辺境の町で冒険者をやることにしたお姉さんは「こういうのはちゃんと念には念をいれてね」と言って楽しそうに笑った 作:SUN'S
さあ、今日も冒険しよう。
私はそう言って彼の後方を歩く。
もっとも手付かずで整地もされていない獣道を適当に進んでいるわけではない。彼はゴブリンの足跡をじっくりと観察し、どこに向かって逃げているのかを調査しているのだ。
ふと彼の動きが止まる。ゴブリンの足跡が泥濘と動物の足跡でほとんどではないけれど。しっかりと見分けることができないほど、ぐちゃぐちゃに他の足跡と混ざってしまっている。
「………」
彼は黙ったまま動かない。
おそらくどうするべきかを考え込んでいるんだろうけど。こういうときは仲間……といえるほど親しくはないが、ちゃんと私を頼ってほしいね。
ちらりと私を見つめる。もしかして私の意見を聞きたいのだろうか?と考えるより、どうやってゴブリンの足跡を見つけるかだ。
単純な方法として「そのまま真っ直ぐに突き進む」もしくは「引き返して翌日にまた調査する」というのもあるが。彼は一刻も早くゴブリンを殺したくて仕方ないけれど。私に聞くことはない。
「フフフ、やっぱり面白いね君」
「…そうか」
「そうだとも」
にこやかに私は答える。不服そうに、不満そうに、ゴブリンの通っていったところを探す彼の肩に手を置き、ゆっくりと私が彼の前に立つ。
あまり人前で使いたくないんだけど。いや、こっちだと念を使えるのは私だけか。まあ、今だけは深く考えるのはやめよう。
「
『…アレハミギッ……ミギッ…』
ずるりと私の右肩から雨具を着た細長い手が現れ、数秒ほど右を指差す。私はしゃがんだままの彼に「フフフ、そうか。君、ゴブリンはそのまま進めば見つかるよ」と話しかける。
「……今のはなんだ?」
「フフフ、私は具現化系。いわゆるオーラを物質化する能力を使えるのさ。念能力…あーっ、こっちだと奇跡や魔法みたいなものだよ」
そう言って私は話の流れを切る。
どうやら
ああ、しかし、それにしてもだ。こんな間抜けなゴブリンに負ける冒険者というのも中々に笑えてほんとに面白いね。
彼とは別のゴブリンにゆっくりと絶状態のまま近づき、無防備な頭部を踏み砕く。ぐちゃっ。ごしゃっ。なんて鈍い音が森の中に響く。ウンウン、とっても素敵な音を出す玩具だ。
「おや?おやおや?おやおやおや?君ぃ見たまえよ、ゴブリンが地面に潜っているよ。アホのわりに考えることは出来るようだ」
「ならば「はやく殺す?」…そうだ」
「いやいやいや。折角の逃げ道を塞ぐなんて可哀想じゃないか。フフフ、レイニー。私の代わりにゴブリンを捕まえてくれ」
『…イイヨ…イイヨ…ギヒッ……』
ぶわっと私を追い越してレイニーは木々を避けながらゴブリンの真上で止まり、そのままゴブリンの背骨を踏み潰してしまった。
アチャーッ、今回は失敗だったか。
〈
具現化系能力。
念使いの背後に現れる雨合羽を着た念獣。1日3回だけお願い事をすることができるけど。ちゃんと的確に指示しないと適当な仕事をするうえに絶対に4回は使えない。