先生は世界平和を実験している 作:飛鳥=R♯
ティータイムー桐藤ナギサと飛鳥=R=クロイツ
「ごきげんよう、ミカさん」
「あっ、やっほーナギちゃん。元気そうだね。あはは、ちょっと疲れてる?」
トリニティの恥部として聖園ミカは監禁状態にある。彼女の立派だった自室から引き剥がされ、今や虜囚の身に近い。かつてはティーパーティーの一員であったにも関わらずの仕打ちは、それだけ罪の重さを物語っている。
そんなミカに会いに行くとナギサが言い出した時、周囲は強く反対した。当然である。当初の予定通りに進んでいたならばミカは襲撃の計画を実行するつもりだったのだから。
「……ええ、疲れていますよ。今回の一件で関係各所が大混乱ですから。何せ、最高権力者の一人が内通者だったんですから」
狭い部屋にぽつんと置かれた椅子に腰かけるミカに対し、ナギサはチクリと鋭い言葉で返す。
ハッピーケイオスがミカの計画を乗っ取って引き起こした騒動は飛鳥=R=クロイツの尽力によって犠牲者を出す事もなく、それどころか死んだはずの百合園セイアが戻ってくると言う思わぬ結果で着地した。
とはいえ残った事後処理はといえば想像を絶するもので、ここ数日でナギサの疲労は限界値に達していると言って良かった。そんな彼女の表情に気付き、ミカは気まずそうに視線を逸らす。
「ここに何しにきたの。一発殴らせろって言うなら、全然いいよ。罵っても良い」
「どうせそんな風に一人で自虐を繰り返しているのだろうと思って、顔を出しに来たんですよ」
ナギサはふぅとため息をつき、かぶりを振って応えた。そうではない、と。
飛鳥から事件の裏側で起きていた多くの出来事を聞かされ、ナギサはミカが自分なりに罪を償おうと必死だったのだと知った。無論、あまりにも無理がある独りよがりな行動であったのは間違いない。
ミカは思わぬ返答だったのか顔をあげ、首を傾げた。
「言う事あるんじゃないの。もっとこう、『裏切り者』とか……」
ミカは未だに引きずっているのだ。自らがセイア襲撃を画策した張本人であると発覚し、ナギサに銃を突き付けられた瞬間を。
「ありませんよ。私自身、ケイオスに誘導されるままにミカさんを責めました。その件に関して言える事は何もないです」
「……じゃあ、ホントに何しに来たの」
「顔を見に来た、それでは駄目でしょうか」
適当な椅子を見つけ、ナギサはゆっくりと腰かけてミカに向き合った。彼女の顔が強張っているのがハッキリと見て取れる。どんな事を言われるのか、不安でならないという様子だ。
「飛鳥先生は言っていましたよ。貴女の罪は許されるものではないが、これ以上責めないと。私もそれに倣うだけです。無論、罰自体は受けてもらいますからね?」
「も、もちろん。そのつもりだってば……全部、私のせいだし」
「それです、その顔やめてください」
ナギサは思わず口元を緩め、
「ミカさん、貴女が犯した罪はこれから清算されます。ですがそもそもの始まりであったセイアさんの件は、本人が無事だった事でギリギリですが解決しています。確かに原因を作りましたが……これからを考えていきましょう」
「でも、でもさ、その……」
「私も、先生も、ミカさんの味方で居続けますから」
その言葉こそが部屋に足を運んできた理由だった。元より桐藤ナギサという少女は大切な幼馴染であるミカを守る為、裏切り者を探そうと必死になっていたのである。
だからこそ今も、一度は怒りに支配されてしまったとしてもナギサは友人と一緒にいたいという想いを胸に抱いている。
ぶわっとミカは顔を赤くし、咄嗟に両手で顔を隠して悶々とする。泣き出してしまいそうになっているのをこらえているのだ。何をするにも顔に出てしまう性格である事はよく知っているので、ナギサは口元をほころばせていた。
「……ありがとねナギちゃん。こんな私の事、まだ友達って思ってくれるんだ?」
「元からミカさんの事は、目を離すと何をしだすかわからない人だと思っていますからね」
「ひどっ……! あははっ」
