先生は世界平和を実験している   作:飛鳥=R♯

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果たして公式クロスオーバーであるルーシーの設定がどんなもんなのか、それで俺の心臓が潰れます


Krizo-キンキュウジタイ

「先生! 無事っすか~!って、どういう状況なんすかこれ」

 

 正義実現委員会のイチカがセーフルームに飛び込び目にしたのは、気まずそうな顔で立ち尽くす飛鳥とナギサ、そして何やら楽しげな様子でクスクスと笑うハナコの姿である。

 飛鳥の指示に従い校内を動き回っていた襲撃者達を急ごしらえのメンバー+突然の援軍と協力して撃退、拘束した彼女は単身で飛び込んだ先生は大丈夫なのかと必死で急行し、そして珍妙な絵面を目撃した次第だ。

 

「ん? あ、仲正さん。こっちは大丈夫だようん。桐藤さんも無事だ。ほらこの通り」

「は、はい、無事ですよええ! そうですよね浦和さん!?」

「それはもうとても無事ですようふふ……」

 

 奥歯にものが挟まった様なぎこちない物言いで飛鳥がナギサを指差し、指差されたナギサはハッとしてしきりに頷いてみせる。何か異様に楽しげなハナコも含め、気まずそうな空気にイチカは困惑を越え、一体何があったのかという純粋な興味に駆られていた。

 状況を整理するべく、とりあえず室内の様子を確認する。敵が残っている様子はなく、壁に大穴が空いているもののそれ以外には問題は見当たらない。

 

「部屋の外で護衛の方々が倒れていたんで焦ったんすけど、どうやら皆さん無事みたいっすね。それで飛鳥先生、ここで何があったのかだけ教えてもらえますかね……?」

「あ、ああ。襲撃者のリーダーはハッピーケイオスという人物だ。彼はここまで侵入し、桐藤さんを狙っていたけれどなんとか撃退した。捕まえそこなってしまったけれど、ひとまず暗殺は防いだと思ってもらって良い」

「それはよかったっす本当に……ナギサ様もお怪我はありませんか?」

「わ、私ですか? 少し撃たれはしましたがそれ以外は別に……そうです、そういえばミカさんはどこに!?」

 

 聖園ミカの名前が出た事に思わずイチカは反応する。恐らくこの場にいた様だが、なかなか想像しがたい状況がここで繰り広げられていたらしいハッピーケイオス―――上から資料の提供はあったので多少は知っている―――の襲撃に際して、ミカはナギサを助けに現れたというところだろうか。

 

「ミカ様っすか? ここに来るまでには出会わなかったっすけど……ちょっと待ってください」

 

 イチカの携帯端末がそこで震え、取り出してみれば部下の一人からの連絡だった。何事かと通話を繋ぎ、スピーカー機能をオンにして全員に聞こえる様に設定する。

 するとマイクに対して全力で呼びかけている様で耳を塞ぎたくなる程の大声で部下からの報告が飛び込んできた。

 

『い、イチカ先輩!? 聞こえてますか!?』

「聞こえてるっすよ~? 何かヤバそうな展開でも?」

『その……ええと、み、聖園ミカ様を現在拘束中ですっ。『トリニティの裏切り者は自分だ』と主張していて何が何だか……』

「うーんと……何かご存知だったりしますか皆さん」

 

 しどろもどろな報告だが嘘を言っている様には見えず、イチカはひとまず飛鳥達の顔を眺めて反応を確かめる。

 細かな反応こそ異なっているが、三人全員聞こえてきた内容に動揺を隠せない様子だ。特にナギサは唇をぎゅっと噛み締め、何かを堪えようとしている。

 ミカがトリニティの裏切り者。一体どこから説明してもらえばよいのか、まったくもって事態が飲み込めない。だがエデン条約という大きなイベント前にして、トリニティ内部でかなりの騒動が巻き起こっていたのは確かな様だ。

 

「ん~~~~~」

『あ、あと、あとですね!? ゆ、百合園セイア様もいらっしゃいます!?』

「―――え?」

 

