『621、企業からの依頼だ。ブリーフィングを再確認しろ』
621はウォルターの指示通り、ブリーフィングを再生する。中央氷原でも軽く見たが、今回は作戦前に行う、細部までじっくりと確認する作業だ。
『傾注、G13 レイヴン! これはベイラム本社より承認された軍事作戦だ』
依頼主はベイラム。本社承認となると、かなりの肝入りだった。
『アーキバス占領下の「壁」を巡って解放戦線が動き、しかし結局のところは、両者とも惑星封鎖機構に制圧された。これは我が方にとって蜜の味──アーキバスから漁夫の利を取り返す絶好の機会だ』
そういうことだ。ベイラムは「壁」を欲しがっている。
『貴様には当該地点へと侵攻し、封鎖機構が投入している執行部隊を殲滅してもらいたい。敵方勢力には新型機、HCも含まれているという。その手の作戦は貴様が適任だ』
HC。おそらくはLC、
画像が1枚だけ存在した。その名の通り、LCより重装甲だ。武装は不明だが、他の機体同様レーザー兵器を使用すると推測されていた。威力が同じとは限らないが。
『ベイラムは貴様を高く評価している、G13。
ブリーフィングは以上だった。
『ベイラムは前回の壁越え失敗に固執しているようだな。まあいい。俺たちは状況を利用するまでだ』
『メインシステム、戦闘モード起動』
621は「壁越え」作戦でラスティが侵攻したコースをとった。山の斜面に面しているから、街区よりは突破しやすい。
『ミッション開始だ。「壁」を制圧した封鎖機構の部隊を全て排除しろ』
正面にはMTが複数。5機は下らない。
『数が多い、621。正面突破は無謀だろう』
「621、作戦エリア左端より迂回する」
今回は閉所で高火力の敵と交戦する。そのため621は長射程ショットガンを持ってきた。逆にいえば、ショットガンは開けた場所で大勢を相手にするには不向きだった。
621は街区を隔てる塀に沿い、アサルトブーストで飛行。一気に壁を目指す。
『
『独立傭兵か? 排除執行する』
《SG──重武装しています。気を付けてください、レイヴン》
621に気付いた敵が、一斉にグレネードを飛ばしてきた。距離があるためそう簡単に当たらない。621は当たりそうなものだけ的確に回避し、さっさと壁に取り付いた。
『
《LC──高火力兵装を搭載しています!》
「壁」内部からLC2機がスクランブル。エア曰く高火力タイプ。
621はターゲットアシストを起動。上昇してくるLCに対し、斜め上から襲い掛かる。両腕のショットガンを発砲。スタッガー。硬直した敵機を壁に向けて蹴っ飛ばし、更にショットガンでとどめを刺す。1機撃破。
この2機は右腕に拡散バズーカらしきものを装備し、肩に大量のミサイルポッドを載せていた。左腕は何も装備していなかった。軽量化のためだろうが、盾が無い。故に脆かった。
ミサイルは垂直式で着弾までタイムラグがあった。誘導が弱く至近距離では当たらない。バズーカだけ警戒すれば良かった。
621は残る1機も始末し、放置してきたMTの掃討に移行する。
まずは早めに追いかけてきた機体をプラズマミサイルとショットガンで潰す。
その後621は遮蔽を確保しつつ、飛び回った。
『
『バックアップを要請する。
『彼らはベリウス地方のSG回線を間借りしている……不用心だな』
ウォルターの仕事は完璧だった。
『……そんなわけで、外部からの増援は防いでおいた。あとはお前の仕事だ』
621はやや遅れてやってきた2機を片付ける。
『この辺りは片付いたな。続けろ、621。「壁」内部にも機体反応がある』
「壁」内部に侵入する。隔壁前でスキャンすると、すぐ近くにMTが4機確認できた。621は隔壁にアクセスする。
《屋内に入ります。新型HCもおそらく内部に……》
隔壁が半分ほど開いて射線が通った瞬間、621は正面の2機にプラズマミサイルを発射。間隔が狭いため、マルチロックはしない。花火がふたつ。
『コード──』
即座に左にいた1機にショットガンを浴びせ、もう1機をブレードに持ち替えて切り捨てた。
部屋の奥にも2機。どちらもMT。
『
『パトロールはどこへいった⁉』
混乱しているうちに排除する。621は1機にプラズマミサイルを放ち、もう1機をショットガンで穴だらけにした。
『各員! どうやら外部通信が妨害されている。現有戦力で対処せよ。HC起動まで持たせるんだ!』
その通信が聞こえたものはこの部屋にいなかったが、隣の部屋には届いていた。621が隔壁を開けると、MT3機が待ち構えていた。
『
『交戦する!』
