三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが 作:ケツアゴ
敵を倒してもお金もらえる訳じゃないんだから、そんな風に怠ける仲間を叱りながら生活費を稼ぐリーダーが実は大金持ちのお嬢様だった、なんて特撮があったがなんだっけか?
退魔士だって報酬を貰いつつ日夜妖魔と戦うが、存在を公表出来ない以上は社会的地位の為に立場が必要だ。代々続けている一族なら不動産収入や株式とかで懐が潤っているらしいけれど俺みたいな組織に属していないフリーは違う。
だから俺は普通に学校に通っている。将来どんな道に進むのかは未定だ。……取り敢えず大学は行きたいかもな。
「あーもー。相変わらず洗濯物グチャグチャにしやがって。スーツはクリーニングに出しておくとして、下着とか駄目になるぞ」
「ううっ、ごめんなさい。反省してます」
溜まった洗濯物がどうなっているのか察していた俺は部下の人達から見えない場所で姉さんに文句を言うが、本当に酷い。スーツも下着も一緒くたに袋に詰め込んでいる上にポケットには菓子の袋やレシートやティッシュが入ったままだから相変わらず仕事以外はだらしがない。
物によって別々に洗わなくちゃいけねえから服や下着を分別して複数の袋に詰めていく。ちゃんと自分で分別しろって袋は幾つも渡したってのに畳んだ状態で一番大きな袋の底に詰まっているんだから。
「はぁ……」
「はわっ!? これはお姉ちゃんとしての威厳がゼロを通り越してマイナスの領域になりそうな雰囲気!?」
「いや、溜め息付いたのは悪かったよ。それに零課の課長や武人としての姉さんは尊敬しているんだぜ?」
個性が強い部下を統率しながら妖魔の対策をこなすなんて同じ年齢だったとしても俺には無理だし、祖父さんから習った伏柄流だって俺と違って免許皆伝にまで到達してんだからさ。
そもそも霊力によって多少ながら強化した俺より素の身体能力で上ってどうなってんだ? 父さんは普通っつーか基本インテリだったってのに何処でゴリラの血が混じったのやら。
洗濯物の惨状やら弟からの小言でがちへこみする姿からは元キャリア組で文武両道の才女だってのが想像できねえ。
「課長としてや武人としては尊敬してくれているんですね。良かったぁ。……お姉ちゃんとしての尊敬はどうなってます?」
ちっ! あえて濁したってのに突っ込んで来やがった。無駄に勘が良いから困るよな。
「じゃあ、俺は帰るわ」
此処での目的は全部果たしたし、後は行きと同様に送ってもらうだけだ。わざわざ言わなかった事を口にする気は無いからと姉さんに背を向け、鳥かごを開いてドロシーに戻るように促す。
「あっ! そうだ、恋愛相談! 大和だって学校に気になる子の一人位居ますよね? 私が相談に乗ってあげましょう。それとも桂花ちゃんか佳奈ちゃんと関係進んでます?」
「なーんであの馬鹿二人の名前が出るんだよ。昔からお守りと尻拭いばっかで恋愛感情なんて欠片もねえし、好きな相手も今のところ居ねえよ」
「そうであろうな。うむ、うーむ。あの日、一緒に生涯を過ごして欲しいと余に願ったのだ。他の女に目移りはせぬだろう。……それは別としてあの二人は良い。将来的に余の愛妾として扱うべきだな!」
「おい、鳥頭。俺が願ったのは友達としてって意味でずっと仲良くしたいって言っただけだし、妄言はその辺にしておけ」
話題に出た二人を妄言の通りにする姿を想像してかドロシーは翼で口元を隠しつつ笑い声を漏らす。相変わらず見た目が良かったら男女関係無しの節操欠如かよ、色ボケやがって。
それと幼い頃にした契約の内容を捏造してるので訂正しておく。此処で肯定しちまったら上書きされるからな。油断も隙もねえ……。
「契約時に詳細に伝えなかった貴様が悪い。妖魔との契約は言葉巧みに誘導されぬ為の心掛けが必要だと覚えておくのだな」
「マジでずっと一緒に居て欲しいとか言わなくて良かったわ」
「なんと!? 余の美貌は鏡さえ嫉妬する程ぞ!? それに身長は小さいが胸は意外とあると知っておろうに! 好きだろう、巨乳!」
身内の前で性癖暴露してんじゃねえよ、ボケ! 付き合いの長い大切な友達だが、此奴のこれがマジで苦手だ……。
尚、ドロシーの声は恐らく向こう側の部屋の人達にも聞こえる大きさだった。
翌日、当然ながら学校がある日だ。朝の鍛錬の為に早起きして、その間に洗濯機を回しておいたので洗濯物を干した後で俺の部屋の窓を開ければドロシーが当然の様に潜り込んでいた。しかも全裸で。
なんでもマーキングの一種らしく、俺が寝ているベッドに自分の匂いを付けたいそうなんだが、フクロウ状態ももう一つの姿も鳥独特の臭さがあるから文句言うのを何度か繰り返したら完全に人間の姿で潜り込む様になった。
