メインシステム、戦闘モード起動   作:留式

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雨時々ミサイル

 スタッガーした敵機にブレードを振るい、蹴り上げる。敵機にパルスエネルギーが奔り、周囲を荒れ狂った。

 

 敵機のアサルトアーマーが直撃。APが半分近く消し飛ぶ。これは必要経費だ。こちらはまだリペアキットを使っていない。

 ここからが本当の勝負だ。ブーメランのような機動を描き、敵機がこちらに接近して──

 

 炎。ブレード状の炎をもろにくらった。AP表示があっという間に赤く染まる。スタッガーしたこちらに向かって、今度はショットガンが飛んできた。直撃。残りAPは500もない。

 

 振り回される炎を際どいところで回避し続け、隙を見てリペアキットを使用した次の瞬間、再び火炎放射を浴びた。

 

 ただ闇雲にブレードを振る。敵機はパルスアーマーを張っているため、阻まれる。計画なしに振ったブレードではパルスアーマーを削りきれなかった。

 

 敵機がこちらを向いたまま距離をあける。警告音。

 見ると、複数装備した火炎放射器を機体正面に集中させていた。クイックブーストで横に逃げる。

 

 敵機が炎を地面に向けて吐き出すと、地面が爆ぜた。炎とともにナパームが撒かれており、それに引火したのだ。

 

 爆炎が追いつき、自機を飲み込んだ。視界が爆炎に埋め尽くされる。

 

 愕然か失望か、ため息と共に女の声がした。

 

《残念です、レイヴン》

 

 物静かな口調だった。

 

 

 

 

 

 

 先ほどからずっと、621は戦い続けていた。雨の中、名前も知らない敵機に幾度となく殺され、ついでに知らない女のため息を聞き続けた。

 

 今も敵の大技をくらって死んだところだ。

 次の瞬間には、621は再び敵機の前に立っている。原理は不明だが再挑戦できるのだ。

 

 敵機の見た目はとても攻撃的だった。ACのようなコアが巨大なブロックを背負って浮遊している。そのブロックから伸びるレールが機体を囲んでいた。リングのように。

 肩にはミサイルポッドを格納しているスペースがあり、その外にガトリング砲やショットガンが搭載されていた。

 

 パルスアーマーを張った敵機のレールから大量のミサイルが発射される。621は両肩の8連装垂直ミサイルとレーザーハンドガンを放ちながら、敵機の真下まで移動した。パルスアーマーに触れられるような距離だ。

 これも原理は分からないが、アセンブリは念じれば変更できた。今はジェネレータをルビコンに来た当初のものに戻し、レーザーハンドガンとパルスブレード、両肩に8連装垂直ミサイルを装備している。

 

 敵機に接近したあたりでミサイルが誘導を開始。それらは621に襲い掛かかる前に地面に直撃し、役目を終える。このミサイル攻撃は敵機に近づくほど当たらない。それを621は死体を積み重ねて学んだ。

 

 全ての武装を使用し、621はパルスアーマーを削っていく。

 警告音。鳴り終わった瞬間に621は再度クイックブースト。敵機から高速で飛翔するグレネードを回避する。

 

 敵機の一番の脅威はこのグレネードだ。回避のタイミングが早すぎても遅すぎても当てられた。爆風の範囲も広く、621は回避先で爆風に巻き込まれることもあった。

 当たればほぼ確実にスタッガーをとられ、連続攻撃で殺される。

 絶対に当たってはならない攻撃だが、敵機はミサイルを目くらましや回避を強要する用途で使い、本命にこのグレネードを放つことがある。非常に厄介な攻撃だ。

 

 621は攻撃を続け、パルスアーマーを剥がした。硬直した敵機にブレードを振り、ミサイルを発射する。蹴りは外れた。

 

 一度敵機のパルスアーマーが消えると、しばらくの時間はダメージを与えることが可能だ。再びアーマーを張られる前に短時間で大ダメージを加えたい。

 あらゆる手段でスタッガーを取り、敵機を蹴とばす。ブーストキックはACSの回復を遅らせる効果があるからだ。

 

 621が猛攻を加えていると、敵機が突然浮上する。アサルトアーマーの発動動作。ブーストキックを多用する以上、逃げる暇がない。621はコラテラルダメージと割り切っていた。もちろんスタッガーをとられる。

 

 ここから先はパルスアーマーを張りなおした敵機の行動次第だ。アサルトアーマーから火炎放射を連発されるとどうしようもない。幸いにも敵機の追撃はなかった。

 

