メインシステム、戦闘モード起動   作:留式

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アイスワーム撃破

 地形調査だと言って出撃した621を見送り、ウォルターは自らの仕事を進めていた。そろそろベイラム・アーキバス間の協力体制が正式に組まれるはずだった。

 

 通信が入る。相手はベイラム専属AC部隊「レッドガンズ」総長、G1 ミシガン。

 

『話は付けてきたぞ、ハンドラー・ウォルター!』

 

「ミシガン。するとアーキバスは妥協したんだな?」

 

『向こうには強襲艦隊をくれてやった。その代わり、怪獣退治はベイラムでやる。ヴェスパーズ上位陣にも一枚嚙ませることになったが……』

 

 俺たち信用されてないな、とミシガンは苦笑混じりに言った。

 

「何もないよりはましだ。こちらもできる限り戦力を回そう」

 

『ああ、例の変態技術者(マッドサイエンティスト)ども……RaDとかいう。それと貴様の猟犬だが……』

 

「……ミシガン」

 

 ウォルターはややテンションを下げた様子のミシガンを呼び止める。言っておかなければならないことがあった。

 

「621を無礼(なめ)るなよ。あいつはいつも結果を出す」

 

『そいつは楽しみだ。それで今後の予定だが、今夜ブリーフィングを行う。先方はリアルタイム通信をご所望だ』

 

 遅刻するなよ、とミシガンは言い残した。通信が切られる。

 

 いよいよ動き出す旨を621に伝えるべく、ウォルターは猟犬の帰投を待った。

 

 その間、宅配物があった。AC用の兵装だ。送り主はアーキバス。なんでも、先進開発局の試作品らしい。供与するのでありがたく使えと書かれていた。

 マニュアルを読みつつ、セットアップ作業を行う。終わったころには日没が迫っていた。

 

 621からの連絡はまだない。機体のテレメトリは届いており、何ら以上も見られなかったから、ウォルターは心配することなく待ち続けた。

 それでも日没から1時間もすれば、さしものウォルターも不安を覚えた。何があった?

 

 場所はエンゲブレト坑道。位置情報を見る限り、機体が動けないということもなさそうだ。武装の残弾が減っていたから、戦闘があったのは確かだった。しかしAPはまったく減っていないし、本人のバイタルは正常だ。Cパルス増幅波も異常ないが、どうも集中している様子だった。

 

 坑道の中で何か見つけ、それに夢中になっているのかもしれない。ならば本人に刺激が加わっている証拠であり、好ましい変化ではある。心配はするが。

 

 結局ウォルターは更に1時間待つことになった。戻ってきた621に声をかける。

 

「……道草を食ったな、621? お前は今や名の知れた傭兵だ。相応の行動をしろ」

 

 はあ……。思わずため息がこぼれた。帰ってこないというのは、なかなか心臓に悪いのだ。

 

「次のミッションは雌雄を決するものだ。お前もブリーフィングに参加しろ。90分後に開始する。遅れないように」

 

 

 

 

 

 

 85分後。きっかり5分前に、621は機体洗浄を終えたACのコックピットで待機していた。ウォルターのため息は流石に堪え、時間厳守を意識していた。

 

『聞け、621。これはベイラムとアーキバス、両社連名での作戦だ。これからブリーフィングが始まる。お前も同席するんだ』

 

「了解」

 

 予告通りにブリーフィングが始まる。

 他の参加者は5名。ベイラムからはレッドガンズのG1 ミシガンとG5 イグアス。アーキバスからはヴェスパーズのV.Ⅱ スネイルとV.Ⅳ ラスティ。そしてRaDから「灰かぶりの(シンダー)」カーラ。

 

『まず、詳細の前に背景から説明しましょう』

 

 口火を切ったのはスネイル。いつもの粘着質な声で、前提事項の説明を始める。

 

『両社の停戦協定合意に基づき、封鎖機構に対する同時多発的な襲撃を実施します』

 

 共有された画面には分割された地図が映し出された。片方はベリウス西部の港湾地域。もうひとつは中央氷原も含む氷原一帯。

 地図上に大量のマーカーが出現する。これら全てが封鎖機構の手中にあった。

 

『目標は敵勢力下にある拠点群、その強襲艦隊、そして先般起動した──』

 

『まとめるぞ! これはルビコン全域で展開される封鎖機構との全面戦争だ』

 

 長い前置きに業を煮やしたのか、ミシガンが割り込む。相変わらず声量が大きい。

 