恐らくこれからミカを待ち受けているのはトリニティという花園が持つ陰の面ばかりである。裏切り者という名を背負ってしまった以上、誹謗中傷程度安いものだろう。酷ければ直接的ないじめさえ待ち受けている。
ナギサはそんな彼女を立場上守り切れるとは限らない。むしろ裁くべき立場なのだ。故にこの場でなければ友人として語り合う事など到底できはしない。
しばらくの間二人で笑い合い、友人としての時間を過ごす。それだけの事をするにも周囲の目を気にしなければならなくなったのは、ミカ本人の咎だ。そしてナギサは、飛鳥は、何よりセイアは、だとしても見守っていくと決めたのである。
「あの、ところでミカさん。折り入ってご相談があるんです」
「へ? 相談? なんで? 私に? あ、もしかしてあれ? この部屋も私にとっては広いから地下に連れていくとか?」
「やめてくださいそのノリ。あのですね……先生の好きなものとか知っていたりしますか?」
「先生って、飛鳥先生の事?」
「ええ、そうです。ミカさんは交流を持たれていたんですよね?」
談笑の中で唐突にナギサがそんな話題を振り、ミカは何故そんな事を聞くのかとまた首を傾げる。飛鳥の話題が出た事もそうだが、好きなものなど聞く理由はなんなのか。
ナギサは先程までの凛々しい口調から一転し、口をモゴモゴとさせ、
「その、今度先生とお会いするんです。今回の一件について報告書をまとめたそうで。ですが……ミカさんと同じ気持ちです。彼を疑って色々とご迷惑をおかけした以上は何かしら、お詫びの品でも用意しようかと」
「うーん、そう言われてもなぁ。私飛鳥先生とそういう話しなかったし。ウチのレイヴンならわかるかも」
「レイヴン? あ、あのお付きの方ですか? どこで出会ったのかとか一切説明を受けていないのですが」
「いや、ちょっと長くなりそうだからまた後にしようよ。ねーレイヴン、先生と友達なら何か知らなーい?」
ミカが呑気な声で呼びかけると、彼女が腰かけている椅子の影からぬるりと黒衣の怪人がその姿を現わす。怪奇としか言いようのない登場にナギサが言葉を失っているところ、怪人レイヴンは心底悩んでいる面持ちで、
「―――わからん」
「わからんって、なんで?」
「いや、何しろ肉も嫌い魚も嫌いときている。半端なものを渡すとムズムズとくる物言いでこちらの気分を害してくる可能性がある」
「そ ん な に」
「そんなにだ。お前達からすると聖人君子の様に見える時があるが、彼はハッキリ言って変人だ。どうにもズレる時がある。まぁその、アレだ。普通にもてなせばいい。一番無難だ」
信じられないくらい歯切れの悪い回答だったが、それだけ言うとレイヴンはミカの影に引っ込んでいった。なんだか外見の割にコミカルな動きをするものである。ミカ本人も「何そのアドバイス情報量すくな」と低い声で文句を呟きながら、
「ま、まぁいつも通りのナギちゃんで良いと思うんだ! うん!」
屈託のない笑みを浮かべてこれである。ナギサはうんうんと唸りながら、
「わかりました。では、今まで通りのアフタヌーンティーでお迎えします。ダメですね、どうにも肩に力が入ってしまって」
「ふーん……でもさ、なんでそんなに気合入ってるのナギちゃん? もしかして先生の事好きになっちゃった?」
ほんの冗談交じりな言葉である。僅かではあるが罪悪感や後悔と言う感情を忘れ、年頃の少女らしく友人をからかう目的でミカが言ったつもりだった。
が、ナギサの反応は予想外だった。顔を赤くし、視線を逸らし、挙句に指をもじもじとさせ、
「いえ、別にそういうわけではありませんよ。断じて違います。事態解決の為に体を張ってくれた先生に対して私から何か感謝の気持ちを伝えられないか、私が先生に対してどういう気持ちでいるのかを伝えたいだけです。やましい気持ちなど一切ありません。ええ、それでは失礼します、はい。ごきげんよう」
そして椅子から跳ね上がる様に立ち上がり、脇目もふらずに部屋から飛び出していく。あまりにも直球過ぎるその反応に対してミカは座ったままの姿勢で呆然としてしまい、再び陰の中から出てきたレイヴンも愕然とした表情を浮かべてしまう。
