先生は世界平和を実験している   作:飛鳥=R♯

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皆さん見ていますか『GUILTY GEAR STRIVE DUAL LURERS』。
私はもちろん見ています。アニメ内で明かされた新たな設定、そしてイイ感じの世界観補完されていて流石小説版書いた海法先生だぜひゃっほう!!!ともう半端ないワクワク加減です。
願わくば最終話で飛鳥出ねぇかな!な!あとシンがドラゴンインストールしてくんねぇかな!な


追記
死ぬほど疲れてます、更新待ってください


Onidiro-ウワサ

「ひゃあ〜!!!」

 

 補習授業部の一日はコハルの絹を裂く様な悲鳴から始まる。ニワトリの鳴く声ならぬ、コハルの鳴く声が目覚ましというわけである。

 室内を右へ左へとコハルが走り回る。それを追いかけるのはアズサと、ニコニコ笑顔のハナコだった。

 

「ほらコハル。シャワーを浴びに行こう」

「そうですよコハルちゃん! 裸の付き合いで絆を深めるものだと言いますからね、是非皆さんで浴びましょうよ!」

「もうっ、来ないでよ変態っ! シャワーなんて一人で良い!」

 

 アズサ曰く、「皆で入った方が効率的」。

 ハナコ曰く「飛鳥先生も連れてくるべき」。

 そんな言い分で毎朝行われているコハルのシャワー室への拉致だが、止めようにもアズサとハナコ相手では言い聞かせる事などできない。被害者であるコハルも、毎度の如く悲鳴をあげるしかない現状である。

 

 

 シャワーを浴び、食堂で朝食を取り、そして教室へと向かう。朝の支度を終えれば後は夜まで勉強漬け。

 これが崖っぷち補習授業部の日常である。

 

 

「皆おはよう。さて、合宿所に来て今日で三日目。昨日までは混乱する事ばかりで大変だったと思うけれど、気を引き締めて当たって欲しい」

 

 教壇に立ち、補習授業部の顧問を務める飛鳥は分厚いプリントの束を掲げる。来たる第二回学力テストに備え、準備してきた過去問題集である。

 生徒達の顔色は様々なもので、顔面蒼白なコハルもいれば自信満々なアズサもいる。ラムレザルはそんな仲間達の様子を眺めながら、昨夜飛鳥の部屋で明かされた多くの事実について少し考えていた。

 

(……トリニティの裏切り者、聖園ミカ。彼女を捕える為にも、今はテストに合格しなければならない)

 

 考える事が多い。いずれすべて解決せねばならないとは言え、飛鳥一人で背負うにはあまりにも重いのだ。

 今後、何かしらのサポートをラムレザルも行っていく必要がある。飛鳥と、補習授業部の仲間達の両方をである。

 

(……違う。彼は、私にそうして欲しくないから敢えて黙っていたんだった)

 

 すぐにラムレザルは考えを改める。そうしなければならない、という意識こそ今の自分には相応しくない。飛鳥が望んだのは、あくまでも生徒として過ごす事だ。

 きっとここにシンがいれば、エルフェルトがいれば、こんな風に考え込む事を諌めていただろう。

 自分がやるべき事はコハル達を合格へと導き、そして正式にトリニティの生徒としての権利を得る事だ。ラムレザルは自分にそう言い聞かせ、とりあえず隣に座るコハル本人に振り返っていた。

 

「コハル。退学しない様に頑張ろう」

「えっ、な、何急に……思い出させないでよぉバカぁ……」

 

 励ますつもりの発言だったのだがコハルは頭を抱えて机に突っ伏してしまっていた。どうやら発言のタイミングを間違えてしまった様で、ラムレザルは内心でしまったと思いつつも親指を立てて軌道修正を図る。

 

「大丈夫。まだコハルの学力は向上の余地がある」

「ひぃぃぃぃぃん……」

 

 どうも波長が合わないどころか、何を言ってもコハルには逆効果であるとラムレザルが気付くのはこの様なやり取りが何度か続けられてから、しばらくしての事である。

 

 

「確認テスト、終了。現時点での皆の成績を発表する」

 

