メインシステム、戦闘モード起動   作:留式

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アリーナ Sランク帯

 戦闘技能検証プログラム──通称「アリーナ」。

 ルビコン星系の傭兵支援システム「オールマインド」が定める、上位パイロット30名に与えられた舞台。

 

 Sランク帯──特定上位ランカーには、そのアリーナのトップ3が割り当てられている。

 621と面識のある者は少ないが、いずれも一騎当千、戦略級の扱いすらされるエースだった。

 

 最初のACはアスタークラウン。コールサイン、キング。上位2名は企業所属だから、独立傭兵としては最高位のパイロットになる。

 

 キングはシャルトルーズと同じく「ブランチ」なるハクティビスト集団に属しており、ステーション31襲撃計画では、強襲艦隊に対する単機陽動を担ったらしい。

 621は密航以来、この集団の活動を聞かなかった。独立傭兵とドンパチするために来たのではなかったから、無理もない。

 

 機体の方は独立傭兵らしく、各メーカーのパーツを組み合わせたものだ。コアはエルカノ「フィルメサ」、頭部はシュナイダー「カズアー」、そして腕部と脚部はベイラム「メランダー」とその換装四脚モデル。

 

 武装も豪華だった。腕のBAWS製バーストハンドガンとベイラムの火力型リニアライフルはともかく、肩はいずれもカタログに載っていない。アーキバスのレーザーキャノンを3連装にしたものと、同社のシールド。供与品と思われた。621に供与されたスタンニードルランチャーと同じだ。あれも621に半ば譲渡された状態となっている。

 

 621が戦ってみたところ、彼がそこまでの脅威とは感じなかった。シールドさえ突破すれば、後はリニアガンとキャノンに警戒すれば良かったからだ。撃破時間は19秒。

 それはそうと、上位ランカーともなれば皆、負荷の高い機体を乗りこなせるのだろうかと、ひそかに621は感心を覚えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 続いてNo.2、ライガーテイル。コールサイン、G1 ミシガン。ベイラム専属AC部隊「レッドガンズ」総長である。

 

 ファーロン武装船団の指揮官から鞍替えした過去を持つらしい。

 621も見てきたが、徹底して容赦のない男で、「地獄の四脚」という異名で敵味方両陣営から恐れられている。

 

 剛毅なところは、ベイラムのバウンティボードに自らを登録していることだろう。

 死亡時懸賞金の半額は古巣ファーロンの同僚たちが受け取る契約になっているそうだ。

 

 ガリア多重ダムでのことから、ウォルターと繋がりが深そうだというのが、621の彼に関して気になるところだった。

 2人にはどこか砕けた雰囲気があったと621は記憶している。

 

 機体の方は異名通り、青緑に塗装された四脚機だ。上半身は頭部以外が「メランダー」で、頭部は蜘蛛のような見た目の専用品だ。コールドコールも使っていたモデル。

 

 武装はガトリングガン、炸裂弾投射機、2連8分裂ミサイル、小型連装グレネード。オールレンジに対応した構成だった。

 

 不意打ち気味に飛んでくる炸裂弾投射機が、少々厄介だった。撃破時間は25秒。

 

 

 

 

 

 

 最後の1機、アリーナの頂点に立つACはロックスミス。コールサイン、V.Ⅰ フロイト。621も名前だけは知っている、ヴェスパーズの主席隊長だ。

 

 フロイトはオキーフなども暗躍した「アイランド・フォーの動乱」において、作戦成功率94.7%を記録した稀代のエースパイロットである。621のルビコンにおける作戦成功率は96.5%だから、遜色ない数字だ。

 この94.7%という数字に「護衛対象の装備を奪った」とか、あるいは本人に対して「スネイル同様の調整を重ねているに違いない」などと、噂の尽きない人物でもあるようだ。

 しかし実際には、ACを駆ることを愉しみ、日々の小さな上達を積み上げつづけた、単なるオリジナルの人間である。らしい。

 

 強化人間部隊のトップが強化人間ではないという事実に、621は興味を覚えた。

 確かに傍目から見ると、ヴェスパーズを取り仕切っているのは次席のスネイルではあるのだが。

 

 このパイロットとも621は巡り合わせがない。まあ強いのだろう、という認識だった。

 

 純粋な人間らしさは機体にも現れていた。フレームは全て量産品だった。

 競合するベイラムの「メランダー」を頭部と脚部に、アーキバス標準モデルをコアと腕部に用いた、スタンダードな中量二脚機だ。

 

