Bランク最初の相手、No.12のACはバレンフラワー。コールサイン、V.Ⅲ オキーフ。
オキーフはかつて旧世代型強化人間だったが、現在は第9世代なのだという。元々エージェントをやっており、「アイランド・フォーの動乱」なる紛争において諜報活動を担っていたそうだ。
その後アーキバス情報部門に招聘され、第9世代手術──脳内コーラルの焼き付きを中和する──の提供を条件に承諾したらしい。
乗機バレンフラワーは四脚機である。上位ランカーらしい複数フレームの組み合わせに、派生パーツやワンオフモデルも取り入れたアセンブリだ。
頭部はオールマインド「マインドアルファ」、コアはシュナイダー「ナハトライアー」、腕部は不明、おそらく専用パーツ、そして脚部はアーキバス。二脚パーツから派生した四脚タイプ。
武装はバーストライフルとプラズマライフル、コンテナミサイルに垂直プラズマミサイルという隙の無い構成。相手をじっくりと削る方針のように思われた。
塗装が独特だった。これまでアリーナで戦ってきたヴェスパーズ所属機は、みな青や紫に近い色で塗装されていた。
バレンフラワーはベースに黒褐色と鶯色、アクセントに萌黄色を使用しており、ヴェスパーズという印象を感じないのだ。スパイとして潜入先の組織に合わせているのかもしれない、それがアリーナに登録されているのでは元も子もないが……。
戦ってみた印象だが、やや微妙な機体だと621は感じた。四脚のホバリング特性を活かした空中戦を仕掛けてくるのだが、どうにも圧が少ない。意外とすばしっこいため時間こそかかったが、押しきれてしまった。撃破時間は38秒。
2機目、NO.12のACはフルコース。621にとって食事すなわち流動食であるため、名前に含まれたユーモアはなかなか理解しがたいものがあった。
パイロットは我らがチーフ、「
カーラはドーザー主体のルビコン土着企業、
情報処理と機械設計のスペシャリストである彼女は、その膨大な知識量と自由な発想によって、企業製品には見られない奇抜な兵器を生み出しつづけている。
そんなカーラは、かつて自らの設計思想をこう語ったらしい。
「笑いひとつとれない殺人機械に、使い道があるのかい?」
AC「フルコース」はワンオフモデルであった。淑女らしい落ち着いた赤や桃色で塗装された、ツナギを腕まくりしたような見た目の重量二脚機。
武装もおそらく同様に専用品で、腕はトウモロコシに似た形の銃。いや、ミサイルポッド。銃口がなかった。肩は肩で、羽のような形状に連なったミサイルポッド。おそらく30発は下らないだろう。この機体、蹴りを除けば攻撃手段がミサイルしかない。
621はフィールドに入る。デスルンバと戦った、グリッド086最奥だ。
『戦闘技能検証プログラム「アリーナ」、No.11、ランク……何ですかこれ──』
『勝手に人様を格付けするとは不躾なやつだ、そう思わないかい? だが、まあいいさ』
どうやったのかは全くの不明だが、戦闘前のアナウンスに音声を入れてきた。
『忙しい。データで我慢しな』
戦闘はおおよそ621の想定通りで、ミサイルの大群をどう処理するかが問題だった。射出された後はその場でしばし滞空し、視界外から標的に突っ込んでくる。以前ウォッチポイント・デルタで交戦した、バルテウスの垂れ流すミサイルもこのような性質を持っていたため、621は安定してミサイルを回避できた。
相手の回避性能はそれほど高いとはいえず、重量二脚だけに時間はかかったが、すんなり撃破できた。撃破時間は43秒。
『ナイスだ。だが再現度は──』
『不正なメッセージが仕込まれていました。失礼しました。検証を終了します』
急に早口になったシステム音声の口調が、妙に印象に残った。
ここからトップ10。No.10のACはデッドスレッド、コールサイン、コールドコール。独立傭兵だ。星外企業によるルビコン進駐計画を事前につかみ、取引によって難なく密航を果たしたらしい。
粛清代行を専門としているようで、企業の暗部に浸かってビジネスを安定させてきたようだ。
それ故殺意を嗅ぎ分ける──本物は機体越しでも匂い立つ、らしい──ことに長けている、と説明されていた。
機体の方はベイラム「メランダー」のコアに、一点ものと思われる頭部を使っていた。腕と脚部は621にとって馴染み深いRaD「C-2000」だが、脚部は物資輸送を重視した重量逆関節モデルの方を採用していた。
