先生は世界平和を実験している   作:飛鳥=R♯

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さぁ遂に始まりますエデン条約完結編。
10話以内に終わらせたらご喝采……!
あとがきに色々話したい事あるので書いときます。


Vol.6 OVERTURE
話し合い


――アビドスにとって飛鳥=R=クロイツとは?

 

「うへぇ~、え、飛鳥先生? おじさんにとっては……うーんなんだろうね、とりあえず困ったら頼み込むと助けてくれる人? あとラーメン奢ってくれる人?」

「それホシノ先輩が圧かけてるだけでしょうが! えーと、それで先生の事? なーんか頼りないところあるんだけど、なーんか悩みとかあると連絡しちゃうタイプなのよねぇ。別に完璧な答えが返ってくるわけじゃないのに相談はしちゃうっていうか」

「ん、安定感がある。不安定な時もあるけど、数字の話を振るとまず間違いはない。便利な電卓枠みたいになる時がある」

「ちょ、ちょっとシロコ先輩!? あ、あはは……私達の悩みにも真摯に寄り添ってくれる人です。ちょっと変なところありますけど。そうですよね、ノノミ先輩っ」

「はい! そうですよぉ。でも運動がちょっと苦手なところあって~……この前なんかダンベル持とうとしてひっくり返っちゃったりとか~、あれ、そういえばこれ飛鳥先生が見られるんですよね? せんせ~、今度一緒に運動しましょうねー!」

 

―――ミレニアムにとって飛鳥=R=クロイツとは?

 

「はい! 飛鳥先生は魔法使い、僧侶枠です。紙装甲でモヤシで運動不足ですが魔法を使えるのでパーティーで重宝しています!」

「アー……補足するゾ。頭は良いから勉強とかで相談すると教えてくれるからウチのアホ共はよく頼ってル」

「あっ、ロボカイ酷い! 難問だよ、難問を答えてもらってるだけだから!」

「アホ! 全部やらせようとしていた奴の言う事信じられるカ! テレビに出るんだからちゃんとせんカ!」

「すみません、ウチの部が騒がしくて。というか大丈夫なんですか? ミレニアムを代表するのが私達で。絶対他にあると思うんですけど。それに部長、ロッカーから出てきませんし。ああでも……先生が頼れるのはホントの話ですよ。私達みたいな、普通なら愛想尽かされそうな生徒にも手を貸してくれたので」

 

―――トリニティにとって飛鳥=R=クロイツとは?

 

「はぁい!!!!!! 自警団のスーパースター宇沢レイサがお答えしますよ!!!!!!! 飛鳥先生はですねぇ、兎にも角にもか弱い人ですが曲がった事は嫌いなのが伝わってきますよぉ!!!!!!!」

「宇沢うっさい! あーあの人? あの人ねぇ……無理して不向きな事にまで頑張らなくても良いのにって思う時はありますけどね?」

 

 

―――貴方にとって飛鳥=R=クロイツとは?

 

 

「面白いですね飛鳥先生。皆さん、好意的な反応が多いみたいですよ」

「うーん……なんというか、皆一回は僕に辛口な評価をしている気がする。大体体力面で。何故だろうか?」

 

 クロノススクールが配信する特別番組『飛鳥=R=クロイツの真実に迫る!』の内容に目を通しながら飛鳥は苦笑いを浮かべ、隣から覗き込むハナコは心底楽しそうにクスクスと笑っている。他人事だと思って呑気なものだ、と非難を込めて彼がジロリと視線を投げかけると、

 

「事実だと思います。でもよかったじゃないですか、皆さん心配されているという証拠ですよ。飛鳥先生枯れ枝みたいなんですもの」

「好きで枯れ木じゃないんだけどな……まぁこれは置いておこう。そろそろ時間だ、桐藤さんに会いに行こう」

 

 腑に落ちない、と言いたげに口をきゅっとしながらも飛鳥は端末を仕舞い込んで席を立つ。

 二人はトリニティの一角、待合室とでも言うべき場所で時間を潰していた。これからティーパーティーを中心に、今後の方針を改めて話し合う予定なのだ。無論議題は『エデン条約調印式について』である。

