三流退魔士の俺が名門退魔士一族の落ちこぼれお嬢様に『君が欲しい』と言われたんだが   作:ケツアゴ

98 / 110
互いに相手を分かっている関係ってのはたまに厄介になる

「……むぅ。心踊る誘いではあるのだが、余とお主の初めては二人っきりが良いな。だが多くの美少女を可愛がってやるのも悪くない」 

 

「いや、一応遊園地に誘っただけだろ。つーか来るのか?」

 

 美神から貰ったプレオープンの招待券は残り一枚。アホ二人と数人の友人を誘って残ったんだから一応声を掛けてみたんだが、まさか本当に来るとは意外だった。

 

 いや、だって観覧車よりも高くジェットコースターよりも速く飛べるのに遊園地って楽しくなさそうってガキの頃に言ってたし、だから遊びに誘う時は映画とかショッピングにしてたのに。

 

 ……毎回毎回出費が凄いから俺の報酬から手渡してくれる額を姉さんに増額交渉したんだよな。あわよくば小遣いに使える分が増えると思ったんだが……。

 

 

『じゃあレシートを渡して下さいね。その分を引き出しますから』

 

 お金については厳しいからな、あの人。

 

 そんな事を思い出してる間にドロシーは両頬を膨らましていた。やべっ! 絶対面倒な事になった! 

 

 誤魔化そうと笑いながら指で突くが1ミリも進まない。まるで鋼鉄のような硬さで、そのまま軽く払いのけられた。

 

「まるで余が来ては不満とでも言いたげだな? 不敬であるぞ」

 

「悪かったって。ダメ元で誘ったから驚いただけだ」

 

 いや、喜んでくれるならそれはそれで良いんだよ。その反応はちょっとどうなんだってのは今更だし。……今更って思うくらいにこの反応を見てるんだよなぁ。

 

 

 最近自分を蔑ろにしているだの、都合の良い時だけ利用しているなど文句をぶつけながら駄々を捏ねていたから渡したってのもあるが……床に寝転がって手足をバタバタ動かす迄に不満が貯まってたのは……うん。

 

 頬に手を当てて妄想にふける姿に少々不満を覚えつつ、喜んでくれているのは嬉しいもんだ。付き合いの長い友達だし、マジで世話になっているからな。

 

「……本当にお前には世話になってるよ。ありがとうな」

 

「なぬ? 急にどうしたのだ? まさか……告白か! このまま壁の手を当てて尻をつき出せという事なのだな。それで下着は余が脱ぐか? それとも……脱がせるか?」

 

「いや、普段はノーブラノーパンが何言ってんだ。張り付く感じが嫌とか言ってるじゃねーか」

 

 分かってないと思うから言っておこう。プレイの一環じゃなくて出掛ける際はちゃんと服だけじゃなく下着も身に付けろ、と。

 

 俺の誘いに相変わらずの勘違いをしたドロシーが嬉しそうなのは別に良いんだが内容が内容だ。もう慣れたので扱いは雑で良いんだが、慣れてない頃は大変だったよ。

 分かってて密着するし、背後から頭に乳乗せるとか。

 

 そう、ドロシーの下ネタに慣れてる俺は受け流せるんだが、他の奴は違う。

 

 

 服とか何それ美味しいの? がデフォな奴に普段のお礼も兼ねて誘った遊び先で要求するのも悪いが、それ以上に下着レスな奴を友人達とのレジャーに連れて行ったら俺への心象が悪い。

 

 ただでさえ同性の友人より異性の友人や腐れ縁との付き合いが多いから一部で悪評が立ってるんだ、勘弁して欲しいからと頼み込めばドロシーは渋々と受け入れてくれた。

 やっぱり持つべきは長く付き合える友達だよな。その友人への普段の礼と言いつつ下心も混じってるんだが。

 

 

 

「それで相談なんだが……」

 

「断る。前にも言ったが余からすれば貴様の友人は戯れに愛でる以上の対象にはなり得ぬ者達だ。死んで悲しむなら余が慰め心の穴を埋めるだけ」

 

 どうも狙われているみたいだから何かあった時は皆を守るのに力を貸して欲しいと頼む気だったが、その内容を一文字すら口にさせては貰えない。

 

 まるで欲しい物を買ってくれと駄々を捏ねる子供を軽く諌める程度の態度で却下されれば俺からは何も言えないか。書類上の関係は俺が主人だが実際の実力差は向こうが圧倒的格上で、関係は友達だ。時々番いになれとは言われるが、どっちにしろ嫌な事を強制は無理だ。

 

 そんな事をしてたら俺達の関係はとっくの昔に破綻しちまっているだろうさ。

 

