先生は世界平和を実験している   作:飛鳥=R♯

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最初は短編のつもりだったんですが、書いてみたい事が出てきたので連載にしたいと思います。
あと何話か書いたあとはブルアカ本編にも手をつけていくつもりです。



先生は便利屋をかなり勘違いしている

 『便利屋68』、陸八魔アルを社長に据えたこの会社は顧客を選ばない。依頼料さえ積まれればどの様な仕事でも請け負い、そして闇に生きるアウトローらしく完遂してみせる所存である。

 元はゲヘナ学園の生徒達であったが、その悪行により空崎ヒナが統率する事実上ゲヘナの治安維持部隊である風紀委員会を敵に回してもなお存続している強大な組織であり、今後のキヴォトスで主導権争いに参画する日もそう遠くはない。

 便利屋68を構成する生徒は全部で四名。

 社長、陸八魔アル。個性的なメンバーを率いて会社を経営するアウトロー中のアウトロー。恩を受けたラーメン屋を木っ端微塵に吹き飛ばす、極悪人そのものだ。

 課長、鬼方カヨコ。便利屋68のブレイン担当であり、冷酷そのものである鋭い視線と面持ちに誰もが恐れを抱き道を開ける。ゲヘナ学園の生徒という恐怖を著しく欠く者達を除けばであるが。

 室長、浅黄ムツキ。便利屋68の歩く火薬庫。高らかに笑い、息をする様に爆薬をばらまいて辺り一帯を焦土と化す恐ろしき人物である。

 社員、伊草ハルカ。アルの忠実な部下であり、彼女に危害を加えるもの、加えうるものに対して徹底的な攻撃を仕掛ける狂犬であり便利屋内で最も予測不可能な存在だ。

 

 そんな恐るべき便利屋68が居を構える場所、それは豪華絢爛な高層ビル……でもなければ犯罪者がたむろする危険地帯の中心部……でもなく一見平和に見えていつでも組織間抗争が行われそうな不気味な静けさに包まれた団地でもなく……ゲヘナの端も端、誰も立ち寄らない小さな小さな公園である。

 

 

「―――――テント泊、何日目だったかしら」

「一ヶ月、一ヶ月は続いていると思うよ。我らが『社長』」

「えー、事務所追い出されてもうそんなに経つんだー?」

「い、一ヶ月アル様と狭いテント内でいただなんて恐れ多いです……ちょっと何処かの組織に襲撃をかけるべきでしょうか?そ、それとも臓器を売る……?」

 

 便利屋68の現在の事務所、もとい住居は公園内に無許可で設営されたテントである。仮にも年若い十代の少女達が生活するにはあまりにも狭く、貧乏という言葉がこれほどまで的確な状況はそうそう無いだろう。

 テントから出たアルが少し背伸びをしただけで、体の各所からポキポキと骨が小気味良い音を立てる。狭苦しいテント内で固まって寝るのだ、姿勢も固定されて全身が悲鳴をあげてしまっている。

 

「どうして、どうしてこんな事に……?」

「アルが見栄を張って受けた依頼が」

「すっごいややこしくて大変な事になって」

「わ、私がアル様の為とその場を爆破したせいで……ごめんなさい、ご、ごめんなさい……」

 

 端的に言うならば、アル達は大赤字だった。便利屋であるものの便利屋としてまともに仕事をこなせた事など数少ない。報酬を受け取る為の業務が、気付けば最終的には収支マイナスに落ち着いてしまうのだ。

 その理由はアルがキヴォトスで最高のアウトローを目指すばかりに少々身の丈に合わない事をしでかし、それを社員達が理解している上で後押ししているせいである。つまるところ便利屋というよりはトラブルメーカー、それが彼女達四人なのだ。

 

「そろそろ新しい事務所を見つけないといけないわねこれ。食費さえかなり厳しいわ……」

「場所を点々としながらテント泊を続けているけれど、流石にこれ以上は風紀委員の目につくかもしれないよ」

「それにムツキちゃん、そろそろ雑草食べるのも辛くなってきたかなってー……」

 

 わかっているのだ。このままでは恐らく便利屋68は住居さえ失い、無残な最期を遂げるのだと。

 では便利屋らしく依頼を受ければよい。キヴォトスは常に破壊と暴力が満ちる危険な世界なのだ、要人警護、用心棒、雑用、いくらでも助けを借りたい者達がごまんといるはずである。

