先生は世界平和を実験している 作:飛鳥=R♯
「―――今からトリニティに戻る。隠れているんだ。何が起きるかわからない、良いね?」
『あ、えと、うん』
取り乱している事が自覚できる程度に飛鳥の声色は上ずっていた。電話口の向こうにいるミカはまくしたてられて少しばかり困惑している様だが、ナギサの暗殺という言葉に大きく動揺し、相槌が少し曖昧になっている。できる事ならもう少し順を追って説明したいところだが、事態は一刻を争う。現状だけは説明しなければならない。
「浦和さんなら、最適な答えをすぐに出せる。今は彼女と一緒に待機して無理だけはしないで欲しい」
『わ、わかった……!』
自分よりずっと強い存在である彼女達に偉そうに言える立場ではないが、最悪のケースが想定される今の状況で果たしてどんなリスクが潜んでいるのか飛鳥にはまるで想像がつかない。それ故に敢えて強い言葉でミカに言い聞かせたものの、今すぐにトリニティに戻らなければならない。
(なら、ラムレザル達に伝えなければ……いや、通話を繋ぐには時間が惜し―――)
トリニティへと法術で戻る事自体は良い。飛鳥一人で何ができるかというのも、現地に到着しない限りはどうやってもハッキリとしないだろう。何より、ナギサ暗殺の為に動いているケイオスを相手取るには彼を知る存在が必要不可欠である。
などと、また一人で思案に耽っていた飛鳥の背後が突如音を立てて砕け散り、カフェの店内に土埃が舞い上がる。振り返った飛鳥が敵襲かと身構えると、煙の向こうから見慣れたコート姿がゆっくりと姿を現した。スレイヤーである。
「おぉ、ここにいたか。君の気配は存在感があって良いな。怪我はないかな?」
「……ちょうど良いところに駆けつけてくれましたね。『貴種殿』」
「あ~っ、その気取った呼び方はやめたまえ。むず痒くなるだろう」
コートについた汚れを払いつつ、スレイヤーは口に咥えたパイプから紫煙を吐き出す。キヴォトス都市部ではまともに吸えない鬱憤がたまっているのか、彼は心底安心した表情で微笑んでいる。
わざわざ本人が嫌う名前を使ってまで助力を願ったのは間違いではなかった。飛鳥はスレイヤーに背を向けると、『本』を取り出して法術発動の構えを取っていた。
「時間がありません。簡潔に言うとケイオスの策に嵌まりました。彼の目的はがら空きのトリニティを狙い、ティーパーティーの長である桐藤さんを排除する事」
「どういう理由で君はここに来たのかね?」
「教え子が囚われの身です。下手人は、ケイオスが蘇らせたヴァレンタイン……異常事態に次ぐ異常事態。これらを利用して彼は僕に対して二者択一を迫っている。僕はケイオスを優先し、捕えるべくトリニティへ戻ります」
「それで、私にはこの遊園地でラムレザル達の手伝いをしろ……と?」
スレイヤーの声色には若干の嘲りが滲んでいた。「まさかとは思うが手を貸せと言うのか?」という飛鳥への感情が漏れ出ている。
「そうですね。貴方が正義の味方でない事くらいは知っている。僕が困っているからと言って手を貸してくれるタイプではない。だからこれは、空崎さんの為だとでも思ってください」
「ほぉ……?」
なかなかどうして、面白い。スレイヤーの紅い瞳が興味深そうに細められる。まさか会話の流れからヒナの名前が出てくるとは予想していなかったのだ。
彼がその気になれば、瞬く間に飛鳥の体は粉砕される。気品を持った振る舞いこそすれど、スレイヤーの能力は人智を超えた怪物のソレなのだ。全ては気分次第で決まりかねない。
「このまま桐藤さんの身に何かあればエデン条約は破綻する。そうなればトリニティとゲヘナ、二大学園の確執は更に混迷を極め、いずれ戦争に発展する。そうなれば困るのは、誰よりも真面目な空崎さんだ」
「君という男はどうしてそこまで他人を煽る様に物を言うのやら……脅迫じみているとは思わんかね」
「思います。ですが、生易しい言い方で頷く貴方ではない。それに『貴種殿』、もう少しだけ僕が足掻く様を見ていたいでしょう?」
