あぁ神様、お願いします   作:猫毛布

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36 ベット内容は命と世界

「さて、フェイト。お前は先に外に出てもらおうか」

「…うん」

「俺とはやては最後の詰めに入る…といっても、はやては夜天に命令するだけなんだけどな」

「何したらええの?」

「今発動してる自己防衛プログラムの遅延、あとは俺がどうにかするさ」

 

‐断片データ取得

‐解析

‐守護騎士プログラムから解析したデータと一致

‐詳細解析開始

 

「外にいる…スクライアかもしくは管理局に説明しといてくれ。『暴走するまで放置してろ』って」

 

 それまでに手を出されるとエラーが出て辛い。

‐断片データ取得

‐解析

‐先ほどのプログラムと照合、一致

‐管理者コード認識

‐対象、フェイト・テスタロッサを夜天から解放

 

『コード取得者からの命令受諾します』

「んじゃ、よろしく」

 

 ベルカの魔法陣がゆっくりと回転し、フェイトを包み込み消える。

 

「ホンマに魔法使いやってんや」

「今更だな」

 

‐プログラム解析

‐あー、足りない、データが足りない

‐いっそ新しく組む方が楽か?

 

「リンカーコア送還、破損修復」

「守護騎士プログラム、修復…出現はさっきのビルあたりだな。座標も残ってる」

「なら、お願い」

「ヤー、夜天の姫」

 

‐守護騎士プログラム行使

‐夜天の姫からの命令だ、さぁ起きろ騎士ども

‐断片データ取得

‐解析

‐一致

‐結合

 

「これで、私がココで出来ることは、オシマイ」

「よくやった。あとは任せてお前も外に出とけ」

「管理者権限の一部をコード所持者に譲渡」

『譲渡、確認しました』

「そこまではいらねぇよ」

「ソレなかったら、夕君出られへんやろ?」

 

 出るつもりがなかった。とは口が裂けても言えない。

‐ここでプログラムをいじり続けなくてはいけない

‐暴走プログラムの書き換えも完了していない

‐断片データ取得

‐解析、一致

‐結合

 

「あかんで、帰ってこな」

「…夜天の、姫に杖を」

『コード所持者からの命令受諾』

「ちょい待ちぃや!」

「どうどう。俺もすぐに出るさ」

 

 はやての足元に魔法陣が出来上がり、そして消える。

‐これでよかったのだろうか

‐悪いわけがない

‐言い訳もない

 

「さってと、どうすっかな」

『ツキビト、頼みがある』

「んー?」

『私がもし消える道を選べば…主は助かるのだろうか』

「さてね。それは知らんし、お前が消えるっていう選択肢はお前が選ぶものじゃねぇよ」

『……』

「さっき自分で言ってたろ?お前は道具だ。道具なんだからご主人様の命令を聞いて考えろ」

 

 世話のやける道具だ。

‐まだ信じていないのか

‐暴走プログラム発動までの時間が迫ってきたぞ

‐いっそ魔力をぶち込んで機能停止に追い込むか?

‐危険すぎるわ

 

「まぁ、データの復元は出てからでも可能か」

『ツキビト、すまない』

「気にするなよ。約束は絶対に守る」

『…ありがとう』

「おうさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベルカの転移魔法、いや召喚魔法なんて絶対にもう信じない。絶対だ!

 

「ぬぉぉぉぉおおおおおおおおお!?」

 

 水面に向かって垂直に落ちていく。

 マズイ、このスピードで水にぶつかったら、確実にアイツと会話できる状態になる。

‐空間解析開始

‐速度判定、死亡確率上昇中

‐飛行魔法

‐エラー、術式崩壊

‐痛覚遮断

‐身体強化

‐体勢を立て直せ!