『貴様らは貧乏くじを引いた! ここにいる連中が受け持つのはとびっきりの汚れ仕事。氷原の怪獣退治だ!』

 

『まったくでありますね、総長。やってられるかよ、俺は遠巻きに見物させてもらうぜ』

 

 口ごたえを返したのはイグアス。さすが顔面が変形しただけのことはあるなと、621は思った。

 

 報いは即座に訪れた。

 

『G5! 貴様は自ら最前線に志願したようだな』

 

 画面には割り当て表と思わしきシートが表示され、上から2番目の欄に「最前線: G5 イグアス」と記されていた。尖兵として、真っ先に突っ込むのが役目となる。

 

『進めるよ、アイスワームのコーラルシールドを無効化する手段について話そうじゃないか』

 

 続いてカーラが話し始めた。

 

『相手は多重防壁だ、プライマリシールドとセカンダリシールドからできているよ』

 

『1枚目を突破する手段はアーキバスが提供しましょう』

 

 スネイルが見覚えのある武装を表示する。つい先ほど届いたという肩用の武装だ。

 

『最新兵器「スタンニードルランチャー」。これを顔部に当て、求める結果を引き出す……性能は保証します』

 

『2枚目はどうする?』

 

 ミシガンの疑問にカーラが答えた。

 

『我がRaDはまさしくおあつらえ向きの一品をこしらえた──ちょっとした玩具「オーバードレースキャノン」さ』

 

 映し出されたのはACの何倍もあるような、巨大なレールキャノンの図面だった。

 砲身はグリッド012から持ってきた秘密道具で、マウントは放置された列車砲をそのまま流用している。

 

『宇宙港の待機電力をORCに回せば、威力は足りるはずだよ……当たればの話だが』

 

『それなら射手は任せてくれ。狙撃には自信がある』

 

『私は現場監督として出ましょう。このような寄せ集め連中には統率が必要です』

 

 狙撃手をラスティ、指揮官をスネイルが務めることとなった。割り当て表の中央が埋まる。

 

『弾幕要員も一枚欲しい。うちからはチャティも出そう』

 

 表の1番下にスティックの名が入った。残りは1番上だけだ。

 

『あと決まっていないのは誰がスタンニードルランチャーを当てに行くか……』

 

『あの怪獣をとっつきに行く志願者なら最初から決まっている』

 

 ラスティの呟きにミシガンが反応した。

 

『G13! 話は聞いていたな?』

 

「はい総長」

 

『よし! またまた愉快な遠足の始まりだ!』

 

 表の一番上に621──正確にはG13 レイヴンが入る。強襲担当だ。

 表は全て埋まり、ブリーフィングが終わる。

 

『これだけの勢力が一堂に会する作戦はそうそうない』

 

 ウォルターがぽつりと言った。

 

『……これきりだ、621』

 

 

 

 

 

 

 MICHIGAN's GREAT FIELD TRIP

 

 ASSAULT: G13 Raven / LOADER 4.4

 FRONTLINE: G5 Iguazu / HEAD BRINGER

 SNIPER: V.Ⅳ Rusty / STEEL HAZE

 COMMANDER: V.Ⅱ Snail / OPEN FAITH

 GUNNER: "Chatty" Stick / CIRCUS

 

 

 

 

 

 

 3日後、621は旧バートラム宇宙港南方に広がる、観測不能領域の上空に差し掛かっていた。

 

 今日はG13としての出撃になるため、赤いエンブレムを左肩に貼っている。

 これを貼っているときの621は、やはりレッドガンズの一員だった。

 

 武装もすでに搭載が完了している。いつもとは大きく異なる兵装だった。

 右腕のバーストライフルはいつも通りだが、今日は最初から左腕にパルスブレードを持っていた。右肩はアーキバスから供与されたスタンニードルランチャー。対アイスワーム専用兵装だ。

 そして左肩には、パイルバンカーをハンガー装備していた。ブリーフィングの直後、ベイラムから調達した品だ。ミシガンのとっつけ(・・・・)という言葉を参考にした。

 

 EN負荷合計がいつもより高い。2700と少し。スタンニードルランチャーの影響が大きかった。

 操縦装置たる第4世代は常人と異なり、操縦にEN負荷の影響を受けた。負荷合計が3000を越えると戦闘に支障が出てくる。

 

『時間だ、621。準備はいいか?』

 

「全系統異常なし。いつでもいける」

 

 腕部クランプ解除。背後でカーゴランプが開く。機内に雪が吹き込んでくる。低く垂れこめた雲で、外は暗い。天候は雪。吹雪いていた。

 

