あぁ神様、お願いします   作:猫毛布

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2013/02/12
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銀髪の恋人→彼らの恋人
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17 白と銀と魔導士と英雄と

 目の前に扉がある。

 真っ白い、洋風の扉。金色の細い飾りを装飾された、一つの扉。

 ドアノブと、鍵穴。

 いったい何の事か分からない。わからないが、目の前の扉は、ただただ、怖かった。

 

 

 

 

 

 

 オレは意識を覚醒させる。

 目を開き、前にはいつもの風景。風景、というか、オレの部屋の天井。

 どうしてだか、身体が重い。それでも精一杯身体を起こして気付く、下がった視点。

 いや、これ程だっけか。部屋を見ればいつもの…というよりは幼児じみた部屋。確か、父が好き勝手に買ってきて飾り付けたんだ。

 あれ?確かって、昨日の事だろ?どうしたんだよ。

 オレは首を傾げる。何かを忘れている。何か、が分からないから、きっと大切なことではないのだろう。

 もしかしたら前の事かもしれない。それは大切だ。日記帳に書いておこう。

 

 オレはベッドから出て、小さな机に向かう。昔から使っている日記帳を開いて、ペンを握る。昔から?使い始めたのは半年程前だ。

 日記には今までの出来事と、今からの出来事が書かれている。

 今日は公園に居ても誰もいなかった。明日には誰かいそうな気がする。

 そんな事を思いながら、オレは日記帳にペンを走らせる。

『何かを思い出しそうだった、が何か分からない。思い出せたら、書く』

 それだけを書いて、オレはもう一度布団の中に入った。

 

 

 

 

 

 

 公園に居た。

 目の前には栗色の髪をした少女。俯いていて、何かを我慢していて、それでもソレを表に出さないで。

 確か、オレは彼女を知っていて、オレは彼女に手を伸ばしたんだ。

 

「なぁ、どうしたんだ?」

「え?」

 

 今なら分かるが、キョトンとした顔で何かを耐えるのを隠していた。今?今は今だろう。

 オレはようやく、というべきか、見つけた彼女に微笑んで話しかける。

 ただ一言、遊ぼう、とだけ。それだけでいいのだ。オレならば、オレだから。

 

 学校に居た。

 彼女はオレの隣を歩いていて、オレは彼女の頭を撫でたり、微笑んだり。

 彼女の心の中にオレは居る。いや、違う。違う。

 寂しかった、訳じゃない。違う。違うんだ。

 オレは微笑んでいる。

 オレは、笑っている。

 オレは、オレは。

 

 

 何処かの家に居た。

 目の前には壊れた彼女が居た。いや、彼女だった物があった。

 カタカタと震えているオレは相変わらず笑みを顔に貼り付けている。何年も続けていた事だから、もう笑い以外を忘れてしまったのかもしれない。

 オレは剣を翻し、自分の胸を貫く。

 バッドエンド。

 

 

 

 

 

 

 オレは目を覚ます。

 目の前にはいつもの天井だ。

 何かを思い出しそうで、思い出せない。頭が痛くなり、息を吐きながら身体を起こす。

 幼い子供の部屋を見渡して、溜め息。オレはこんな年齢じゃない。オレは転生者だから。

 忘れない内に日記帳に起こりそうな事を書いていく。

 日記帳を開いて、内容を書いていく。

『今日は何も無かった。明日は何かがあるかもしれない』

 そしてオレは日記を閉じて、布団の中に入った。

 思ったよりもすぐに寝れそうだ。

 

 

 

 

 公園に居た。

 オレは栗色の髪の少女を見つけて話しかける。

 ただ一言、遊ぼうぜ、とこれだけ。

 オレは笑んでいて、彼女はビックリしたようにオレに手を引かれている。

 どうしてオレは彼女に話しかけたんだろう?

 

 

 学校に居た。

 オレは彼女の隣にいた。

 当然の事だが、彼女もオレの隣を歩いて笑っている。

 オレは少しだけ笑っていて、彼女の頭を撫でる。

 彼女はオレに依存している。

 なら、オレは……?

 

 

 何処かの倉庫にいた。

 目の前には彼女の体がある。首から上はない。

 ビクンビクンと動く彼女のカラダと、ソコにあるべき頭を持っている人物が嗤う。

 銀色の髪で、剣を虚空から出している。

 彼女の髪を掴んで、首から滴り落ちる赤い液体を飲んでいる。

 オレは絶望していた。そんな絶望しているオレをよそに目の前のアイツは剣を翻して、自身の胸に刺した。

 バッドエンド。

 

 

 

 

 目を開いた。

 目の前にはいつもの光景があり、オレは当然のように布団から出て、日記帳を取り出した。

『今日は何も起こらなかった。明日はきっと何かわかるかもしれない』

 オレはそれだけ書いて、布団の中に入った。

 今日は寝れないかもしれない。

 

 

 

 公園に居た。

 目の前には栗色の彼女が居て、オレは声をかけるのを戸惑う。

 本当に、掛けてしまっていいのだろうか?

