三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが   作:ケツアゴ

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違和感

 目の前に迫るのは正しく“壁”と言い表すに相応しかった。僅かな揺らぎによって存在を証明されたそれの正体は空気の砲弾。道場にて対面する姉さんが放った貫気だ。

 

 相変わらず無茶苦茶な人だよ。十年で此処までの差が……いや、十年前の姉さんの方が今の俺より強いか。

 

 本来なら指で空気を弾き飛ばす技だが、姉さんは拳打によって、それも点ではなく面になる様に一撃一撃の速度を調整して放つ荒技にして超人技だ。俺なんて霊力で強化しても無理なのに姉さんは強化無しでこれだからな……。

 

「ちっ!」

 

 俺が選んだ対抗策は正面突破。防御しようが点によって作られた面を防ぎ切るのは不可能だ。だから正面突破。身体を少し斜めにずらして被弾面積を減らし、空気の砲弾へ拳を振るいながら前進する。

 

 着弾した箇所を鋼鉄製の巨大なハンマーで殴り付けられた様な衝撃が襲うが俺は止まらない。後ろに下がりそうになるのをグッと堪え、無理矢理にでも突破する。

 

 姉さんの一撃の威力は俺の比じゃねえ。俺よりも数段上の威力を繰り出すって事はそれだけ丈夫な体の持ち主って事だ。俺が遠距離から狙おうが牽制にもならないのなら近付いてぶっ叩く!

 

「うんうん。前に稽古をした時よりも突破が速くなってますね。成長してますよ、大和」

 

「姉さんもそれは同じだろ? ぶっちゃけ完全武装したアーミーなゴリラと小型犬の子犬位の差、がっ!?」

 

 腹部を貫く衝撃、蹴られたって理解したのは後ろまで吹っ飛ばされて床に転がった後だった。あー、相変わらず一撃も入れさせてくれねえな、畜生。

 

 姉さんに天武の才能があるのは分かってるから守るべき対象かって問われても首を捻るが、それはそうと負けっぱ

なしは普通に悔しい。守る必要が無くても守れる位には強くなりたいと考えて……其処に容赦無しの貫気が叩き込まれた。

 

「油断しましたね。最近何処か上の空だったので気合注入です」

 

 これは一応非道な行為ではない。降参か気絶が組手稽古終了だっていう門下生が居なくなるのも納得のルールが伏柄流にはあるからだ。

 それでも手心は欲しい。

 

 気合いを入れられるってかより棺桶に蹴り入れられる気分なんだが? そんなんだから彼氏居ない歴イコール年齢どころか親しい異性が血縁者だけ……あっ。

 

 どの辺からか分からないが口にしていたらしく、また空気の砲弾が倒れ伏す俺に向かって叩き込まれる。床も壁もボロボロで穴空いてるし、姉さんって幾ら何でも強すぎないか? 

 

「マジでゴリラ……やべっ」

 

 結論 姉さんの強さの理由は不明だけれど口は災いの元だ。

 

 

 

「ぷっは~! 稽古の後はやっぱりお風呂! そして風呂上がりにはやっぱりビールですね! 大和、ツマミお願いします!」

 

「あんまり飲みすぎんなよ? 酔っぱらいの相手が面倒なんだから」

 

 稽古が終われば当然汗を流す。姉さんが休日で帰って来るのを聞かされた俺は風呂の準備は済ませていて、一番風呂は姉さんに譲った。

 風呂上がりにはビールってのはお決まりだったからツマミを作って持って来てみれば、バスタオルを巻いただけの状態で帰りに買ったビールの空き缶が散乱している。

 

 これ、俺が片付けるんだよな? 姉さんの掃除技術には期待不可能だし。

 

 ウインナーを軽く焼いた物とか炙ったチーズとか適当に盛った皿をテーブルに置くとコンビニの袋に空き缶を入れていく。

 一気に中身を飲み干した後で片手でクシャッと握り潰してペチャンコだ。

 

「え~? 良いじゃないですか。支部長なんて中間管理職だし、先日の件で理事管から報告書をせっつかれてるんですよ。それよりドロシー! 一緒に飲みましょうよ~!」

 

「彼奴、姉さんが苦手だから出てこないぜ? 俺との契約の影響で姉さんでも殴れるんだから」

 

 ゲラゲラ笑いながらビールをグビグビ飲んでツマミをパクパク食べていて、これがこの地方一体の妖魔案件を取り仕切る責任者の姿なのかって。

 

 それだけ激務って事なんだろうが……。

 

「……そういえば此処数日は佳奈ちゃん達と行動してないみたいですね。コンビニでビール買ってる時に聞きましたよ? 競りに誘ったのに断られたって」

 

「何時も何処でも一緒って訳じゃ無いからな。……うん?」

 

「どうかしましたか? あっ、それよりも棚に日本酒が入ってるから持って来て下さいね~」

 

「まーだ飲む気かよ」

 

