人や引き出しに入れていた菓子類を貪る人、そんな同僚に少しドン引きしつつコーヒーをガブ飲みする人など行動は様々だが余程鬱憤が溜まってるんだろうな。
姉さんは俺の報告受けるって仕事だけれど良いんだろうか?
「いやいや、本当に大和には感謝しているんですよ? 夜中の仕事を高校生に任せるとか本来なら不味いもの。もう少し協力してくれる退魔士が増えれば良いんだけれど……」
マグカップを手にして申し訳無さそうにする姉さん。別に気にする必要なんてねえんだけれど、俺が言っても弟に気を使わせたって思うからな。
分かっちゃいたが職員だけじゃなく協力者も不足か。……それで大きな問題は起きていないから良いんだけれどよ、激務以外。
「この地域じゃ中位が台風やら災害の時期に年一で出る程度だからな。報酬だってそんなに出ないし、仕方ねえだろ」
零課の仕事は主に妖魔の発生と被害の調査に退魔士への連絡や現場への送迎、そして混乱防止の為の事後処理や情報操作。妖魔は人の負の念から誕生するし、心霊スポットとして有名になれば地縛霊みたいな妖魔が発生してしまう。今や情報社会、それの対策とかキリがなさそうだ。
尚、素質有りと判断されたら部署に関係無く零課へ転属になるらしい。姉さんもキャリア組として警察に入ったのに零課に配属されたし、一般人のスカウトもあるそうだ。
「取り敢えず着替え持って来たから前のを渡してくれよ。あっ、感謝しているなら頑張ってる弟の小遣いアップを……」
「それは駄目ですよ? 報酬はちゃんと口座に振り込んでいるから大丈夫。ドロシーへの対価に関しては出してあげますから」
この位と立てた五本指を笑顔のまま強制的に閉じさせられる。抵抗しても無駄、俺の指は姉さんの指に包まれて動けない、ピクリともだ。
「くそっ、ゴリラめ……」
「次帰ったら久し振りに稽古しましょうか! 互いに技が鈍ってないか確かめたいですし、全部の技を叩き込んじゃいますね」
おぅ……。
口は災いの元、笑顔のまま阿修羅を背負った姉さんの姿にその言葉を実感した俺だった……。
敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず
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五凶星 ごきょうせい
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悪六烈 おむれつ
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七福塵 しちふくじん
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四従死地士 しじゅうしちし