 だというのにアル達への依頼は滅多に来ない。それは彼女達が依頼を受ける度に凄まじい破壊をもたらし、マイナスの結末ばかりを産み出してしまうのをキヴォトスの住民達がにわかに理解し始めているからだ。

 

「……ビラを配って宣伝?いやでもそれってアウトロー的にどうなの?アウトローって、極悪人ってビラ配りするものかしら?」

「少なくとも配らないし、配るとしても部下にやらせるものだよ。一〇〇人とかそれくらいの数で」

「わ、私配ってきますよ!死ぬまで配れます!!」

「やらなくて良いから!そんな手段、全然格好良くない!やっぱりアレよね、ビシッと一発キヴォトス中を席巻するくらいの大きな仕事で名をあげるのが一番―――――!」

 

 そこで、アルの腹から地鳴りの様な音がこぼれる。昨夜は何を食べたかと思い出そうにも、空腹状態ではまともに頭も動かない。がっくりとうなだれて、アルは「ひぃん」と短く呻いた。

 

「突然空から食べ物降ってきてくれないかしら……本当に」

「私お肉!お肉降ってきてほしー!!」

「二人共、気持ちはわかるけれどそんな奇跡が起こるだなんて考えられないよ……ん?」

 

 天を仰ぎ叫ぶアル、同調するムツキ。ただむせび泣くハルカ。便利屋68の運命やいかに、とでも締められてしまいそうなところで、カヨコは同じように頭上へ目を向けて、ギュッと眉をひそめていた。

 透き通る様な青い空、何かがふわふわとアル達のいる公園へと近付いてきていた。左右に不規則な揺れ方をするソレは、どうやらドローンらしい。

 

「ねえアル、アレは……」

「くううう!!この際奇跡でも偶然でも何でもいいわ!とにかく食べ物よ、私達のところへやってきなさーい!!!!」

 

 空腹だというのに、アルは力を振り絞り青空へと咆哮をあげる。

 そして、奇跡は起きた。ぽとり、と突然アルの足元に何かが落ちてきたのである。

 

「へ……?」

 

 視線を落としてみれば、それはコッペパンだった。何の前触れも無くアルが叫ぶのに続いてコッペパンが空から降ってきたのである。

 アルは思わず部下と顔を見合わせる。ムツキは頭に?マークを浮かべ、ハルカは驚愕に目を見開き、カヨコはなんとも言えない眼差しを向けた。

 

「こ、これって」

「アルちゃん、コッペパンが空から降ってきたよ?」

「流石アル様ですっっっっっっ!!アル様にかかれば、食べ物を降らせる事なんて造作もないんですね!!!!!」

「いや、このパンさっきのドローンが……」

「アルちゃんすごーい!晴れ時々コッペパーン!!」

「し、知らなかったわ。私、こんな能力を……ハッ!真のアウトローに近付いている証拠なんじゃないかしらこれ!!」

 

 カヨコが恐る恐る訂正しようとしたところで、ムツキがサッと割って入る。気付いていたんだな、とカヨコはため息をついた。

 カヨコと、恐らくムツキは見ていた。覚束ない飛び方をしていた上空のドローンが一際強くガクンと揺れて、内部の格納スペースから一個のコッペパンを吐き出す瞬間を。

 つまるところ空から降ってきたコッペパンは間違ってもアルの超常的な力によるものではなく、キヴォトスにいる誰かが何かしらの意図を持ってドローンに運ばせていたのだ。

 

(なんでコッペパン一個だけなのかはわからないけれど得体が知れない……大丈夫なのかな、これ)

 

 と、不安げなカヨコをよそにコッペパンを握りしめたアルを挟み込んでムツキとハルカは大はしゃぎしている。今更水を差して訂正しようにも、最早言っても聞かないテンションだ。

 それならばすべき事はもしもの場合を想定する事だ。

 

「ねえ、コッペパンが降ってきたのは良いんだけどソレは食べても大丈夫?毒とか入っているかもよ」

「え?あ、そ、そうね毒、毒……誰かが毒味をしなきゃいけないわねそれじゃあ……」

「じゃあとりあえず四等分にしようか。で、私が最初に食べてみる。それでいい?」

 

 カヨコに言われるがままにアルはコッペパンをサッと手渡してくる。手早く、出来る限り大きさにブレがない様にちぎっていって無事に四切れのパンが出来上がった。

 仲間達に見守られながらカヨコはパンを口元へと運ぶ。

 

(ごめんね知らない誰か。もしも会う事があったらちゃんと代金は払うから……いや、まず本当に毒が入っているのかどうか、そこが問題かもしれない。もしかしたら便利屋68に恨みがある何者かが空腹状態にある事を狙ったり?)