そこでスレイヤーは重くため息をつき、ついでにやれやれとかぶりを振る。その仕草を見せた時点で彼は飛鳥の提案を飲んだという証明になった。興味を持ち、『まぁ良いだろう』と頷いたのだ。恐らく同じ方法では二度と手を貸してくれないだろう。
「……良いだろう。今回はヒナ君に免じて力を貸してあげようじゃないか。次は気をつけたまえ。次は君とて拳の一、二発は耐えてもらわなければ」
「それではよろしくお願いします。僕はお先に」
二人は頷きあい、まずは飛鳥が『本』を起動させ一瞬で姿を消した。スレイヤーは肩をすくめ、それからわざとらしく靴の爪先で汚れきった床をコツコツと蹴り、足元に耳を傾ける。この下に何かいる、そんなジェスチャーを飛鳥がいなくなってから行っているのだ。
スランピアに侵入した時点でスレイヤーはこの気配を感じ取っている。あの不可解な存在、ゴズを生み出した者は打ち捨てられた楽園の中でまだ何かを作り出そうと画策しているのだ。
「私をここに残す判断は流石だ。下にいる『何か』がそろそろ目覚める頃だよ……君も、これが目的なのだろう?」
飛鳥も去り、誰もいないはずの空間にスレイヤーは呼びかける。むなしく反響した声色は誰に拾われるわけでもなくそのまま消え去るかと思いきや、じゃりじゃりと床を踏みしめる音と共にドスの利いた声が受け止めた。
「そんなところだ。まさかアンタに会えるとは思っていなかったがな『総長』」
「ふふふ、まさか喧嘩仲間に再会するとはね。来たまえ、面白い喧嘩が待っている」
スレイヤーと既知らしきその人物は呼びかけに対してニヤリと笑い、隻眼を爛々と光らせるのだった。
⚪︎
前方から殺人着ぐるみが多数接近。これにラムレザルを先頭にして、一同は突撃していく。
脇を固めるのはアズサとヒフミ、最後尾をサポートするのはレイヴンである。皆武器を掲げ、目標である城を目指してひた走る。
「また来る。備えて」
「あ、あの、ちなみに誰かこのぬいぐるみの方々がなんなのか教えてもらえたりします!?」
「溢れんばかりの殺気で我々に向かってくる怪物だ。他に説明は必要か?」
「そういう事じゃないんですよレイヴンさん……!」
涙目になりながらもヒフミは発砲を止めはしない。あくまでもキヴォトスの人間らしい行動力である。
背後から襲いかかってくる着ぐるみを針で貫き、切り裂きながらレイヴンは眉をひそめ、
「他に何か気になる事があるのか?」
「ありますよ! あとどれくらいいるのかな、とか!」
「……それは、大勢いるだろう。見たところ我々を迎え撃つ為に用意されていた連中だろうからな」
「そ、それじゃあですよ、それじゃあ……ペロロ様も紛れ込んでいたりするんでしょうか!?」
「―――何?」
緊迫した場面である。突然の襲撃をスレイヤーの介入によって辛くも逃れ、囚われの身なコハルを助けるべく全員で前進する状況である。
だがその状況下において、モモフレンズの大ファンでありかつてグッズを探す為だけにブラックマーケットへと突撃したヒフミには、どうやっても口に出さずにはいられない悩みがあった。
近付いてくる着ぐるみに銃弾を撃ち込みつつ、ヒフミは必死の眼差しでレイヴンを見つめる。数時間前に初めて顔を合わせた相手なのだが、真剣そのものである。
「考えてみてくださいレイヴンさん。ペロロ様ですよ、あのペロロ様を撃つなんてそんな……私にはとても……! アズサちゃんもそう思いますよね!?」
「否定できない。私もいざ目の前に出てきたら、その時は感情を無にして挑まないといけない。どうすればいい……!」
二人共大ファンである事は知ってはいたものの、先頭を走るラムレザルはちらりと後方を窺いながらなんとも言えない表情をレイヴンに向けてくる。自分では言い聞かせられない、そんな彼女の諦観がひしひしと感じ取れる。
となればなだめる役割はレイヴンに回ってくる。彼は駆け寄ってくる着ぐるみの顔面を切り裂きながら、ため息を交え、