《作戦の要はあなたです、レイヴン》

 

 エアが落ち着いた声で言った。気合いが入っている。

 

《行きましょう。私もできる限りのサポートをします》

 

 肩クランプ、ロック解除。オレンジの警告灯がグリーンに変化する。

 

 クランプが開く。投下。621は氷の大地に降り立った。

 

『メインシステム、戦闘モード起動』

 

 アサルトブーストに点火した作戦参加機が、ちょうど背後から621をかわしていく。621もアサルトブースト、編隊に追従する。

 遠くに地面を掘り起こすアイスワームの姿が見えた。

 

『ミッション開始だ。ミシガンが総指揮を執る』

 

『ベイラム・アーキバス合意に基づき、これより混成AC部隊による作戦行動を開始する。行くぞウジ虫ども! 死んでこい!』

 

 ラスティを除く4機がアイスワームへ接近していく。中量二脚が2機、重量二脚が1機、軽量タンクが1機。

 

 スネイルの駆る重量二脚機「オープンフェイス」だけ、621が初めて見る機体だった。

 全て専用パーツだ。いずれもマッシブで太ましい。特に脚部はC-2000の倍ほどもあった。

 武装は一見するとレーザーライフル、キャノンとプラズマミサイルという平凡な構成。しかし左腕に見慣れない兵装を搭載していた。

 EN系近接兵装のようだが、巨大なブースタがついている。

 

 そのスネイルがミシガンに続いて、全体に声をかけた。

 

『生き残りたいのならプロとして動くことです』

 

 発破のかけ方の違いに、イグアスが困惑する。

 

『こいつ舐めてんじゃねえの? 別に居たくて居るわけじゃねえよ』

 

『G5! 怪獣に轢かれたいか? まずは邪魔なシールドをやるぞ。G13! アーキバスが大金つぎ込んだその高級イチモツをぶち込んでやれ!』

 

『こちらV.Ⅳ ラスティ。レールキャノンの準備はできている。出番なしで終わらせてくれるなよ、戦友(バディ)

 

『ツーリスト──うちのチーフから伝言を預かっている。「ショーを楽しみな──それと笑顔を忘れるんじゃないよ」、だそうだ』

 

 ミシガンが、ラスティが、スティックが、それぞれ621に言葉を投げかける。

 

《狙うべきは頭部です。体側は厚い装甲で覆われています》

 

「ああ──正面からいく」

 

 アイスワームが地面から顔を出し、かつ前後方向のみに動くタイミングを621は読みきった。

 ドリルが3つ三角形に並んだ、どこか間抜けな顔面をFCSが捉える。レティクルが赤く染まった瞬間、621はトリガーを引いた。

 

 筒状の高圧バッテリから薬室に直結した帯電装置に電気が送られ、砲弾尾部が帯電。直後に雷管が叩かれ、長い砲身から弾頭がすっ飛んでいく。

 安定翼が展開。弾頭は放電による尾を引いてアイスワームの顔面に吸い込まれた。

 

 着弾。尾部がスライドし、弾頭全体へ通電。同時に放電索が展開。溜め込んだ電荷が解放され、半径15mを黒焦げにする。

 

《プライマリシールド消失!》

 

 放電はコーラル防壁をも吹き飛ばした。たまらずアイスワームが地中に逃げ込む。

 

『シールド消失を確認。ORC発射シーケンスに入る』

 

 これを見たラスティが動く。ヨルゲン燃料基地の北方に展開されたORCにスティールヘイズを接続、アイスワームを直接狙うのだ。

 

『EMLモジュール接続。エネルギータービン開放、出力80%』

 

 621には心なしか、ラスティのいるあたりが光って見えた。

 

『照準補正良し。90……95……』

 

 無線の向こうで、冷却装置ががなり立てる。

 警告音。短く、2回。これは621の側だ。地響きと共に、アイスワームが顔を覗かせる。

 

『外しはしない』

 

 一瞬、ラスティの言葉を除いて、全ての音が世界から消える。

 静寂の中、紅いシールドをまとったアイスワームの後頭部を、一条の光が貫いた。直後に衝撃と轟音。

 

 正確なタイミングで発射された砲弾の速度はマッハ9に到達。空力加熱による軌跡を一直線に描いて着弾し、アイスワームのセカンダリシールドを打ち破った。

 顔から紅い飛沫をあげ、アイスワームが倒れ込む。

 

《セカンダリシールド消失!》

 

