メインシステム、戦闘モード起動   作:留式

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アリーナ Cランク帯

『目標の撃破を確認。検証を終了します。お見事でした』

 

 相手のタンク機が沈黙。HMDにENEMY DESTROYEDの表示が出る。

 

 Cランク最初のACはキャノンヘッド。コールサイン、G4 ヴォルタ。621は数度の挑戦の末、ようやく勝利した。撃破時間は39秒。

 

 ガリアで組んだときも感じたが、いざ相手にすると案の定手こずった。

 

 キャノンヘッドは脚部にベイラム製「ボルネミッサ」を使用した、いわば正統派のタンク機だ。エルカノ製軽量タンク「フォルタレサ」は装甲と積載を犠牲に速度を確保しているが、こちらはタンクに相応しい装甲と積載量を誇る。

 

 それでいてキャノンヘッドは腕部に大豊のグレネードとベイラムの長射程ショットガン、肩に連装6分裂ミサイルと小型連装グレネードという武装構成をしている。火力一辺倒ではなく、機動性も確保した武装。リロードも早く、構えなしでグレート3発をテンポよく叩き込める。

 

 仮想空間だが腕も良かった。ミサイルで回避を強要し、爆炎で視界を塞ぎ、不意打ち気味にショットガンやグレネードを撃ってきた。スタッガーからの復帰も早く、不用意にブレードで切りかかれば返り討ちにされた。

「壁」の状況やログを見る限り、ベイラム上層部はヴォルタを囮に使ったようだ。いくらタンクでも、射程外から延々と高火力を投射されてはすり潰される。ACの宿命だった。

 

 パイロット紹介文にある程度の来歴が記載されていた。

 ヴォルタとイグアスは路地裏に住まい、ある日木星戦争の英雄、要はミシガンに喧嘩を売って叩きのめされた。その後「青少年の健全育成」として身元を引き取られ、レッドガンズでしごかれた。それが7年前。

 イグアス共々「ミシガンの顔面に一発ぶち込んでから抜ける」という目標を作ったらしいが、ついぞ達成されなかった。ヴォルタは内心諦めて五花海から商売を学んでいたようだ。

 

 そんなヴォルタが駆ったキャノンヘッドだが、621は蹴りを主体に攻撃を組み立てた。

 普段より僅かに遠目、命中率より次の攻撃への繋ぎを重視した、足先のみを当てる立ち回り。ショットガンと蹴り、どちらでスタッガーを取ってもブレードを当てられる距離での動き。近すぎると当たらないし、遠すぎるとブースト中に相手の硬直が解けてカウンターをもらう。

 余計な動作を挟まずブレードを叩き込むことさえできれば、スタッガー2回、40秒もあれば撃破できる。今後こうした重装甲タンク機を相手にする際、使える経験が得られた。

 

 

 

 

 

 

 次の相手、No.17のACはデュアルネイチャー。コールサインはV.Ⅷ ペイター、あのアーキバスからの依頼発行人だ。

 

 ペイターは第10世代、つまり現行最新の強化人間だ。戦闘技能はもちろん、人格も極めて安定しているという。彼には無自覚な無遠慮や共感性の希薄さが時折見られるらしい。本当であれば生来の性質ということになる。

 

 乗機デュアルネイチャーは軽量逆関節の機体だった。シュナイダーの「カズアー」。コアはシュナイダーの「ナハトライアー」だった。頭部と腕部は621が見たことのないパーツだった。通常のカタログに載っていない。派生パーツだろう。

 頭部はT字状をしており、左右に突き出た突起から剝き出しのセンサが生えていた。腕部はアーキバスの標準モデルとシュナイダーの「ナハトライアー」をミックスしたような形状をしている。非常に軽そうな見た目をしていた。

 

 武装はパルス兵装で統一されていた。パルスガン、パルスブレード、パルスキャノン、そしてパルスバックラー。逆関節のトリッキーな動きに合わせる構成としてはありかもしれない。

 

 621がいざアリーナで対戦してみると、存外圧に欠けていた。スタッガーが溜まらないのだ。V.Ⅵのようにダブルトリガーの方がいいかもしれない。

 撃破時間は20秒。ターミナルアーマーがなければもっと早かったかなと、621は思った。

 

 

 

 

 

 

 次のACを見て、621は無意識に身構えた。No.15、エンタングル。コールサインはスッラ。ウォッチポイント・デルタで621を襲撃してきた独立傭兵だ。

 

 紹介文によると、スッラはアイビスの火が起こる以前から星系一帯で活躍していたようだ。それにしても、ウォルターと面識があるようだった。交戦中しきりに話しかけてきたのだが、それは621にではなく、オペレーティングにあたるウォルターに対してだった。