 ようやく合宿が本格的に始まったところで、飛鳥は最初に小テストを行った。残る二回のテストで合格するにはまず実力を再確認する必要があるのだ。

 幸いラムレザルは既に飛鳥の眼帯に関する疑問を解消していたおかげでスラスラと問題を解き、満点の自信があった。問題は、残りの生徒達である。

 

「うん。合格点は60点だけど、達成できていないのは白洲さんと下江さんだけだね」

「……わかってはいた」

「ううぅ……」

 

 100点満点のテスト、合格点は60。この条件で補習授業部の点数はこうである。

 ヒフミ 78点

 ハナコ 100点

 アズサ 49点

 コハル 21点

 ラムレザル 100点

 

 明確にアズサとコハルは危険な域に達していた。合宿の最終日に予定している学力テストを合格するには、あまりにも不十分と言えるだろう。

 無論アズサとコハルもそれぞれ悔し気な表情で答案用紙を見つめている。退学が差し迫っているというのに、自らの得点がこうでは何も感じないはずがない。

 飛鳥がわざわざテストを行った理由はここにあるのだろう。強引だが、一念発起させるには十分な材料である。

 

「状況は見えてきたね。ここからは補習授業部の皆で手を取り合って勉強して欲しい。浦和さんとラムレザルは二人がかりで白洲さんと下江さんのサポートを、阿慈谷さんはペース配分を管理しつつ、気を抜かない様に。僕は……あまりできる事はないな。生徒同士で教え合った方がわかりやすいだろうし。問題集をできるだけ準備しておくよ。それでは、お昼を目途に勉強開始」

 

 そうして、全員合格を目指して猛勉強は始まった。と言っても幸いなのは重点的に面倒を見なければならないのはアズサとコハルだけである。ハナコとラムレザルでマンツーマンで教える事は苦ではない。

 しかし、100点満点を取れるハナコは何故以前のテストでは無茶苦茶な低得点だったのだろうか。ラムレザルはその質問を投げかけたい気持ちを堪え、コハルの問題に向き合う事にしていた。

 

「ら、ラムレザル。この問題、教えて」

「良いよ。解答は簡単。計算式を当てはめるだけですぐに答えられる」

「そっか……し、式全然頭に入らなくて」

「頭に入らないのは無理に一度で覚えようとするから。計算は方法さえ間違えなければ答えは揺るがない。何度も繰り返していけば、きっとできる様になる」

「ん……ありがと、ラムレザル」

 

 コハルに勉強を教えながら、ラムレザルは何やら複雑な感情に駆られた。名前を呼ばれているだけなのだがどうにも引っかかるものがある。やがてそれが名前呼びだと気付くと、

 

「コハル。私の名前はラムで良いよ」

「い、良いって言われても……」

「私達は同じ部活の仲間。それなら、あだ名みたいなものはつけたい。だから、ラムで良い」

「あだ名……?」

 

 トリニティに入学したばかりの時にカズサとイチカの二人にも同じ話をしていた。思えばこの部に入ってきた時点でやっておくべきやり取りであったかもしれない。

 コハルは突然の提案に困った様子だったが、数秒程押し黙った後に、

 

「わかったっ。ラ、ラム。これで良い?」

「うん、ありがとうコハル。なんだか、少し嬉しい」

「あだ名で呼んだくらいで何元気になっているのよもう……!」

「えー、でもいいじゃないですかあだ名♡ そういうの良いと思いますよ私。ね、ラムちゃん?」

 

 コハルが顔を赤くしているところにサッとハナコも割り込んできたかと思えば、続いてあだ名で呼んでくる。彼女はクスリと笑い、

 

「良いですね、この響き。ラムレザルっていう名前が悪いというわけではなくて、可愛げがある良い響きになります」

「ありがとうハナコ。貴女にも呼んでもらえるとは思わなかった」

「うふふ、その代わりに私もあだ名で呼んでくださいねっ。〇〇〇とか、〇〇〇〇とかで!」

「バカ! 変態! 死刑!!」

 

 結局いつもの流れになり、顔を真っ赤にしたコハルがハナコに怒号を飛ばし始めた。折角の勉強時間だというのに、まったく騒がしいものである。

 幸いなのは飛鳥がまた客の対応をしているという理由で教室を離れている事である。もしもこの場にいたら、流石に苦言を呈されていた事だろう。

 