今の反応は見るからにそれらしいものであり、そして疑いようもない。
「あれマジ? レイヴン」
「落差でおかしくならないと良いのだが」
「その反応もマジ?って感じなんだけど。友達なんだよね一応!?」
「ああ友人だ。だがその、凄く嫌な予感がしている。彼はシリアスな雰囲気だと非常に格好がつくんだが、それ以外だと別人かというくらい酷くなるケースが多い。何か問題を起こさないと良いんだが……」
「え~~~……!?」
〇
そうして、ナギサが飛鳥を招きアフタヌーンティーとしゃれこんだその日。思わぬ形で事件は起こった。
「やあ、どうも桐藤さん。元気そうだね」
「お待ちしておりました、飛鳥先生。最近とてもお忙しいと聞いております。いわゆるマルチタスクだとか」
「エデン条約の件もあるからね。どうしてもやる事が増えてしまう」
トリニティが誇る花園の中に作られたテラス席、穏やかな日光の下でナギサと飛鳥は二人きりで茶会の場に立っていた。
飛鳥はいつもと変わらない、先生という呼び名に相応しいスーツ姿である。夏も近付き日差しはじりじりと暑くなっているのだが、どうやらなんともないらしい。涼しい顔で椅子に腰かける姿は、やはりナギサが感じていた得体の知れない人物としての雰囲気を漂わせる。
だが実際はそうではないのだ。生徒の悩み、苦しみに手を差し伸べようとする心の持ち主である事をナギサはよく知っている。だからこそ彼を信じたいと、一人の人間として決めた。
「いや、それにしても……少し気合が入りすぎじゃないかな、これは」
飛鳥が困った風に呟きながら視線を向ける先、二人の間に挟まる様に置かれているテーブルにはこれでもかという程の茶菓子が用意されている。軽食、というにはこれだけで夕食の心配はいらない程だろう。
「いつもこれくらいの量ですよ? たまに食べ過ぎて、その日はもう何もいらないという事もありました。ああ、すべて食べてもらうというわけではありませんからご安心を」
「そ、それはよかった。見ての通り小食でね」
そういって大袈裟に飛鳥は細い指をひらひらと動かしてみせる。本人が言う様に体はとても細い。健啖家とは到底呼べない体格だ。
「ふふふ。その気になれば、私程度の細腕でも抑え込めてしまいそうですね」
「それは冗談だと受け取っておくよ? あはは……さて、こんな場を用意してもらって申し訳ないんだけど、本題に入っても良いだろうか?」
咳払いの後、飛鳥は持参していたカバンから一枚の封筒を取り出す。彼がよく好むアナログでの資料提供だ。
電子データは音声映像文章、すべて改ざん介入の余地がある。しかし物理媒体ならばシンプル極まっている為に盗まれでもしない限り流出の危険性はないわけである。
「今回、トリニティの長たる桐藤さんに共有しておきたい情報の全てだ。目を通してもらいたい」
「かしこまりました。では拝見します」
封筒を受け取り、封入されている資料の内容に目を通していく。
非常にわかりやすく、何より誰が呼んでも理解できる様に記されている。研究者であると以前聞いていたが、肩書通りの手馴れた書き方である。
概要はこうだ。『ハッピーケイオスはゲマトリアなる集団と手を組み、きたるエデン条約調印式に向けて何かしらの策略を練っている可能性がある。策略とは……ミメシスなる正体不明の存在が関わっている』。
「この、ミメシスとは?」
見慣れない単語にナギサは眉をひそめた。事件に巻き込まれた補習授業部の面々から『謎の怪物と遭遇した』という話を聞いていたが、それに関連しているのだろう。
と、ナギサの問いかけに対して飛鳥の目がきゅっと細められる。真剣そのものな眼差しは彼女をドキリとさせた。
「少し話が長くなってしまうかもしれない。頑張って手短に説明するけれど、良いかな」
「え、ええと……必要な説明であるならば、どうぞ」
妙に飛鳥がイキイキとした声色でそういうものだから、思わずナギサは承諾してしまい、