 スッラは第1世代強化人間だ。C1-249。第1世代強化人間手術はアイビスの火以前から存在し、成功率が1割にも満たない極めて劣悪なものだった。彼の傍らには常に死の気配が漂っていた……確かに正面から621を殺しにきた記憶がある。

 手術を終えたスッラは「狩り」だけを請け負うようになり、今では雇い主さえ定かではないのだとか。

 

 ……ウォッチポイントで襲ってきたのは私情ではなく、誰かの依頼だったのだ。621は考える。何者かが我々の邪魔をしようとしている……。封鎖機構か? それならば説明はつく。ウォッチポイントを三段構えで守る。おかしいところはない。

 しかしスッラはパルスガンを装備していた。あれはパルスアーマー、あるいはシールドを常に展開する敵に有効な武装だ──例えばバルテウスとか。むしろ封鎖機構へ敵対する意図がありそうではないか……。

 

 ウォッチポイントはやめておけ。最期の言葉が621の脳裏に蘇る。確かに殺したはずだが、アリーナで再び戦うとは。

 621はフィールドに降りる。やはりウォッチポイント・デルタだった。バルテウスと交戦した屋上エリア。

 

『戦闘技能検……ログラム「アリ……ナ」、No.15、……クC。ネットワークが不安定です』

 

 接続状態に問題だって? 621は疑問を覚えた。傭兵支援システムは僻地の通信環境でも使用できるようになっている。接続に問題が起きるなどあり得ない。何が起きているのやら。

 

『対……AC、エン……ングル。コールサイン、スッラ。検証を開……します』

 

『メインシステム、戦闘モード起動』

 

 戦闘そのものはあっという間に終わった。現実のスッラと違って攻撃の圧が無かった。食らいつく621に正面から立ち向かい、逆に食い殺そうとする姿勢が感じられないのだ。撃破時間は25秒。

 

 

 

 

 

 

 No.14のACはサーカス。コールサイン、「おしゃべり(チャティ)」スティック。カーラを補佐する腹心の提案型AIとあるが、グリッド086では見かけなかった。あまり表には出てこないのだろうか。「彼」というからには男性人格だろう……。口数は少ないらしい。

 

 サーカスは軽量タンク機だ。コアと腕部はRaD製で、それぞれ土建ACの「C-3000」、探査ACの「C-2000」を使用している。頭部はBAWSの「バショー」だった。

 武装は爆発系で統一されている。小型グレネードとバズーカ、12連装垂直ミサイル、クラスタミサイル。上下左右から敵を制圧するのが狙いだろう。

 

 撃破時間は23秒。スタッガーをとり、追撃するまでは上手くいった。しかしそこから相手の機動力に振り回され、とどめを刺すまで時間がかかった結果だ。ちなみに通信状況は回復していた。

 

 

 

 

 

 

 Cランク最後のACはツバサ。コールサインはミドル(中指の)・フレディ。ルビコン解放戦線の実質的戦争指導者である。帥父ドルマヤンに次ぐ重鎮で、内部では帥叔の尊称を持って支持されているようだ。

 一時期密偵として星外企業に潜伏していた時期があり、中でもシュナイダー社の人事部門には太いパイプを持っているらしい。

 ……つまり、シュナイダーにはいつでも手駒を送り込めるというわけだ。621はそう解釈した。あるいは既に送り込んだ後かもしれない。密偵なのか、それとも破壊工作か……。

 

 このAC、ツバサはエルカノ製軽量二脚フレーム「フィルメサ」で統一されている。軽量機の設計に対し、スピードを重視したシュナイダーの「ナハトライアー」と異なり、鍛造を得意とするエルカノは安定性能の方面からアプローチをとった。強度の高そうな見た目をしている。

 武装はバーストマシンガン、バーストライフル、小型ハンドバズーカ、4連装ミサイルという一般的な構成だ。

 

 撃破時間は9秒。相手がパルスプロテクションを発動するのに合わせて、621はアサルトアーマーを発動。スタッガーしたツバサにショットガンとブレードを直撃させたのだった。

 

 

 

 

 

 

 Cランクで手に入れたOSTチップは15枚。621はこの全てを攻撃力強化へ使った。実弾武器は3段階、EN武器と近接武器は2段階強化されている状態だ。爆発武器は今のところ使用しないので強化はいれてない。

 

『Cランク帯の突破、おめでとうございます。貴方の傭兵としての熟達、その一助を担えていれば幸いです。オールマインドは全ての傭兵のためにあります』

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