 次に飛び込んできた情報に苦しげだったナギサは目を見開いた。信じがたい事を耳にしたかの様な顔で、即座に膝から崩れ落ちてその場に座り込んでしまう。すぐに飛鳥がしゃがみこみ彼女の肩に手を回してやり、

 

「仲正さん。今の話を詳しく聞きたい」

「わ、わかりました。えーと、セイア様ってあのセイア様で合ってるっすよね? 体調不良で休校中の」

『は、はいぃ! こちらも『飛鳥=R=クロイツに会いに来た』と言って聞かなくて……救護騎士団のミネ団長もご一緒です! とにかく合流してくださぁい!!!』

 

 イチカは僅かに糸目を開眼させ、頭の中で状況を把握しようとする。全貌を理解しようとまでは言わないが相当こじれているのは間違いなく、果たして今の会話すべて自分が聞いてよかったのかという疑問まで押し寄せてくる始末である。

 兎にも角にも大事な事は一つ。『危機は去った』。であれば次は原状回復に努めるべきだろう。

 放心状態のナギサを抱く飛鳥と、セイアの名を聞いて動揺した様子のハナコへと視線を投げかける。

 

「うわ、なんかいよいよ頭パンクしそうっす……とりあえず皆さん、状況把握の為に合流しませんか?」

 

 

 トリニティで何が起きたのか。そして何が終わったのか。

 すべてはその説明を行わなければならない。戦闘を終え、損壊した校舎を避けながら飛鳥を含めた全員が一か所に集まっていた。状況を整理し、次の行動を起こす為の緊急会議というわけである。

 ナギサと何度も会談した長いテーブルが印象的なトリニティの生徒会室には今、飛鳥を囲む様に何人もの生徒が立っている。ナギサ本人、そして正義実現委員会の生徒達、両手に手錠をはめられ拘束状態にあるミカ、ここまでは良い。更に新顔がいる。

 

「―――飛鳥=R=クロイツ先生の要請に応じ、今回我々『シスターフッド』は政治的介入を決断しました。すべてはトリニティの安寧を守る為、それ以外に一切の意思は介在していません」

「飛鳥先生からトリニティ校内で何らかの異常が確認された場合に備えて、情報提供を受けていました。ハッピーケイオスが何かしらの動きを見せるかもしれない、とも」

 

 『シスターフッド』。トリニティにおいて清廉潔白を象徴するかの様な集団である彼女達だが、飛鳥が聞いていた通りにその正体は真の支配者と言っても過言ではない程の武装集団だった。ミカを誘き出す為の噂を流してくれたのも彼女達であり、非常事態に銃を手に駆けつけてくれた援軍だ。

 筆頭である歌住サクラコと彼女の部下である伊落マリーははきゅっと口を結び、強固な意志をその場にいる者達へと見せる。

 それに応えたのは、室内で誰よりも強い威圧感を放つ一人の生徒である。ずい、と一歩踏み出した彼女はサクラコとマリーを見据え、きゅっを越えてぎゅっと顔を引き締める。

 

「シスターフッドはトリニティ内での政治的活動には一切関知しない、とお聞きしておりました。今回それを放棄し参戦した事……感謝します」

 

 蒼森ミネ。気を失ったラムレザルを保健室で看病してくれたセリナが所属する救護騎士団の団長を務める人物である。突然騎士団から失踪し、行方をくらませていた事までは飛鳥も把握していたが、その真相はとある生徒の身柄を保護する為だったのだという。

 そしてとある生徒とは……ミネの傍らで一人だけ椅子に体を預けている少女、百合園セイアである。

 

「時間がない。私の身に何が起きたのかは置いておこう。ミカが話した事の真相についても、だ。彼女は一切抵抗はしないと宣言している。破るつもりもない」

「っ……」

 

 一同の表情が険しくなる。ただ一人ミカだけは無言を貫き、手首にはめられた手錠をじっと見下ろしている。口も開かない、何もしない、そんな意思表示を彼女は全身で表している。