‐スフィア展開

‐魔法弾射出

‐腹部に着弾確認

‐体勢保持

‐魔力弾を足元に精製

 

「ユウ、大丈夫?」

「おぉ…あー、もう少し早く来て欲しかった」

「その、ごめん」

「いや、まぁいいさ」

 

 襟首をフェイトに掴まれ、体勢を立て直して作った魔力玉に乗る。

‐いやはや

‐夜天の暴走プログラム発動予定まで5分

‐上空に生体反応確認

‐高町なのは、バカ、管理局員、八神はやて、ヴォルケンリッター

‐うむ、騎士プログラムはうまくできたな

 上空に魔力玉を精製していき、跳んで渡る。

 

「君が、セネターだったのか」

「ん?初対面なはずだけど?」

「いや、そうか、それならいい。クロノ・ハラオウンだ」

「御影夕だ。夜天の暴走プログラムの説明がしたいんだけど、いいか?」

「おい!こいつは敵だぞッ!」

「敵であれ、味方であれ、彼自身が死ぬ危険に晒されているんだ。情報は信じるに容易い」

「ッチ」

 

 視線で軽く礼を伝えて、暴走プログラムの説明をする。

‐不本意ながら、俺だけの力では面倒が増える

‐元々多人数でどうにかする問題だしな

‐アンヘルを展開すれば、飲み込めるが

‐暴走プログラムを止めれるかは不明だからな

 

「手短に。暴走プログラムには物理と魔力の複合四層防壁になっている」

「ハッ!そんなことオレが知ってるよッ!」

「なら話は早いな。その後、より強固な物理魔力複合防壁が展開される」

「なんだとッ!?そんな事あるわけないだろ!!」

「既存プログラムになかったんでな。俺が追加した」

「テメェ!やっぱり敵かッ!」

「やめろ、ライト。話を続けてくれ」

「防壁の効果が文字通り複合防壁、あの恐ろしい桜色砲単体で破るのは無理だ」

「スターライトブレイカーでも…」

「でも破る方法はあるんやろ?」

「ヤー。なければ別の方法をとったさ」

「それは確実か?」

「予測ではな。実際はやってみないことにはわからない」

「そうか…」

「信じれないか?」

「……いや、君を信じてみよう」

「それは、また酔狂な事で」

 

 溜め息を吐いて、ハラオウンを見る。

 目に疑いの色はないが、信じているワケでもないだろう。

‐まったく、真っ直ぐだなぁ

 

「プランを確認しよう。まず最初の四層の防壁は元のプラン通り僕らがどうにかする。最後の複合防壁はミカゲに任せ」

「オレも最後に回る」

「ライト君?」

「こいつだけじゃ信用できねぇ。オレも最後に回ってやる」

「そうか…ならライトとミカゲが複合防壁を破り、一斉砲撃にてコアを露出。その後ユーノ達の強制転移魔法でアルカンシェルの射線上に…」

「ベットは命と世界で、全員成功するほうか。賭けにもならねぇな」

「なら夕君は失敗する方に賭けたら?」

「冗談。終わった世界で誰もいないなら勝ちでも負けさ」

 

 ともあれ、ギャンブル性が高いのも事実だ。

 いざとなれば、俺がどうにかするしかない。

‐成功確率演算

‐八割程度か

‐全員の実力はある程度把握してるが

‐最後の防壁破りがなぁ

 

「なんだよ、こっち見るんじゃねぇよ!!」

「ハァ…」

 

 こんな事で成功するのだろうか。

‐大丈夫だろう

‐実際は俺一人でどうにかできる問題だ

‐それが二人になったところで結果はあまり変わらんさ

‐マイナス作用さえなけりゃぁな

 

「オイ」

「よぉ、ロリータ。調子はどうだい?」

「…どうせまた無茶したんだろ」

「こんなの無茶にはいらんさ。悪かったな、お前らを守れなかった」

「先に謝んなよ…バカ」

「私たちはお前に感謝しきれないようだな」

「おいおい、シグナムまでそんな調子かよ、やめてくれ」

「照れるなよ」

「うっせぇ!ワンコ!」

「照れ隠しとわかると、中々に面白く見えるな」

「だぁ!ちくしょう!防壁破る準備してくる!お前ら来んなよ!」

「照れてるわね」

「ユウって照れ隠しがヘタだったんだね」

「御影君、そんなに照れなくても」

「もうやだ!こんな職場もうやめてやる!!」

 

 結局俺はクスクス笑われながら、海面まで逃げたのであった。

‐やーい、お前んち、オーッバケヤーッシキー

‐やーい!ロリにいじめられてやんのー

‐ロリにいじめられると聞いて

‐おまわりさんこいつです

 

 

 