 扉に手をかけて廊下へと出ると、迎えに来たらしいシスターフッドの生徒が見えた。『補習授業部』の合宿場所まで訪ねて来てくれた伊落マリーである。

 

「ああ、飛鳥先生。お迎えに上がりました。皆さんご準備できたそうです」

「ありがとう。少し緊張するな……別にスピーチをするわけでもないのに」

「飛鳥先生のご意見を聞きたい、と皆さん一致しているんですよ。ハッピーケイオスの動向については特に」

 

 ハナコの捕捉にうん、と飛鳥は曖昧に相槌を打ちつつ、今頃また暗躍をしているであろう師匠の姿を思い浮かべる。

 ゲマトリアと手を組み、消えたはずのヴァレンタインを復活させた。ナギサをかどわかしトリニティを混乱に陥らせた。これだけの事をしながらも彼は『まだ』と言い残している。

 エデン条約調印の日。間違いなくそこを狙ってケイオスは動いているのだ。

 

「……よし、行こう。話は早い方が良い」

 

 長い廊下に靴音を響かせながら進んでいくと、ある地点から警備の生徒達が増え始めた。銃を構え怪しい者は即座に撃ってやるという警戒心に満ちているが、時折その刺々しさは目の前を通り過ぎる飛鳥にも向けられる事があった。

 敵意。理解できない、許容できないものに対する排他的な心。それが今、少なからずトリニティに漂っている。

 

 キヴォトスに住む多くの人間が飛鳥の『力』を目撃した。驚く者もいれば規格外の現象に喜ぶ者もおり……怖れを抱く者もまたいる。その比重がトリニティは特に偏っているわけだ。

 廊下を進み続け、大きな扉の前に立つ。警備の生徒が力を込めて扉を押し開けると、長机を囲う様にしてトリニティの有力者達がずらりと飛鳥を待ち受けていた。

 

「飛鳥先生、お待ちしておりました。おかけください。お茶もどうぞ」

 

 まずナギサがそう促す。言われた通りに一番手近な……彼女と向かい合う様になる位置に腰かけ、美しい装飾が施されたティーカップに注がれた紅茶を口に含む。程よい温かさだ、リラックスしやすい。

 

「うふふ、皆さん怖い顔をされていますね。先生、気圧されないでくださいね?」

 

 心を読まれていたのか当たり前の様に近い席に座ったハナコはニコニコと笑みを浮かべて飛鳥の様子を窺う。味方のはずなのだが今は彼女が一番の圧を感じさせる。困ったものである。

 そして意を決して視線を動かし、テーブルについている生徒達へと目を合わせに行く。

 まずは『救護騎士団』の団長、ミネ。苛烈という言葉がよく似合う鉄の如き頑強さを持つ少女。そして彼女に守られる様にして……死んだはずのセイアがいる。まだ体調は万全ではない様子だが、最後に会った時より幾分か顔色は良くなっている。

 

「百合園さん、元気そうで何よりだ」

「同じ言葉を返そう。以前よりも疲労が顔に見える。会議と聞いて肩に力が入っているだろうが、そこまで気張らなくても大丈夫だよ」

 

 気を遣われてしまったな、と苦笑しつつ飛鳥はもう一方にいるサクラコに顔を向ける。

 トリニティの暗部とでも言うべき集団『シスターフッド』の長にしてマリーの上司にあたる、まだ奥底の知れない生徒だ。口をきゅっと結び何か思案している。

 と、空気を一変させるべくナギサはこほん、と咳払いをし、

 

「さて全員揃ったところで改めて状況を把握しようと思います。まずは一番大きな問題として『エデン条約』をどうするのか……です」

「この場にいる誰もがこう考えるだろう。『ケイオスに襲撃される可能性が非常に高いのに調印式を行う必要はあるのか?』と」

 

 この場を進行していくのはティーパーティーであるナギサとセイアの二人だ。生徒会に位置する以上は誰よりも権限を持っているのだから当然と言えば当然なのだが……メンバーの一人がクーデターを画策した事もあり、その足場は不安定である。

 だが今その事を指摘する者はいない。待ち受ける条約を一体どうしようというのか、そこは目を背けていられない。

 

