メインシステム、戦闘モード起動   作:留式

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地中探査・深度1

 集積コーラルへと迫るべく、621はウォッチポイント・アルファの探査へ取り掛かろうとしていた。ブリーフィングが始まる。

 

『それでは仕事だ、621。例の地下施設──「ウォッチポイント・アルファ」に潜る。アーキバスからは先行調査の依頼を取り付けておいた。連中は独立傭兵をカナリアに使う気だ』

 

 相変わらずだな、とウォルターが呟く。

 

『ベイラムが先んじて、レッドガンズ数名とMT部隊を突入させている。アーキバスの新戦力に対抗するためだろう』

 

 ウォルターがベイラムの投入した推定戦力を表示する。レッドガンズから3名。G3、G5、G6。トップ2名を除く、ほぼ全力出撃だった。なるほど焦っているらしい。

 反対にアーキバスは621を尖兵として送り込み、マイペースでことを運ぶつもりなのだった。

 

 表示が切り替わる。アーキバスが提供してきた、ウォッチポイント・アルファ全体のスキャンデータだ。大きい。深さはもちろん、水平の距離も凄まじかった。最奥部は入口から10km以上離れた沖合の島の辺りに位置している。

 この広大な地下施設の入口、深度1が拡大表示される。垂直の縦穴になっていた。

 

『まずは深度1、この縦穴区画を降下してもらう。道中で封鎖機構が残した自律防衛兵器の抵抗に遭う可能性が高い……』

 

 再び表示が切り替わる。大型のレーザーユニットらしき兵器が映し出された。

 

『特に注意すべきは降下した先で待ち構えている「ネペンテス」、エネルギーウェポンプラットフォームだ。ベイラム部隊の半数はこれで灰燼に帰したと聞いている。ベイラムと同じ轍を踏むことはないな。慎重に行け』

 

 ブリーフィングが終わると、エアが言葉を漏らした。

 

《……ウォッチポイント・アルファ。兄弟姉妹たちが……その先に……。行きましょう、レイヴン》

 

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 3日後の朝方、作戦が開始された。アイスワームと戦った地点からさらに南下した先、アーレア海に面した崖に、巨大地下施設の入り口はあった。

 

『621、準備はいいか?』

 

「こちら621、システムオールグリーン」

 

『了解した。開けるぞ』

 

 ウォルターが入口の巨大な隔壁をハック。これまた大きなロック機構が解除され、開きはじめる。4分割されたそれがゆっくりと退き、深くて暗い穴ぐらがあらわになる。

 621は薄曇りの灼けた空の下、外周から隔壁が開く様子を見下ろしていた。

 

『生きて帰る保証もない、深い探査となるだろう』

 

 ウォルターの言葉を聞きつつ、621は外周から穴の中へ飛び込んだ。

 

『とはいえ……』

 

 一番上で停止した、黄色い昇降機があるところまで降下、その上に着地する。この時点で高度はマイナス1060m。

 

『やり遂げられるとすればお前だけだ。コーラルに辿り着いて見せろ』

 

『メインシステム、戦闘モード起動』

 

 621はウォルターの言葉に行動で返答する。

 

『ミッション開始だ。昇降機にアクセスして降下しろ』

 

 昇降機も規格外の大きさだった。昇降路は同心円状に8基設置されており、そこから部材が中心にある六角形のかご(・・)に伸びていた。

 かごの中央にある制御装置に、薄い外板を通してアクセスできるようになっていた。

 

 621が制御装置にアクセスすると、降下が始まった。よく見るとロープ式ではなく、歯車がラックと嚙み合うことで直接上下しているようだった。

 

 500mほど降下したとき、突然照明が赤色灯に切り替わる。ブザーが鳴り響いた。

 

『侵入者を検出。脅威レベル不明。防衛フェーズ1.0。排除開始』

 

 レーダーに反応が複数。昇降機下方からブースタを噴射する音が聞こえた。

 

《防衛システムが作動しています。捕捉されました──応戦を》

 

 現れたのはグリッドで見かけた封鎖機構のオービット。レーザーを放ち、高速で突入してくる。

 一通り始末した621は、昇降機が停止しているのに気が付いた。

 

『……昇降機がロックされた』

 

《飛び降りるしかありません。行きましょう、レイヴン》

 

 エアの言う通り、ここからは昇降機なしで下まで降りるしかなさそうだった。

 ブリーフィングの情報が正しければ、闇雲に降りると下から飛んでくるレーザーに焼かれるはずだ。

 

 そこで、621は設置されている各種足場を伝っていくことにした。

 穴の外周にはメンテナンス用の足場がある。更に、外側と内側の昇降路は通路で結ばれており、これも盾として使えそうだった。

 

 昇降路の根本の足場に沿うように、621は飛び降りる。

 

《危険です──下を!》

 

 警告音。射点がHMDに表示される。縦穴の底、6箇所。

 621が足場の影に入るのと、レーザーが飛んでくるのはほぼ同時だった。弾速が速い。

 

 続いてチャージされる音がここまで響いてきた。直後にエネルギーが弾ける音。初撃よりも大きな音が響いた。

 