『G13! 頭部に直接攻撃を加えてやれ!』

 

 ミシガンの言葉に応えるように、621はまずブレードでアイスワームの頭を切りつける。火花が飛んだ。

 各機もそれに続いて総攻撃をかける。ミサイルが降り、レーザーがアイスワームを焼き尽くす。

 

 621は続いてパイルバンカーに持ち替え、チャージ攻撃に移る。安全装置を解除、杭を引き絞り、撃鉄を起こす。

 腕を振りかぶったままブーストして速度を乗せ、突き上げる動きに合わせて引き金を引いた。

 

 炸薬に火が点き、杭を押し出す。杭はエネルギーを殺すことなく、アイスワームの顔面に深々と突き刺さった。

 コーラルの小爆発が起き、アイスワームがのたうち回る。機械が鳴き声のような音を立てて軋んだ。

 

『あの野郎、本当にキメ(・・)やがった……』

 

『なに、当然でしょう? これは最初の障害に過ぎないのですから』

 

 シールドを再度展開したアイスワームが地中へ逃げ、距離をとって再び地上に出現した。遠い。FCS圏外だった。

 

『目標が子機を展開した、ツーリスト。対処する』

 

 あの構造のどこから出したのか知らないが、アイスワームが子機を展開。

 コーラル駆動ではなく、還流駆動だ。青いバーナーを吹かし、レーザービームで攻撃してきた。断面の形状は母機と似ていた。

 

 4機で子機をちまちまと落としていると、アイスワームが浮上と潜航を繰り返しながら接近してきた。

 

『V.Ⅳ! 次弾装填!』

 

『一足先に済ませてあるよ、総長』

 

『ようやく、頭の回る奴が出てきたな。鞍替えを考えたことはあるか?』

 

『レッドガンズの「地獄の四脚」にそう言われるとは光栄だが……遠慮しておこう』

 

「……捉えた。発射(Fire)

 

 621はちょうどいいタイミングで頭を出した、450m先のアイスワームめがけてスタンニードルランチャーを発射。二次ロックなしで、その眉間を正確に捉えた。

 

命中(Bull's eye)──V.Ⅳ、出番だ」

 

『良い腕だ、戦友(バディ)──シールド消失確認。レールキャノン発射準備』

 

 ラスティがORC発射シーケンスを開始。宇宙港中の電力がORCに送られていく。

 

『エネルギータービン出力、80%』

 

 冷却装置が轟音を鳴らす。極寒の環境下でも冷却性能はぎりぎりだった。

 

『出力95%……100%』

 

 アイスワームが地中から出現。背後はがら空き。

 

『巻き込まれてくれるなよ!』

 

 2射目も直撃。身体を軋ませ、アイスワームが再び倒れる。

 

《セカンダリシールド、ダウン!》

 

『追撃を頼む、戦友(バディ)

 

「承知した」

 

 再びの一斉攻撃。621が当てたのはブレードの二振りだけだったが、アイスワームが大きくのけぞり、態勢を立て直したかと思えば、とぐろを巻いた。蛇のように。

 ウォルターが警告を発する。

 

『待て、様子がおかしい。引け、621!』

 

 アイスワームの装甲表面を紅い光が迸り、頭部へ集まっていく。

 数秒後、頭部から真紅のエネルギーがまき散らされた。イグアスが巻き込まれる。

 

『そりゃねえだろ、ヘッドブリンガー! 俺が先に落ちるはずがねえ!』

 

『これは⁉ まだ機能を隠し持つか!』

 

《コーラルが……制御されていません!》

 

 シールドを再展開したアイスワームが地中へ潜ろうとする動作に合わせ、621はスタンニードルランチャーを発射、命中させる。割れない。

 

『ちくしょう……化け物め』

 

『G5! ヘリが来るまでそこで震えていろ。運が長持ちするよう祈っておけ!』

 

《プライマリシールドが強化されている……っ! レイヴン、あれを!》

 

 飛び出したアイスワームがスネイルに向け突進。紅い衝撃波を伴っていた。

 運の悪いことに、スティックもアイスワームの進路上にいた。HMDから2機の表示が消える。

 

『そう簡単に落ちるわけには……私はヴェスパーズ(・・・・・・・・)企業(アーキバス)だ。だが……止むを得ん……脱出する!』

 

『だめだ、ツーリスト。後はお前ひとりだ。システム緊急停止、実行』

 

『残るは君だけか、戦友(バディ)……ORCを限界出力にセットする。次で決めるぞ。レールキャノンもこれ以上持たない』

 