「よし。なら……」

 

「自分が皆を巻き込まないように頑張るから、その自分を守って欲しいか? 屁理屈にも聞こえるが今回は了承しよう」

 

 そして破綻せずに続いたから話が早い。俺が何を言うのか分かっているらしくわざとらしい腕を組みながらのクソでかい溜め息だが、これで安心だ。

 

 ……狙われてるなら身を隠せ、誰とも関わるな。巻き込みそうと分かっていて人に近寄るな。フィクションの登場人物が同じ事をしていたらそんな感想を持つ奴も居るんだろうが、実際に我が身に降りかかると途端に無理になるもんだ。

 

 日常は捨てたくないなんて勝手な話だと恨まれる事になりかねないのにな。

 

 俺一人じゃ我が儘を貫く力なんて持ち合わせていないし、ドロシーと出会えていなかったら選択肢は無くて世捨て人か期間不明で身を隠すしかなかった、それは先日の戦いで理解している。

 

「本当に……」

 

「余と出会えて良かったであろう? ふふふ、あの時に子分になれとでも言ったなら契約の隙をついて殺していたが、本当に良い答えを選んだ。誉めて遣わす」

 

 感謝を伝えたいってのに今度も読まれて得意気に鼻息強く得意気だ。マジで出会った頃のまんまだよ。こうやって軽く話すだけで昔の思い出が甦って来る。

 

「いや、感謝の言葉くらいはちゃんと言わせろよ、効率厨かよ」

 

「本当に効率を追い求めるのなら一服盛って押し倒しているが?」

 

「怖いから止めて? お前ならその内に本当にやりかねないって負の信頼があるからな?」

 

 マジでヤる可能性があるから怖いんだよ、ドロシーは。

 

 え? それはそうと遊園地での護衛代の先払い? 一切合切コースと本当に危ない時のスポットお助けコース?

 

 

 報酬に何を要求されるのか怖いものがある。特に一切合切コース。どう守るかさえドロシーの価値基準任せだし、下手すりゃ外は危ないからって監禁エンドになりかねねぇし……スポットお助けコース?

 

 それを伝えるとドロシーは少しばかり不満そうに唇を突き出して軽くこっちを睨んでいるんだが一切合切コースを選んでいたらどうなっていたのやら。

 

 やっぱり異界に監禁? 守ってくれと言ったのはお前だとか言いながら。

 

 ヤンデレではなく価値観が違うからこそ厄介なんだ。それと友達を続けているのは俺の意思だし、友達なんて少しばかり不協和音があろうが無かろうが続く時は続くし続かないなら続かない。

 

「それで当然だが報酬は出るのであろうな? 安心せよ」

 

 あっ、体が動かない。

 

 俺の体はソファーに座った姿勢のまま指先一つ動かせない。軽く体を揺する事も出来ず、精々が唇と歯と目蓋と目玉だけが動かせる中、ドロシーが正面を向けたまま俺の膝の上に座り込んで首に手を回す。

 

 息は荒くなって頬は紅潮、完っ全に発情してるよな、おい!? まな板の上の鯉な状態の俺。いや、フクロウに捕まった野ネズミか?

 

 

「あの小娘に先を越されたのは口惜しいが堪えよう。何せ今から余との接吻以外を思い出せなくなる体験をするのだからな」

 

 舌舐め擦りから一瞬で唇を重ねられる。密着した体を揺すって擦り付け、咄嗟に閉じた唇も歯も捩じ込まれる舌の侵入を防ぐには余りにも無力だ。

 舌は動かせず押し返しも逃げも出来ずにドロシーの舌に絡み付かれて口の中を蹂躙される。

 

 わざとらしく水音を立て、一度離れたかと思いきや再び唇が押し付けられ、そんな時間が続いたのが五分なのか一時間なのか俺には判断出来ない中、漸く膝の上から退いたかと思いきや剥ぎ取られる上着。

 

 おい、まさか……。

 

 

 

 

「むふふふふ~! これは貰って行くぞ。お主の匂いに包まれて致すからな」

 

 バサバサと激しい羽音を立て、フクロウの姿になったドロシーは俺の上着にくるまってソファーの上でモゾモゾと動き始める。

 

 助かったが……あの上着は絶対戻って来ないな。

 

 

敵幹部の総称アンケート 枠埋めは募集掛けるかも 今のところ三体は埋まってる 但し死従者死地士と五凶星の場合は一名入らず

  • 五凶星 ごきょうせい
  • 悪六烈 おむれつ
  • 七福塵 しちふくじん
  • 四従死地士 しじゅうしちし
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。