「ありがとう。では、まずミメシスと呼ばれる存在の定義なんだけど……恐らく何かしらの蘇生術というのが僕の考察だ。というのも以前君からも質問された謎の少女『ヴァレンタイン』から端を発してね、彼女は本来ならばもうこの世には存在しないはずの死者だった。でも今回確かに実体を持って復活したわけで、更に言えばラムレザル自身も間違いなく同位相の存在だと断定してしまっていたんだ。となると結論を急いでしまうけれど、ゲマトリア達は何かしらの方法を使って『過去の存在』に実体を持たせていると考えるべきなんじゃないかと思っている」
飛鳥は弾けた。頑張って手短に、と前置きしていたがまったくもって長い。というよりあまりにも早口である。
ナギサ自身は勉学においては優秀な方である。が、飛鳥の言っている事はあまりにも理解しがたい流れで進んでおり、ストップと言う前に彼の舌は先に進み始めていた。
「問題はケイオスがわざわざヴァレンタインを復活させた意味だ。彼女の存在は警告であり尖兵と捉えるべきだろう。つまり最終目標はやはりエデン条約調印式。彼はゲマトリアの力を借り、ミメシスを利用して大規模破壊をもくろんでいると考えるべきだ。百合園さんが提供してくれた未来の話を踏まえれば、なおさら信ぴょう性は高まってくる。今日桐藤さんに会いに来たのは折り入って相談があるからで、調印式に向けて今の内に警備を担当する正義実現委員会に幾つかの連絡事項を―――」
「あ、あの先生?」
ようやく隙を見つけたというところでナギサが介入すると、飛鳥は「何か問題でも?」とでも言う様に目を丸くした。
「ん? ああ、何かな?」
「いえその、どこから指摘するべきなのか……」
「ミメシスの原理に関してという話だったら更に詳細な説明をするつもりだけれど、その場合はあともう一時間程確保してもらっても良いかな?」
「……そういうお話ではなくて、ですね」
「ふむ……トリニティ校内のセキュリティ脆弱性の話だったか?」
ナギサはだんだんと「この人やっぱり変な人かもしれない」という感想を胸の内に抱き始めていた。
補習授業部の指導を行っていた際には強い意思を宿し、自分に対して真っ向から挑んでくるある種の覇気というものを持っていたが、今はまるで別人である。何より豪華な茶菓子を前にしながらそんなものは視界に入らないと言わんばかりのマシンガントークだ。
(レイヴンさんの言っていた事がなんとなくわかってきました)
間違いなく飛鳥は今、ナギサとこの場にいる事の意味をあまり理解していない。『報告の為に来た』。彼の頭にはそれしか浮かんでいない可能性がある。
もしや二人で話せると喜んでいたのは自分だけの空回りだったのかもしれない。そんな気持ちにナギサは胸がざわつき、やがてじわじわとミカの様にちょっとした後ろ向きの考えが湧き上がり始めてしまう。
(―――そう。私は疑いの心からヒフミさん達に迷惑をかけて、先生にまで……そんな人間が何をぬか喜びしていたんでしょう)
「あのですね先生。本日は確かに報告を目的にお越しいただいたわけなのですが……」
「うん。なのでこうして報告書を用意してきた」
「こうして用意した茶菓子は、その」
「その?」
飛鳥は間の抜けた顔でじっとナギサを見つめた後、サッと用意された豪華な菓子に視線を落とし、数秒程考え込んだ。難解な問題に挑む数学者の如き面持ちであったが、やがて何かに気付いた様子でハッとすると、
「失礼―――ごふっっ!!!」
おもむろにまず鮮やかな色のスコーンに手を伸ばし、勢いよく齧りついた。直後に思い切りむせ返り本当に苦し気に咳き込み始めた。
突然の展開にナギサが口をあんぐりと開けていると、飛鳥は唸りながらもスコーンを口に運び、ゴクンと大きな音を立てて飲み込む。
「っ、ふぅ……その、すまない。君の意図というものをまるで読めていなかったみたいで」
「……はっ!? いえ、その意図という程ではないんです!」
「いや、僕とした事が君にとんだ無礼を。本当に申し訳ない……お詫びはこのスコーン二つ目で」
「既に手が震えているじゃないですか……!? 無理しないでください!」
