あぁ神様、お願いします   作:猫毛布

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04 肉体言語でのお話はやめましょう

「……………」

「………ごめんなさい」

 

テスタロッサが俺の前で軽く頭を下げている。

理由?どうやら今日の夕飯は要らないんだってさ。

‐最近の楽しみが!

‐今日こそ惚れ薬を…

 

カット

 

「……理由はわかったが…別に謝る必要はないぞ?」

「え?」

「事前に言ってくれればそれでいい。体調が悪いならそれなりのモノを作ってもやる」

「う、うん」

「至れり尽くせりだねぇ」

「至る前に尽くすのが俺だ…それとアルフ」

 

アルフの耳に寄りなるべく声量を下げて呟く。

 

「お前の主人はどうせ無理するだろうから、止めろ…とは言えないが、何かあったかぐらいは言ってくれ」

「…はいよ」

 

性格上何か無理をする。律儀と言うか真面目過ぎるというか…。

‐改善したいな

‐無理だろう

‐それこそ死んでも直らない

カット

 

「ま、気をつけてな」

「うん、いってきます」

「いってらっしゃい。無事を祈るよ」

 

 

ゴールデンウィークは暇になりました。

 

 

 

 

 

 

起床

読書

就寝

以上。

ゴールデンウィーク終了。

外?朝と夜の日課以外出てません。騒がしいし、何より眠かった。

家にある本も読んでなかったし、非常に有意義だった。自堕落でもあったけど。

 

「………ただいま」

「おぉ、おかえり…顔色悪いな、大丈夫か?」

「大丈夫、心配しないで」

「はいはい。夕飯まで時間があるから、ソファで横になってな」

 

元々そのつもりだったのか、テスタロッサはフラフラとソファに向かい倒れるように横になった。

 

「ふむ……どういうこった」

「アイツが…アイツが…!!」

「どうどう。落ち着け狼。左の棚にジャーキーが入ってるから」

 

何故か怒ってるアルフを宥めながらテスタロッサに布団を掛けてやる。

‐寝顔可愛すぎるよォォォォァオオオ!!

‐ブチュッといこうぜ!

‐ガンガンいこうぜ!

‐アルフの位置は!?

‐ジャーキーを探していてこっちを見ていない

‐気配遮断の結界展開!

‐妨害されました!

‐クソッ!誰だ!

カット。俺以外に誰がいるんだよ俺…。

 

「どうかしたのかい?」

「……別に。それにこっちが聞きたい」

 

テスタロッサを精神的に追い込みだなんて、余程の事だ。

 

「アルフの言うアイツ…ってのは?」

「………フェイトの母親さ」

「母親……」

 

虐待でも受けてるのかね。

‐可愛いから?

‐鏡よ鏡よってか?

‐リアル白雪姫かよ

‐死姦も辞さない

‐視姦で我慢しとけ

カット。

 

「あれか、ジュエルシードだっけ?を集める理由もソコにあるのか」

「詳しいことは私もフェイトも知らないよ」

「そうか……」

 

‐さすがに魔法関係は調べようがない

‐ならばフェイトタンを助ける為にはどうすればいい?

‐ジュエルシードを集める?

‐力不足だ

‐母親に直訴する?

‐場所不明

‐あちらにもソレに足る理由があるだろう

‐三流小説みたいに【悪】を行う悪の機関なら潰してしまえばいいのに

‐そうではないから困る

 

結論的に俺はテスタロッサに対して何も出来ない。夕飯を作って、彼女を心配することしか出来ない。

‐煩わしい

‐歯痒い

 

「なぁ、アルフ」

「ん?」

「もしも、お前が主人を守れなくて、どうにか助けてほしい時はさ、祈ってほしいんだ」

「祈る?」

「神様…は止めとけ。あれは、絶対に止めとけ」

「じゃあ、何に祈れってのさ」

「あれだ、化け物にでも祈ってくれ」

「は?」

「化け物は助けるよ。大切な存在と大切な存在の大切な存在を」

「なんだってんだ?」

「心の片隅にでも置いといてくれ」

 

これは保険。

誰に対してでもない、誰かの保険。

 

「さ、今日の夕飯を作りますか。リクエストは?」

「肉!」

「鰆でも焼くか。今日安かったし」

「決まってるなら聞かないでおくれ!」

 

狼なのに“キシャー”と猫のように怒るアルフに苦笑しながら鰆を冷凍庫から取り出した。

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

「アンタね!いい加減にしなさいよ!」

「アリサちゃん…」

 

バニングスの声が教室に響く。

叫んだ相手は親友である筈の高町。高町が最近上の空だった事が理由だろう。

完全に他人である俺が気付いたんだ、バニングスや月村はもっと深い部分でわかっている筈だ。

 

関係など一切ないけど。

‐ツンデレ煩い

‐さっさとデレ期来いよ

‐来ても他人にはツン状態だ

‐永遠にツンでいい

カット。

 

「落ち着けよアリサ」

「アンタは黙ってなさい!これは私達の問題よ!」

「なのはが危険なら俺が守るし。大丈夫さ」

「アンタ…なのはが何を隠してるか知ってるのね!」

「え、あ、えっと…」

「………もういいわ。じゃあね」

「アリサちゃん!ごめんね、なのはちゃん、皇君!」

 

なんで会話に入ろうとしたんだスメラギ君よ…。

‐バカだ

‐言い澱む位なら喋んな

‐あらかじめ嘘ぐらい用意してろって

 

 

 

 

「ん、バニングスと月村がいないな」

「バニングスさんが体調不良で月村さんが付き添いで保健室に行きました」

「そうか、なら授業を始めるぞ」

 

 

 

 

 

「お、月村!」

「御影君…」

 

授業を軽やかに抜け出し二人の捜索。

口裏を合わせたかった…というのが一番の理由だが

 

「…どう?」

「うん…今すぐは無理だと思う」

「だろうな…」

 

火に油を注いだバカもいたし。

 

「バニングスさんは体調不良で月村はその付き添い。二人は保健室へ」

「わかった。そういう事にしとく」

 

苦笑して了承された。

バニングスは月村に任せればどうにかなるか。

‐問題は高町

‐スメラギ君に任せれば?