戦意が高い。マシンガンを持った2機が接近、もう1機がレーザーライフルで支援という形だった。レーザー機の狙いが悪いため放置、621は接近する2機から処理する。
対処といっても、高所にある部屋の入り口で待ち構え、無防備に上昇してきた土手っ腹にショットガンをぶち込むだけである。
残った1機はロックオン圏外だが、プラズマミサイルの射程内だった。
敵機をHMDのサイトに収めてミサイルを発射。誘導はかからず、発射時の照準に合わせて飛んでいく。MTは動きが鈍い、プラズマに絡み取られて爆散した。
この区画はクリア。次の部屋へ向かおうとした瞬間、奥の隔壁が吹き飛んだ。
『
大型の人型機動兵器が突入してきた。621はターゲットアシストを起動し、アサルトブーストで距離を詰めにかかる。
『その機体は独立傭兵だな。排除執行する!』
挨拶がわりに621はプラズマミサイルを発射。敵機も肩からミサイルを発射、迎え撃つ構えだ。互いのミサイルが命中する。しかし敵機はシールドを構えていた。直後に撃ったショットガン共々シールドに防がれ、逆にシールドバッシュで吹き飛ばされた。ACS負荷限界。相手からの追撃はなかった。
《敵機を解析中……惑星封鎖機構、HC執行機体です》
『新型機のHCだ。気を抜くな、621』
硬直が解けた621は、レーザーライフルを回避しながら攻撃を続ける。ショットガンを撃ち、蹴り飛ばす。そこにプラズマミサイルがタイミング良く着弾。敵機がスタッガー、硬直する。
すかさずブレードで連撃。更にアサルトアーマーを発動。発動直前に敵機のACSが回復するも、パルスの奔流が直撃、再び負荷限界を迎えた。621はプラズマミサイルを発射してからブレードで切りかかったが、シールドに防がれた。
『通信妨害も貴様の仕業か、やってくれたな!』
閉所ゆえ、敵のミサイルのうち垂直発射式のものは脅威にならない。火力はHCの方が上、しかし使いきれていない。そして機動性はACが上だった。
『企業も傭兵も、同じことだ……秩序を乱す者には鉄槌が下る!』
蹴ってから相手の背後に回り込もうとする際、ショットガンが良く当たる位置関係を作る。蹴りと銃撃を交互に行い、更にミサイルを混ぜる密度の高い攻撃。
『クッ……! システムに繋がりさえ──』
スタッガーしたところにブレードを一閃。袈裟切り。パルスエネルギーによって装甲が蒸発する。じゅう、という音がした。ジェネレータのエネルギーが血のように噴き出す。還流ジェネレータの青い血、実際には炎。
エネルギーの暴走は止まらない。爆発。敵機が青い爆炎に包まれ、人体でいう胸郭のあたりが吹き飛んだ。仰向けに倒れる。
《敵機システムダウン。HC執行機体を撃破しました》
今日の仕事は果たした。一応まだ部屋が残ってはいるが。
『……周辺に敵影なし。全て片付いたようだな』
やはりこれで終わりのようだった。
『今日はここまでだ。帰投しろ、621』
621、ガレージに帰投。ベイラムからメッセージが来ていた。
『G13 レイヴン! 「壁」での美しい殺戮劇だったな。間違いなく、貴様は生き残りだ……そんな貴様には俺から助言を送ろう』
レッドからの助言、いったい何だろうか。
『独立傭兵に甘んじるな。レッドガンズに入れ。キャリアを重ねろ。序列を上げろ。貴様もアンラッキーナンバーを付けつづけていると、やがてな、ロクなことにならんぞ』
スカウトならハンドラー・ウォルターまでお声がけください、一瞬返信を出すべきか迷った621だったが、激励の意図はなんとなく掴んでいた。
レッドは本気で、レイヴンがどこかで終わってしまうことを危惧している。
『以上だ。今言ったことを忘れるなよ』
しかしウォルターのもとで戦いたいと、621は思う。
何より支援体制が良かった。自らが全力を発揮できる環境を、いつもウォルターは用意するのだ。
数日後、621は予定よりも遅れて中央氷原への帰路へついた。復路はベイラムの高速輸送艦を使う予定だったが、ピストン輸送に耐えられなかったのか故障したのだ。
修理を待つ間、ウォルターは仕事を取り付けてくると言い残し、先に戻っていた。
《災難でしたね、レイヴン。帰りましょうか》
「ああ」
621は何気なく、後方を映す船外カメラの映像を眺める。ベリウスの大地がどんどん遠ざかり、やがて霞の向こうに消えていった。
収入:270,000
基本報酬:270,000
報酬加算:0
支出:34,410
修理費:12,410
弾薬費:22,000
報酬減算:0
収支:235,590