三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが 作:ケツアゴ
これは妖精使いの集落が秘境…ど田舎……人里離れた自然豊かな山頂付近に隠されているのもあり、自然界の気が寄り集まって生まれる妖精の力を引き出すに適した時間帯でも有るが故にだ。
当然、街中で暮らしているルサルカであってもそれは同じ事。厳格な先人達と共同生活を行う故郷とは違い目覚まし時計が必要になっていた。無論、彼女が口煩い者が居なければ怠惰に振る舞う性格な訳ではない。
勤勉で規律を守る事は彼女にとって当然なのだが、記述した通りの立地で暮らしている妖精使いは清貧的な暮らしを送っている。但し過度な贅沢は別として寝具や飲食物に贅を凝らす事を禁じている訳ではなく、ただ立地の問題で物資が手に入り辛いのだ。
ルサルカが故郷を旅立ち修行の日々を送る中、最も驚いたのは格安ビジホの調度品と無料の朝食バイキング。木の台に薄い布団の様な物を敷いただけの粗末なベッドで寝ていた彼女にとって安いベッドであっても雲の上で寝転がった気分であり、好きな物を好きなだけ食べて良いと聞いて耳を疑った物だ。
その様な旅の中で動画投稿に興味を持ち、拙い技術で妖精使いとして人助けを行う動画を投稿していたのが数年前。その後、零課に見付けられ繁忙期に仕事を増やしたとブチ切れられた結果、人助けをする動画用のチャンネルが【ルサルカの逆ナンチャンネル】に動画の中身も含めて改変された末に協力者になったのだが、拠点となる部屋を手に入れてベッドも用意され、……それが今に繋がっている。
何と言うべきか、ベッドで怠惰に過ごす事への誘惑を知ってしまった。ご飯も美味しいのでお腹周りと尻も僅かながら成長して胸は何故か変わらなかった。
この様に故郷を出て遠い異国の地で多くに出会ったルサルカだったが、一番の出会いはドイツの軍服だと語る。彼女の琴線に触れた結果、衣装ダンスの九割はネットで買い求めたコスプレ衣装である。
「……起きなきゃ」
目覚まし時計を二度程止めている三回目を得ようとスムーズのスイッチに伸ばすも理性が勝ったのか、それとも今から起こる事を感じ取ったからだろうか。
さて、改めて振り返るが妖精とは自然界の気から生まれた存在であり、妖魔と違って自我が希薄な事もあって悪意や叱責等の理由で人に手出しはしない。時偶住処を荒らす存在が現れた場合に警告を行うも相手がそれを認識出来る出来ないに関わらず反撃に出る場合はあるが、反射行動に近い。攻撃と捕食と違うもののハエトリ草が虫を挟んで捕まえるのに近いだろう。
故にルサルカの頭に冷水が降り注いだのも今起きるのが彼女にとって必要でありその方法が最適だと認識しているからの行動だ。バケツ一杯程の水を頭から被り髪の毛は滴を滴らせながら肌に張り付く。
目は覚めた、目覚まし時計は内部に水が入り込んだ。
動きが止まるも目は覚めたのを理解しているのか追撃は無く、今度は温風を吹き掛けて彼女を乾燥させながらベッドを傾ければ流石に滑り落ちる無様な姿を見せる事なく起き上がったルサルカは何か言いたい気分だが妖精達は嬉しそうに点滅しながら周囲を舞うばかり。
目は覚めた? とか 今日も頑張ろう等が薄い自我ながら発せられていて文句を言う気など起きなかった。
仕方が無いので目覚まし時計を止め続けた自分が悪いと言い聞かせて窓を開けるとその場に座り込む。瞳を閉じて呼吸は浅く短く、動き回っていた妖精達も動きを止める。
夜と朝、静と動が入り変わる時間、自然界の気の質と流れが変わるその時に瞑想を始めて気を感じとる。朝日が昇るまでの一時間余り、ルサルカは微動だにせず瞑想を続け、東から迫る日光が窓から差し込み指先に触れる直前に目を開けば顔も体も滲み出した汗でびっしょりだ。
再び妖精達が冷水を作り出そうとするも今度は手で制され、ルサルカは浴室へと向かった。
風呂トイレ別でオートロック式、公安零課より家賃補助が多少あっても少女の一人暮らしには少しばかり家賃が厳しい部屋だ。
足を伸ばせる猫足のバスタブを使っての泡風呂。泡を手で掬って息を吹きかけて飛ばせば空中で妖精達が体当たりをして壊す。