 

「さてと、っと」

 

 設定した複合防壁を破るための準備をする。

‐魔力弾足元に維持

‐体勢維持確認

‐アンヘル展開

 

「うむ、上々」

 

 アンヘルを制御して左手から棒を伸ばす。

 そのまま左肩を前にするように体を捻り、右肩に棒を置く。

‐保険として取っていたリンカーコアから魔力吸収

‐その魔力を全て予定消費魔力に追加

‐概念を込める為に詠唱を

 

「Enda sudri, landi brenna ...」

―南の果て、灼熱の地

 

 桜色の魔法と巨大な鎚が暴走プログラムの防壁を破る。

‐アンヘルに魔力追加

‐硬度強化

 

「Giants verjendur Musuperu brenna, allt ...」

―ムスペルの守り手、全てを焼く巨人

 

 ずしりと肩に負担が掛かる。

‐柄、精製完了

‐刃に移行

 金色の刃と桃色の矢が二枚目の防壁を破る。

 

「Haldid sverdinu Mimagau eldi og solarljosi ...」

―手に持つは炎、陽光と見紛う剣

 

‐硬化

‐刃に炎熱魔法を付与

‐予定リンカーコア、残り僅か

 白色の光が刺さり、凍結魔法が海を凍らせる。

 

「Kemur her og nu, allt sem eg borda ...」

―いまここに姿を顕し、全てを喰らえ

 

‐刃への魔力供給開始

‐炎熱魔法起動

‐リンカーコアの残量なし

‐計算通りだ

 

「Farmskra, sverd Surt! 」

―顕現せよ、スルトの剣!

 

 完成すると同時に魔力が消えていく感覚がする。

‐燃費悪すぎる

‐予備リンカーコア使って尚キツイとか

‐対象、距離100

‐なに、一歩さ

 

 魔力を足に込め、足場の魔力弾を踏み潰す。

 魔力弾は破裂し、同時に俺の速度に上乗せされる。

‐対象、距離25

‐振れば当たるさ

‐さぁ、燃やし尽くそう

 

「ウォオオオ!!!」

 

 捻っていた体を戻し、左手に握られている剣が海を焼き、暴走プログラムの防壁に当たる。

‐魔力追加

‐防壁破壊域

 

「砕けろ!」

 

 バリン、と割れた音を聞いて、あとはアイツらがどうにかしてくれるだろう。と考えてしまった。

 安心したのと、魔力消費で意識が....

 どうにもならないようなら…起こし……て……。

 

 

 

 

 




~スルトの剣
 レーヴァテインと同一視されてたりするが、別物。今作では剣の性質と燃える性質の二つを付与した巨大な剣。
 出典は北欧神話より。詳細はwikiにて。

~詠唱()
 概念武装の為の詠唱。実際彼の詠唱に意味があるかと言われれば無い。要はアンヘルの硬質化と炎熱魔法の多重式であり、それの創造を容易くする為に詠唱してた。
 一応北欧神話出典なのでアイス
ランド語を使用。文字化けが酷かったので応急措置を施しております。ご了承ください。
 神殺の武器や神造武器としての概念は一応保たれているが、贋作者と呼ばれる前の彼が作るよりも性能は当然落ちている。尤も、彼が作ると魔力がアボーンしそうですし、スルトの剣自体が剣としての形なのかが不明なので、剣製できなさそうです

~保険リンカーコア
 ここから先使うことのなかったリンカーコアはココで消費して、先の話の邪魔とかにごにょごにょ

~アトガキ
 もう何も言うまい。さぁ罵ってくれ!
 私を厨二乙と罵ってくれ!!


 グスン…どうしてこうなったんだろう。

 どなたかカッコイイ詠唱考えてくれませんか…とも言えず、私は深夜テンションでコレを書き上げました。えぇ、厨二病ですとも。既にわかってたでしょうよ!チクショー!!
 あー、えっと。ともかくこれでようやく真面目回が少し姿を潜める訳です。
 エピローグとちょくちょく日常編を更新したら、あとはドシリアスに突入です。ユウがふざけない、というかユウ視点が少なくなりそうです。まぁあとの事は追々考えましょう。
 とりあえず、管理局が記録する闇の書事件はココで終了です。

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