 

 だとしたらこんなところで呑気にしている場合ではないのではないだろうか、とついカヨコは手を止めてしまう。普段ならばスパッと決断を下せる彼女でも、腹が減ってはイマイチ思考がまとまらない。というよりシンプルに空腹で手が震える。

 食べるか食べないか、そんな絶妙な位置でパンを維持したままでカヨコが硬直していたところで、「あっ」という声が飛び出る。見れば、アルが突然パンに齧り付いた。

 

「アルっ?」

「もぐもぐ、私は社長なのよ。んぐ、部下に毒味なんてカッコ悪すぎよ。この私の舌と胃袋で毒かどうか、むしゃむしゃ、判断するわ」

「アルちゃんかっこいー!なんて言おうと思ったけど食べながら喋るのかっこわるい~!」

「むぐむぐ、全然毒っぽくないわ、ごくん。けふっ、やだげっぷしちゃった」

「本当に大丈夫なの、アル?」

「うーん……多分大丈夫ね、うん!」

 

 全くもって不安極まりないのだが、自信満々な表情で言い切られてしまえばそれ以上追求は出来ない。満足げなアルを見つめながらカヨコ達もパンを口に含んだ。

 空腹のせいだろう、パンのふかふかとした食感とほんのりとした甘さに言語化出来ない感覚が全身に染みていく。ムツキは「おいし、おいし」と食べていくし、ハルカは「ごめんなさいごめんなさいがっついてごめんなさい、毒味で死ぬべきなのは私でした」などと呟きながら貪り食っている。

 

(まぁ、毒は無いみたいだ。本当に誰かがコッペパンをドローンで運んでいたんだそれじゃあ……)

 

 弾丸が行き交う事など当然なキヴォトスでドローンを使うなど随分と怖い物知らずなものである。恐らくドローンの飛び方がおかしかったのは既に銃撃を受けていたのだろう。

 少女四人でコッペパンを四分割し黙々と食べる。なんとも空しい絵面であるが、それでも栄養を取り込む事で便利屋68は少しずつ活力を取り戻し始めていた。

 

「……もしかして、まだ降ってきたりしないかしらコッペパン」

 

 おもむろにアルは再び天を仰ぎ、気合いを込めておかしなポーズを取ったり手を合わせて奇妙な呪文を唱える。どうやらハルカとムツキの言葉を真に受けた様で、自分が食べ物を降らせる能力を会得したと信じ込んでいる。

 どのタイミングで真実を打ち明けようか、とカヨコがこめかみに手を当てて考え込んでいる、その時の事である。

 

「ふっ!くっ!コッペパン!コッペパンよ降り注ぎなさい!焼きそばが挟まっている、奴とかー!!!」

「やあ、陸八魔さん。こんなところにいるとは思わなかったよ……今行っているのは、何かの儀式かい?」

「そうなのよ。実は私、さっき空から降らせて……」

「信じられないな。キヴォトスではそんな特殊能力が……?」

「先生、少しは疑ってください!?」

 

 ギョッとして、便利屋の全員は公園の入口を振り返った。そこにはあのシャーレの『先生』、飛鳥=R=クロイツが佇んでおり、真剣そのものという面持ちで空を見上げている。付き添いらしき生徒が一人、困り顔でため息をつく様は、心なしか先程までのアルとカヨコの関係に酷似していた。

 

 

 先生、それはキヴォトスにおける例外中の例外。『大人』という概念。

 故にそれがどんな人物であろうとも、生徒達は一目を置く。尊敬よりも人質としてどの程度の価値があるか、という至極キヴォトスらしい殺伐とした価値観によるものであるが。

 便利屋68と先生の関係性はそこまで根強いものではない。以前、とある仕事の際に敵対関係だったところを色々あって共闘したとか、そういう類いだ。

 

 公園から少し離れた喫茶店、大きめのテーブルを挟んでアル達四人は先生と付き添いの生徒の二人に面と向かって座っていた。

 

「陸八魔さん、アビドスの件以来になるのかなこうして話すのは」

「そうなるわね」

「あの後、君達がどうなったのか足跡を辿るのに苦労したよ。何せ、一ヶ月前に事務所を引き払っていたからね」

「あ、あー……あそこ、あそこね。ええと」

 

