先生は世界平和を実験している   作:飛鳥=R♯

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すみませんマジでドタバタしたせいで間隔空きました。しかも短い。
必ず明日続き投げます。


Sister&Fox

━━━数日前。

 イリュリア城を一人の少女と、彼女のボディガードであるベッドが訪ねてきた。

 見ず知らずの人間ではない。その存在は以前ラムレザルの報告から判明しており、内密ではあるがイリュリア内でも観察対象として指定されていた。

 名前はディライラ。『慈悲なき啓示』と結託し世界に混乱をもたらした『ベッドマン』の妹であり、彼が悪魔に魂を売ってでも守り抜こうとしたたった一人の肉親だ。

 

「……お、お姉ちゃんは目の前で消えました。でも物理的な消滅じゃありません。転移です。転移が起きたんです、間違いありません」

「連絡を取ろうとした矢先にこれ、か」

 

 用意された椅子にちょこんと腰掛け、そこから当然の権利だと言わんばかりに所望したドーナツを片手に、ディライラは自分の保護者が『いなくなった』経緯を語ってくれた。

 まだ幼い少女である事を考慮し、部屋には彼女とカイの二人だけの空間となっている。『爆発』されたらたまらない、というのが最も大きな理由だ。

 

 アリエルスが提案した『バックヤード』内探索の為にピックアップされた二名の内、最も重要とされていた存在、それがディライラである。

 彼女自身、兄がそうであった様に超常的な能力を扱う事ができる。加えて夢の中に意識を閉ざしていた過去を持つならば、アクセルが出会ったという百合園セイアと再び交信する手がかりになり得るのだ。

 

「ディライラさん、梅喧さんがどこへ転移したのか……検討はつきますか?」

「わかりません。痕跡みたいなものもあんまり感じられなくて。本当に消えたみたいで。お姉ちゃん言っていたんです。『何かあればイリュリアを頼れ』って……あの、お姉ちゃんは無事なんですか?」

 

 ディライラの瞳は動揺から揺れている。梅喧は彼女にとって母親同然の存在だったのだ。それが忽然と消えてしまったとなれば、取り乱すのも当然である。

 カイはディライラと目線を合わせる様にしゃがみ込み、敢えて真実を述べる事にした。

 

「━━━彼女がどこにいるのか、我々も完全に断定できてはいません。ですが今、助ける為に必要な手がかりを掴んだところです。ディライラさん、幼い貴女にこんな事を頼みたくはなかったのですが……力を貸してもらえませんか?」

「私の、力?」

「今回の時間には『バックヤード』の存在が深く関わっている。未だ人類にとっては未開の地です。解き明かす為の知恵は多い方がいい。何より、貴女の得意な分野です」

 

 使える手はすべて使う。そうでもしなければ、恐らく今世界に迫る危機を打破するなど到底できない。ディライラはその鍵を握っていると言っても良い。

 今はたとえ幼い少女であろうとも、力を借りなければならない。カイは断固とした決意を胸に向き合っていた。

 ディライラは少し面食らった様子でいたが、やがて視線を漂わせながらもコクリと頷き、

 

「わ、わかりました。お姉ちゃんを助けられるのなら、協力します。毎食ドーナツを食べられるなら尚更」

「……流石に成長期の子供にそんな食生活をさせるわけにはいきませんので約束できませんが、必ず梅喧さんは助けます。ドーナツは、ティータイム時でどうでしょうか?」

 

 年齢こそ幼いが、少々ふてぶてしいところがある。元より個性的なメンツが集まっているイリュリアに、またもや強烈な人間がやってきたものだと、カイは内心で苦笑するのだった。

 

 

「戻ってきた、この身一つで戻ってきたとよ、不肖イズナ! ささみチキンの汚名は返上! 今からオイは霜降りステーキと言うたところかいな!」

「―――おいシン。一発ぶん殴ってやれ、うるさくてかなわねぇ」

 

 新たな仲間はディライラだけではない。アリエルスの指定した場所に向かったDr.パラダイムは心強い助っ人を一人連れ帰ってきていた。

 『バプテスマ13』事件において『バックヤード』からの侵略者の存在を警告し、そしてソル達とも共に戦った気ままな剣士。それがイズナである。なんといってもその外見は異人と呼ぶにふさわしく、獣の耳を頭に生やしジャパニーズの文化を真似た、まさに異次元じみた存在だ。

 もちろんこんな風貌で司令室にやってきたものだからイリュリアの面々はそれはもう驚いていた。人でもない、かといってギアでもない。言葉を失うのは当然の反応だろう。

 