それが楽しいのかかは分からないが追加をねだる様に飛び回る妖精の姿を眺めながら耳を澄ませば聞こえてくるのはスマホから流れる音楽だ。
サブスクや購入のお金は心許ないので動画投稿サイトから一応公式配信の曲だけを選んだお気に入りリストを再生する中、着信を知らせるラブソングが響いた。
「や、大和君!?」
このマンションに入居前、もっと安いボロマンション(トイレ共同・風呂無し)に住んでいた頃からの付き合いであり、ここに越す切っ掛けとなったストーカーと妖魔が合わさった事件で助けられてから淡い恋心を抱いた相手からの連絡に慌てて立ち上がってスマホを手に取るも泡で滑って浴槽の中に落下する。
一応防水だから大丈夫なのだろうが、泡まみれの中で探すのは至難の技だ。だから妖精達が動いた。浴槽の泡が全て弾け飛ぶように浴室全体に飛び散ってルサルカも浴室内も泡まみれ。スマホは見付かったが天井にまで泡が届いているので後始末が大変だと気が付くのは十分以上後、今は出るのが優先だ。
「待たしちゃって怒ってないかな? そもそも恥ずかしくって記憶を消したのがバレたら文句くらいは言われそうですし……」
少し悩むものの待たせてはならないと少し手間取りながら応答を選び覗き込む様に画面に顔を近付ければ大和の顔が映し出された。悲鳴が飛び出しそうになるのは堪えるも思わず腕を伸ばして遠ざけてしまう。
まさかビデオ通話だったとは思わぬ不意打ちにルサルカの思考は真っ白になってしまった。
何せこの少女、恥ずかしくて写メで顔を撮る事すら出来ず、霊力譲渡の契約にかっこ付けてキスを申し出る途中で恥ずかしくなり記憶消去の荒技に出てしまう程。
「朝からすいません。ルサ先輩。直ぐにでも対処すべきなのかは分かりませんが見てもらいたい物が……すいません、マジですいません」
画面の中で大和がスマホを動かして画面を床に向けるのが見え、顔も見たくないのかと一瞬だけ思い悩み、其処で気が付いてしまうので今、ビデオ通話になっている上に咄嗟に遠ざけたせいで今の姿が丸見えになっている。
一応弁護としては大和は呪いの症状を直ぐにでも見て欲しいと思っただけであり、普段なら先に連絡していた。そもそもルサルカがこの時間帯に入浴している等と知る由も無いのだから。
故に通話に出て早々に裸……一応泡だらけになっているので大切な部分は隠れていたし、それに気が付いて速攻で画面を床に向けた。
「あわ、あわわわわわわわわわわっ!?」
それでもルサルカはパニックを起こしたし、冷静にさせる為に頭から冷水が被せられた。心臓が発作を起こしても妖精は蘇生が可能なので大丈夫だ,問題は其れ程無い……多分、きっと、恐らく、人によっては。
「……いや、本当にすいません」
「ジコナノデ、ダイジョウブデス。キオク、ケセマスノデ」
三十分後、動画で二人と室内の様子を確認したルサルカは零課の車によって佳奈達が住む屋敷にまでやって来て、顔を合わせて改めて気まずかった。何せキスの申し込みで記憶を消すのだ、それが泡まみれとはいえ全裸を見られたのだから尚更である。
「おや? 一体どうしたんだい?」
そんな二人の背後から掛けられる声に同時に意識を向ける,その時だった。
「かえるカエルよ、入れ替える。我らの巣穴にご招待」
不意に視界が切り替わり、大和達は異界へと移動させられていた
敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず
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五凶星 ごきょうせい
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悪六烈 おむれつ
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七福塵 しちふくじん
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四従死地士 しじゅうしちし