武装は腕がレーザーライフルにレーザーショットガン、肩は単装高誘導ミサイルと4連装ミサイルという構成。戦ってみたところ、ジェネレータは内燃式のようだから、EN系で固められた腕部武装とは相性が悪いのが気になった。
撃破時間は25秒。互いに正攻法でやり合い、攻撃を多く当てた方が勝った、という形だ。スッラがそうだったように、現実で交戦する際は脅威となる可能性が高いと、621はメモを取っておいた。
4機目、No.9のACはスティールヘイズ。コールサイン、V.Ⅳ ラスティ。
紹介文によれば、ヴェスパーズ入隊以前に強化人間手術を受けていたようだ。世代は第8世代、ただし自己申告である。
アーキバスグループ傘下、シュナイダーの人材公募プログラムで見出され、そこから半年に満たない短期でヴェスパーズ上位に抜擢された、類を見ない経歴の持ち主でもあるようだ。
機体のスティールヘイズは軽量二脚機だ。シュナイダーの「ナハトライアー」を使用しているのは、当初入社したのがシュナイダーだったから、というのもあるのだろう。621が最近覚えた、格好いい、という言葉の似合う機体である。
武装はヴェスパーズにしては珍しい実弾中心だった。バーストハンドガン、バーストライフル、レーザースライサー、3連装プラズマミサイルという構成は、ジェネレータのEN射撃武器適性の影響を受けない。しかしこれは、負荷が大きいシュナイダー製品を扱う上で最善ともいえる構成だった。完成度は高い。
撃破時間は25秒。621はしっかりとラスティに喰らいつくことができた。それでもラスティの技量は高かった。終盤、スタッガーをとった621はブレードで追撃する猶予がないと判断、アサルトアーマーで追撃した。硬直したラスティはアサルトアーマーを発動して今度は621をスタッガーに追い込み、レーザースライサーで追撃してきた。621のAP残量が多かったうえ、フルヒットしたわけではないので難を逃れたが、あらかじめダメージを受けていれば危なかった。
自分がスタッガーして硬直したとき、あるいは相手がコア拡張システムを発動したときにアサルトアーマーを発動して相殺、逆に相手をスタッガーまで持ち込むという戦法は621もよく使う。逆に相手がこれを使ってくるというのは621にとって新鮮だった。
直接対面したのは2度だけだというのに、やたら友好的な男、ラスティ。しかし、彼とは戦うことになるという予感が、621にはあった。確信と言ってもいい。
なぜかと問われれば返答に窮した。フレンドリーに「
V.Ⅳ ラスティ。口輪をはめた狼男は、たしかに621の琴線に触れていた。
5機目。Bランク最後のACはミルクトゥース。コールサイン、「
RaDなどドーザー勢力のうち、最大の規模を誇るジャンカー・コヨーテスの頭目である。
かつてはRaDに拾われた元構成員で、
実際には、ブルートゥは重度の虚言癖を備えた人格破綻者だった。発覚したとき、RaDの資金と技術は無視できないレベルで持ち逃げされていたようだ。
ミルクトゥースはRaD時代に組まれた機体のようで、フレームは土建AC「C-3000」で統一されている。
武装は爆発系メインだ。火炎放射器、2連装6分裂ミサイル、拡散バズーカ、チェーンソー。近接志向のようだが、機体とマッチしていない。土建ACの腕部パーツは力の吸収力に優れているため、近接武器にフレームの運動エネルギーが加わらない。つまり、近接武器で出せるダメージが小さくなってしまうのだ。
戦闘では、621が機動力、投射火力で上回ったため苦労せず撃破する結果となった。ランク最下位のラミーにも言えることだが、チェーンソーは当ててこその武器だった。こちらも撃破時間は25秒。
新しく手に入れたOSTチップは20枚。実弾武器は4段階、EN武器と近接武器は3段階まで強化し、これで近接武器は最大まで強化が入った。残りはアサルトアーマーの発動回数を2回に増やし、クイックターン解禁に回した。
クイックターンはターゲットアシストを起動してなくても、ブースト操作により、その場で方向を変えることができる機能だ。使用頻度はそれほど高くなさそうだが、咄嗟に方向転換ができるのはプラスだと621は判断した。
『Bランク帯の突破、おめでとうございます。貴方の傭兵としての進化、その過程を見ることができ光栄です。オールマインドは全ての傭兵のためにあります』
オールマインドからの通信を聞き流しつつ、621は届いた依頼を確認して、思わず合点がいった。
『「