「ちょっ、ちょいと待ちぃやソル。折角オイが助けにきてやったっちゅうに、そないな態度取らんでも……」

「まぁまぁ、今オヤジも疲れてんだ。色々あったからよ!」

 

 司令室に飛び込んで早々に上機嫌な様子で見栄を切ったイズナだが、彼を迎えたフレデリックの眼差しは冷たい。何しろ『バプテスマ13』の時から変わらずのテンションなのだ。それなりの非常事態だというのに元気なものである。

 一人悲しむイズナの肩を脇からシンが叩いて励ますものの、獣人は奇妙な言動のままでわざとらしく布切れで涙をぬぐうフリをし、

 

「う、ううう! シン、ちぃっと見とらん内にいつの間に大人になっちょって……親父さんに似てイイ男じゃあ! あとでオイがお駄賃あげるとよぉ」

「え!? マジ!? ありがとよイズナのおっちゃん!」

「テメェまでうるさくなってどうする……」

 

 少し重苦しい空気にあった司令室の空気が多少なりとも軽くなった感覚はあるものの、能天気なイズナとシンを除いてその場にいる全員の空気は重い。

 オペレーター達を除けばフレデリック、レオ、そしてシンの三人なのだがシン以外の二人はあまり口を開こうとしない。イズナがイリュリアにやってくる前に起きた出来事を踏まえれば、多少なりとも緊迫感を持つのは当然だった。

 二度目のワームホール出現。そしてそこからの新たな誘拐。今度はチップ・ザナフと来ている。唯一の手がかりとなるのはアクセルが夢で会ったという少女のみと来れば、多少なりとも無力感に苛まれるものだ。

 フレデリックは何やら深く考えている様子だが、レオはわけもわからず進む事態に苛立っている様だった。

 

「まっ。話はパラダイムから聞いてるダニ。『バックヤード』とは別の世界からの攻撃……そして反撃の為にオイの力が必要、と。まぁ大船に任せたつもりで頼むぜよ。見かけ以上に力になる自信はあるっちゃ。んまぁ後は……もそっと皆、元気を取り戻した方がよか。うし、ここは一つオイがバカウマギャグでも一本……」

「いやぁそれは良い。確かに俺達は今の事態に対して苛立ってはいるがそれは良い。いらないぞ、イズナ……と言ったか」

 

 一人で勝手にボルテージが上がっていくイズナをレオが手で制しつつ、ため息を共に、

 

「だがまぁ、一刻も早い現状打破が必要なのは確かだ。俺達が持つ最大の戦力、アクセル=ロウを意図的に異世界キヴォトスへ意識だけでも送り込める様にしておく必要がある。イズナ、その為には貴様の能力が不可欠だ」

「まっかせておきんしゃい。こう見えて、多分ここにいる誰よりもオイはあそこ(バックヤード)には詳しいつもりたい。別の世界というのも、さっさと見つけてやるきに」

「その心意気や良しだが……少し待て、今とうのアクセルが準備中だ。なんでも快眠の為にベッドをこしらえているそうだ」

「快眠だ? あの野郎、どこだろうが簡単に寝られちまう能天気な野郎だぞ」

「アリエルスの要望だそうだが……」

 

 呆れ果てた様子のフレデリックがひらひらと手を振って呆れ果てていたところで、何やらドタバタと忙しない音が部屋の外から聞こえてくる。こういうタイミングでの物音など大体ろくでもないのだが、今更どんなトラブルが起きようと驚くものでもない。

 だが、フレデリックはピクリと片方の眉を吊り上げ、嫌な予感を覚えていた。

 

「おい、確かディライラとかいうガキがこの城に来ていたな?」

「ああ、そうだ」

「あのガキのそばにいたバカでかいベッド、アレはどこに行った?」

「それなら俺が知ってるぜオヤジ。ベッドマンだろ? 確かアリエルスの奴がどこかに連れて行って……うおおおすげぇ超スーパーデンジャラスな気がしてきたぜ俺!!」

 

 シンの言葉を遮る様に、司令室の扉がこじ開けられる。襲撃かと全員が身構えたところで、乱入者の正体に気付いた全員が目の前の光景を信じられずに眉をひそめていた。

 

「あ、あの、どなたかこの、変なベッドさんから俺を助けてくんない……?」

 

 一体全体、何をどうしたこの様な展開になるのか。異世界キヴォトスへの大きな手がかりとなる男アクセル=ロウは、不気味なベッドに縛り付けられて今にも泣きそうな悲痛な表情を浮かべているのだった。

現時点での投稿頻度に関してどのように感じていますか?

  • 区切っても良いから投稿頻度を上げて欲しい
  • このままもう少し早く出して欲しい
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