 何かがおかしいと感じるんだが具体的は分からない。あの二人に同行しなくちゃいけなかった気がするんだが、何故なのかも思い出せないし、大した事じゃない気も……。

 

 今は姉さんの世話の方が大事だし。……酔っぱらうけれど酔い潰れはしないのが面倒なんだよな。

 心に少し引っ掛かる物を感じるが、今は心身ともに疲弊した姉さんの世話を優先だ。

 

「ピザ注文しましょうよ、ピザ! ビールの追加もお願いしまーす!」

 

 

 ……明日は蜆汁でも作るか

 

 

 にしても重要じゃないってのに気になるのは何でだ? 掛け軸がどうとか言っていた辺りから記憶がすっぽ抜けてる気がするんだが……。

 

 気にはなるが、直ぐに耳元で囁かれる様にどうでも良いかと切り捨てる。脱ぎ散らかされたり持ち帰った服や下着を洗濯したり、また暫く帰って来ないだろうから数日分の着替えを用意したりとやる事が多い。リビングも掃除が大変そうだしな……。

 

 

「日本酒まだですか~?」

 

「ありゃ仕事関係無しに彼氏は作れそうにねぇな……」

 

 聞かれたら組み技食らいそうな事を思わず呟きながら棚の中の日本酒を探す。半分以上飲まれてるがドロシーの仕業だな、こりゃ。

 

 

 翌日の朝、姉さんは何事も無かったみたいに仕事へと向かって行って、少しの寂しさと同時に安堵が俺の心を満たす。

 昼前から深夜までずーっと飲み続けてたからな、あの笊ゴリラ。マジで五月蝿かったし、リビングも寝る前に片付けたのに起きたら元通りだ。

 

「……は? いや、俺は何で……」

 

 安堵のため息を吐き出しながら首もとを掻いていると指先に傷跡に触れた様な感触を覚え、急に頭がスッキリとした。何かあったらいけないから危なさそうな時には同行してやっていたのに、それが此処数日になって一体どうした?

 

 まるで他人の行いを見ていたみたいな気持ちの中、携帯に桂花からのメールが届く。

 

「至急問いたい事があるから家に来てくれ、か。俺なら自分が来いとか電話で済ませろとか言うのが分かってるだろうに呼び出すって事は……マジの緊急事態か」

 

 よりによって相手をしなかった此処数日で何かが起きた。いや、相手をしなかったからこそ、なのか?

 

 自問自答する事数秒、直ぐに思考を切り替える。未だ登校には随分と余裕がある時間帯だ。さっさと急用とやらが何か確かめて、危ない事でもしてたならチョップの一発でも入れてやらなきゃな。

 

「ったく、あの頓珍漢コンビがよ。俺を頼りにするってんならちゃんと頼れる時に動けってんだ」

 

 あの二人に巻き込まれるのは小さい頃からだったんだぜ? 何か危ないかもと思ったら俺と動けば良いものを、何を慌てて行動したのやら。あの二人にも俺にも随分と呆れちまうよ、まったく。

 

 

 

 

 

 商店街を通り抜け、学校の裏手を通れば民家が疎らな通りへと辿り着く。最後に狭い路地裏を通り抜ければ見えて来るのが佳奈と桂花が住む屋敷。柵に囲まれて表の門を通らないと敷地に入れないが、中に入るのは更に面倒だ。

 

 まあ、中身は兎も角として容姿は優れる年頃の女、それも片方は実家が太い現役高校生ベストセラー作家となれば二人だけで暮らすには些か心許ない立地だが、ちゃんと防犯は考えられている。

 

 門の両側に設置されたガーゴイル像の目はカメラになっていて不審者を記録、更に表札に隠された機械にカードキーを翳すか中から操作しないと門は開かない。

 

 勿論俺は持っている。佳奈の親から何かあったらお願いしますって感じで渡されたもんだが、それならもう少し娘の首根っこを掴んでいて欲しいがな。

 呪いもあるから無理だろうけれど。

 

 

「おーい。来てやったから感謝しろよ」

 

 インターホンで到着を告げると門を開けて中へと入る。扉をノックする前に開き、桂花が出迎えたんだが、調子が悪いのか?

 

 危険な場所に行くからと足を挫いた時に備えて廊下と階段に設置した手摺りに掴まり、少しばかり息が荒いし顔には汗が滲んでいる。体調が悪いんなら病院に行けば良いのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大和さん、急な呼び出しに応えてくれて有難う御座います。早速ですが……服を全部脱いで下さい

 

「なんで?」

 

 




うーん 幹部がしっくり来ない 投稿入れて三キャラ埋まったけれど有力な五体で二体たりない

応援待ってます

アンケートは二話後か十五人に達したら 今のペースなら前者

敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず

  • 五凶星 ごきょうせい
  • 悪六烈 おむれつ
  • 七福塵 しちふくじん
  • 四従死地士 しじゅうしちし
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