あぁ神様、お願いします   作:猫毛布

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32 裏ローグ

「……」

 

 少しだけソファに凭れる。

 僕のいる場所は彼の部屋であり、今日は休日でもある。

 

 シン、と静まった主の消えた部屋は夏だというのに少しだけ寒く感じた。

 

 

 どうして、彼はあんな事をしたのだろう。

 別段、遺言にまでムッツリとか言われて躍起になってるわけでも、あの後に全員にむっつり疑惑を掛けられてイライラしてる訳でもない。

 いや、イライラはしている。

 

 何にせよ、アイツが事を起こすなら、それこそ管理局を内側から瓦解させる事も可能だったはずだ。ソレをこんなにも回りくどい方法でしたのは…なぜだ?

 

 一向に出ない答え、部屋を見渡せば相変わらず何もない部屋だ。

 あるのは…今座っているソファ、テーブル。小さな棚、そしてその横にある小さな一本足の机……ん?

 

「チェス盤?」

 

 なんだ。こんなモノがあったなら、あの日に脳内チェスなんて事をしなくて良かったじゃないか。

 そう思って、思い返す。

 あの場に…コレはあったか?否だ。

 

 チェス盤に触れて、少しだけ盛り上がった所がある事がわかる。

 カリカリと爪で引っ掛けば、そこだけがポロリと取れ、中には小さな紙が入っていた。

 綺麗に畳まれた紙を少し息を飲みながら広げる。

 

 

『はずれ』

 

 そう三文字書かれた後に、舌をだして『あっかんべー』をしているデフォルメされたナニか。

 ほほう、ふむふむ。なるほど。

 

「ウガァァッァァァッァァ!!ちくしょぉおおおおおお!!」

 

 アイツは絶対僕で遊んでる!絶対だ!!

 チェス盤を思いっきり叩き、怒りで叫ぶ。

 

『ほぉ…よく見つけたな……』

「は?」

 

 チェス盤の上の空間に彼が映る。

 

『なんて、言うわけねーだろ。プークスクス、どうせイラついてチェス盤叩いたに決まってる』

「あぁ、クソが!!そういえばキミはそんなヤツだったんだな!!」

 

 いい話をしていたコイツのせいですっかり忘れていた。どちらかと言えばアリシアよりの人間だ。人をおちょくって遊ぶタイプだった。

 

『まぁ落ち着け、落ち着いて深呼吸だ。吸って吸って吐いてー、そうヒッヒッフーの要領だ』

「それは落ち着くのか!?」

『まぁ今はそれほど重要視されてないらしい』

「そんな情報はいらん!!」

 

 思わず声を出して突っ込んでしまうが、この場には僕しかいないのだ。

 誰かが見ていたら、と思うと中々に恥ずかしい。

 

『まぁ冗談もある程度で終わらそう』

「そうしてくれ」

『彩りましょう、食卓を!みんなで防ごうつまみ食い!!常温保存で愛を包み込む!カレーなる化け物!!それが俺だ!!』

 

 うん、もう突っ込まない。

 彼は平常運転だった。

 

『まぁいい。

 さてさて、おそらくムッツリは俺の“チェス”という単語でここに来たと思う。

 

 

 

 えーチェス関係なく来たのー?俺男色の趣味ねーよ?』

「うるさい!!君はまたそうやって話を脱線させて!!」

『真剣な話するよー。いい子も悪い子もギエピー見たいな行動は慎むように!』

「ギエ?」

『さてさて、どこから話そうか。と言ってもクロノには選択権がない訳だが。

 まぁテキトウにソファにでも座ってゆっくり聞いてくれ。

 例に及ばず、コレも見たら消えるからな。

 

 それと、これで話すのは……まぁあれだ、俺の罪を露呈して、少しだけ俺の気持ちを軽くする為のモノだ。聞きたくなけりゃ、チェス盤ぶっ潰して帰ってくれ』

「簡単にチェス盤を潰せと…」

『えーできないのー?ひ弱だなぁ』

「わかった、潰してやろう」

『落ち着け、やめてクロノ!チェス盤のライフはもう零よ!!』

 

 いい加減にイライラせずに聞ける内容がほしい。

 ソファに深く座って、息を吐く。

 

『まぁあれだ。多分見てると思うけど、遺言についてはマジだ。これはその一分後ぐらいにとってるから』

「また短いな…」

『実際はすぐに撮ろうと思ったんだけど、来客が来てな。胸ぐら掴まれたお』

「ざまぁみろ」

『まぁいいがね。さて、遺言でも言った通り、アンヘルの侵食が進みすぎている。コレはお前もしってるだろう?』

「…あぁ」

『何もしなくて、そうだな、大体四年。これが俺の寿命だ。しかし、俺はソレを捨てた。

 

 まぁ普通に考えりゃァ不思議な感覚なんだろうけど。ここだけの話、俺は星一つ。故郷を壊してる。

 尤も、村の破壊は別の奴がしたんだけど…俺の大切な人もそれで死んだ。

 まぁそこはいいんだわ。最初はコロシテヤルーとか思ってたけど、あの人がソレを望んでるわけじゃないし。結果的に満足するのは俺自身だけだからな』

 