 武装は621にとって懐かしのアサルトライフル。高火力モデルではなく、大量量産された普及型だ。これを右腕に装備している。

 左腕にはレーザーブレード。これは水平方向への攻撃性能が高い。肩は素早いリロードが特徴の拡散バズーカと……レーザードローン。

 これは敵機追従型のドローンで、攪乱から追撃まで用途は幅広い。一方でリロードが長く状況判断能力が問われる兵装だ。

 

 まとめると、汎用性に重きを置いているものの、少しだけ変わり種を混ぜた機体だ。作り手の創意工夫と、自らの戦闘技術への確かな自身。それを621は感じた。

 

『最終戦闘技能検証プログラム「アリーナ」。これが最後の検証となります。対象AC、ロックスミス。コールサイン、V.Ⅰ フロイト。検証を……開始します』

 

 器用に固唾をのむオールマインドが見守る中、戦闘が始まり、あっけなく終わった。

 アリーナでの621は両腕をショットガンにした短期決戦仕様というのもあるが、ロックスミスはアグレッシブな動きをしてこなかった。

 

『目標を撃破。これで全ての検証は終了となります。ご協力ありがとうございました』

 

 26秒後、倒れ伏した仮想のロックスミスを見つめる621に、オールマインドは言った。

 

『おめでとうございます。貴方は全ランク帯を踏破しました。シミュレーション上とはいえ、登録傭兵の頂点に君臨したのです。機会がありましたら我々の研究開発にご協力いただけると幸いです。オールマインドは全ての傭兵のためにあります』

 

 オールマインド印のエンブレム──教習を終えたときも似たようなものを621はもらった。大差ない──と共に獲得したOSTチップは18枚。EN兵装の最終強化と、アクセス速度向上。あとはACSとリペアキットの効果アップに使い、とりあえずローダー4.4は完成を見た。

 

 

 

 

 

 

 621がアリーナで遊んでいる間、その飼い主はカーラと現実の話をしていた。

 

『地底旅行はどうだい、ウォルター?』

 

「強制執行システムが停止した、完全にな。621の道連れを狙ってきたが……あいつは生き延びている」

 

 本当に……随分と鼻が利くようになったものだと、ウォルターはここまでの地底探査を振り返る。

 

『そうかい、すると封鎖機構もどうにかなりそうだね。……企業の方はどうだい?』

 

「未開地を前にアーキバスから待てがかかった」

 

『なら、いよいよ近づいてきたね。みんなそろって仲良くゴールとはいかないだろうさ』

 

「ああ。アーキバスはベイラムを最初に退場させる腹づもりだ」

 

 ついにアーキバス本隊が動き出し、ベイラム部隊への攻撃を始めたのである。

 封鎖機構の戦力を手に入れた彼らは、このレースにおいて圧倒的優勢に見えた。

 

『どう転んでもアーキバスの勝利は揺るがなさそうだが』

 

「短期的には、そうだ。だが、俺は最終的には621が鍵を握ると見ている。だからこそ、受ける仕事はあいつ自身が選ぶべきだ」

 

 俺が選んではいけない。そうウォルターが言うと、リスキーだねという答えが返ってきた。

 

『友人たちもやきもきするだろうさ』

 

「そうかもしれんが。621にも心配する友人ができたらしくてな」

 

『はあ……あんたの悪い癖だよ。たまには飼われる身にもなってやりな。まあどちらにせよ、私らはやるべきことをやるだけさ。そっちも最後まで頼んだよ、ウォルター』

 

 通信が終わる。そして、ウォルターは次の依頼に頭を切り替えた。

 

 やるしか、ないのだ。目指すべきコーラル集積地点は間違いなくこの先にある。カーラから聞く限り、状況は悪そうだった。

 然るべき処置(・・)をとることになるだろう。集積地点には絶対に辿り着く必要があった。

 

 そのために──ウォルターは手元の依頼を再度確認する。アーキバスグループからの依頼だった。

 

 G1 ミシガン率いるMT部隊を殲滅し、ベイラムをルビコンから叩き出すのだ。




 RANK 》01 / S
 レイヴン
 AC // ローダー4.4
 
 密航直後に漁ったライセンスで身分を偽装した独立傭兵
 
 ACの存在しない惑星で生まれ育った彼は圏内戦闘機を駆り
 若くして多くの異名をもつ凄腕の傭兵パイロットとなった
 
 あるとき悪意ある者に騙され第4世代強化手術を施された彼は
 巡り合った飼い主に付き従う猟犬としてルビコンへ降り立ち
 
 唯一残った戦闘本能で目の前の敵を焼き尽くし続けている
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