「その、ペロロとかいうのが現れたら教えろ。代わりに私が相手をするからそれでいいだろう。目の前の事に集中してくれ、頼む」
「うぅ……出会う事自体、できれば避けたいぃ」
「信じようヒフミ。今はコハルを助ける事が最優先」
前方に立つ着ぐるみの数は五体。いずれも爪をギラリと光らせている。
ラムレザルは地面を蹴り集団に飛び込むと、二丁拳銃を乱射して弾丸の嵐を見舞う。飛び散った弾丸は幾つものを風穴を着ぐるみの体に開けていき、突破口を作り出した。
このペースならば城への到着はまもなくだ。ゴズの様に厄介な敵が襲ってこなければ、コハルの下へと辿り着ける算段になる。
(でも、そうなるとは思えない)
ラムレザルの脳裏をヴァレンタインが掠める。消えたはずの、姉に当たる存在。仮面の下に眠っていた不気味な虚無。
まさかこの場にいないはずがない。彼女の狙いはラムレザル一人なのだから。必ずどこかで仕掛けてくるだろう。そこがどのタイミングなのかを見定め、迎え撃たなければならない。
「ラム、目的地が見えてきた。このまま突っ切る」
アズサの呼びかけにハッとし前方に意識を集中させる。そびえたつ城の全貌がようやく見えてきた。内部がどれほど広大かは判断がつかないものの、まずはあそこに突入する必要がある。一度中に入ってしまえば着ぐるみ達の追跡も多少は薄まるはずだ。
後方を振り返ると、後衛を担当するレイヴンが近付いてくる着ぐるみ達を腕の一振りで吹き飛ばしている。流石という他にない戦闘力だ。この調子で奇襲に備えれば、安定して戦える。
だが城へ近付くに連れて、重く閉じられた門が見えてきた。来るものを拒む分厚い扉の質感は、少なくとも爆薬の類で吹き飛ばせる様には見えない。
「レイヴン、あの扉を何とかして欲しい」
「ん……? いつの間に私に指示を飛ばす立場になった? まぁ良い。退け」
「アズサ、ヒフミ、道を開けて」
城門を突破するべく、ラムレザルの声に従ってレイヴンは前方へと一気に駆け出す。その加速たるやまさに影の如く、目で追うのがやっとというところである。仲間達の肩口を掠め、一瞬にして彼は門の目の前にまで到着していた。
「―――ゲルトライヤーッッ!!!」
レイヴンが門を開ける力を有しているわけではない。かといって何処かに鍵があるとか、門を開く仕組みを把握しているわけでもない。やる事は極めて単純。全力でぶち抜くのみである。
体を弾丸の如く尖らせ、渾身の一撃が固く閉ざされた入口に突き刺さる。見るからに堅牢な外見であったがしかし、耐えるわけでもなく金属が弾け飛ぶ音に続いて城門は勢いよく開かれていた。
(レイヴンにとって法術は絶対じゃない。彼の特異性を秘めた肉体は、下手をすれば『私達』の中でも脅威になりうる)
こじ開けられた城門の前に佇むレイヴンを見つめながら、ラムレザルがこの様に冷静な分析を行うのには理由がある。
レイヴンはトリニティの裏切り者、聖園ミカと関係している。理由が何であれいずれ敵対する可能性は十分だ。となればいくらラムレザルとて銃で勝てる相手ではない。従者である『ルシフェロ』が必要になる。
(……でも飛鳥の持つ『本』なら、法力を疑似的に発生させる事ができるはず)
と、ラムレザルはそこで思考を即座に切り替える。今ここで考えるべき事ではない。今は門を開けてくれた事に感謝を述べねばならない。多少の礼儀というものは大切だ。
「門が開いた。二人共、急ごう」
「ま、待ってください、上から何か!!」
誰よりも先にヒフミが気付き、頭上を指差す。ちょうどレイヴンの立つ真上に、不釣り合いな球体があった。
大道芸の玉乗りに使われる様な大玉、それがどういうわけかふわりと宙に浮いている。だが落下する目標は、間違いなくレイヴンだ。
「レイヴンッ!」
ラムレザルが叫び、回避を促す。だがレイヴンがそれに応じて動くよりも先に大玉が地上目掛けて落下、彼を押し潰してしまう。更に着地時の衝撃は暴風を放ち、残る三人の足を止めた。
