あぁ神様、お願いします   作:猫毛布

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38 ハッピーエンドだ、ざまぁみろ

「メディカルチェックはいらないぞ」

「……」

「残念ながら、至って健康、というか傷なんて一切ないさ」

「……君は自分の状態を知らないのか?」

「…知ってるからこそ、チェックを受けれないのさ」

「知っていて、何故そんな平気で居れる!!」

「怒鳴るなって、ドラみたいな声になるぞ」

「……すまない」

 

 隣に歩くハラオウンは少しだけ頭を振り落ち着く。

‐あぁ、全くどれだけ真っ直ぐなのだろう

‐敵を信じ、敵に礼を言い

‐本当に管理局なのか?

‐いっそ管理局なんてやめちまえばいいのに

 カット。そうもいかないんだろ。

 

「君は初対面と言ったが、僕が君と会うのはあの戦いで二度目だ」

「…さて、どこで会ったか皆目見当もつかないな」

「僕の意見は素晴らしいのだろ?」

「……アレは、皮肉さ」

「知ってるさ。僕は全部引っ括めて、彼の言葉を飲み込んだよ」

「…まぁなんのことかさっぱりわからないけどな」

「そうか。僕の勘違いだったようだ」

 

 お互いニヤリと笑ってから吹き出す。

 クスクスと笑う少年二人は、端から見てて気持ち悪いどころの話ではないだろう。

 

「で、君には幾つか聞かなくてはいけないことがある…と言っても状況を聞くのみで済む」

「ん?管理局の邪魔はしたが?」

「その分は情報提供で補ってるだろう。事実、君が善意でしていた情報提供の御蔭で事務処理の内容が簡潔に済んでる」

「お役所仕事は辛いねぇ」

「そうでもないさ」

「セネターとしての活動は?」

「粗方洗ったが、大半は原生生物に関して。コレも君は想定して動いたんだろうが、その世界の悪影響になる生物を狙っていたんだろ?」

「さてね。運がよかったのさ、次からは無理だな」

「そうか。なら今度から賭けは君がベットした所に賭けるのはやめるよ」

「そうしてくれ。後で折半しよう」

「それは断る」

「残念だ」

 

 実際歩きながらの日常会話に等しい取り調べ。

‐情報は無限書庫にあったし、特定の原生生物を狙うのは容易い

‐はやての罪が軽くなると思ってたが

‐あとははやてとコイツの手腕によるさ

‐はやても総合的にみれば被害者だからなぁ

 

「あと、」

「ん?」

「母さんが君を怖がってる、というか君を見るとどこかオカシクなるんだが、覚えは?」

「……残念ながら。少し威嚇した覚えしかない」

「ならそれなんだろう。少しは加減してくれ」

「次から優しくするさ」

 

 そうして、俺とハラオウンは医務室に入り、ここから記録込みの公的な取り調べが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、肩凝るなぁ」

「記録が終わってすぐそれか」

「当たり前だろ。第一管理局の記録に残される事自体不本意だっての」

「そうか。リーゼロッテに聞いてたが管理局嫌いだったな」

「リーゼロッテ?誰それ」

「無限書庫で会っていたらしいが」

「無限書庫…ユーノとアリシア、フェイト…あー、猫耳管理局員か」

「随分な覚え方だな」

 

 アイツらなんてそれで十分だ。

 

「嫌い、ってワケでもないんだけどな。好きじゃないのさ」

「…理由を聞いても?」

「やめとけ、俺のエゴで俺の想いだ」

「……そう、か」

 

 これだけでも眉間に皺を寄せてしまう彼は、やはり人間として出来ているのだろう。

‐頭も回るしな

‐人の心配もできる

‐全ての管理局員がコイツならば

 カット。さすがに怖いな。

 

「そういえば、仮面の男はここに捕まってるのか?」

「…いや、彼らは首謀者と一緒に別の場所にいるよ」

「首謀者ねぇ…まぁいいけど」

「どうした?」

「いや、少しだけ言いたい事があったんだけど、いないならいいか」

「良ければ伝えとくが?」

「助かるけど、本当に他愛もない言葉だぞ?」

「伝言板に書いて伝えられるなら、聞かないさ」

「なら、一つだけ。

 

 

 

 

 

 残念ながら彼女の御伽噺はハッピーエンドで終了だ。ざまぁみろ」

 

 




~彼女の御伽噺
 仮面の男が皮肉で言ったので、皮肉にも喜劇になった事の言伝

~少しの威嚇
 ナンノコトダカワカラナイナー

~一切傷のないユウリン
 衣服はボロボロだったけど、ぶつけた痕も無く、リンカーコアに少し欠損してる程度。クロノの言いたいところはそこじゃない

~皮肉屋とアースラの切り札君
 皮肉屋の言いたくない事は切り札君が察してそれ以上聞かず、切り札君が聞きたい事は皮肉屋が濁して答え、冗談の通じる相手なので気を使いながらも言いたい放題

~リーゼロッテと仮面の男
 管理局の人間が犯罪の共謀をしていた事を隠すクロノ君と、管理局が気づいてないと思っているユウリン。お互い知ってるとは知らないので二つは別の存在として扱ってます。まぁクロノ君がウッカリしてますけど

~アトガキ
 全てにおいて万全に準備していたユウリン。
 実際管理局が関与しなければ、管理外世界の原生生物が少なくなり、はやては普通に救われる。これが化け物の描いた未来図でした。
 管理局が関与したことにより、害のある原生生物狩りに移行。フェイトやプレシアの前例もあるので保険を掛ける事に。
 なのは達が見舞いに着た段階で夜天の二次覚醒可能域までのリンカーコアは溜め込んでいたが、管理局員であるフェイトの前で覚醒などは不可。その後夜天の暴走により計画が全て前倒し。夢に取り込まれたのは僥倖であり、予定を立て直す。
 これがユウの行動です。こうやって見ると相変わらずバカみたいに影で動いてます。ユウの小説でなければ全カットでもおかしくないですね。

 長かった闇の書事件も終わり、ここから空白期になります。無印期に書いたようなスメラギ君編はありません。彼は今回普通に原作を知ってたので特殊な動きもしてませんし、StS期の為にお仕事頑張ってたとしか…。ソレを言ってしまえば無印期のときもなのですが、アレは必要だったのでごにょごにょ。
 まぁとにかくこれで夜天も無事で、八神家は夏祭りに行くことができそうです。ウン。
 これ以上書いてるとネタバレ気味な事も書いてしまってたので、ここらで筆をひとまず置かせていただきます。

 あぁ神、A's期終了。
 読了お疲れ様でした。

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