 無論、引き払った理由は赤字の極みによって事務所を出て行かざるを得なかったというものである。しかしながらそれをそのまま飛鳥に話せるはずがない。アルはコップの水で唇を湿らせ、

 

「あそこは……正直私の求める物件では無かったのよ。ほら、私って最高最悪のアウトローじゃない?そんな私に釣り合わないのなら、ね?」

「……それで、何故公園でテントを?」

「え、えーと」

 

 恐る恐る、飛鳥の隣に座る生徒が尋ねてくる。記憶が正しければミレニアムサイエンススクールの制服だ。天才集団の学園に所属する相手に、下手な嘘をつけば揚げ足を取られてズタボロにされかねない。これにはアルもどうしたものかと口をモゴモゴとしてしまう。

 

(誰か、誰か助け船……)

 

 隣に座る仲間へSOSを送るが反応はまちまちだ。カヨコは無理だとかぶりを振り、ムツキはニコニコと笑い、ハルカはオドオドしている。

 終わった。出来る事ならアウトローとしての姿勢を保ちたいのに、維持するどころか自ら墓穴を掘ってしまった。

 ミレニアムの生徒からの鋭い視線にアルが挫けて素直に赤字だと打ち明けようと口を開こうとしたところで、

 

「いや、早瀬さん待つんだ。彼女が事務所ではなくテントを選んだ事には意味がある」

「先生……?」

「確かに便利屋という仕事ならば拠点は必要だ。キヴォトス全体、何処からでも仕事を受注するなら尚更の事。けれど逆に言うならば、キヴォトス全体で動くのならば拠点の位置は決まり切っている必要は無いんだ。陸八魔さんがわざと移動型の拠点、それもテントを選んだ理由はそこにあるんじゃないかな」

「え、いや、先生、でも……」

「事実、便利屋68はキヴォトス中の公園を点々としている。市街地を避けているのも不必要な戦闘を回避し可能な限り力を温存し、風紀委員会を始めとした治安維持を目的とする組織との衝突を未然に防いでいるんだ」

「うーん……?なんだか、言われてみれば、そんな気が……?」

 

 飛鳥は突然、堰を切ったように怒濤の持論を展開していく。あまりにも確信に満ちた面持ちと口調でつらつらと述べていく勢いに押され、ミレニアムの生徒は首を傾げながらにわかに納得してしまう。

 更に言えばアルでさえも飛鳥の持論に段々と「いやそうではなくて」ではなく「いやそうだった気がする」と頭の中を僅かに捏造していく始末だ。

 

「ふ、ふふふ流石シャーレの先生ね!この私の戦略を見抜くだなんて、侮れないわ!」

「やはりそうだったのか……!わかったかい早瀬さん、これこそ僕が便利屋68を選んだ理由だよ」

「いや、いやあ……?いやあ……?」

「紹介が遅れてしまったね。彼女は早瀬ユウカ、ミレニアムの生徒だ。僕の事が心配だという事でついてきたんだけど……」

「現時点で、かなり、色々心配です先生」

 

 こほん、とそこで咳払い。カヨコがこれ以上アルに下手な事を口走らせない様にと割って入ってきた。

 

「あの、先生。うちを訪ねたのは単に世間話をしにきた訳では無いですよね。選んだって今言ってましたし、もしかして依頼ですか?」

「依頼……先生が、私達便利屋に!?」

 

 カヨコの問いかけに飛鳥は無言で頷き返す。アルは途端に背筋を正し、頑張ってアウトロー的な強気で真意を窺いづらい表情を取ってみる。彼女なりの仕事に対する精神の表れである。

 

「これはシャーレとしての協力依頼なんだ。君達には僕の護衛をしてもらいたい。ゲヘナの、ブラックマーケットにね」

「ブラックマーケット……!」

 

 キヴォトスの中でも特に危険な闇市、重火器など当たり前戦車やら何やらこれでもかというほどの兵器が流通しているという闇そのものである。かつて金に困ったアルがよりにもよって闇の更に闇である闇の銀行で融資を受けようとした話は闇の中に葬った事にしている。

 飛鳥が自らの護衛として便利屋を、それもブラックマーケットを目的地として。中々にハードな雰囲気を感じさせる。だがそうしたハードな雰囲気こそ、アルが求めて止まないものだ。

 

「……いいわ、シャーレの先生がわざわざ私の元へ足を運んできて、自ら頼み込んでくるなんて断る理由もない。その依頼――――」

「待った。もう少し細かく聞かせて欲しい。正確な依頼の内容、それと報酬について」

 

