先生は世界平和を実験している   作:飛鳥=R♯

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最近間違った投稿が多く申し訳ないです。気をつけます。


Conference

 その会談の場は秘密裡に設けられた。

 イリュリア連王国、アメリカ合衆国、中華連邦、そしてオセアニア連邦。いわゆる『G4』と呼ばれる各主要国の首脳達が法力による秘密会議の場を作ったのである。

 議題は単純明快。現在世界中で立て続けに起きている異変と、その原因と思われるワームホールと、ワームホールを作り出した張本人である飛鳥=R=クロイツについてである。

 

『間違いないのかね? あのハッピーケイオスが関わっているというのは』

『ソル=バッドガイと戦いで消滅したと、そう報告を受けているが……その程度では終わらなかったという事か』

 

 オセアニア連邦、そして中華連邦の首脳は議題の中心ともいえる怪人に対して唸る。特にオセアニア連邦首相はケイオスの狂言に付き合わされ、同胞に銃を突き付ける羽目になった。不快感をにじませるその表情に、イリュリア連王国第三連王、ダレルは深々と頷き、

 

「なんといっても『第一の男』……我々では予想もできない英知を兼ね備えた存在。そもそも神器に相当する兵器で消し飛ばされたくらいでいなくなるものではないと想像するべきだったのかもしれない。重要なのは、我々の世界は現在進行形で異世界からの侵略を受けている点にある」

『侵略、というのはいささか棘のある言葉だな』

 

 ダレルの言葉を咎める様に呟いたのは、アメリカ合衆国大統領のヴァーノンである。良識と判断力を持つ、アメリカという国を率いるに相応しい男は冷静な口調で、

 

『まずその侵略自体が、ハッピーケイオスが単独で行っている事なのだろう。であれば我々が集中するべきなのはそのキヴォトスという世界について情報を集める事、そして行方不明者を捜索する事にある』

「その点はもちろん考慮している。だが重要なのは、高次元世界『バックヤード』とは異なる世界から、何かしらの干渉が起きてしまっている事にある。ここにいる全員は国を、民を守る人間だ。であれば大なり小なり疑いを抱くはずだ―――キヴォトスは侵略者か否か、と」

 

 第三連王ダレル。イリュリアを束ねる三本の矢の一本にして、理性の怪物。第一連王カイがカリスマを持ち、第二連王のレオが士気を高めるとするならば、第三連王ダレルの仕事は人間性をカットする事にある。他の連王では口にできない言葉、考える事さえしない『プランB』、そして最終的な後始末。汚れ仕事専門、そう呼ぶべきだろう。

 幸いな事にダレル本人がそうした立ち位置を嫌っておらず、むしろ自分の仕事と責任を持っている。それ故にイリュリアという国は絶妙なバランスを維持し続けている。

 そして今回も、誰も言いたがらない事こそダレルは率先して口に出した。果たして異世界に住む顔も知らぬ隣人は、自分達に危害を加えないのか?と。

 

『それは―――』

『まだ、何も』

「そう。何も言えない。我々は誰も、キヴォトスとは何たるかをこの目で見ていない。だからこそ私は一人の王として警鐘を鳴らす。もしも、その正体が侵略者であった時……我々は剣を懐に忍ばせておくべきだ、と」

 

 豪華な装飾が施された椅子に背中を預け、あくまでも現実的な視点からダレルは議題に切り込んでいく。異世界キヴォトスともしも交流する機会があるとして、その時手を取り合えるかどうかなど誰にもわからない。だからこそ言わねばならないのだ。『もしも』を。

 現実が親愛なる隣人で終わるのならそれでいい。不安が杞憂で済むのならそれに越した事はない。重要なのは、一人はその様な意見を持たねば調和は取れないところにある。

 事実中華連邦とオセアニア連邦の代表者はダリルの意見に唸り、真剣な面持ちで思案している。

 

「何も、私は戦争を仕掛けろと言っているわけではない。だが歴史は語っている。戦いもなしに穏便に済ませられた事など、まともにありはしない」

『……一理ある。人間と、またはギアと、私達は争い続けてきた』

 

 意外にもダレルの意見に同調してきたのはヴァーノンだった。重苦しいため息をつきながらも彼はまっすぐな目で、

 

『最悪のケースは私も考慮している。少なくとも善人ばかりの世でない事くらいは理解しているからな。だが……同時に私は最初の握手は決して怠らないつもりだ。争わずに、互いの体に血が通っていると理解した上で、アメフトをするくらいの努力をな』

「ヴァーノン大統領。貴方はそれでいい。その心を忘れずにいてくれれば十分だ。ついでに……最初に交渉するとするならば出番は私だ。もしも敵だとすれば、出会い頭に撃たれても誰も気には病まない」

 

 言うならばそれはある種のプロレスと言えた。ダレルが敢えて危険性を煽り、そしてヴァーノンがわざと乗った上で希望を提示する。ただ一心に何事もない事を祈るよりかは、良い意味でも悪い意味でも『もしも』と考えるに越した事はない。

 不必要な信頼、不必要な疑心。それらを取り除いていけば、最終的にはフラットな心で二つの世界が巡り合う瞬間に出会える。今はただ、考えを巡らせるのみだ。

 