 ケイオスに洗脳されたはずの彼女だが、今はどこも異常は見られない。姿を隠している様だがレイヴンの尽力があったのだろう。

 気持ちをすぐに切り替え、飛鳥はセイアへと意識を集中させる。ヘイローを破壊され死んだはずの彼女が無事である事に、彼はそこまで驚いてはいなかった。

 

「百合園さん、君が今までどこにいたのかは後で聞く。何故このタイミングで戻ってきたのかを聞かせて欲しい」

「―――トリニティに危機が迫っている。私はそれを伝えるべく戻ってきた。だがその前に、まだ問題が解決していない。そちらを優先する必要がある。飛鳥先生、スランピアの状況を教えてもらえるかな?」

 

 飛鳥は眉をひそめた。何故セイアがスランピアの状況を知っているのか、どこまで把握しているのか。

 当然ナギサ含めた生徒全員がセイアの呼びかけに困惑したが、質問を投げかける場合ではないと読み取り飛鳥の答えを待つ。

 疑問を飲み込み、飛鳥はかぶりを振った。

 

「連絡が繋がらない。電波障害は既に治っているはずなのに」

 

 事態を治め、なんとかナギサの暗殺を防いだ飛鳥は次にスランピアでコハル救出を進めているはずのラムレザル達への連絡を試みた。だがどういうわけか回線が繋がらない。今あそこで何が起きているのか、それを確認できないのだ。

 飛鳥は沈痛な面持ちで拳を握り締める。自分がナギサを優先し、生徒達の身に何か起きてはいないか、と。

 そんな彼の肩にハナコは助け船を出すかの様に手を置き、

 

「ひとまず今はスランピアの状況を確認し、救援を送る事が最適解だと思います。ケイオスの誘導により学区内に向かってしまったハスミさんやツルギさんもまもなく戻ってくるはずです」

「……その、スランピアなる場所で何か起きているんですか? 飛鳥先生」

 

 話がひと段落したところでようやくナギサからの質問が投げかけられる。飛鳥はゆっくりと頷き返し、

 

「ケイオスの仲間が補習授業部の生徒を拉致した。今、そこにラムレザル、阿慈谷さん、そして白洲さんがいるんだ」

「ヒフミさん、ですか……!?」

「僕の協力者が彼女達と一緒にいるはずだが、連絡が繋がらないというのは不安だ。今は浦和さんの言う様に一刻も早くスランピアに戻らなくては」

 

 現状はこうである。

 桐藤ナギサ暗殺は阻止できたが、未だケイオスの起こした事件は完全に解決していない。スランピアにいるラムレザル達を救出し、そこで初めてこの大きな騒動は終了するのだ。

 となれば今一度スランピアに向かうしかない。全体を把握しきれていないイチカ達正義実現委員会も、サクラコ達シスターフッドも納得した様子だ。

 

「それではすぐにスランピアへ向かう部隊の編成を……」

 

 そこで、突然飛鳥の携帯端末がぶるぶると震えた。ナギサの号令を遮ってしまったそれに彼は眉をひそめながらも取り出し、一体誰からの連絡かと画面に視線を落とす。

 明星ヒマリ、ミレニアムサイエンススクールを代表する天才からの思わぬ連絡だ。彼女が電話をしてくる事は滅多にない。大抵はモモトーク上でのメッセージのみだ。

 つまり、そうしてまで飛鳥に伝えたい何かが起きている。同じ研究者としての経験を踏まえて判断した飛鳥は無礼を承知で通話に出ると共に、イチカを真似てスピーカーをつけた。

 

「明星さん? 僕だ」

『あぁ、飛鳥先生。夜分遅くに失礼いたします。ミレニアムに咲く一輪の花、月明かりに照らされては月下美人も嫉妬すると有名な明星ヒマリです。実は共有したい情報がありまして……以前、デカグラマトンが放つ特定の周波数をキャッチするべく、ちょっとしたプログラムを作成しましたよね?』