「ちょうど集中力も切れてきた頃ですし、ここで休憩しましょうか。飛鳥先生がお茶菓子を用意してるんです! 是非ごちそうになりましょう……アズサちゃん、ラ、ラムちゃん!」

「……休憩は時には必要。メリハリが大事だ。ラム、食べよう」

「一斉に呼ばれると、それはそれで変な感じがすると理解できた」

 

 思いのほか、仲間達の反応は快いものだった。まさかコハルにだけ呼んでもらおうというつもりではなかったにしても、全員から呼んでもらえるなど思いもよらなかった。

 不意に、元の世界にいる親友のシンが叫んでいた荒唐無稽な内容が脳裏をよぎる。

 

「あのさ! 皆、ラムレザルって言うの息苦しい気がすんだよな! 絶対ラムの方がクールでスパイシーでついでにアルティメットホットだ! ラムもそう思うだろ!」

 その時はクールでスパイシーでアルティメットホットが何を意味するのか、聞き出す気にはなれなかった。

 が、今なら少しわかる。仲間達にあだ名を呼んでもらう、ただそれだけなのに胸がほんの少しだけ温かくなる。要するに自分は嬉しいと感じているのだ。

 

「……皆ありがとう。テストの為に私も、全力を尽くす事にする」

「そうですよ! 皆で頑張りましょう! さぁここでペロロ様のぬいぐるみを一つまみ」

「そ、それは、良い」

 

 

「教室の方が少し騒がしいな……申し訳ない。離れるといつも騒がしくなるもので」

「い、いえ。お元気なのは何よりです。補習授業部の方々は完全に隔離される形になっていますから、むしろ精神的にダメージを追っているのではないかと不安だったもので」

「心配してくれてありがとう。そんな風に気遣ってくれる人間がいるだけで、彼女達の励みになると思う」

 

 飛鳥が差し出した紅茶のカップを手に取り、伊落マリーは視線を伏せながら唇を湿らせる。

 二度目になる別館への来訪者、その相手はトリニティでもひときわ異彩を放つシスター集団『シスターフッド』の生徒である。

 事前に調べた程度ではトリニティの施設維持・管理やカウンセリングを行う、まさに聖職者集団……との事だが、何せキヴォトスである。裏では秘密裡に治安維持組織として活動している、独自の情報網でトリニティを牛耳っているなど黒い噂は絶えない。

 無論、確たる証拠のない噂に踊らされる飛鳥ではない。あくまでもわざわざ別館にやってきた客として、簡易的な応接室でマリーをもてなしていた。

 

「ええと、要件は白洲さんへの伝言……だったかな」

「はい。彼女が正義実現委員会に逮捕されるきっかけとなったのが、いじめられていた生徒を助ける為……その生徒から感謝を伝えて欲しいと相談を受け、ここに来た次第です」

「―――なるほど。白洲さんにそんな一面があるとは。いや、むしろラムレザルと意気投合する様なら近い存在なのか」

「あ、あの、飛鳥先生?」

「ん? ああ、申し訳ない。ここ最近、色々考える事が多くてね。白洲さんへの伝言はもちろん伊落さんから直接伝えるで良いんだね?」

「ええ、もちろんです。お邪魔にならないタイミングで、ですが」

 

 マリーは礼儀正しい。とてもではないがキヴォトスで、しかもトリニティという策謀渦巻く学園で、更に『シスターフッド』なる組織に身を置く生徒にも関わらず裏表なく屈託のない笑みを浮かべている。人は彼女を、天使だと讃えるのだろう。

 などと、少し詩的な考えに支配されつつあった飛鳥はハッとして自分のティーカップに手を伸ばし、意識を覚醒させる。

 このタイミングで、予想だにしない組織から使者がやってきたならば活用しない手はない。いよいよケイオスに対し、こちらから打って出る番が回ってきているのだ。

 

