五等分の花婿   作:森盛銛

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3話 武四の告白

「(大丈夫かな・・・幸三君)」

 

授業に集中できず、外の景色ばかり眺めているとそこから見えるベンチに座って落ち込んでいる姿がギリギリ見えた。どうやら落ち込んでいるようだったが、そこに一人の男子生徒が見えた。野球のユニフォームを来たガタイのいい短髪の赤髪。

 

「(確か、武四君だっけ・・・)」

 

四男の武四。確か部活優先でおそらく朝練・・・にしては遅いので自主練でもしてたのだろう。どうやら慰めているようだが、これではどちらが兄かわからない。五つ子はあまり気にしないのかもしれないが・・・等と考えているとどうやら二人で教室に戻ったようだ。

 

 

授業を聞きつつも家庭教師のことや今朝のことで集中できない。そのままずるずると引きずり昼休みになった。普段通り焼肉定食焼肉抜きを頼もうと思い食堂へ向かおうと思い机をたつと教室の外から大声で誰かが呼んできた。

 

「上杉さーん!」

 

その声に一斉に注目が集まり、その声の正体は五つ子四男の武四だ。さらにはらいはにも注目が集まる。そのあとの言葉に更に注目を集める。

 

「付き合ってもらってもいいか?グラウンドいるから!」

 

 

「え!?」

 

 

付き合うという言葉に思いきり反応してしまう。らいはは人生で告白をされたことないので、どう行った反応をすればいいかわからない。一先ず笑顔で手招きしているの彼に付いていくことにする。廊下に出てみると教室ではどうやらその話題で盛り上がっているようだった。

 

 

 

そしてグラウンド。正確には野球部が使用しているマウンドに立つ。そして・・・

 

 

「じゃあ上杉さん」

 

「うん、えっと・・・何かな?」

 

正直どんな言葉が来るのかわからない。しかし、彼の気持ちにはどう答えればいいかも悩む。一応ほぼなにもしてないが家庭教師と生徒と言う関係だ。兄もこんなもやついた感じだったのだろうかと考える。

 

「付き合ってもらう!」

 

「え、あ、いやそのー、私たちまだ知り合って間もないし・・・」

 

真っ直ぐにそう伝えてくる。そんな迷いのない言葉にらいはは頬を赤くし混乱し、言い訳のように自分でも何を言っているかわからない状態になっている。

 

「キャッチボール!」

 

「・・・は?」

 

そういうと彼はキャッチャーミットをらいはに渡し、武四は投手用のグローブをはめる。

 

「本音を語りたいときはこれだよな!」

 

そう言われるが同意ができない事もないレベルだ。一先ず言われた通りにキャッチボールを開始することにした。一言一言言いながら球と同時に言葉でもキャッチボールを交わす。

 

 

「幸三の事、気にかけてくれてありがとな」

 

「え、いや私は何も・・・」

 

「そんなことない。実際、龍二に色々言われたところ庇ったみたいじゃん。久々に龍二に歯向かうのが出てきて驚いたよ」

 

「まぁ・・・うん」

 

あんなこと言われているのを黙っているわけにもいかなかった。折角彼が頑張ってきた努力を無駄かのように言う行為に腹が立った。

 

「でも、龍二も龍二なんだ、芸能活動が実際厳しいのはあいつが一番知っているからこそ色々言いたくなるらしい」

 

「龍二って芸能人なの?」

 

今まで関わって十中八九芸能界に関わりがあるのだろうと思ったので聞いてみる。

 

「・・・上杉さんテレビとか見ないのか?」

 

「うちテレビなくて」

 

昔からだが、今になっても上杉家にはテレビを置いていない。

 

「今年齢問わず女性に大人気ペアアイドル【双龍】の一人だよ。本気で知らないのか?」

 

双竜とは現在大人気二人組アイドル。イケメンで歌もダンスも演技もトークも何でもできるトップアイドルだ。その片割れがまさかのあの野中龍二だという。

 

「え゛!?アイドル?あの無愛想で口悪い上に人の話も全く聞かない自己中が!?」

 

アイドルと言えば愛想良くいつも笑顔で爽やかなイメージなのだが、らいはが知っている彼と真逆だ。

 

「アッハハハハ!スゲー言われよう!」

 

らいはの反応が面白かったのかキャッチボールを中断してまでお腹を抱えて笑い出す。

 

「そんなこと言うやつ初めてだわ、いやー、上杉さん面白い!けど・・・」

 

そういって笑いをこらえてまたキャッチボールを始めると笑顔でこう返してくれた。

 

「あいつの素の所しっかり見てくれてる。さすが家庭教師」

 

「・・・家庭教師と思ってるなら勉強に参加してほしいんだけどね!」

 

そう思ってくれているのなら勉強も頑張ってほしいと言う意味も込めて強めに投げるが簡単に取られてしまう。

 

「それは・・・無理!!」

 

「何でよ!」

 

「俺はプロ野球選手になる!いつかはメジャーに挑戦して世界一になる!だから部活優先!」

 

そう言われるとらいはは少し諦めたような表情をした。しかし、その後仕方ないと笑顔で返す。

 

「・・・そっか、いい夢だね!」

 

「お、おう、てっきりバカにされるか怒られるかと思ったんだけど」

 

困惑して怒られる覚悟だったらしいが、彼は呆気に取られている。

 

「人の夢をバカをになんてできないよ。でも、留年とかしたらドラフト選ばれても入団できないんじゃないの?」

 

「いや、まぁ、・・・そこ突かれると痛い」

 

そう言われて苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

「でも大丈夫、私が教えるよ!武四君の夢は叶える手伝いをさせて」

 