「ああ。一定の域を超えている変調をキャッチする様に僕が調整したものだ。それが?」

『先程、異常な波長をキャッチしたのです。デカグラマトンの預言者が動いたのかと思い調べてみたのですが……これまで遭遇したビナー、ケセドが一定のパターンを有していたのに対してまったく異なる波形なのです。なんといえばいいのかそう……『旋律』とでも呼ぶべきでしょうか?』

「当てようか。その旋律の発信源は、閉園した遊園地跡地だろう? 場所まで言い当てよう。座標は―――」

 

 何か嫌な予感を察知した飛鳥が話を先読みすると、ヒマリは「まあ」と感心した声をあげる。

 

『完全に一致しています。間違いありません。さてでは本題に移りましょう。この旋律、急激に範囲が拡大しています。最初はさほど脅威にはなりえなかったのですが、徐々に音の届く距離が広がりつつあるのです。私が考えるに……地底から地表へと音源が浮上しています』

 

 そこまで聞いたところで、誰よりも先に動いたのはナギサだった。正義実現委員会の生徒達へと向き直り、

 

「今すぐに動きましょう。一体あそこで何が起きているのか、ヒフミさん達が無事なのか、そこを含めて確認する必要があります」

『―――あら、今どなたかと一緒なのですか先生』

「そんなところだ。情報ありがとう明星さん、助かった」

『いえいえ、また何かありましたらこの天さ―――あら? 先生、今新たな波長を確認しました。これは、別の場所からです。なんでしょうこれは』

「新たな波長……?」

 

 これに飛鳥は準備を始めていたイチカ達を「待て」と手で制止する。

 通話越しにヒマリがキーボードを操作する電子音が続き、やがて彼女が息を飲む吐息が漏れた。間違いなく良からぬ事態を想起させ、飛鳥はこれ以上何が起きるというのかと唇を噛んだ。

 

『……海? 市街地ではありません。D.U.海湾からの反応です。動いている? 何かが市街地に上陸しようとしています! 港に設置された監視カメラをハッキング、映像を提供します。ご確認を』

 

 ヒマリから送信された映像データを開くと、夜の暗い港が即座に画面に映り込む。彼女が呟いた『何か』とは一体どの様な外観なのかを確認するべく、飛鳥はじっと目を凝らす。傍らのハナコも身を寄せて覗き込んだ。

 カメラが映し出しているのはD.U.学区の海だが、異様に波が激しい。コンクリートへ打ち付ける勢いたるや、まるで何かが……大きな何かが押し寄せてきている様だ。

 やがて、突如として大波が発生し港を飲み込んでしまう。まさに怒涛の勢いを持った波によって停船していたボートは飲み込まれていき、やがて『何か』の正体がゆっくりと現れた。

 

「こ、これは……!?」

 

 全長はおよそ、五〇メートルはあるだろう。想像を絶する巨体を揺らしながら『何か』はコンクリートを踏み砕きながらキヴォトスへ上陸する。

 その外見は……信じがたい事に、何かの悪い夢だと思いたいのだが、肥満体の鳥である。膨れ上がった体、クチバシからだらりと垂れた舌、焦点の合っていない瞳……酷く見覚えのある、外見をしている。

 

「一体全体、なんですかこれは」

 

 呟きは同じ映像を見ているハナコである。飛鳥が救いを求める様に無言で意見を求めると、彼女は信じられないものを見たと言わんばかりにかぶりを振って応える。

 

「それは僕のセリフだ。なんだい、これは」

「何と言われましても……大怪獣『ペロロジラ』とでも、言うべきなのではないでしょうか」

 

 スランピアから発生する異常な旋律。まるでそれに呼応するかの様に現れた大怪獣。

 果たして、キヴォトスの運命やいかに……!?




誰なんですかねあと4~5話とか抜かしたの
そういうわけでまさかの総力戦開始です
なぁこれエデン条約編まだ2章なんだけど!!!

現時点での投稿頻度に関してどのように感じていますか?

  • 区切っても良いから投稿頻度を上げて欲しい
  • このままもう少し早く出して欲しい
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