‐アレはアレでツンデレが怒った理由を正しく理解してないだろ

‐馬鹿だもんな

‐バニングスに余計な勘違いをさせた訳だし

‐あー面倒だ

‐面倒だ

 

 

 

 

 

 

「あー、高町さん。少しいいか?」

「………なに?」

 

暗い。話しかけ辛い。

‐もうスメラギ君に任せりゃいいんじゃね?

‐それで友人関係が終わればソレだけの関係ってことで

‐アフターケアをなんで俺がしてんのさ

‐あーやだやだ

‐これをしないとすずかタンが泣くからなぁ

‐はぁそれも嫌だけど

 

「面倒だな」

「なら構わないで」

「…こっちの話だ。高町さんを面倒だとは言ってない」

「早く用件を言ってよ。あんまりいい気分じゃないの」

 

‐嫌われすぎだろ

‐なにかしたっけ?

‐すずかタンに近づいたぐらいだけど

‐スメラギ君に何か吹き込まれてるのか

‐至極どうでもいい

 

「なら用件だけ。さっさと仲直りしろ」

「貴方には関係ない…!」

「関係ないさ。関係なんてあって堪るか」

「じゃあ…!」

「クラスの空気がギスギスし過ぎて周りが煩いんだよ」

「………え?」

「やれ『頼む』だとか、やれ『さすが眼鏡』だとか、『委員長命令だ』とか、『副委員長ファイト』だとか!お前らが仲直りしない限りずっと言われるんだ!関係なんてあって堪るか!あったらもっと言われる事必須だよ!ちくしょー!」

 

もうやだこのクラス…。

なんで俺も副委員長とか面倒な仕事を…。

‐寝てたら決まってた

‐ああいう決め事になると眠くなるよな

‐席替えとかな

‐ワクワクドキドキなんてなかった

カット。

 

「えっと…ごめんなさい?」

「……事の顛末を教えろ」

「……はい」

 

 

 

 

 

まとめると

詳しくは言えないけど秘密があって、一人で解決するから大丈夫だよー。でバニングスが怒る。更にスメラギ君が介入してワー。

 

「…………わー」

「………ふざけてるなら帰っていい?」

 

俺もさっさと帰りたい。

 

「あれだ、バニングスさんにはソレを言ったか?」

「…言えるわけないよ」

「なんでさ」

「その…危険な事だから」

「危険な事だから言えないのか?巻き込まない為に?」

 

馬鹿らしい。馬鹿みたいだ。

 

「馬鹿だな」

「は?」

「例え話をしよう

高町さんの友人…まぁバニングスさんに秘密がある。もちろん、何かを考えてる事は高町さんもわかってる。見てわかる程度に悩んでるのだから。

さてさて、当然のように高町さんはバニングスさんに悩みを打ち明けてほしい。しかしながらバニングスさんの悩みは危険が伴う。

ソレを知っても、君はバニングスさんに話を聞くかな?」

「…………それでも聞きたいよ。危険が及ぶなら、それをはぐらかしてでも、アリサちゃんの悩みを聞きたい」

 

たっぷりと悩んでから高町は口を開いた。

輝かしい目をしていて、うん。夢と希望に溢れる子供はいいねぇ。

さて、更に問いかけよう。

 

「話はここで終わらない。そんな秘密をもったバニングスさん。言える訳がない。もちろん、親友と言っても過言ではない高町さんにさえ言えない事だ。

 

『心配するなよ。俺がアリサを守るから』

そう俺が言ったら?」

「とりあえず、御影君を叩くかな」

「肉体言語でのお話はやめてくれ。

 

 

さて、バニングスさんは高町さんに話を打ち明けた。それはもうはぐらかしながら、危険が及ばないように。それでハッピーエンドだ」

「うん………あれ?」

 

そうこれには穴がある。

 

「殴られた俺のフォローは請け負ってないんだ。まぁ正確にはスメラギ君だがな」

 

 

それに関してはホントにどうでもいい。

アイツが嫌われようが死のうが、好かれようが生きようが知ったことじゃない。

 

「そんな感じで、君はどこへ向かうか決めたか?」

「……うん。とにかくアリサちゃんに謝ってくる」

「よろしい。俺の仕事はここまでだ。義務も免除された訳だ。先にもいったように君との関係など一切ない」

 

さぁ帰ろう。

‐フェイトタンが待ってるよ!

‐今日の夕飯は何にしようか?

 

「その、ありがとう」

「俺は少しだけ高町さんと喋っただけだよ。あとは君が勝手に助かるだけだ」

 

俺は道を少しだけ明るくしただけ。

正しいか正しくないかは分からない道を点しただけ。

歩くかどうかは高町が決める事さ。




~三流小説の【悪】
悪の怪人「フハハハハ、なんとなくこの世界を壊してくれるわー」的な

~キシャー
猫が威嚇してる時の擬音

~副委員長
主人公の役職。半強制。厄介事をよく押し付けられる

~肉体言語でのお話
O☆HA☆NA☆SHI。辛い。主に肉体が

~君がかってに助かるだけ
サイケアロハの人の名言。精神的に人は他人を救えない。故に勝手に救われるだけ。文中では『救う気がなかったからどーでもいいよ』

~厄介事
この小説には必須のご都合主義の塊


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