三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが 作:ケツアゴ
「調子が悪いなら寝とけ。普段以上に頭がパーになってるぞ」
何言ってんだって頼みを素直に聞いてやる必要は無い。朝から呼び出したかと思ったら服を脱げとか何言ってんだ? 此奴。
どうせ締め切りがヤバくて二人揃って連徹、アイデア欲しさに俺に変な衣装でも着せようってんだろう。二人なら有り得るっつーか前にあった。家に到着するなり脱げってのは初めてだがな。
顔色も悪いし頭が相当に追いやられているんだろうが、だからって脱いでやる必要なんてねぇしお粥でも作ってやって寝かせておくかと勝手知ったる他人の家って奴だ。
台所の位置も米や鍋の置き場所も分かっているから、さっさと作ってさっさと登校すべく靴を脱いで上がったが、不意に袖を掴まれる。調子が悪いらしいし転んだら危ないので動きを止めれば少しばかり様子がおかしいな?
「分かりやすく説明するからちょっと座って下さい、大和さん」
「座るって床にか? 別に良いけれど……」
「じゃないと身長差で……見せられないので」
言われるがままに床に座って桂花と向かい合えば急にスカートを摘んでたくし上げた。眼前に広がるのはピンクの布地に白い太股、そんな物はどうでも良い。
「おい、一体何があった……?」
その太股に巻き付く様に浮かび上がった蛇柄の黒い痣。膝上から太股の付け根辺りまで続く痣は本当の蛇が締め上げる様に僅かだが内側に向かって力が込められ、僅かだが霊力も感じる。
指先で触れれば本来の吸い付く様な肌触りとは別物で蛇の革製品に似ていて、保温動物の人間とは違い変温動物である爬虫類の冷たい皮膚と同じ。
こんな物に比べれば元からどうでも良い下着や太股なんて意識の範囲外になって当然だ。
そして何があった? ……馬鹿かっ! 何かが無い様に一緒に行動してたんだろうが!
偶々一緒に居ない時に当たりを引き当ててしまっただけ、なんて言い訳はしない。俺は二人がどんな奴かも呪いでオカルト関連への好奇心が抑えられないのも知っていた。
全部俺のせいとは思わないが、それでも俺が一緒に行動すれば防げた筈とは思う。一から十まで面倒見るにしちゃガキの頃からの腐れ縁程度の浅い関係だがよ。
「おっと、黙って触って悪かったな」
「……あれですね。変に発情されるとキモいですが、素直に心配だけされるのも腹が立ちます。ですが……」
此処で言葉を区切って桂花は溜め息を吐き出す。疲れや呆れからじゃなく、胸に手を当てての安堵の溜め息だ。
「様子を見る限り大和さんにはこの痣が出ていないみたいで安心しました。同行してもらった何処かで一緒に呪われましたってなった場合、可愛いから許してなんて冗談では済みませんからね」
いや、連れ回して掛けられる迷惑もお前らが美少女ってだけで済まないからな? お礼だか詫びにデートとか言ってたが負債を負債で補われても困る。俺からの借金を俺に更に借りた金で返すのと同じだから。
呼び出した理由は俺を心配してって事で少しは安心したが、痣自体は安心出来る物じゃねえな。立ち上がって手刀を額に寸止めした。
「俺が言うなって思うだろうが下着は隠しとけ。恥じらいはねぇのか、恥じらいは」
今更だが太股触るのは不味いか? コレが相手でも。
「躊躇無く触って下心が無いのに何を言ってるのやら、とか思いましたがご忠告は受け取ります。ですが既に大和さんは異性ではなく大和さんにはという認識ですので」
其方も似た様な物では? と呆れ顔で溜息吐き出しちゃいるが、これって本当に注意した俺が間違ってるか? 少なくとも女じゃなくアホ二人って認識していても最低限の線引きはしてんだぜ、俺。
色々言いたい事は多いが今は佳奈の方だ。ぶっちゃけ桂花と比べても行動力のあるモヤシだし、こっちが此処までなら相当参っていそうだと心配すれば何も言わずとも桂花が俺の背中によじ登り始めた。
あー、はいはい。フィールドワークで疲れた時と同様に病人? を家の中で運べって事だな、面倒臭っ!
