あぁ神様、お願いします   作:猫毛布

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22 やっぱり夏は冷やし素麺

「おはよぉさん、っと」

「はやてちゃん!大丈夫なの!?」

「なんや、仰々しいなぁ、なのはちゃん。昨日も普通に授業受けてたやろ?」

「そうだけど…」

 

 気まずそうにするなのはちゃんの頭を撫でて、微笑む。

 私は大丈夫だ。昨日の内に心は決まったのだ。私は、ブレない。

 そんな事を思っていると、なのはちゃんの視線が横に動いている事に気付く。そのまま追えば、片手で頬杖をついて外を見ているアリサちゃんがいる。どうしたと言うのか……。

 

「おはよぉ、アリサちゃん」

「ア゛ァ゛?」

「お、おぉ、ごめんなさい」

 

 思わず咄嗟に謝ってしまった。

 物凄く、機嫌が悪いです。もう何て言うか、『私、怒ってます』という顔だ。

 

「あ、ごめん。おはよう、はやて」

「お、おはよぉ。えっと、何かあったん?」

「何か?何かあったか、ですって?」

 

 あ、コレはダメだ。触らぬ神に祟り無しとか、そんなレベルの神様に触ってしまった。

 

「何なのよ!!アイツ!」

「あぁ、デスヨネー」

 

 なんとなく察してしまった。友達想いだから、彼女はここまで怒ってる。怒ってくれている。

 まぁ、見る限り本人の怒りも少しは混ざってるとは思うけど。

 

「あ、おはよ。はやてちゃん」

「おはよぉ、すずかちゃん。どうにかして?」

「えーっと、ご愁傷様?」

「ちょっとはやて!!聞いてるの!?」

「あーはいはい、そやね。やっぱり夏は冷やし素麺が美味しいよね」

「……聞いてなかったのね」

「まぁ、夕君の事ってのはなんとなくわかるし」

 

 どうせ私が心配、というか私の状態を見て夕君に問い詰めに行ったのだろう。どう言われたかは知らないけれど。

 

「私達との関係を『友達ごっこ』の一言で片付けて、追い返されたわ」

「……うわぁ」

「あぁ!!今思い出すだけでもイライラする!!なんであんなヤツの事少しでも認めてたのよ!!」

「あぁ、イライラしてるんは、夕君にじゃなくて、その夕君を認めた自分にやねんや」

「当たり前よ!!あんな人間に割く心は一切無いわ!!」

 

 散々の言われようである。

 私がアッチの立場なら、あんな感じに激昂してたと思うから何も言わないけれど。

 きっと彼女に夕君の事を諦めないと言えば、必死で止めてくれるんだろう。その制止の言葉も私は聞かないけど。

 

「おはよー…」

「うにゅぅ…」

「フェイトォ…走りながら寝るなんて器用な事習得しちゃダメだよー…」

「起きてぅよぉ……ぉぉ……?」

「ダメだ、そろそろ電池が切れるわ…誰か、フェイトを席に連れてって」

「俺が!」

「おいおい非力なお前が行くよりも俺の方が適材だとは思わんか?」

「お前みたいな暑苦しいやつが行くよりも俺の方が万倍はいいね」

「何を!!」

「アンタ達、二人いるんだから二人で抱えて。落としたら、ね?」

「イエッサッ!!」

 

 妙に息のあった二人によりフェイトちゃんは自分の机に突っ伏して、腕を枕にすることもなく、眠った。

 肩をトントンと叩きながらアリシアちゃんが息を吐く。

 

「ふぅ……あ、はやエモンいるじゃない。おはよう」

「うん、ええねんけどそのあだ名やめへん?」

「えっと、じゃぁ『はや助』?もしくは『はや太郎』?あとは『はーマン』?」

「『はーマン』だね!」

「すずかちゃん!?」

「だって、ファンネルだよ!?不器用デレなんだよ!?新しい人類なんだよ!?」

「違う!圧倒的に何かがちゃうよ!すずかちゃん!!」

「あれ?なんか私の思ってた方向に話が進まない…」

 

 何故か興奮するすずかちゃんを押さえつける。アリシアちゃんはそんな私を見ながらどこへ向けてかため息を吐く。手伝ってほしい。

 

「まぁ、ハヤテの元気が出てよかったわ」

「ありがとう。そういえばなんで遅れたん?」

「ちょっと調べ物かなー。フェイトにも付き合わせちゃったし」

「なんや、お疲れやなぁ」

「まぁ、今は雲でも掴んでる感じだからねー」

 

 欠伸を噛み殺したのか、やや涙目になってるアリシアちゃん。

 何を調べてるかは知らないけれど、ここまで疲れている彼女を見るのは始めてかもしれない。

 そんな彼女はキョロキョロとして、誰かを探している。

 

「ユウちゃんは…まだ来てないか」

「また答えでも聞こうとしてんの?」

「あはは、まぁ、そんな感じかな」

 

 苦笑するアリシアちゃん。まぁ私も人のことを言えないのだけど。ともあれ、私達の疑問に応えてくれるのは彼しかいないのだ。

 

「ハァッ!?」

「え?」

「……むぃ?」

 

 途端に三方向から声がした。一つは私の前。もう一つはなのはちゃんの横にいた光君。そしてもう一つは寝惚けた声をだして瞼を擦っているフェイトちゃんだった。

 

「え?何かあったん?」

「ゴメン、急がないと…。ほら、フェイト!!行くよッ!!」

「あとごふん…いや、にふんでいいからぁ」

「ダメッ!立つ、歩く、走る!!ハリィハリィハリィ!!」

 

 来た時と同じようにフェイトちゃんを引きずるように連れて行くアリシアちゃん。光君は悠々と歩いて扉を出て行った。

 

「……何があったんや?」

「無限書庫が急に閉鎖状態になったんだって」

「……は?」

「詳しくはまだわからないんだけど……」

「…いや、それって結構大変なことやんね?」

「そうだけど」

「光君はえらいゆっくり行ったなぁ」

「ライト君がすることは犯人調査から割り出した人を逮捕する事だから」

 

 それでいいのか?それでいいのか管理局。

 いや、確かに魔導士ランクSSSの彼だからこそソレに回したほうが効率がいいのだろう。

 局内でオレに勝てる奴はいねぇ!!なんて自分で言ってた人間なのだ。まぁ子供であることを除けば彼が最強なのだろう。

 犯人はご愁傷様としか言いようが無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―アーアー、テステス。聞こえてるかね八神

 

 授業中に声が響いた。頭の中に直接響いているということは、今日も休んでしまっている彼の念話なのだろう。

 

―聞こえとるよ、何?

―そう邪険に扱うなよ。お前が疑問に思ってる事を教えてやるよ

―……ホンマに?

―ホントホント。今日の放課後にアースラで待ち合わせな

―……なぁ夕君

―んじゃよろしく

 

 …無理やり切られた。

 昨日は感じる事のなかった違和感。微妙に、違う、そう思ってしまった。

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