 クスクスと笑う彼。言ってる事は完全に狂っている。

 もしも、と考えると、やはり、僕は彼のように考えれないだろう。

 

『で、問題はここからなんだ。俺がアンヘルを手に入れたのはこの直後なんだ。で、アンヘルはお前も知っての通り、暴食を繰り返したりする困ったさんなんだわさ。はい、ここから導き出されることは?』

「…星を…他の人間を喰らったのか?」

『ブー残念。誰も触手で自分を巻いてオナニーとかしてません!』

「なぜその発想に至った!!」

『まぁ、致命傷の人もいたけど、ほとんどが生きてる人だったよ。俺の大切な人は死んでたけど。

 

 

 まぁそんな事があってだな。ここからが少し問題なんだ。アンヘルってのは最期の想いとその魔力を蓄積してるみたいなんだわ。

 じゃぁ、アンヘルに喰われた人間の感情って?得体もしれないナニかに喰われた感想は?

 

 4割は死にたくない。6割が殺してやる。が正解かな。4割の方も解析してたら殺してやる、ってのが殆んどだったし。

 で、俺の中には俺の殺した人間…俺の食べてしまった人間の感情があるわけだ。この7年ほどずーっとコロシテヤルー、コロシテヤルーって言われ続けてたら、そりゃぁ俺も限界だわさ』

 

 想像を絶した。これだけ軽い口調でペラペラと喋る彼は何も感じていないようだが。彼の性格からして、全部背負ってるのか?星一つ全ての恨み事を。

 

「狂ってるな…」

『それで、なんで俺が自殺しないかっていうのも教えとくと、アレだ。大切な人が最期に生きてくれ、とか言った所為なんだが…まぁコレはいいか

 

 とまぁ7年間の俺のいきさつは終了。

 この文、じゃなかった、魔法にも尺があるから淡々と進めよう。

 

 色々あって、今から事件を起こすワケなんだけど。俺の村を襲った犯人が管理局にいるらしい。

 まぁ正直な話、それがどうした?って話なんだけどさ。

 一応ソイツ殺して、スメラギ辺りに俺を殺してもらえるように立ち回るつもりだ。

 アイツの性格矯正にも役立ちそうだし。

 

 生きてくれ、ってのは殺される事に関してはノーカンって事で。実際殺されることは俺の意志には関係ないし。アイツが俺を殺さなかったら、ソレはそれでいいわ。

 

 さて、俺は上手く立ち回ってるかな?

 アンヘルをフル活用しても二年は俺の意識が持つわけだが…

 

 まぁ殺されてるならそれでいいさ

 

 さってと。ここまでが俺の経緯だ。

 あとはお前が頑張ってスメラギを英雄様に押し上げて、上手く教育してくれ。高町さんもついでに頼むわ

 

 

 後顧の憂いは…まぁこんなモノかな。はやてたちはどうにかするだろうし。

 んじゃ、親友。テキトウな年月開けてからでいいけどコッチに来たらいい店紹介してやっから、奥さんによろしく』

 

 

 そして映像が終わる。

 相変わらず、面倒事を押し付けるのが上手な親友だことで。

 

 僕は一度だけ溜め息を吐いて、力の限り、チェス盤を叩き潰した。

 

 




~アンヘル()
 すでに感想でちらほら出てたけど、そういう訳です。
 今、あの話を見たら、完全にギャグ回です。ユウリンはずっと厨二っぽいセリフを吐いて内心悶絶してる、ギャグ回だったんです!!
ΩΩ Ω<な、なんだってー

~彩りましょう、食卓を!
 結構好きなゲームです

~アトガキ
 どうも、猫毛布です。
 これにて『あぁ神様、お願いします』は完全に完結いたしました。
 半年間付き合ってくださった方、ここまで読んでくださってる方は本当にありがとうございます。
 こうして書き終わる事が出来たのは読者様の御蔭、変態共の助言が多数あったからだと思います。

 もうなんかユウ編を書き始めた辺りで、皆様はボロボロネタバレを言ってしまうので胃がキリキリいたんでました。いやぁネタバレ怖い。
 結果的にユウリン死んじゃったんですが、ちょくちょく、彼は自分は死にたいだとか吐いてたので、一応は予定調和です。

 それとはやてを切り捨ててまで、自身を殺してしまった事に関してですが、
はやてと一緒に心中するのと、
彼女の未来を守る事、
 ユウがどちらを守るかなんて、時の庭園でフェイトに関してそう思うように、行動します。

 sts編が書けないと言ってたのは、コレが原因ですね。他にもありますけど、最初の時点で想像してたので、コレが原因です。
 sts編書いてよー、と感想が来る度に
 ヤッベー!ユウリン死んじゃうよー!!
 とか思って、当たり障りのない事を返してた訳です、ごめんなさい。

 他にナニか書かないといけない事もあると思うんですが、流石に体力が尽きてきたので、このあたりで筆を遠くに投げ飛ばしときます。
 思いつけば自サイトの方でちょこちょこと書くかもです。


 それでは、本当にありがとうございました。
 2012/12/05 猫毛布 
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