それで寒いのか毛布に包まってんだから普段通りに霊力で服を作れば良いだろうに馬鹿だ。
「おい、ドロシー。洗い物しとけとは言わねえが、せめて食い終わったら食器は水に浸けとけよ」
「うむ。了解した。……寒いから窓を閉めてくれ」
「そりゃ普段羽毛纏ってるんだから寒いだろ。馬鹿は風邪引かないっつっても無茶はすんなよ。ちゃんと汁物は温めて食うんだぞ。
それと窓の鍵は閉めといてくれ」
頭から爪先まで毛布に包まりながら億劫そうに手を振る姿に少し……いや、かなりの不安を覚えながらも俺は先に朝飯を食おうとしたんだが、朝のゆったりとした時間を邪魔するチャイムの音が響き、少し遅れて聞こえて来た声に頭を抱えたくなる。
「おーい! 大和さん、入っても良いかなー?」
「朝ごはん食べたいので入れてくれますかー?」
「頓珍漢コンビが来やがった……」
近所……と呼ぶには少し遠く、校区の端と端辺りに位置する場所に住む二人。世間一般的には一歳下の幼馴染と呼ぶ関係で、俺はそれに腐れ縁ってルビを付けたい相手。
「いやー、悪いね。原稿が大詰めでさ。お気に入りのパン屋で焼きたてのパンを買って煎れたてのコーヒーと一緒に食べないと僕は気合いが入らないんだ。ブラックで頼むよ」
「前回はギリギリだったけれど、今回は余裕があるわね。大和さん、私はミルクと砂糖多めでお願いします」
「俺の家は持ち込み可能な喫茶店じゃねーぞ、馬鹿。湯は沸かしてやってるんだから自分で用意しろ」
ウェーブの掛かった黒髪ロングの方が佳奈。それなりに売れているらしい高校生作家様って奴で、俺の部屋の本棚には一ページも読まれていない此奴の本が突っ込んでいる。
要らねえって言ってんのに毎回新刊を渡して来やがるアホだ。
もう片方の金髪ロン毛でアホ毛が特徴なのは桂花。学校の一部では百合疑惑がある位に佳奈と仲が良く、作品のファンだからって住み込みでサポートしているんだ。
本性隠してねえってのに学校では
そして昔からの付き合いで遠慮が無い二人は俺の家に居座る事が多い。入るなっつった部屋に入らないが、どうもインスピレーションに良いからって昔みたいに遊びに来るもんだから迷惑な話だ。
なので人気作家だろうがチヤホヤしねえ。後はお湯を入れたら良いだけの状態にして放置だ。うちに置きっぱなしにしているコーヒーカップも自分で出せば良いんだよ。
「毎回毎回急に家に来て好き勝手言いやがって。そんなんだから見た目が良かろうが中身ポンコツの頓珍漢コンビなんだよ」
俺はコーヒーは苦手なので牛乳をコップに注いで朝飯の用意をしつつ文句を口にするんだが、二人もこれには不服そうだ。
「本人を前に随分な物言いだね」
「……と言うか美少女だと認めているのならもう少し扱いが良くて良いのでは?」
……はあ? 本気で言ってるのかよ、このアホ共。
この二人は昔から抑えが効かないっつーか興味を持ったら行くなって言われている場所にだって突撃して行く。普通に危ない場所は勿論、オカルト好きのアホが行きたがる場所には妖魔が発生しやすい訳で、俺が初めて二人にあったのもそんな噂のある林に向かっていたのを目撃したからだ。
妖魔に操られた犬に追われていたのを両肩に担いで逃げて、そんな目に遭っても懲りずにいるアホを見捨てられずに今に至る……なのに美少女扱いしろって鼻で笑っちまう要求だ。
それに……。
「いや、テメーらを蝶よ花よと扱って欲しいのかよ? 俺にだぞ?」
途端、二人は一瞬だけ考え出す。自分達に紳士的な態度で歯の浮く台詞を向ける俺の姿でも想像したんだろう。
「……おぇ。想像したら吐き気がしました」
「この世に居てはいけない存在だよ。恐ろしいにも程がある」
桂花は顔色を悪くして手を口元に当て、佳奈の方は顔を青ざめて嫌悪と恐怖からか自分を抱き締める。
うん、俺も想像したら腹が立った。気色悪ぃな……。
「えっと、ごめんなさい」
「やっぱり大和さんは大和さんじゃないとね」
だろう? それはそうとしてテメーらは少し遠慮を覚えて態度を改めろよ? 少しで良いから、マジで。
敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず
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五凶星 ごきょうせい
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悪六烈 おむれつ
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七福塵 しちふくじん
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四従死地士 しじゅうしちし