メインシステム、戦闘モード起動   作:留式

14 / 79
大変長らくお待たせいたしました。
連載を再開いたします。
正月中はこの時間帯、朝6時21分に投降してまいります。


チャプター2
アリーナ Eランク帯


 ベイラムからの依頼を確認しようとした621だったが、通信が入った。

 

『登録番号Rb23、コールサイン、レイヴン。貴方の実績情報が更新されました。アリーナにおいて、Eランク帯の仮想戦闘が開放されています。戦闘技能の向上に、お役立てください』

 

 アリーナを更に進められるようだ。OSチップも手に入るため、621は予定を変更してアリーナを進めることにした。

 更にEランク開放でショップの品揃えが増えた。621はいくつか買い込み、新しい機体で出撃した。

 

『戦闘技能検証プログラム「アリーナ」、No.26。これよりEランク帯に入ります。対象AC、ビタープロミス。コールサイン、ノーザーク。検証を開始します』

 

 ビタープロミスはベイラムとアーキバス両社のフレームで構成された機体だ。武装は腕にアーキバスのレーザーハンドガンとBAWSのバーストライフル、肩はベイラムの拡散バズーカとアーキバスのパルスシールドを搭載している。ノーザークは多額の借金を踏み倒しつつ、これらを買い集めたようだ。自分の金と他人の金を区別せず、多くの借金を抱え込めば、それは信用の拡大と同義である。そう信じているらしい。

 

 対する621の機体はジェネレータを新調した、ローダー4.3。

 新しいジェネレータはBAWSの現行モデル「ヤバ」。最新ロットは今まで搭載してきた旧世代モデルの「ジョソー」や大豊の「零台」よりも高いエネルギー容量と出力を持つ。競合するのはアーキバスのVP-20Cや大豊の「明堂」だが、重量と復元、補充の性能がバランス良くまとまっているのが特徴だ。621は今のところ使わないが、EN射撃武器適性も十分である。

 

 武装はいつものバーストライフル二丁持ち、ハンガーにパルスブレードを装備し、右肩に3連装プラズマミサイルを装備する。このプラズマミサイルは垂直発射式ではなく、正面に3発を発射するものだ。短いリロード時間を活かす武装となる。

 

『メインシステム、戦闘モード起動』

 

 戦闘開始。621はアサルトブーストで突撃、プラズマミサイルとライフルを発射。命中せず。

 

 相手もレーザーハンドガンとバーストライフルで応戦してくる。撃ち合いになった。

 

 警告音。拡散バズーカが飛んでくるが、621の機体には当たらず、掠めるにとどまった。

 621はときどき蹴りも交えてライフルを撃ち続ける。

 

 やがてビタープロミスがACS負荷限界を迎えて硬直した。621はブレードで追撃。更に蹴りを放ったが、これは外れた。

 

 621は空中から見下ろすように、ライフルを放つ。リロードが終わり次第プラズマミサイルも発射していくと、再びスタッガーをとれた。

 ブレードに持ちかえ、一閃。ビタープロミスに撃破判定。撃破時間は35秒だった。

 

『目標の撃破を確認。検証を終了します。お見事でした』

 

 

 

 

 

 

『戦闘技能検証プログラム「アリーナ」、No.26、ランクE。対象AC、インフェクション。コールサイン、V.Ⅵ メーテルリンク。検証を開始します』

 

 次の相手はインフェクション。コアと脚部がアーキバス標準モデル、頭と腕がシュナイダー製「ナハトライアー」というやや軽めの機体だ。ブースタはシュナイダーの瞬発タイプ。細かい動きでかく乱を狙うのだろう。武装は連射型パルスガンを両腕に装備し、肩にシュナイダーのプラズマキャノンとアーキバスのパルスシールドを装備している。

 

『メインシステム、戦闘モード起動』

 

 621はアサルトブーストで突撃する。段差で高度が上がる。フィールドはBAWSが隠していた井戸だ。なぜここのVRに収録されているかは分からないが……。

 621はプラズマミサイルで先制攻撃。相手はパルスガンの連射で対抗してくる。

 

 削り合いの段階では、バーストライフルとパルスガンが飛び交った。621はプラズマに加え、蹴りを交えていくが、相手の動きが細かく、当たらない。

 

『AP、残り50%』

 

 621はHMDに投影される映像の上側、相手のAPを見る。残り80%ほどだった。一方的に攻撃されている状況を、621は認識した。

 621の攻撃はそもそも当たらないか、タイミングよく展開されたシールドに阻まれている。この状況で一番ダメージを期待できるのはプラズマミサイルだ。

 

 ちょうどそのプラズマミサイルが命中。先に硬直したのはインフェクションだった。621はブレードに持ち替えて攻撃する。接近して振り下ろした瞬間、相手がクイックブーストで回避。軽量ゆえに硬直解除が早い。621はダメ押しでブレードの攻撃を狙ったが、これも外れた。

 

『AP、残り30%』

 

 621はやや距離をとった。パルスガンは射程が短い。バーストライフルを撃ちこんでいくが、なおも当たらない。

 警告音と共にプラズマキャノンが飛んできた。621はクイックブーストで回避。威力のうえではこのプラズマキャノンが最大の脅威だ。弾速も速いが、当たりたくない攻撃だった。残りAPは615。

 

 621はプラズマミサイルが当たるよう意識して動く。ミサイルを発射。標的に命中して爆ぜるプラズマの中、飛び出してきた相手がパルスガンを浴びせかけてきた。

 