《あれが「ネペンテス」……尋常ではない威力が見て取れます》

 

 どうやら、捕捉した敵を瞬時に屠るための1射目、高火力で確実に消すための2射目という仕組みになっているようだ。

 1射目は6門の斉射だが、2射目は1発ずつ。あれだけの威力だから、電力に制約があるのだろうと、621は推測する。

 

 ネペンテスが黙っている合間を縫い、621は降下していく。高度がマイナス4000を切った辺りで、突然穴が塞がれた。

 

『待て──隔壁が作動した!』

 

《周辺から敵性反応!》

 

『侵入者を隔離。排除を開始します』

 

 上から封鎖兵器が降ってきた。4機。サブジェクトガードが運用しているMTと異なり、皿のような形のコアが特徴だ。

 621を素通りして隔壁に着地した各機が、ガトリングガンを放ってきた。

 

 621は上からプラズマミサイルをマルチロックして放り込む。ロックされない1機にライフルを撃ち込むと、シールドで防がれた。

 ミサイルで狙った3機から距離をとりつつ、この1機にライフルを浴びせ続け、仕留める。

 

『侵入者の脅威レベルを測定』

 

 視界の隅でパルスブレードを振るう敵機の姿が見えた。3機で密集している。

 621は再びプラズマミサイルで纏めて絡み取り、更にライフルで蜂の巣にしてやった。

 

『……片付いたな。隔壁を開ける方法を探る。一旦待機しろ、621』

 

 HMDにマーカーが表示される。壁の中に中継地点が設けられているのがわかった。

 

《……あちらです。マーカーを送信しました》

 

「エアか。ナイスワーク」

 

《ありがとうございます、レイヴン》

 

 621はエアに称賛の言葉を送り、アサルトブーストで中継地点へ飛んだ。小部屋の入り口に隔壁へのアクセスポイントがある。

 

『アクセスポイントを見つけたのか? 大した嗅覚だ……』

 

 ロックが解除され、隔壁が開いていく。

 

『脅威レベル6、排除困難と判定。不正なアクセスを検出。フェーズ1.5へ移行』

 

「降下を再開する」

 

 621は再び昇降路に沿って自由落下していく。1300ほど降りたところで、下から飛んでくるものが見えた。

 

《戦闘ルーチンが変わりました、レイヴン。プラズマミサイルに注意してください》

 

 コンテナ式になっているようで、発射後、分離を経て向かってくる。レーザーと比べてずいぶん遅く、距離感がつかみにくかった。

 

『狙われているぞ、621!』

 

《回避行動を!》

 

 レーザーは常に景気よく飛んできた。冷却中に降りようとすると、今度はミサイルと鉢合わせる。威力が小さく、それほど脅威にならないのが幸いだった。

 

『もはや目視圏内に入っている、621。……もう少しだけ近づくぞ』

 

「コピー」

 

 底まではおよそ2500m。621は一気に飛び降りようとした。これがいけなかった。

 基部に充填されたエネルギーが各門に移送される。音を立てて青白く光る6つの砲門を、621は降下しながら見つめていた。

 

 発射前に底までたどり着きそうになかったが、回避はできない。今クイックブーストすれば、せっかく得た速度を殺すことになる。

 空中で漂ったところを焼かれるより、被弾を最小限に抑えて突破するしかなかった。AP残量からすると、2発までなら耐えられる。

 

 警告音が鳴る。最初の1発が容赦なく機体を焼いたが、621はネペンテスの射角の外まで切り抜けた。即座にリペアキットを使用する。

 

『……懐に入ったな、621。目標を破壊しろ』

 

《レイヴン──頸部関節を狙うと無力化しやすいでしょう》

 

 ネペンテスの構造は、基部より、砲の生えた頭部が起立している、というものだった。花と言ってもいい。

 首を切り落としてしまえば息の根を止められる。621は銃弾とプラズマミサイルを浴びせ、ブレードを叩き込んでいった。

 

『ネペンテス損傷拡大。当該深度での防衛プランを棄却』

 

 還流駆動による青い炎が噴き上がった。ネペンテス(ウツボカズラ)が終焉を迎える。

 

《砲台プラットフォーム「ネペンテス」、沈黙しました》

 

 激しい爆発によって鋼鉄の花弁が千切れ、空中を舞った。

 

『確認した──目標を破壊。ミッション完了だ』

 

《休めるうちに休みましょう、レイヴン。先はまだ長そうですから》

 

「負荷次第だ。ハンドラーに聞いてみる」

 

 エアの提案を受け、621はウォルターに呼びかける。

 

「こちら621。作戦再開はいつになるか、ハンドラー?」

 

『一度アーキバスに進捗を報告してからだ。報酬の確認もある、3時間ほどかかるだろう。負荷は感じていないかもしれんが、今は休息をとれ、621』

 

「了解」

 

 621は通常モードに切り替え、高度マイナス12000mの地下空間で休息に入った。




 収入:250,000
 
 基本報酬:250,000
 報酬加算:0
 
 支出:15,782
 
 修理費:8,482
 弾薬費:7,300
 報酬減算:0
 
 収支:234,218
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