「コピー」

 

 621はアイスワームの顔面を狙えるタイミングを探す。これまでより移動量が多く、どこで顔を出すのか予測がつきにくいように感じられた。

 おまけにミサイルを飛ばしてくるのだ。高速で突き刺しに来るタイプと、地面をバウンドして爆風で絡めとる低速タイプの2種類があり、回避にも気をつかった。

 

『君が落ちたら終わりだ。焦るなよ、戦友(バディ)

 

 移動するアイスワームの付近はコーラルの衝撃波の影響を受ける。近すぎてもだめだった。直撃したら? 考えるまでもなかった。

 

『G13! 追い詰められた獣は守りを固めるらしいな。ちょうどいい、貴様にレッドガンズの流儀を教えてやる……』

 

 ミシガンが621を励ます。

 

『「泣き(・・)を入れたら、もう一発(・・・・)」だ!』

 

 621の目の前にアイスワームが顔を出した。パチパチと弾けるコーラルがAPを削るが、621は気にしなかった。アイスワームは621を覗き込むような姿勢をとっており、その顔面は止まって見えた。

 

 トリガーを引く。アイスワームからコーラルの稲光が飛んだ直後、本来の雷が621から放たれた。直撃。

 

《プライマリシールド、ダウン!》

 

『よくやってくれた、戦友(バディ)

 

『誰かさんが腹を空かせているぞ、V.Ⅳ! 望みのものを叩き込んでやれ!』

 

 最後のひと押しを前に、ミシガンがラスティに気合いを入れる。

 

『そうしよう。EMLモジュール全点接続。エネルギータービン全開』

 

『チッ、耳鳴りが……くそったれのバリアめ。消えろ!』

 

 イグアスがぼやく。

 

『出力、80……90……』

 

『成果を出しなさい、第4隊長』

 

 スネイルもプレッシャーをかける。

 

『緊急弁全閉鎖。リミッター解除……!』

 

『消えろ!』

 

 イグアスがまた叫ぶ。相当参っているようだ。

 

『100、110……115……レールキャノン最大出力』

 

 リミッターが解除され、全てのモジュールにありったけの電力が注ぎ込まれる。冷却装置は唸りをあげ、電磁ノイズでラスティの声がかき消された。

 直後に警告音。エアが声を張り上げる。

 

《アイスワーム、正面地中からです!》

 

「来い、V.Ⅳ」

 

 氷塊が飛び、土煙が上がる。その中心を、621はじっと見つめていた。

 

『これで決める!』

 

 一瞬の静寂。次いで閃光。

 飛び出したアイスワームの頭部からコーラルが飛び散った。遅れて轟音。機体が揺れる。

 

《目標のコーラルシールド完全消滅を確認!》

 

『後は任せたぞ、戦友(バディ)!』

 

「了解。無駄にはしない」

 

 ブレードを振るい、チャージしたパイルバンカーを突き刺す。倒した感触はまだない。

 そのときエアが息を飲んだ。

 

《コーラル反応が増幅しています! 急いで!》

 

 ブレードとパイルバンカーは冷却中だ。しかし621にはまだ一手残っている。

 621は両スティックのボタンを押す。コアの背部カバーが開いて、パルスエネルギーが増幅を開始。

 

『決めろ! G13!』

 

 アサルトアーマーが発動。まき散らされたパルスエネルギーがアイスワームにとどめを刺した。

 小爆発が起き、アイスワームの首が大きく持ち上がる。

 

『やったか⁉』

 

 ラスティが声を漏らし、次いでミシガンが怒鳴る。

 

『離れろ! 爆発するぞ!』

 

 621は後ろへクイックブースト、アイスワームから距離をとる。

 体内から紅い光が漏れ出すのが、はっきりと見えた。

 その光が強さを増し、やがて大爆発を起こした。コーラル特有の球状の爆風が、途轍もない広さで全てを吹き飛ばす。

 

『嘘だろ? 野良犬がマジで決めやがった……』

 

『脱出者はサンドイッチになりたくなければ退避しろ、倒れるぞ!』

 

 体節から煙を上げたアイスワームが倒れる。黒焦げだった。ドリルが止まる。

 相手は兵器なのだが、621は「死」を感じ取った。アイスワームはこの瞬間、確かに死んだ。




 収入:420,000
 
 基本報酬:420,000
 報酬加算:0
 
 支出:13,670
 
 修理費:8,270
 弾薬費:5,400
 報酬減算:0
 
 収支:406,330
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