「ハッピーケイオス。人の心を惑わせ、世を乱す怪人。彼が単独犯ではなくかつて我々トリニティが弾圧した『アリウス』と結託した事はわかっている。そして先日の襲撃は前哨戦だ。本丸はトリニティとゲヘナが手を取り合おうかというエデン条約、その調印式とみていいだろう」

「……中止、それが現状では最良の判断ではないでしょうか?」

 

 誰よりも先にハッキリとそう発言したのはサクラコである。ナギサとセイアは反論はせず、コクリと頷く。

 

「ええ、我々も当初は検討しました。わざわざ襲撃の場を設けるなどケイオスの思う壺だと。ですが……」

「ケイオスとアリウス、その双方をここから先放置するわけにもいかない……ですね?」

 

 ナギサの言葉を遮り、ミネがよく通る声でそう言った。揺るぎない視線は力強い。強者、その言葉がよく似合う。

 

「―――確かに。調印式に攻め込まれる可能性はゼロじゃない。戦闘が起きる可能性も十分にある」

 

 最後に口を開いたのは飛鳥だ。この場にいる誰よりも弱々しくか細い姿ながらも、声は誰よりもハッキリと室内に響き渡った。

 

「けれどケイオスとアリウスから目を背けるわけにもいかない。彼はエデン条約がなくなるならばそれでよいと笑うはずだ。それでよいと笑い、また別の機会を窺う。僕らの気が緩んだその時を狙って」

 

 重苦しい沈黙が場を支配する。誰もがそう考えてもいたのだ。ひとまず現状維持をしようにも、それを許してくれると楽観的な考えが通用する相手には思えないと。

 

「……アリウスもです。彼女達はずっと前から動いていた。調印式が中止だと言って引き下がるとは思えません」

「つまりだ、諸君。我々はエデン条約を果たさねばならない。トリニティの為にも、キヴォトスの為にも」

 

 ハナコが飛鳥を援護する形で呟くとすかさずセイアが拾い上げ、議題を結論へと運んでいく。

 キヴォトスを混沌の坩堝に落とそうとする者がいて、トリニティに恨みを持っている者もいる。

 その現実から逃げる事も、目を背ける事もできない。立ち向かい乗り越える以外の道はないという事だ。

 サクラコは口を閉ざし承諾しかねるといった様子だ。無論、その反応を誰も咎めはしない。

 故に飛鳥は決意を込め、勢い余って椅子から立ち上がる。拳を気持ち強く握り締める。

 

「だから僕は決めた。君達の為に戦うと。先生として……君達を守ると」

「飛鳥先生……」

 

 飛鳥の宣言にナギサは不安げな声を漏らす。彼女の目から見てさぞ無理をしている様に映っているのだろう。それを否定はしない。たった今発した内容は人間一人に背負わせるには荷が重すぎる事は承知の上だ。

 だが、飛鳥=R=クロイツに撤回する理由はなかった。

 

「信用できるか、と言いたい気持ちはわかる。その上で僕ではなく、僕の『力』を信じて欲しい」

 

 果たしてその呼びかけにミネとサクラコは顔を見合わせ、ため息を一つ漏らした。

 

「……貴方お一人の話ではないでしょう。救護騎士団はどんな時であれ、鉄の意思を以て戦います。いつ何時であっても」

「―――シスターフッドはトリニティの安寧を守る事が使命です。どの道ゲヘナとはいずれ手を取り合っていかなければなりません。腹を括る、という奴ですね」

 

 目的は一つ。ケイオスを倒し、エデン条約を結ぶ。それ以外の道はない。

 大きな連帯意識を持ち、ややぎこちないもののトリニティの意思は統一する方向に向かいつつあった。

 生徒達の決断にゆっくりと頷きながら、飛鳥は内心では既に次なる一手へと意識を向ける。

 トリニティの団結だけでは事態は解決しない。もう一方の学校、ゲヘナの『万魔殿』にも協力を仰がねば……。

 

 

「キキキキ! よく来たな先生! 『万魔殿』は貴様を歓迎するぞ。さぁこれはあいさつ代わりのミルピコだぁ!」

「……ん?」

 

