三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが   作:ケツアゴ

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訪問客

「うちの部下に事前連絡任せたってのにしてなかったみたいで悪かったな。後でキッチリとボコっとくわ」

 

 胡散臭い、それが霧宗さんに抱いた初印象だ。ヘラヘラ笑うグラサンの年齢不詳の男で、十代にも見えるし若く見える三十代って言われたら納得してしまいそうなんだが、多分敵じゃねえな。

 

 大人しく風呂場に篭っていてくれているドロシーの方に一瞬視線を送ち、何もしないらしいのを確かめた俺は茶の用意をしたんだが、此処で問題発生だ。

 玉露はあるが茶請けの菓子が盗み食いされていた。絶対ドロシーの仕業だろ。

 

「ああ、別のがあったな」

 

 カステラの空き箱を潰してゴミ箱に放り込んだ俺は姉さんにも持って行こうって思いしまっておいた饅頭を取り出した。こし餡がぎっしりと詰まったフワフワの生地の絶品で、粒餡派じゃなければドロシーが盗み食いしてただろうな。

 

 客を待たせるのも悪いし、さっさと準備して話を聞くとするか。このタイミングって事は影女に関連してそうだが……。

 

 

 

 

「美味っ!? え!? マジかよ……」

 

 俺は甘味には五月蝿いとか言いながら饅頭を口にした瞬間、霧宗さんは動きを止めた。三秒ほど思考を停止させた後はワナワナと震えて残りを口に入れ、信じられなさそうな顔を空になった皿に乗せている。

 

「冷えてこれなら蒸かしたて熱々ならどれだけ美味いんだ……? マジ…かよ……。俺が知らない名店があったなんて」

 

「お気に召したなら結構…です。それで何の用で.…」

 

「この饅頭何処の店で買ったんだ? 俺、絶対贔屓にするわ」

 

「何しに来たんだよ……」

 

 年上かも知れないからって丁寧に接しようと思ったんだが、饅頭の美味さで要件を忘れるとか適当な扱いで良いよな!?

 この時点で俺からの評価はダダ下がり。常時コスプレの先輩やら少し貞操観念に問題がある小姫といい若い退魔士ってのは変なのしか居ないのかと思いつつ、期待している所に悪いが不都合な現実を教えてやった。

 

「饅頭は高校の先生の手作りだよ。実質一人暮らしの俺を心配して差し入れしてくれてるんだ」

 

「え? これが素人の手作りなのか? 何で高校教師なんかやってんだ。そして一人暮らしの男子高校生に差し入れする女教師か。……悪くないな」

 

「教師が癖なのかどうかは知らねえが男だぞ? 俺はお父さんだからなってのが口癖の中年だ」

 

「マジか!?」

 

 別に子持ちの中年男性だろうが未婚の婆さんだろうが作った物が美味いなら別に良いんじゃねえの? ショックを受ける事でも無いと思うんだがな。

 

 霧宗さんは頭を抱えて机に突っ伏してブツブツと呟いていて、正直言って帰って欲しい。寧ろ帰れ、今直ぐと追い出したい気分だったが、呟くのを止めて顔を上げたのを見た俺は息を呑んで姿勢を整える。

 追い出そうとか、そういった気持ちは一瞬で消え失せた。

 

 

「少年、お前が影女が変な球を使ったのを見た公園まで行って来たんだが、残滓を調べたら面倒な事が分かった」

 

 顔を上げた時、そこに居たのは全くの別人だ。饅頭の美味さに動揺を見せる変なのしか人ではなく歴戦の退魔士へと入れ替わり、空気は一瞬で重苦しい物へと変わる。

 

「太歳の肉……そんな風に呼ばれる呪物。それがお前が見た物の正体だよ」

 

「はあっ!? 太歳って、あの中国のっ!?」

 

 太歳……太歳星君の名前は三流の俺だって知らされている名前だ。その名を聞いたなら関わるなとさえ伝わっていて、不老不死の妙薬の伝承も混ざる事がある地中の肉塊。

 え? あれが……。

 

「パンダのボールみたいだったが?」

 

「文献の記録でも封印されてる実物もパンダのボールみたいなんだ。中国の関連だからかどうかは知らないけれど」

 

 これ以上は指摘しない方が良さそうな気がするな。じゃないと凶神関連だってのに気が抜ける。そんなのが何かの理由で関わって来たって事態なんだ。

 緊張で乾く喉に茶を流し込みながら理由を考えるも思い当たらない。

 

 偶然出くわしただけなのか、俺や小姫や土地に何かがあるのか。多分霧宗さんはそれを調べに来たんだろう。だとすると侮っちゃ駄目な相手か。

 

「まっ、何らかの働きや情報を君に期待している訳じゃないから安心しなよ。一応注意だけしておいてさ。危ない事をするのは大人の役目だぜ、見習い君」

 

「……はい」

 

「今回の事は気にしなくて良いぜ。珍しい事故に遭遇したみたいなもんだ」

 

 まあ、分かっていたが戦力外通告って事か。だが、同時に今の所俺に大きな危機が迫っている訳でもない。今回は運が悪かった……のか?