「伊落さん、今から質問をしたいんだけど」

「? はい、どういった内容でしょう。もしも飛鳥先生にもお悩みがあるという告白でしたら、私はいつでも耳を傾けましょう」

「その気持ちだけでも嬉しい。でも、良いかい。これから僕がする質問は、少し危なっかしい内容だ。もしも伊落さんにとって不都合だと感じるなら、NOと答えて欲しい。良いね?」

「……? わ、わかりました」

「それじゃあ―――『シスターフッド』は独自の情報網を持ち、そしてその動向はティーパーティーでも把握しきれていない、そうだね?」

 

 マリーの表情に緊張が走る。当然の反応であるし、だからこそ飛鳥はこれでもかという程前振りしたのだ。

 第二回のテストが迫っている。ナギサから不信感を向けられたままでは大きな妨害が予想されるわけで、ならば事が起きる前に彼女の誤解を解く必要がある。

 その為には、そろそろ『裏切り者』に……聖園ミカに会う必要がある。

 

「あ、あの先生。それはどういったおつもりで」

「簡単だ。一つ、頼みを聞いて欲しいんだよ。もちろんお礼はするつもりだ。ちょっとした、伝言ゲームをやって欲しいんだ。君達、『シスターフッド』に」

「伝言ゲーム……?」

「うん。『飛鳥=R=クロイツがトリニティの裏切り者を見つけ出した。近い内にティーパーティーに直訴する』とね?」

「え、え、ええ? 先生、待ってください。それはあまりにも私が聞くには大変な……」

「正直な話、ここに来ているのは君だけじゃないだろう。桐藤さんがあれだけ神経を苛立たせているんだ。他の権力者が、隔離されている要注意人物の顔を見に来ないはずがない。違うかい?」

 

 飛鳥が一気にまくしたてると、マリーは困った顔でちらりと部屋の入口に視線を向ける。別館を訪れた時は確かに一人だったはずだが、誰か後をついてきていたらしい。

 入ってきても良い、と飛鳥が言うよりも先に入口のドアが僅かに開く。そこからちらりと覗いた視線は彼を貫くかの様に鋭く、そして強い意思を込めていた。

 

「もしかして、歌住サクラコさんかい?」

「……わっぴー」

「え?」

「いえ、なんでもありません」

 

 ドアが音を立てて開く。そこに立っていたのは、明らかにマリーとは一線を画す、確かな覇気を身に纏う一人のシスターである。

 歌住サクラコ。それは『シスターフッド』の長であり、そして噂が真実だとすると『トリニティを支配する真のティーパーティー』……なのだそうだ。

 

「飛鳥=R=クロイツ先生。この様な形でご挨拶する非礼を心から謝罪します。改めて、『シスターフッド』の歌住です。そして……先程の会話には少し気になる点がありました。詳しく聞かせていただけますか?」

 

 ここに来て、サクラコ自身が顔を見せた。それは飛鳥の考える『最適解』が現実味を帯びてきている紛れもない証拠であり、同時にトリニティが転覆するかもしれない危険な賭けの第一段階が始まろうとしている兆候でもあった。

 サクラコの鋭い視線を受けながら、飛鳥はティーカップを置き、

 

「僕が言った情報を、トリニティの三大派閥の内、『パテル分派』と『フィリウス分派』に流してもらいたいんだ」

「何の為に……?」

「今、トリニティを崩壊に導こうとする怪人がいる。彼を止める為だ。名前はハッピーケイオス」

 

 サクラコは飛鳥の発言に目を細める。

 今、彼女の中で飛鳥がどれほどの人間なのかを値踏みしている。信用に値するのか、そうでないのか。

 もしも信頼してもらえない様ならば、その時はその時である。だが力を借りられるのならばそれに越した事はない。

 

「もう一度、お聞かせください。貴方が流したいという嘘の情報について」

「ああ、こうだよ。『飛鳥=R=クロイツはトリニティの裏切り者が誰か知っている。その正体は……百合園セイア』だ、とね」

 

 

 困った事に、ナギサの危惧は思わぬ形で実現しつつある。

 トリニティを救う為、ナギサを救う為、補習授業部を救う為。

 飛鳥=R=クロイツ、もといシャーレの『あの男』は、花園を踏み荒らす冒涜者に片足を突っ込み始めるのだった。

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