『……話が弾んでいるところ申し訳ないのだが、イリュリアで進めているキヴォトスとの交信についてだ。有識者を集めて会議を行っていると聞いている。進展はあったのかね?』

『む、私も気になっていたところだ。第三連王、共有してもらえると助かる』

「心配はいらない。幾度となく世界を救うか、その手助けをしてきた連中が一堂に会している。よほどの事がない限り、迷宮入りにはさせない。それにだ……あそこには今、天才ばかりが集まっている。私が口を挟めない程度には、な」

 

 

「貴方にまた、厄介な役を任せてしまったと思います」

「そう言うな。矢面に立ってもイメージが損なわれないのは私くらいだ。君やレオでは、国民からの信頼を失うぞ?」

 

 『異世界に対する認識は今のところフラットを維持。交渉の場が用意でき次第、改めて』。首脳陣の緊急会議はそこでひとまず幕を閉じ、ダレルは椅子から立ち上がり一部始終を見守っていた第一連王カイに微笑みかける。

 当初、この会議に出席するのはカイの予定だった。しかし土壇場でダレルが『汚れ役は私の仕事だ』と名乗りを上げた結果今に至る。多少強引な交代であったものの、彼の判断は間違っていなかった。異世界からの侵略、現状はそう受け取られても仕方ない。そんな中ではダレルの様に冷静に物を言える人間の方が場を制しやすい。

 理想論ではなく現実的に、それでいて落としどころを探る。『根回し王』と呼ばれる所以がそこにあった。

 

「さて、ひとまず主要国はキヴォトスという見えない隣人を敵としてではなく、あくまでも正体不明に留めた。裏を返せば、いつでも『撃て』と命令できる余裕も与えられている。私としても一番の落としどころだ」

「……私もできれば争いなど起こらないと信じたい。言葉を交わす程度で互いの心を通じ合わせる事ができればそれに越した事はないと」

「だが現実にはそう断じられはしない……世界平和、口にするのは簡単がそれができないからこそ我々人類は随分と長い間迷い続けているのだから」

 

 やはりダレルの視点はカイには持ち得ない。人間を信じていない、というより人間がたどり着ける天井も、落ちた果ての底も彼は理解できている。だからこそわざと冷めた目から物事を観察し、たとえ憎まれ役になるとしても正論を口にできる。

 そういった側面から見れば、ダレルは最も王という役割に向いている。ある意味イリュリアの良心なのかもしれない。

 

「しかしだな、カイ。本当に君の、我らの友人達は異世界との道を繋げるのか?」

 

 会議を終えた二人が向かう先はイリュリア城内の司令室だ。そこに仲間達と、『援軍』が揃っている。

 二度目のワームホール出現、そして大規模な情報体フレアの発生。いよいよもっていつも通りの『世界の危機』がやってきた為に見覚えのある顔がぞろぞろと城内に集まりつつある。いつの間にやら、イリュリア城は『異世界対策本部』の様相になりつつあった。

 ダレルの疑問にカイは首肯を返し、

 

「今はどんな手掛かりでも欲しい。それならばできる限りの手を打ち、悪あがきだとしても調査を続ける必要があります」

「そのお題目は良いのだが、私はいかんせんこの城で行われている事が、どうにも……信用しきれない。あのイノと同じ力を持つ過去からのタイムトリッパー? 本気で信じろと言うのか」

「アクセルの力は本物です。ホワイトハウスでの一件で私も肉眼で目撃していますから」

「―――君がそう言うからには本物なのだろうが」

 

 司令室入口に立ち、ダレルはかぶりを振りながら分厚い扉を開く。その先に広がっているのは―――

 

「よっしゃあ! 気張らんかいアクセル! こんタイミングこそ男の見せどころだっちゃ! もしも眠れんっちゅうならオイがよう効く酒の一杯か二杯は奢っちゃるけんの!」

「ゆ、夢に繋がる為に重要なのは意図的に識別IDを多次元化させる事です。肉体ではなく精神で、そう、ノンレム睡眠状態を意識してみてください。夢の中だと認識していけば次第に自我領域を拡大させて自由に動けるはずですから……」

「あの~~~~!!!! 誰か~~~~!!!! このプロ二人組の言ってる事、もうすこ~~~~しだけ可哀そうなアクセルにもわかる様に教えてくださ~~~い!!!!」

 

 奇怪な言動、外見。情報空間バックヤードで生まれたが故にその内情にも詳しい男イズナ。

 あのベッドマンの妹にして本人も特殊な能力を持つ少女ディライラ。

 今回の事件を解決するべく集まったプロフェッショナル二人に囲まれ、アクセルは悲痛な悲鳴をあげていた。

 その模様を尻目にダレルは呆れた顔で肩をすくめ、

 

「カイ頼む。『これで問題なし』と、胸を張って私に言ってくれ」

「は、ははは……」

 

 懇願にも近い訴えを、カイは苦笑いで程々に回避してしまうのだった。

現時点での投稿頻度に関してどのように感じていますか?

  • 区切っても良いから投稿頻度を上げて欲しい
  • このままもう少し早く出して欲しい
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