 どうしてこんな事を考えるか分からない。分からない。分からない。

 どうしてオレは彼女に声を掛ける?

 それは、彼女が高町なのは、だからなのだろうか。

 ソレは、彼女が主人公だから、なのだろうか。

 オレは声を掛ける。理由なんてなく、オレは。

 

 

 

 学校に居た。

 オレは彼女の後ろに居た。

 彼女はオレに依存している。いや、違う。

 彼女にオレは依存している。

 あぁ、そうか。コレが正しいんだ。オレは依存させていて、オレは彼女に依存していた。

 どこをどう見ても、一方通行だ。

 

 

 

 空の下に居た。

 銀髪の男が自身の恋人を殺し、そして自分を貫いた。

 その目の前で銀髪の男が絶望して、叫んでいる。

 オレは一本の剣で彼の首を飛ばして、彼の命を終わらせた。

 オレは、彼らの恋人だったモノの頭を大切に持ち上げる。

 死んだ、というのに笑っている彼女の顔。

 どこにも絶望などなくて、どこまでも慈愛に満ちている、笑み。

 オレは、彼女に恋をさせていた、のだけど。

 オレは、彼女に恋をしていた、のだろう。

 そもそも、歪んでいるのだけど。

 それでもオレは、彼女の事が好きだ。

 最初は、ただの好奇心。ソレもアニメの主人公だから、という好奇心。

 自分に依存させて、自分から離れさせないようにして、独占欲の塊みたいになっていて。

 でも、彼女もソレを拒絶しなくて、いや、違う。オレが拒絶させるという選択肢を消したんだ。

 

 オレはなのはの首を抱きしめる。

 大切に、笑う事も、撫でる事もせずに。

 ゴメン、ごめん、ごめん。

 何度呟いても許してくれない。許す事などしなくていい。それこそ一生恨んでくれてもいい。殺してくれてもいい。無視してくれてもいい。

 ソレでも、オレは謝り続ける。

 自分が殺した彼女を。自分が殺した、高町なのはを、抱きしめ続ける。

 

 

 

 

 

 目を覚ました。

 目の前にはいつもの天井。オレはゆっくりと布団から出て、日記帳を開く。

『今日は何も無かった。明日には、日記帳を埋めれそうだ』

 そう書いてから、オレは数ページ前のページを開く。

『何か思い出しそうだった、』

「思い出したよ、思い出した」

 そう呟いて、オレはそのページにペンを走らせる。

『何かを思い出しそうだった、が何か分からない。思い出せたら、書く

 

 

 思い出した。扉を開けて、彼女に謝る事だ』

 さぁ、部屋から出よう。

 

 

 

 

 

 目を覚ました。

 目の前には真っ白い、洋風の扉。金色の細い飾りを装飾された、一つの扉。

 他には何もない。あるのかもしれないけど、オレには関係のない事だ。

 ドアノブに鍵穴。オレはドアノブに手を掛ける。

 鍵穴に現れた、銀色の鍵。それはひとりでに回り、ガチャリと金属的な音を鳴らした。

 オレはドアノブを回し、扉を開く。

 

 扉の向こうの空間は、オレが彼女にした事がカラカラと、まるで映画の様に流れていた。

 こうして、客観的に見ていると、本当にバカ、というか取り返しのつかない事をした。

 だから、こそ。今ここに居る。今ここに居る事が出来る。

 

 彼女が座り込んで泣いている。

 その近くには、何かの肉塊。座り込んで泣いているというのに、彼女は何度も、何度もその肉塊に何かを突き立てている。

 まるで、ソレが強いられている様に。

 

「――なのは」

「ッ……」

 

 彼女がオレの声に反応して振り向く。

 泣いていた。涙が顔を汚して、可愛らしい顔が台無しになるぐらい顔を歪めていた。

 銀色の毛を赤く染めた肉塊に何かを突き刺し、彼女はこっちを向いて、無理に笑う。

 

「ライトく……ん?」

「……あぁ」

「ほん、ホントにライト君だよね!?」

「……あぁ」

 

 どうしようななく、彼女は、笑って、ようやくこの地獄から助けてくれるだろう人間を見つけたみたいに。

 ソレは、そうなんだろう。オレだって、助けてくれるなら縋りたい。縋って、助けられたい。

 

「ライト君!!」

「ごめん、なのは」

「……え?」

「オレさ…、お前に酷いことしてた」

「酷い事?」

「うん……。取り返しもつかないぐらい、本当に、酷い事」

「いいよ、ライト君になら、なにをされたって」

「違う!!そうじゃないんだ!!なのは!!オレは…お前の気持ちを勝手に操って!!勝手にオレを好きにさせて!!」

「嘘だッ!!」

 

 なのはは絶叫する。信じない様に。

 そしてオレを睨みつける。まるで仇を睨むように。

 

