五等分の花婿   作:森盛銛

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4話 険悪な二人

放課後になり、図書室で勉強会をしようと五つ子を誘ってみたのだが、

 

「パスだね、ごめんよ上杉ちゃん」

 

ニコニコと悪気無さそうに適当に断る優一。

 

「そ、その、ごめん」

 

顔を合わせずに逃げていく幸三。

 

「いやー、部活あるからさ!」

 

部活に行く武四。

 

「すみません。今日はどうしても外せない用事が・・・」

 

放課後に予定が入っているという常識人の修五。

 

「・・・ん、わかった」

 

承諾する龍二。

 

「え?今なんて?」

 

「あ?テメーから誘っておいて何言ってんだクソ女」

 

意外や意外、まさかの一番険悪であろう龍二が勉強会に乗ってきた。

 

「怪しすぎる」

 

「じゃあ帰る」

 

「あ、待って待って!」

 

正直裏があるのではないかと勘ぐってしまうが、本人が積極的に勉強をしたがっているとプラスに捉えることにした。

 

というわけで、先日行った総合テストの復習を主に始めようとするが、龍二は別の話題を切り出す。

 

「幸三の声優の件だが、お前からやんわりと諦めろって言ってくれ」

 

行きなり今朝揉めた件に触れてきたので少しムッとするが、今度は事情も知っているため、冷静になる。

 

「・・・何がそんなに気に入らないの?」

 

「今朝みたいに事情も知らねーのに食いかかって来たのとは大違いだ」

 

「そりゃ芸能界の事情とかそんなの知らないけど、でも何も教えてくれないで人の夢を諦めろって言うのはあまり納得しないかな・・・」

 

挑発的に発言されるが、答えは納得はできないし、夢を諦めさせる理由がわからなかった。

 

「芸能界って言うのは面倒な場所なんだ。闇ばっか抱えてるクソみたいな場所」

 

「じゃあ何でアイドルやってるの?」

 

純粋に疑問があった。なぜ彼はアイドルと言う職業に就いたのか。武四が言うにはアイドルのイメージと龍二の本性が合ってないと思う。

 

「一億の借金返すため」

 

「・・・え?」

 

「今の俺たちの母親は俺たちを一人二千万で買ったんだよ。義理の母親は芸能プロダクションの社長でよ。五つ子でユニット組もうってなったんだけど、俺と優一と幸三で何とかしようとした。武四は野球選手の夢があったし、修五は当時グレてたし・・・まぁ、幸三は途中でついていけなくなって辞めたけど、俺だってホントは料理人になりたかったんだぜ、昔の話だけどな」

 

そんな真剣な表情で彼の家庭の事情を聞いた。そんな彼の言葉にらいはも真剣な表情を浮かべる。

 

「ま、それで今俺が稼いでる。幸三はそんな後ろめたいさを感じなくていいんだよ」

 

「・・・ごめん」

 

「は?」

 

「いやその・・・事情知らないまま、勝手なこと言って、それに龍二は優しいんだなって、誤解してて・・・本当にごめんなさい」

 

相手の事情を知らないで彼の言葉を否定していた自分に、そして、龍二という人間を知ろうともせずに悪く思ってしまう自分に腹が立ち、涙を浮かべる。

 

「いいじゃん料理人!私応援するよ!龍二のお弁当分けてもらったけど美味しかったし」

 

「食ったのかよ」

 

「うん、今日武四にもらった!あ、そうだ!私のお義姉ちゃんがお店やってるからもしよかったら・・・」

 

そんならいはの反応を見て龍二は何か吹き出した。

 

「ぷっ・・・アッハッハッハ!」

 

「え、何急に?」

 

急な大笑いに驚くがそんなことは気にせず、話し始める。

 

「お前ピュアかよ、こんなドラマみたいな話信じるとかバカじゃねーのクソ女!嘘に決まってんだろ」

 

「え・・・嘘ついたの?」

 

「たりめーだよクソ女。お前のリアクションが滑稽で・・・あー、ストレス発散した。じゃあ、幸三のこと断っとけよ」

 

龍二本人は適当に言ったつもりでどんな滑稽なリアクションをするかと思いらいはを見てみると沸々と震えている。

 

「・・・テー」

 

「なんか言ってみ・・・」

 

言い終わる前にパチンと乾いた音が響く。怒りに震えたらいはが龍二の頬に平手打ちをした。

 

「最低だよ!!なんでそんな嘘つくの!?」

 

「商品の顔に傷つけやがって・・・つーか、今朝の時もそうだったけどよ」

 

そう睨みを聞かせながら彼女面と向かって口を開く。

 

「自分勝手に勉強押し付けて、すぐ感情的になって、更にはムカついたら手を出して・・・」

 

そしてらいはに逃げ場がないように詰め寄り、こう言い放った。

 

「家庭教師とか向いてねーよ。さっさと辞めろクソ女」

 

「!」

 

確かにすぐムキになって、挙句の果てには手を出してしまった。彼の言い分は最もである。その言葉にらいははショックと動揺を隠せなかった。

 

「幸三の件だけやっとけよ」

 

そんな軽い感じに出ていく彼に何も言えず出ていく背中を見ていた。もう正直どうでもいい。家庭教師も五つ子もめんどくさくなってくる。勉強もする気になれない。今日はさっさと帰ろう。

 

 

 

 

 

「・・・クソ女」

 

らいはに苛立ちを覚える。女なんて俺のいうことに逆らいもしなかったのに、あの女は・・・いや冷静になれ。どうせ裏切られる。

 

「苛ついたら甘いもん食いたくなってきた」

 