 特に考えずに快諾するのを遮り、カヨコが飛鳥へとこう投げかける。隣から「もう少し考えて」という視線にアルはうぐぐぐ、と口中で呻く。

 

「ブラックマーケットの中心部から少し離れた空き倉庫。そこに僕は荷物を届けなくてはいけない。相手はゲヘナの生徒だ」

「うわー、凄くきな臭ーい!先生がアルちゃん頼る理由すぐにわかったかも」

「罠である事を承知の上で僕は先生として依頼を完遂するつもりだよ。そして報酬に関しては……可能な限り君達が望むものを与えると約束するよ」

 

「可能な限り」

「私達が」

「望む」

「もの」

 

 瞬間、アル達の脳裏に流れ込む多くの欲望。

 

「とりあえず前払いという事で、とりあえずこの店は奢るよ。何か好きなものを頼んで欲しい」

「先生!黙って横で聞いていましたけど、それは大丈夫なんですか!?」

「幸い、僕はあまりお金を使う事が無いからね。多少の経費は目を瞑るよ。……陸八魔さん、どうかしたのかい」

 

 首を傾げる飛鳥、どうしたものかと考え込むユウカ。

 それを尻目に便利屋68は、その目に強い闘志を宿らせていた。

 

「先生、本当に私達の望むものをくれるのね?そしてここは……奢りなのね!?」

「可能な限り、だけどね」

「……ふ、ふっふっふっ!な、なら任せなさい!このキヴォトスいちのアウトロー集団、便利屋68が先生の依頼をバッチリ解決してあげるわ!!そしてこのサンドイッチ盛り合わせとりあえず四人分でー!!!」

「先生太っ腹ー!好きー!!ラジオもっと面白くしようよー!!!」

「お、奢りだなんて信じられません……ここ最近、ちゃんとモノを食べられていなかったのにこんなの奇跡以外のなにものでもないです!!!」

「?先生、今あの子何か言って……」

「何でもないから、気にしないで。それより先生、配達する物って一体何?物によってはルートを考えないといけない」

 

 うっかり内情を暴露しかけたハルカをカヨコがサッと遮りつつ、依頼内容について不透明だった部分に切り込む。既にアル達三人が大はしゃぎしている以上、正常な思考を保っているのは彼女のみと言っても過言ではない。

 飛鳥は口元に手をやり、意を決した様子で

 

「コッペパン」

「……コッペパンを、どれくらい運ぶの?」

「一つだね。僕をおびき出す為だから、内容はそこまで大したものではないよ。最初はドローンで送ろうとしたんだけど、失敗してしまってね」

「―――――ドローンで、コッペパンを配達しようとしたの?」

「うん。ただ、他の生徒達から襲撃を受けたんだ。備え付けてあったカメラも壊れてしまって、墜落場所も定かじゃない。発信器をつけなかったのは僕のミスだ」

「ああ、そうなんだ。へえ……」

 

 ドローン、コッペパン。

 空から降ってきた、コッペパン。

 

「わかったよ先生。教えてくれてありがとう」

 

 カヨコは大はしゃぎするアル達を尻目に決意した。絶対にコッペパンの真実を、配達する予定だったコッペパンを自分達がそうとは知らずに食べてしまったなど絶対に気付かれてはならないと。

 けれどそんな決意は、次の瞬間に砕け散った。

 

「コッペパンと言えば、先生。私空からコッペパンが降ってきたのよ!」

「さっき行っていた儀式の話だね。よければ詳しく聞かせてもらえないかな?」

「勿論!お腹が減っていて、それで食べ物が空から降らないかなーなんて思っていたら、コッペパンがポン!」

「興味深い……コッペパンは何個落ちてきたんだい?」

「それが一個だけなのよ。でもきっとこれは私がアウトローとして覚醒している証拠だと思うの!」

「なるほど、コッペパンが一個だけ……うん?コッペパンが、一個だけ?」

 

 これ以上はまずい、なんとか誤魔化さなければならない。カヨコはアルを援護するべく口を開き……しかし間に合わなかった。

 飛鳥とユウカが顔を見合わせる。アルは何事か全く理解していない様子で首を傾げる。

 

「先生、ドローンの配達ルートって確か……」

「確か、陸八魔さん達のテントから少し離れたところだね」

「……あの、もしかしてなんですけど」

 

「彼女達の言ってる空から降ってきたコッペパンって……先生が配達しようとしたものでは?」




次回「先生は魔法使いらしい」
to be continued?
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