 DESTROYEDの文字が表示された。メインシステムダウン。画面の中でしゃがみ込んだ自機が、跡形もなく爆散する。621の機体はAPが0になると自爆する機能があるが、それも再現されているようだ。脱出機能は備えられているが、621の頭から抜け落ちていた。

 C4-621は戦闘行動を最優先とするように設計(・・)されている。戦闘不能は死と同義であった。

 

 紹介文によれば、パイロットのメーテルリンクは第8世代らしい。第8世代以降の強化人間は「ニューエイジ」と呼ばれる。人間の機能を犠牲にすることなく戦闘能力を向上させた、旧世代型強化人間の完全上位互換だ。

 メーテルリンク本人は慎重な性格をもち、社命に忠実で、安定した戦績を残しているそうだ。

 

 だが、戦って勝つことに世代は関係ない。何があっても、最後に目標を達成したものが勝者であることを、621は本能に刻まれていた。

 

 再挑戦で、621はインフェクションを撃破した。ひたすら引き撃ちに徹しただけだ。撃破時間は80秒。これだけ時間を要すると、実戦では更なる長期戦を覚悟する必要がある。せめて仮想空間ではもっと早く撃破したい。

 

 

 

 

 

 

『メインシステム、戦闘モード起動』

 

 もう一度やる。621はアサルトブーストを使わず接近。まずは遠目からプラズマミサイルとライフルで攻撃。相手のパルスガンの射程外から撃っていく。

 反撃はプラズマキャノンだった。621はクイックブーストを使ったが、避けきれなかった。APが1200ほど飛んでいく。やはり弾速が速い。衝撃値が小さいのが救いだった。

 

 621はできるだけ相手の上から撃ちおろすことを心掛ける。ライフルもミサイルも、その方が回避されづらいからだ。ACは上下方向の急機動ができない。ジャンプと自由落下だけだ。それにこのフィールドは地上を移動していると地形に引っかかる。空中の自由度を活用したい。

 

 ライフルを浴びせていくと、やがてインフェクションが硬直した。相手はジャンプしたところで、空中にいる。少し距離があるため、ブレード攻撃は間に合わない。代わりに発射したばかりのプラズマミサイルが直撃。相手のAPを半分近くまで削った。

 

 硬直が解けたインフェクションが着地しながらプラズマキャノンを放ってくるが、621には当たらなかった。反撃にミサイルとライフルを送り込む。

 相手は更にチャージしたプラズマキャノンを放った。621はこれも回避。構えの姿勢をしたインフェクションへライフルを当てていくと、再び相手が硬直した。

 距離が近いが621はプラズマミサイルを放って更に接近。ブレードに持ちかえつつ、当てる暇はないと判断。即座にスティックのアサルトアーマー発動ボタンを押した。

 

 プラズマエネルギーに包まれるインフェクションに、背部カバーを展開した621が密着し、アサルトアーマーを発動させた。

 暴走したパルスエネルギーがインフェクションに直撃し、残ったAP全てを消し飛ばした。

 

『目標の撃破を確認。検証を終了します。お見事でした』

 

 撃破時間は31秒。これならば及第点だ。ヴェスパーズの第6隊長、警戒しておこう。

 

 

 

 

 

 

 次の相手、No.24のAC、ユエユーは「壁」のログ回収任務で交戦した機体だ。パイロットのリトル(小指の)・ツィイーは621にとって見覚えのある名前だった。彼女もレッド同様、若き戦士として周囲から大切に扱われていた。あの後脱出できたのかは621の知るところではないが、この先生きのこるには成長が必要なパイロットだった。 

 

 戦闘は一方的だった。ハンドグレネードは弾速が遅いうえ、発射タイミングを容易く見破ることができた。撃破時間は18秒。スタッガーを2回取り、それぞれアサルトアーマーとブレードで追撃しただけだ。被弾はなかった。

 こういうシステムではよくあることだが、やはり実力とランクに齟齬がある。621にはメーテルリンクの方が脅威だった。

 

 

 

 

 

 

 Eランク帯最後のACはガイダンス。コールサイン、V.Ⅶ スウィンバーン。スウィンバーンは第7世代らしい。第7世代はコーラル代替技術を初めて用いた世代で、成功率が低く、後遺症も多いことで知られている。それに対する恐怖はスウィンバーンを押しつぶし、猜疑心に満ちた矮小な人格を形作った、と紹介文にある。

 

 ガイダンスは四脚機だ。ホバリングが可能で、その最中はキャノンなどを構えなしで発射できる。そのうえ姿勢安定性能が高く、まさに空飛ぶタンクのような存在だ。ガイダンスも、メリニットのハイエンド大型グレネードキャノンを右肩に搭載する。「耳鳴り(EARSHOT)」の名を冠するメリニットのフラグシップモデルだ。

 

 その他の武装は右腕にハンドミサイル、左腕にスタンバトン、左肩にパルスシールド。Eランク帯ではシールドが流行っているようだ。

 

 621にとってそれほど苦戦する相手ではなかった。撃破時間は29秒。

 

『Eランク帯の突破、おめでとうございます。貴方の傭兵としての成長、その案内ができていれば幸いです。オールマインドは全ての傭兵のためにあります』

 

 報酬としてOSTチップが8枚、621に渡された。使い残しの2枚と合わせて10枚ある。

 621はこの10枚全てを直撃補正調整につぎ込んだ。スタッガーした敵へのダメージを増加させる効果がある。次の戦場で役立つはずだ。

 

 621は今度こそ新しい依頼を確認するのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。