何が、などと聞くまでもない。想定していた次の敵が襲い掛かってきただけだ。問題は、また足止めを食らいかねないという事である。
「ラムちゃん!? れ、レイヴンさんがぺちゃんこになってるんですけど!?!?」
「あれくらいでどうにかなる人じゃないから大丈夫。それよりも気を抜かないで」
「え、ええ!?」
驚愕のあまり白目をむきかけているヒフミをラムレザルが抑えていた目の前で、落ちてきたまま微動だにしていなかった大玉が下から突き上げられる。ふわりと吹き飛び、大玉は城門を守るかの様にゴロゴロと転がっていく。明確な意思を感じ取れ、誰かが操っている事は明白だった。
さて大玉を突き上げたのが誰かと問われれば、それはレイヴンである。あまりの衝撃に陥没した地面からゆっくりと立ち上がった彼は針を装備した指をガチャガチャと忙しなく動かし、見るからに苛立っている。
「……頭上から潰されるとは予想外だ」
「―――あの攻撃で、無事? なんて頑丈な」
攻撃を受けたにも関わらず五体満足で姿を現したレイヴンにアズサは思わず感心の声をあげている。彼が持つ不死身の肉体は、どうやらキヴォトスの人間からすれば多少なりとも頑丈と判断されるらしい。
しかし大玉は見るからに侵入を拒んでいる。開かれた門の隙間にピタリとくっついてしまっていた。
「ラムレザル。私はコイツを仕留める。先に城内へ向かえ」
コイツ。レイヴンがそう口にすると同時に、大玉の影からひょっこりと何者かが顔を出す。ネズミの着ぐるみ……に見えるが、その身から放つ雰囲気はゴズのそれに近い。つまるところ特殊な敵というわけだ。
レイヴンはそれ以上何を言うわけでもなく、針をこすり合わせて威嚇の様に金属音をかき鳴らしている。大玉を落とされた事が相当頭に来ているのか、有無を言わさない姿勢だ。
となればまずは大玉をどかす必要があるわけなのだが……レイヴンが突如姿を消した。
「ヒフミ、下がった方が良い。凄い事になる」
アズサの反応は早い。咄嗟にヒフミの肩を掴み、自分の近くに引き寄せ後退する。ラムレザルも続き、レイヴンから一定の距離を取った。
嫌な予感というものは的中する。城門を守る大玉が、真横から突然跳ね飛んだ。もちろんレイヴンの攻撃である。一瞬にして移動した彼の強烈な攻撃は、見事に大玉を定位置から引き剥がして見せたのだ。
「さぁ行け!」
大玉と、そこに張り付いているネズミと共にレイヴンは真横に吹き飛んでいく。時間稼ぎ兼、戦う場所のセッティングと言ったところだろう。
スレイヤーといいレイヴンといい、誰かに任せて先に進む展開が続く。とはいえ目的を達成する為には致し方のない選択だろう。
ぽっかりと開かれた城門から目線を上に、ラムレザルは城の頂上を見上げた。そこにいるはずの、友人をオモッテ。
「コハル……待っていて」
〇
レイヴン、またの名を不死の病。かつて飛鳥=R=クロイツが『あの男』と恐れられていた時代に、彼の側近として幾度となくソル=バッドガイと刃を交えた。
そんな彼の目から見て、今回の敵はなかなか興味深い。キヴォトスに秘められた『神秘』の一端は、僅かにではあるが興味を惹かせる。だが今はそれよりも、
「今は、貴様を、ここで潰す!!」
スランピアの地図に書かれていたアトラクションには、『シロとクロ』の名があった。
今まさにレイヴンが吹き飛ばし連行している大玉を操っているネズミの着ぐるみの体色は白い。となればこれがシロなのだろう。
車庫にいた敵もそうだが、得体が知れない。単なる敵と呼ぶには不気味極まるのだ。
とはいえ倒すべき対象である事になんら間違いはなく、更に言うとただでさえ面倒な状況だというのに邪魔をされては困るワケで、レイヴンは少し苛立っていた。
いつもならもう少し大玉で体を潰される激痛に身をよじりたいところであるがそうもいかないのである。
「堕ちろ―――」
大玉にしがみついているシロへと飛び掛かり、思い切り蹴りを叩き込む。空中で向きを変えた大玉ごと地面に叩きつけようと言う寸法である。