 そういうわけでナギサ達に了承を取った上でゲヘナまで足を運び、『万魔殿』のリーダーであるマコトに会いに来たのだが……案内された議事堂で待ち受けていた彼女の様子は既に何かおかしい。

 腰かける様に促されたテーブルには白濁色のジュースが置かれている。急に何事なのだろうと首を傾げながらちらりとマコトを窺うと、『万魔殿』の制服に似つかわしくない星型のサングラスなどかけている。

 なんだかな、と思いつつも顔に出さない様に椅子に座りじっとサングラスを見つめているとマコトはニヤリと笑い、

 

「む? どうした飲まんのかミルピコ。美味いぞミルピコ」

「うん、美味しくいただきたいとは思うんだけどなんだか変な感じがするなと思って」

「ん~? そうか? 私はいつも通りだが??」

「……ケイオスに何か吹き込まれたかい?」

「ん? ん? 何の事かわからんな!」

 

 まぁ、恐らくこうなるだろうと思っていた事が本当に起きていたもので飛鳥は若干呆れ交じりの眼差しでマコトを見つめる。

 どうやらケイオスはゲヘナを訪れたらしい。ヒナ達風紀委員からの情報がなかった辺り忍び込みでもして、ゲヘナの長であるマコトに何か話したのだろう。明らかに何か仕込まれている。洗脳……ではなく、彼女に利がある話でもしたに違いない。

 

「―――もう一回聞くけれど、ケイオスに『トリニティを滅ぼす簡単な方法』でも聞いたのかい? 彼が割と真面目な危険人物である事も?」

「ん~、飛鳥先生。あまり私を見くびらないでもらいたいな。知っている通り、私は秀才だぞ」

「初めて聞いたよ」

「リーダーシップもある」

「それも初めて聞いたよ」

「人望もある」

「初めて聞く事ばかりだよ」

「そんな私が……怪人ハッピーケイオスの息がかかっているなど! キキキキ、そんなはずがないだろう?」

「ねーマコト先輩~この前のサングラスの人にもらったこのぬいぐるみお店で売るって話どこ行ったの~」

 

 いつの間にか議事堂に入り込んでいたらしいイブキがご機嫌な様子でマコトに駆け寄り、勢いそのままに抱き着いてくる。その手には……ケイオスに似ている何か、もふもふの、妙に愛嬌のあるぬいぐるみがあった。

 恐ろしい程空虚な目、その割に自己主張の激しい角と青肌。ケイオスのぬいぐるみ、だろうか。

 

「あっ、だ、ダメだろうイブキ。今私は先生と建設的な話をしていてな……」

「えー!? でもサングラスの人に『我々は今この時を持って超建設的なビジネスライクなパートナーシップを結んだ!』とか握手してなかった~?」

「う、うん? な、何の事だイブキ~、イロハのところに行っておけ~な~?」

 

 ぴょんぴょんと跳ねながら口を尖らせるイブキを必死になだめながらマコトは汗をかきながらチラチラと飛鳥の様子を窺ってくる。もはや何も隠せていないし、そもそも最初からバレバレだったので追求しようという意欲もあまり湧いてきてはいない。

 一体ケイオスと何を話したのかさっぱりわからないが、どうやら軽く丸め込まれた様に見える……。

 

「羽沼さん」

 

 とりあえず最初は優しく。

 

「まぁ待て先生。私の話を聞け。これはだな……」

「羽沼さん」

 

 次に無言の圧を。

 

「物事にはこうボタンの掛け違いというものがあってだな」

「羽 沼 さ ん」

 

 最後に割と強めに。

 

「……うむ、最初から話す。話し、ます」

 

 マコトは観念してガックリと肩を落とし、この世の終わりを見たかの様に悲壮な表情を浮かべるのだった。




GGST設定資料集発売したので見たんですが飛鳥の右目は羽でコインが蓋をしているそうです。そして羽はXrd登場時の様に右目から直接生えてるそうです。
だから!
羽って!!
なんやねん!!!

現時点での投稿頻度に関してどのように感じていますか?

  • 区切っても良いから投稿頻度を上げて欲しい
  • このままもう少し早く出して欲しい
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