「ライト君が……ライト君がそんな事を言うわけない!!お前は、お前は!!ライト君じゃない!!」

「オレは、ライトだよ」

「嘘、嘘!!嘘を言うな!!」

「もう嘘は言わないよ。オレは皇 光で、お前を壊した人間だ」

「嘘だ、嘘だ!!嘘だ嘘だウソだうそダウソダウそだ!!」

「嘘じゃねぇよ!!」

「違う、違う違う違う!!私のライト君は私の頭を撫でてくれて、笑ってくれて!!私の、私だけの!!」

 

 肉塊から鈍色の刃物を抜き出し、彼女はオレに突進する。まっすぐと、オレを突き刺して、彼女は止まる。

 腹部から鋭い痛みが走り、ジクジクと痛みが寄ってくる。

 

「あ、」

「……」

「また、また…私が、私が!!」

「…なのは」

 

 オレは彼女の顔を見ないように、彼女に顔を見せないように抱きしめる。

 腹に刺さった何かが更に奥に入ったが、そんな事はどうでもいい。

 

「ごめん、ごめん、ごめんなさい……」

「――」

「何も言わなくていい、許さなくてもいい、一生恨んでくれてもいい、謝らせてくれ、ただ、それだけで、いいんだ」

 

 いつの間にか声が震えていて、オレは泣いてて、頭の中にはごめん、しかなくて、口からもそれだけしか出てこなくて。

 

「ライト、君」

「……」

「私も、色々見たの。人形みたいにライト君のいいなりになってる私。ライト君の事だけしか見てなかった私。それから、ライト君を恨んで、恨んで、恨み続けて…殺しちゃった」

「殺してもいいよ」

「うん…自分でも、馬鹿らしくて、今になってはやてちゃんやアリサちゃんが私に叱ってた理由もわかった…ような気がするの」

 

 なのはは苦笑している。

 顔は見えないけれど、それでも、分かる。

 

「私はライト君に依存しすぎたの」

「それは、オレが」

「いいから、聞いてほしい……依存したのがライト君の所為でも、依存し続けたのは、私の責任だよ…」

「ソレも、オレが」

「それだと、全部ライト君が持って行っちゃうよ」

「それだけの事をしたんだよ、オレは」

 

 相変わらず苦笑しているなのは。そんななのはがオレの背中に腕を回してくる。

 

「二人共、あの日で止まってたんだよ。あの公園で始めて会った日で」

「だから、」

「だからさ。歩こうよ、二人で」

「二人でって……またオレが、お前を」

「一生恨んでもいいんでしょ?」

「…あぁ」

「ならさ、一生恨むよ。だから、恨む人の顔を一生見たいんだ、ずっと、忘れないように」

「……」

「だから、ライト君が前に歩いて私が後ろに隠れてた、そんな今みたいな事じゃなくて。手をつないで、歩こうよ」

 

 オレをゆっくりと離した彼女の顔は微笑んでいて、オレは、それに微笑み返す事も出来なくて、ただただ唖然としてて。

 

「許して、くれるのか?」

「許さない。一生私に償ってください」

「……ありがとう…ありがとう!!」

「たぶん、次から間違ってると思ったら叩いてでも修正するから」

「……頼むわ」

「頼まれたの!……ライト君からの頼みって、初めてかもしれないの、ふふ」

 

 どうしようもなく笑っていた彼女を見て、ようやくオレも本当に笑う事が出来るらしい。

 やっぱり、オレは彼女に依存している。彼女はオレに依存させられていた。

 オレは彼女に恋をしている。

 

 

 




~銀色ループ
 三回ぐらいしか書いてないけど、たぶんもっとループしている

~魔王ループ
1.目を覚ます、目の前に英雄様→英雄の頭部がパァーン
2.目を覚ます、英雄様が血塗で倒れている→自分らしき影に殺される
3.目を覚ます、英雄様と自分を客観的に見せられる→英雄様を殺す
4.目を覚ます、英雄様の死体祭り
5.目を覚ます、英雄様のバラバラ
6.嫌な、事件だったね
7.ウッディ!!
8.拷問狂に殺される前に自身で包丁を用い(ry

~アトガキ
 おい、誰か、誰かブラックで珈琲を頼みます。どうしてこうなったんでしょうね。彼らの話なんて在り来たりな精神論とテンプレすぎでございます。ドロー、ペルソナカード。
 どうしようなく一方通行同士だった二人がようやく、といった感じですね。
 知ってるか……こいつら、私の文章では主人公じゃないんだぜ…!!
 ネタを挟もうにも挟めない二人です。挟み込めない隙間がないとかそういうのじゃなくて、冗談を言える二人じゃないんですよね。ちくせう。
 冷静に、客観的に自分の挙動を見れた二人はようやく変わっていきます。文中で出ている通りに、彼らはずっと出会った日で止まってました。これから、動き出します。

 まぁ!彼ら中心の描写なんてもうないと思いますけどねぇ!!

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