「・・・そうか、じゃあ、頼りにしてますよ、上杉センセー!」

 

「・・・先生はちょっと恥ずかしい」

 

「じゃあ、らいは?」

 

「急に呼び捨て?いいけど」

 

「別にそっちもそれでいいぜ」

 

「うーん、まぁ、いっか。じゃあ武四!早速昨日の総合テストの復習を・・・」

 

「それより腹へったから飯にしよう!」

 

ごまかしているのかと思ったが、昼休みの半分の時間をキャッチボールに費やしていたようなので、らいはも仕方ないと承諾したが、ある提案をする。

 

「じゃあ、ごはん食べながら勉強・・・」

 

「昼飯奢る」

 

「いやそれは申し訳・・・と言うか勉強は!」

 

「デザートもいいぞ」

 

「・・・私はそんな安い女じゃないよ!」

 

 

 

 

 

 

というわけで食堂へ二人で行き相席で食事兼勉強を始めることにした。

 

「足りるのかそれ?龍二の作った弁当分けようか?」

 

しかし、勉強よりもらいはの焼肉定食焼肉抜きが気になってしまう。それに対して武四は焼肉弁当焼肉増し持ってきた。

 

「ダイエットしてるから」

 

いつもの文言を言えば大丈夫だろうと思っていた。

 

「いや、ダイエットだったら炭水化物は少なくした方がいいし、味噌汁と漬け物は塩分多いからダイエットに適してないぞ。鶏胸肉やブロッコリーがいい」

 

スポーツマンのせいか意外にもそう言った知識はあるようで、何か反論しようと思ったそのタイミング。

 

ぐぅー

 

普段は足りているのだが、先程運動をしていたせいか、らいはの腹の虫がなった。それを聞いた武四ニヤニヤと笑い肉を半分分けることにし、ごはんに盛り付けどんぶり風になった。少し悔しそうにしながら一口食べる。

 

「あ、美味しい」

 

「だろ?あいつの飯はマジでうまいんだ。前日から仕込んだりして結構手の込んでる作るのが好きでな」

 

「へー、意外だな」

 

そう感心していると横から声がかかる。

 

「お、珍しい組み合わせで」

 

「優一」

 

「やっほー、武四に上杉ちゃん」

 

長男の野中優一が声をかける相変わらずにこにこと愛想を振り撒いている。なぜか荷物を持っており、まるで今登校してきたかのようだ。

 

「今日はなんかのオーディションだっけか?」

 

「午前中にね、今回の作品は絶対に出たいから、今回が二次オーディションでこれ受かったら最終オーディション」

 

「オーディション?」

 

「そそ、ドラマのね、いちおー俳優やっての僕。端役ばっかで有名ではないけどね」

 

軽く自分の職業をさらっと言ってくる優一は俳優として活動しているようで、今日もオーディションで午後から出席をしているらしい。野中家は芸能一家なのかと考えるとそのオーディションに見知った名前が上がった。

 

「天才女優の中野一花が役者兼初の監督をする作品でさ、これだけは絶対に出たいって思ってて」

 

「珍しいな、普段はオーディションも適当にやって、受かればラッキー程度にやってるのに」

 

「へー、一花お義姉ちゃん監督やるんだ」

 

らいはからすれば兄の奥さんのお姉ちゃんと言うと近い存在ではあるが、その言葉に優一が驚いた表情を浮かべる。

 

「え、お姉ちゃん?」

 

「あ、ヤバ」

 

つい声に出してしまったのでとっさにごまかそうとするが、もう遅い。

 

「え、じゃあ、上杉ちゃんは妹?」

 

「・・・義理のね、一応」

 

「マジからいは」

 

武四驚きで食べるのを止めてしまっている。そんな驚きの雰囲気をどうにかしようとらいはは会話を続ける。

 

「と、とはいっても、あまり会う機会がないからね、お忙しい方だし、優一君は昔仕事でご一緒したとか?」

 

もし、会わせてくれなんて言われると面倒なのでやんわりと話の方向を変える。実際義姉の五つ子で一番交流が取れてないのは一花である。実際女優業で忙しいためなかなか時間が取れないと言うのもある。

 

「まぁ、そんな感じ、向こうは覚えてないだろうけど、中野さんいなければ僕はきっと・・・」

 

そうしみじみと優一が語る。しかし、らいははある一言に違和感を覚える。

 

「きっと?」

 

「ん?あー、何でもないよ」

 

そうニコニコ笑顔で返すのだが、その笑顔にも違和感を感じる。なんか、心から笑ってないような・・・

 

「まぁ人生で一番尊敬してるかなー。あ、別に恋愛感情とかないよ」

 

あ、今度はちゃんと笑ってる気がする。

 

「じゃ、そろそろお暑いお二方のランチデートを邪魔するわけにもいかないので、じゃーねー」

 

そう軽い挨拶をして食堂を去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのクソ女となに話してんだ?優一」

 

「何でもいいでしょ、別にカテキョー受ける気はないけど、上杉ちゃんは普通にいい子だよ。弟たちの話し相手にもなってるみたいだし」

 

去った後、たまたま通りかかった龍二が優一に声をかける。

 

「幸三、芸能活動をやるらしい」

 

その一言で優一はピクリと反応する。

 

「声優事務所で今は準所属、今度ボイサン録るらしい」

 

「・・・へー」

 

「どうするよ?」

 

「幸三の人生だからね、本人が決めてたのなら応援してあげたいけど・・・」

 

そう言うと普段はニコニコした表情はなくなる。

 

「・・・辞めさすか」

 

「だな」

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