あぁ神様、お願いします   作:猫毛布

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12 御高説には感動しましたよ

「世界は、いつだって…こんなはずじゃないことばっかりだよ!

 

ずっと昔から、いつだって、誰だってそうなんだ!

 

こんな筈じゃない現実に立ち向かうか、逃げるかは、個人の自由だ!

 

でも自分の勝手な悲しみに無関係の人間を巻き込める権利は、どこの誰にもありはしない!」

 

「それを管理局が言うか」

「え?」

「何でもないですよ」

 

つい口に出てしまった言葉がフェイトに聞こえたらしい。軽く首を振りながら地面にゆっくりと降り立つ。

 

「………時間稼ぎも出来ないのかしら?」

「えぇ、願いを叶えるのに邪魔な命令なんて聞く気はありませんから」

「そう…で、人形さんは何をしに来たのかしら?」

「フェイトは人形なんかじゃねぇ!れっきとした人間だ!」

 

すごくこちらを睨むプレシアな視線から目を逸らす。

‐止めろって?無理だよ

‐こいつを止めるなら核稼働の機動戦士でも持ってこないと

‐もしくはピンナブック

 

「貴女に伝えたい事があって来ました

 

私は…アリシア・テスタロッサじゃありません。アリシアの代わりには慣れない人形かも知れません。

 

でも私、フェイト・テスタロッサは間違いなく、貴女の娘です」

 

プレシアが少しだけ笑う。

それが後悔からきてるのか、それとも別の所からきてるかは、

――聴いたかしら?あれだけ拒絶したのにこの娘はやっぱり私の娘ね。最高よ。エクセレント、もう死んでもいいかもしれない。今死ねば幸せかもしれないわ

そんな念話が来てるのでスゴく解ってたりする。

 

‐何、この親バカ

‐極まった結果至ったんだろ

 

「プレシア・テスタロッサ!俺ならアリシアを生き返らせる事は可能だ!」

「…本当に?」

「あぁ!だから、早くこの次元震を止めろ!もうアルハザードへ行く必要などないのだから!」

「根拠はあるのかしら?」

「俺のレアスキルの中にそういう薬があるはずだ!だから大丈夫!」

「そう………なら無理ね」

「何でだよ!止めるくらい大丈夫だろ!?」

 

だからプレシア、そのコイツどうにかしてくれって目はやめてくれ。

‐出来るなら俺も止めたい

‐根拠も証拠も不確定で何を言い出すんだか

‐話がずれてるし

 

「はぁ……もうこの次元震は止められないわ。管理局のお姉さんに聴いて見なさいな」

「本当かよ!クソッ!」

「…私は行くとするわ、アルハザードへ……!」

 

プレシアの足場が崩れ落ちる。

重力に従いプレシアの体がカラフルな空間へと落ちる。

 

「【天の鎖】!」

 

スメラギ君の言葉と同時に虚空から鎖が顕れ、アリシアの入った円柱を縛り上げる。

 

そう、それだけを縛り上げた。

‐走れ!

 

「おい!君!」

 

後方から聞こえた管理局員の言葉を置き去りに、触手を展開する。

‐探知魔法発動

‐拒絶された!?

‐触手なら間に合う

穴を覗けばまだ姿の見えるプレシア。触手を伸ばしプレシアを捕獲する。

 

「止めなさい、私は死ぬのよ」

 

知ったことじゃない。

まだ生きれて、守らなくてはいけない命を殺す気はない。

‐プレシアと触手の重さで身体が持っていかれるぞ

触手を右腕に這わせ、伸ばす。支柱の一本をがんじ絡めにしてなんとか保つ。

 

「アナタはわかっていたでしょう?」

 

生憎と願いは変わったんだよ。

アンタと一緒に…母と姉と自分が幸せに成りたいって!

だから、暴れるのは止めてくれ。

 

「…………馬鹿ね」

 

そいつは悪かったな親バカ。

 

 

 

 

「アナタのお陰で計画が全部泡になったわ」

「粟なら沢山あった方がいいだろう?」

「残念ながら、手は濡れてないのよ」

「母さん!」

 

フェイトは母に抱き着き、その存在を確かめる。

母であるプレシアは固まってるが、幸せそうで何よりだ。

 

「なんでプレシアを助けた?お前を作った人間だからか?」

「………さて、早く脱出をしましょう」

「おい!聞けよ!」

「なぜプレシアを助けなかったのですか?」

「…何言ってるんだ?」

 

あの鎖ならば一本でも人を救えた筈である。複数出しながらもプレシアに向かなかったのは……そういう事だろう。

‐意思に従うならば

‐いや、どうでもいい

カット。どうでもいい。

 