仕方が無いので背負ってやったが掴まる力は頼りない。体重の方は……ちょい前に心霊スポットで野犬に取り憑いた妖魔から逃げる時にも担いだが、その時よりも少し増えたな。
落ちない様に支えてやるが、そうする事で更に体重の増加が分かる。ドロシーの奴は妖魔だからかバカ喰いしても体型が変わらないってのに人間ってのは不便なもんだよ。
大体だが一キロ……いや、一・五キロは増えたな。主に足に脂肪が入ってる。
「締め切りだの調査だので二人して不規則な生活送ってんだろ。夜食とか気を付けろよ」
「其方こそ発言に気を付けるべきですが?」
掴まる為に首に回した腕に力が込められるが普段よりは弱々しい。ああ、本当に俺は何を呑気に放置してたんだ?
揺らさないかつ少し足を早めて桂花の寝室を目指す。先ずは寝かせてから佳奈の方の様子も見て、それから……。
「ん……」
気が付けば背中で桂花が寝息を立て出した。少しばかり苦しそうだが、とっとと寝てなかったのは俺の安否を確かめる為だろうな。やるべき事は分かってる。
どうにか出来そうな専門家に連絡して呪いをどうにかしてもらう事だ。この呪いが本当に掛け軸による物なのかは不明だが関係ねぇ。
「待ってろ。落とし前は付けさせて……絶対に助けてやるからな」
それはそうとして今回の事で懲りて大人しく……はならねえか。
「おや? 随分と雰囲気が怖いじゃないか。もしかして僕達に怒ってるかい?」
「遂にやらかしたかって呆れてはいるが怒ってはねえよ。つーか寝てろ」
汗を拭くのに脱ぎやすいからと浴衣姿の佳奈はベッドの上で上半身を起こして俺を出迎えた。やつれ具合は桂花以上。誘いを断った数日前までは健康的だったのにだ。
……退魔士だったら自分から関わって呪われた奴を自業自得だって思うのが普通なんだろう。山を舐めて軽装で登山した遭難者みたいにな。
だが、俺は此奴等とは知り合いだからな。馬鹿をやった結果だとは思うが心配とかの気持ちが強い。
「その様子だと大和さんを巻き込んではないみたいで安心したよ。ほら、こんな感じになってさ」
徐ろに背中を向けた佳奈は躊躇無く袖から腕を抜いて背中を晒す。白い肌の小さな背中、その表面に腰の下から這い出る様に蛇の姿をした痣が浮かび上がっている。
桂花よりも色濃く今にも動き出しそうなそれに視線を奪われる中、肩が小刻みに揺れていた。
おい、まさか震えてんのか? あの佳奈が……。
「……く、くく、くくくくく! 遂に! 遂に本物に巡り合った! 今までの全ては無駄じゃなかったんだ!」
「いや、二人揃って呪われてるんだから無駄の方が良いだろうが。それと立ち上がるな、恥じらいを知れ」
笑いを堪えて震えてたよ、この馬鹿。上半身をはだけた状態で立ち上がったもんだから布が全部垂れ下がって背中が全部見えてるし、羞恥心とかねえのかよ。
「恥じらいって言われても大和さんとは三人で海にも行った仲だし、背中程度見られても平気だけれど?」
「ナンパ避けと荷物持ちでお前の家の別荘に連れて行かれたんだっけな。ナンパ男の前でわざとらしく引っ付くとかオイル塗らされるとか散々な思い出だったぜ。……ったく、少しは悔めよ。桂花と一緒に呪われてるんだろうが」
「え? だって大和さんを巻き込んだら後悔するけれど、桂花も僕もオカルトに関わって本物を追求する以上は覚悟…を……」
頭だけ少しこっちに向けた所で佳奈の足元がフラつく。背中からベッド下に落ちそうになった所を慌てて受け止めれば意識が無い。静かに寝息を立てているから少しは安心だが……。
「馬鹿が。ちゃんとテメェの安全も考えないから俺とか周りが心配するんだよ」
はだけた浴衣をサッと直してベッドに寝かせた後、寝室を出た俺はスマホを取り出した。
「朝からすいません、ルサ先輩。ちょっと相談したい事があってお会い出来ますか?」
激おこ
敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず
-
五凶星 ごきょうせい
-
悪六烈 おむれつ
-
七福塵 しちふくじん
-
四従死地士 しじゅうしちし