飛鳥はまだ一個しか食べていないというのに青ざめた表情で次のスコーンを手に取っている。どうやら目の前にあるものすべてを食べて見せようというつもりらしい。
ナギサが慌てて制止しても飛鳥はワナワナと震えながら口に運び、もぐもぐと咀嚼していく。
「先生! そこまでしなくても……」
「君に寄り添うと言ったのは僕自身だ。なのに気持ちを汲み取れなかった事を心から謝りたいんだ。すまなかった」
ため息まじりに飛鳥はかぶりを振って、
「一旦報告はやめるよ。ここからは休憩時間。ティーパーティーだとかシャーレだとかは忘れて、お茶の時間にしたい。今からはシャーレの先生じゃなくて、飛鳥=R=クロイツとしてご馳走になっても良いかな?」
「……っ。ええ、もちろんですっ。今日の為に色々ご用意させていただきましたので是非。私も、ただの桐藤ナギサとしてもてなします」
それから飛鳥はまたスイッチが切り替わった。先程までの仕事熱心な様子から一転し、ナギサが振舞う紅茶の味に強い関心を示したのみならず、ナギサが普段学生生活でどの様な取り組みをしているのかなどまでたずねてきた。
ナギサも飛鳥にシャーレでの仕事はどんなものなのか、最近何か困っている事はないのかと話を振ってみると、彼は最近体に疲れが溜まってきているという大人というより老人の様な悩みを打ち明けてくれた。
「それでしたら先生、レッドウィンターの学区内にできたという温泉宿に行ってみてはいかがでしょうか」
「温泉宿……? いつの間にそんなものが」
「トリニティの生徒の間でも少しずつ口コミが広がりつつあるんです。もしも先生にお暇があれば、ですが」
「―――なるほど。湯治というのも悪くないな、うん。じゃあその時は桐藤さんも誘うとしよう。忙しいのは君も同じだろうし。エデン条約がまとまった時にでも」
「え、ええ……! 是非!」
案外一度始まってみると飛鳥の口からはゲマトリアの話題もミメシスの話題も出てくる事はなかった。
やがてナギサは目の前でケーキのイチゴを最初に食べるか食べないかという心底くだらない論争について熱く語る青年がどんな人物なのか、改めて理解し始めていた。
(この人はきっと今の様にいる事が本来の姿なのでしょう。でもきっと何かのせいで、時折見せる冷たい表情を浮かべる様になってしまった……)
それはほんの少しだけ政治と陰謀で疲れ果ててしまったナギサ自身に重なって見えてしまっていた。
そのせいだろう。少しばかり思い切った事を言ってみたくなり、熱くイチゴについて語る飛鳥へとナギサは微笑みと共に、
「飛鳥先生」
「そう、大事なのはイチゴの位置と角度で……うん?」
「また、こんな風にお茶会にお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「それは全然構わないけれど……良いのかい? 君の立場を考えると、距離感には気を付けた方が良いかも」
「適当に理由を作れば良いでしょう。それに、あくまでも個人間のお付き合いですから……ね?」
思わぬ提案だったが飛鳥はしばし無言になり、それから首肯を返した。
「わかった。その時は、僕個人から君に手土産の一つでも持ってくるよ」
「ふふふ……はい、楽しみにしています」
その後、お茶会はナギサが取り寄せた紅茶が実は昆布茶であったなど想定外の事態に見舞われる事こそあったが、最後まで当たり障りもない話題に花を咲かせた。
問題、悩み、多くの事に囲まれている二人であったが……思わぬ形でその親交は深まる事になったのだ。
なお、後日飛鳥がナギサよりもらった茶菓子の余りを放課後スイーツ部に持ち寄ったところ、杏山カズサより
「ねぇ先生これ誰にもらったの? むっちゃ美味しいんだけど誰から?」
「いや、その、誰かと言われると少し答えられないんだ。秘密としか……」
「ふぅん、ふぅぅぅん、ふ~~~~~ん!!!!!」
この様なちょっとした諍いに発展してしまったのだが、それはまた別の機会に。
現時点での投稿頻度に関してどのように感じていますか?
-
区切っても良いから投稿頻度を上げて欲しい
-
このままもう少し早く出して欲しい