シロは抵抗する事なく攻撃を受け入れ、地上へと墜落していく。無抵抗な姿勢にレイヴンは目を細めながらも、迅速に敵を排除する事に集中する。
そして大玉はシロごと地面に激突、したものの破裂せずむしろゴムボールの様に形を柔軟に変えて跳ね上がる。衝撃はそのままレイヴンへと叩きつけられ、今度は彼が頭上に突き上げられていた。
(チッ、まるで敵意が読めない。だが……少なくとも物理で解決できる存在なのは間違いない)
即座に体勢を立て直し着地し、得物である針を突き付けるレイヴン。大玉をよじ登り、玉乗りの姿勢を取ったシロは自信満々と言った様子で腕組みまでする始末だ。異様なまでに楽しんでいる。何がこの着ぐるみを突き動かしていると言うのか。
(蘇ったらしいヴァレンタイン……アレも何か関係しているのか)
考え事は、今は良い。確実に眼前の敵を駆逐する。戦闘においては最も大切な思考である。
じり、とレイヴンは距離を詰めるべく地面を踏みしめる。そして……踏み出す直前に背後から何かが高速で突っ込んでくる音を聞き、身を翻した。
「何……ッ!?」
目の前に広がっているのは弾丸の如き速度で追突してくるティーカップ。それも三つ。突然の奇襲にレイヴンは即座に反応し、跳躍する事でこれを回避した。だがこれは空中でわずかだが無防備な姿を晒しているという事。舌打ちと共にシロへと向き直ったところで、今度は大玉の直撃が彼を襲った。
鉄球並みの大質量がレイヴンの骨をみしみしと軋ませ、再び地面へと叩きつける。致命傷だが致命傷ではない、むしろレイヴンには痛み以外に何の感慨もない。一瞬で体を再生させると、大玉を邪魔だと言わんばかりに押しのける。
「―――なるほど。一対二と」
少し予想外な光景がレイヴンを待ち受けていた。何処からともなく新しい大玉を持ってきたらしいシロの隣には、今度は黒いカラスの着ぐるみがふわふわと浮遊している。手には月の意匠が施されたステッキなど構えて、さながら魔法使いだ。
「お前が『クロ』か」
レイヴンがぽつりと呟くと、クロと呼ばれたカラスの着ぐるみはご機嫌な様子で体を左右に揺らす。何よりしきりにシロと顔を見合わせると、クスクスと笑う素振りまで見せていた。
シロ&クロ、その名前通りに二体はコンビを組んで戦う存在と見て良いだろう。先程城門で一度に出てこなかった事を幸いと考えるべきだが、レイヴンとしては面倒極まる。
(さっさと消えてもらいたいのだが……)
一体までなら余裕だが、二体では時間がかかる。そうするとラムレザル達の面倒が見切れない。トリニティで待機しているミカの様子も気になる。
どうやって一度に二体も仕留められるだろうか、などと僅かに思案しながらもレイヴンは針を構え、シロ&クロが繰り出すであろう次の攻撃に身構える。
(あともう一人いれば、楽なのだが)
「あともう一人いりゃ、楽だろ」
むっ、と更なる声にレイヴンは眉をひそめる。敵であるシロ&クロも姿の見えない何者かに周囲をぐるりと見渡す。
「俺はここだ」
何者かの声は頭上からだった。運動場を取り囲んでいる城砦をモチーフとした壁に、ひときわ目立つ『UTOPIA』というネオンサイン。そこに、彼女は立っている。
「ワケのわからねぇところに来たとも思えば、見覚えのある奴が転がり込んできやがった。確かにウチの総長が『面白い喧嘩』だなんて宣うのも納得だ」
あまりにも不釣り合い極まる、『侍』がそこにいる。
腰に刀を下げ、片目には眼帯。自然体そのものの佇み……ジャパニーズが一人、かつて飛鳥に復讐するべく世界を渡り歩いていた流浪人。名は、梅喧。
「よぉネズミ。テメェの相手は、俺だ」
ヒフミとアズサがリアクション要員になっていることを謝りたい。
次あたりちゃんと出番作る……
現時点での投稿頻度に関してどのように感じていますか?
-
区切っても良いから投稿頻度を上げて欲しい
-
このままもう少し早く出して欲しい