 動きだした621にショットガンが飛んできた。これもグレネードに並ぶ危険な攻撃だが、今は直撃しなかった。

 AP残量30%、621は最初のリペアキットを使用する。

 

 621は、試しにターゲットアシストを解除していた。それによって敵機を見失う。

 敵機を探していると、視界を炎が一閃した。どうやら当たらなかったようで、ダメージはなかった。621が振り向くと、炎の刃を振りかぶった敵機が見えた。

 621は背後に回り込むような機動で火炎放射の回避を試みた。振り下ろされる炎が機体のすぐそばを通過した。回避は成功した。

 

 敵機が距離をとる。621はレーザーハンドガンとミサイルを放ちながら追いかけた。

 敵機はミサイルを放った。数は少ない。621は限界までミサイルを引き付けてクイックブースト、被弾を抑える。

 

 回避した先で、敵機が前方に火炎放射。直撃は免れたが、地面の熱で機体が焼ける。

 

 再び敵機がブレード状の炎を振り回してきた。621はやはり背後へ回り込むように移動し、回避した。

 

 621は隙を見て攻撃を続け、パルスアーマーを再び剥がした。ブレードと蹴りで追撃する。

 複数回スタッガーに持ち込みたかったが、それはかなわなかった。

 

 またしてもパルスアーマーを敵機が纏った。ここで621は再びリペアキットを使用。細々としたダメージが蓄積していた。残りのリペアはひとつ。

 

 敵機が炎を振り回す。621は敵機下方をすり抜けるように回避。レーザーハンドガンで反撃する。

 警告音。グレネードだ。621は反射的に右にクイックブースト、回避方向を誤った。機体にグレネードが直撃し、硬直する。

 

 この隙は致命的だ。残りのAPは3500前後しかない。

 

 しかし追撃はなかった。しばらくして敵機はミサイル攻撃の準備に入り、それを見た621は咄嗟に敵機の真下へ逃げ込む。

 敵機が視界外に逃れる機動をとる。警告音がした。621は火炎放射だと考えて直進。予想に反して飛んできたグレネードが機体に直撃、再びスタッガーを取られた。APは残り1000と少し。

 

 追撃で放たれたミサイルをすり抜け、621は最後のリペアキットを使用した。

 再び警告音。グレネードが飛んでくるが、621はこれを回避。

 

 もうすぐパルスアーマーが剝がれる。621はレーザーハンドガンを撃ち続けた。

 

 剥がれた。敵機が硬直し、直前に発射したミサイルが着弾する。そこに621は蹴りを入れ、ブレードを振り下ろした。

 

 手ごたえがあった。心なしか、視界の流れがゆっくりに──

 

 

 

 

 

 

 突然黒一色となった視界に、621は驚いた。反射的に身体を動かそうとして、それができないことに気付く。何かに縛りつけられている。

 

 ひとしきり試してみても、やはり身体は動かない。ここで621は、誰かが自分を呼んでいるのを認識した。

 

『621、聞こえるか? 聞こえたなら返事をしろ』

 

 ウォルター? 

 状況不明、と621は返答しようとして、ここがガレージの中で、自分がACのコックピット内にいることを思い出した。

 ともかく、まずはウォルターに応答する必要がある。

 

「621、感度良好」

 

 言葉を発しながら、621は状況を整理する。依頼を終えて帰投し、そのままシートで眠り込んだ。らしい。

 問題はそのあとだ。

 

「ハンドラー、悪い夢を見た。今はバイタルが荒いが、じきに落ち着くはずだ。もう問題ない」

 

 心拍数が跳ね上がっていたし、呼吸も荒かった。ウォルターはそれで声をかけたのだろうと621は推測する。

 

 目覚めて以降、夢を見たことなどない。しかし、621は今も先ほどの戦闘を思い出すことができた。

 現実の戦闘で勝利、つまり初見で撃破するのは困難だろう。それほど凶悪な強さだった。

 

『今後寝付けない日が続いたら、俺に言え。手だてはあるからな』

 

 了解、とウォルターに応答し、621は通信を切った。

 

 一度ストレッチをした方がよさそうだ。固定され続けた身体が硬くなっている。それからメッセージの再確認をしよう。

 

 数分後、ガレージには身体から異音を発する人影があったという。




リアルに半日かかった相手。夢オチでもいいから苦戦したことを記録しておきたかった
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