「…プレシア、少し失礼しますね」

「なによ…」

「睨まないで下さい。ちょっとした診察ですよ」

 

プレシアの鎖骨近くに触れて、触手を少し展開する。

‐娘との幸せな時間を邪魔したからといって睨むなよ

‐顔が完全に弛んでるぞ

‐こう…もうすこし下に触手を動かせば

‐解析完了

‐微量の薬品反応と重度の肺結腫及び他臓器への転移確認

‐よく生きていられた状態か

触手を戻しながら溜め息を吐いてみる。

 

「一応、管理局に頼んで医者に診られてくださいね」

「……」

「いいですね?」

「なんで私が……」

「母さん…」

「すぐに行きましょう」

 

変わり身早いな、おい。

 

「あと研究資料は何処にありますか?」

「………私のデバイスの中と部屋にあるわ」

「御意に」

 

全員とは別方向を向き、足に魔力を込める。

‐素直に教えてくれるって事は期待されてるのかな?

‐三度も触手プレイをした訳だしな

‐二度目に至っては包み込んだしな!

カットカット。

 

「ユ、アンヘル!」

「私はここで死にます。こんな化け物が世に出てもいいことなどないでしょう?」

「行くわよ、フェイト」

「母さん、でも!」

「大丈夫よ。アレは何があっても約束を守ってしまう馬鹿よ」

 

そう言って無理やりフェイトを連れて歩き始めたプレシア。ありがたやありがたや。

‐実際はプレシアが抱えられてるから何とも

‐まぁプレシアには伝わってるしいいか

 

「では、管理局の方…どうかお願い致しますね。私がこの崩落を抑えてますので」

「……あぁ。すまない」

「おいクロノ!急げ!」

「直ぐに行く!……あの三人の事は任せてくれ。絶対に悪いようにはしない」

「それは感謝します……あぁそれと」

「なんだ?」

「先程の御高説には感動いたしました。是非そのまま成長して下さい」

 

黒いチビッ子はばつが悪そうな顔をして踵を返した。

‐ざまぁ

カット。

 

 

「さて、頑張りますか」

 

 

 

 

 

 

到着したのは装飾の少ない部屋。強いてあげるならば壁や床が崩落している程度か。

‐始めよう

‐迅速に確実に、完璧に終わらせればいい

‐解析開始

 

足元に現れた朱色の魔方陣から同色の糸が何本も伸びる。

‐日記

‐研究資料

‐計画書、プロジェクト『F.a.t.e』

‐エネルギー循環理論

‐大型エネルギー炉開発

………

……

 

 

「………さて、逃げるか」

 

もう立ってるだけ…というか上にぶら下がっているのが限界なので、壁に転位陣を敷く。

赤黒い触手の縁に朱色の魔力光の行き先は海鳴市の自宅。

 

「これだけ資料があれば、いけるさ」

 

そう自分に言い聞かせて魔方陣の中へ飛び込んだ。




~核稼働機動戦士
パイロットが優秀すぎて遅いだの、反応が悪いだの言われてしまった兵器。カラーは白。ライフルは使い捨てで、使い終わったら捨ててザコに当てていた。
ライバルは足のない萌えキャラ。隻眼で足が根本からなくスカートを常に履いている。このキャラのEDは語れないが、首が飛ぶとかホラー的要素が含まれるらしい。
オマージュでは天然ギャグキャラで腕も飛ばしている。

~ピンナブック
見つければ男は自然とこれを見ます

~こんなはずじゃない現実
名言。この小説にも出したかった。後悔はしてない。

~私は、貴女の娘です
名言2。プレシアは歓喜のあまり主人公に念話を送り込んだ。彼女の脳内が幸せでなにより

~触手プレイ
カット

~ネタ
最初に比べるとキレも数も減る一方。どうにかしたいが、ネタを入れるスペースが無いのとネタが思い付かない真面目回が続きすぎて作者は庭園に入ってから毎回誰かを犠牲に無理矢理面白くしようと四苦八苦している。おそらくこの小説が完結したとして最多犠牲者はスメラギ君。



~アトガキ
どうも猫毛布です。
アリシアとプレシア様には生きてもらいました。別に先の何かに響く訳じゃなく、その時点で生きて欲しいと思ったので、後先考えずに助けました。
だってプレシア様が可愛いんだもの。仕方ないね!

情報自体は管理局…リンディさんに送りつけていましたが、明らかに管理局の黒い部分なので大人びた子供であるクロノには知らされてません。
淡々と更新して段々と内容が薄くなっていきますね。薄い本でも用意出来そうです。

次話も真面目回だけど、どうにかして遊びたいなぁ

では感謝と謝罪を混ぜ込んでタラバ

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