 

 真偽はどうであれ、俺程度の実力でどうにかなる問題でも無い。我を通したいのなら相応の実力を身に付けろって事だ。うん、惚れた相手も同じ地区で動くんだ。情けない所は見せたくないから頑張るしかねぇか。

 

 

 

「ああ、最後に一つ質問良いか?」

 

 ……未だ何かあったのか。それこそ俺じゃ前兆さえ気が付いてなかった様な……。

 

 

 

 

「皿に残ってる手を付けてない饅頭をもらって良いか?」

 

「……どうぞ」

 

 やっぱり変な人……なのか? どっちなんだろうか……。

 

 

 この後、霧宗さんは茶も二杯飲んで便所に行ってから帰ったんだが、正直言って伝言で良い内容をあんな人が伝えに来る辺り、本当に何かあるのかも知れないな……。こ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さてと、直接会ってどんな奴かは見たし、次は汚い大人の話し合いをしに行くか。……面倒だ。確か責任者は身内だろ? しかも……あの伏柄が今期の標的なんてな」

 

 

 

 

 霧宗さんの訪問の翌日、相変わらず纏わり付いて来る佳奈達二人と一緒に登校すれば校門の前に立つ教師の姿があった。

 

 

「ピアスは外しとけ。入れ物無いならプチプチ入れた小さい袋やるから。ほら、ゲーム機はちゃんとカバンの奥に入れて他の先生が来る場所では遊ぶなよ?」

 

 不定期で行う服装と持ち物チェックみたいだが、今日の担当は茂先生か。相変わらず甘いよな〜。

 

 家庭科担当・田中茂、坊主頭に人当たりの良い笑顔と態度で生徒から慕われている先生だ。口癖の俺は父親だからつい、って口癖だが、父親とはこうあるべしって強く思ってるのがあるのかもな。

 

「おっと、顔色が悪いぞ。体調が悪い時に勉強や部活しても身に入らないし帰って寝るか保健室で休んどけ。テスト前に風邪でもばら撒いたら相当恨まれるからな」

 

 そんな先生だが苗字で呼ばれるのは慣れてないから名前呼びが良いとか、気さくに話し掛けて欲しいとかで生徒に甘過ぎるって同僚の先生に注意される事もあるが口癖で誤魔化すんだ。

 

 

「相変わらず体調が悪い奴を見つけるのが早いよな、あの先生」

 

「確か娘さんが生まれ付き体が弱いとかだった筈だよ」

 

 確かにそういった話は聞いた事があるな。娘が照れて怒るからどんな子なのかは詳しく話さないが、時々出る言葉からも娘への愛を感じるし、一人暮らしになってる俺を気に掛けてくれているのも親として気になるんだろう。

 

 

「おっと、次はお前らか。相変わらず仲が良いし、結婚式には呼んでくれよ?」

 

「この頓珍漢コンビと誰が結婚するんだよ、冗談キツいぜ、先生」

 

「そうなる過程が一向に思い当たらない。ミステリーのネタとして使えそうだ」

 

「……うっぷ。失礼、想像したら吐き気が……」

 

「やっぱ仲良いなー。ほら、カバン開けて中身見せてくれ。さっさと終わらせて新聞のクロスワードの続きがしたい」

 

 いや、仕事をしろよって笑いながらの指摘が周囲から飛んで来る。俺達にもリア充爆発しろって言葉が飛ぶが、この二人の相手とか代われるなら代わってみろって。二日目にはクーリングオフ利用したくなるから。

 

「じゃあ、俺はこっちだから。今日の昼飯はダチと食うからお前ら二人で食っとけよ」

 

 さてと、今日は平和な一日だったら良いんだが……何て思いは直ぐに打ち砕かれた。

 

 

「あっ! そうそう、例の掛け軸なんだけれど手に入りそうなんだ」

 

「は?」

 

 偽物なら良いが実際に呪具なら洒落にならねぇ。せめて手に入れる時に同行するか、姉さんに連絡をして邪魔をする。

 

 そう考えた時に俺の首筋にチクリとした痛みが走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔しちゃ駄目よ、お兄ちゃん」

 

 あれ? 意識…が……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




新しい募集(少し面倒)を始めてます


幹部 全うな武芸系の幹部を考えてるがしっくり来ない 伝承の姿と過去は考えたがキャラがイマイチ

敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず

  • 五凶星 ごきょうせい
  • 悪六烈 おむれつ
  • 七福塵 しちふくじん
  • 四従死地士 しじゅうしちし
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