せっかく何で前々から気になっていた飲食店へ向かうことにした。有名人なのでサングラスと帽子での簡単な変装をして入る。ネットのレビューを見ると美人二人が経営してて地域密着の人気店だ。

 

「いらっしゃいませ、カウンター席どうぞ」

 

中野とネームプレートが書かれた2つお下げスタッフが出迎えて案内されたカウンター席に着く。

 

「学生さん?」

 

「そうだけど」

 

「学生書提示でドリンクサービスありますよ」

 

ありがたいサービスなのだが、芸能人の自分の素顔と本名がそのまま書いてあるので知らない店とはいえそれは避けたかった。

 

「いや、ないんで大丈夫っす」

 

「あらそう、でも一杯くらい良いわよ」

 

「・・・じゃあアイスコーヒー」

 

そう言ってスタッフは厨房の方へ向かう。メニューを見ると意外と凝った料理が多い。今度腹をすかせて来てみようとも思った。とりあえず今は甘いもの。ここでの人気メニューはパンケーキらしい。

 

「はい、アイスコーヒーです」

 

「すみません。パンケーキ一つ」

 

「はーい、かしこまりました」

 

そう言ってスタッフがでていったと同時にまた一人来客があった。

 

「いらっしゃ・・・あら、らいはちゃん」

 

「!?」

 

店員その名を呼んだので入口の方向へ顔を向けると先程のやり取りをしムカついた対象の上杉らいはがいた。

 

「二乃さん・・・」

 

「元気ないわね、とりあえずいつものオレンジジュースでいい?」

 

「いえ、その・・・」

 

「遠慮しなくて良いわよ。たまにバイト入ってくれるし、学生はサービスよ」

 

そして龍二から一番離れたカウンター席へ座る。一応バレてはいないようだ。二人の会話は耳に入るのでそれとなく聞こえてしまった。

 

「その私・・・家庭教師始めたんですよ」

 

「あー、フー君言ってたわね。それでどんな感じ?」

 

注文されたものを作りながららいはの言葉に耳を傾ける。そしてどうやら兄からそのことは話しているらしい。

 

「その、全然だめで・・・それに今日一番険悪と言うか距離空いてた人と少し距離を縮めるチャンスって思ったけど・・・」

 

先程の出来事をかなり引きずっているようで提供されたオレンジジュースには目もくれず話し続ける。

 

「もうやめちゃおっかなって・・・向いてないってはっきり言われましたし、ははっ・・・感情的になって叩いちゃったし」

 

「あー、暴力は良くないわね」

 

そう言って愛想笑いも交えて場を和ませようとらいはは努力するが二乃は調理しながらだが、真剣に聞いてくれている。

 

「でも、許せないのが借金返すためにアイ・・・仕事してるって言ってたけど、それバカにしたように嘘つかれて・・・それが・・・それが・・・」

 

頑張って話してはいるものの徐々に感情が抑えられなくなって、涙を流し始める。

 

「お兄ちゃんが家族の借金の為に家庭教師を頑張ってたのを否定されたみたいで・・・」

 

兄だって高校のときに本当はもっと別のことをしたかったのではないか?自分の時間がもっと欲しかったのではないか?高校卒業まで続けてお金だってほとんど家庭のため使ってくれた。そんな同じ境遇なのだと龍二に共感し、見直し、尊敬した。しかしそれが嘘であった。向こうは事情を知らないとはいえ、らいはにとっては裏切られる行為であった。

 

「なるほどね。フー君の頑張りを知らないとはいえ、そんなこと言われたらショックよね・・・らいはちゃん、少し家にいてもらって後で話すでもいいかしら?」

 

「え、はい、わかりました」

 

もう少し話を聞いてほしいが二乃にも事情があるようなのでらいははその場から一度御暇することにした。ちなみにらいはの実家は2階でその下の階を間借りしているのがこの店である。

 

「おまたせしました。パンケーキです」

 

そう言って提供された2枚に重ねられたパンケーキ。プルプルしてメープルシロップが輝いて見える。すぐさまいただこうと思ってナイフとフォークを持つが、店員から急に話しかけられた。

 

「んで、らいはちゃんと何があったの?」

 

「・・・何ですか急に?」

 

「あたしはあの子の義理の姉。家庭教師の話のときにアンタたち五つ子の写真見せてもらったことあるからね。アンタの事情も知ってる・・・アイドルの野中龍二君」

 

「はいはい、おねーさんすみませんでした。あんなジョークで・・・」

 

「ジョークじゃないでしょ?」

 

「・・・どこまで知ってんだよ」

 

「別にー」

 

「それで何か言いたいんですか?」

 

あんな状況の義妹を見たのだから、何か言われるのも仕方ないだろうとも思っていたが意外な言葉が帰ってきた。

 

「アンタの事情なんて知ったこっちゃないないわよ。ただ、放った言葉とか悪態とかは一度出しちゃったら後々後悔するってこと(未だにフー君を諦めれないアタシみたいに)」

 

それが原因とわからないが、自分がもし四葉のポジションにいたらとか、あんな家庭教師に否定的にならなければとか今更後悔しても遅い。風太郎本人は気にしていないだろが、自分は何が原因だったのかを未だに引きづってしまっている。

 

「それにそのことを話しちゃったってことは、実は気になってんじゃないの?」

 

「・・・うるせ」

 

「あっそ。話聞いたしアタシも途中からお客さん扱いしなかったから、パンケーキ代もいいわ。有名人なのを忘れたければたまには来なさいよ。アンタはアタシに似てるっぽいし」

 

「・・・・・・」

 

そう言われても龍二は何も言わずにいた。

 

 

 

 

 

 

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