メインシステム、戦闘モード起動   作:留式

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テスターAC撃破

『仕事だ、621。アーキバスグループから公示が出ている』

 

 621はACのコックピット内でブリーフィング。音声が切り替わった。

 

『独立傭兵各位──これはアーキバスグループ、シュナイダーからの依頼です。大豊、我々と敵対関係にあるベイラム系列企業が、新たにテスターACを導入しました。外部アーキテクトへの委託により、アセンブル最適化を施した試供機です。熟練のパイロットに渡れば無視できない驚異となります』

『そこで依頼です。当該機体の輸送を狙い、これを撃破していただきたい。アーキバスグループは各位の奮闘に期待しています。ブリーフィングは以上です──ご健闘を(Happy hunting.)

 

 発行人が親しみやすそうな口調でブリーフィングを締めくくった。

 

 ブリーフィングメッセージに敵機の情報が添付されていた。

 フレームは大豊製「天槍」で統一されている。同社のコンセプト、樹大枝細を体現した、機体の重心付近に重量物を集中させ、頭や腕部、足先ほど簡略化した重量二脚機。

 

 武装は右腕にバーストアサルトライフル、左腕にパルスブレード。これは621とほぼ同じだ。

 621のバーストライフルは通常1発ずつのセミオート射撃を行い、チャージでバースト射撃する。連射性能に劣るが、火力は勝る。

 一方、バーストアサルトライフルは常にバースト射撃を行う武器だ。弾幕は張れるが、火力そのものは低い。

 肩の武装は左肩に高誘導ミサイルを連装で搭載している。右肩は何も搭載していない。機体総重量を抑え、機動力の確保を狙ったようだ。

 

 ブースタはRaDの戦闘重機向け。

 FCSとジェネレータは不明だが、FCSはベイラムの近接志向のタイプ、ジェネレータは大豊の「明堂」あたりだろうと予測されていた。

 

 地上での近接戦闘を主眼においた機体が相手だ。こちらは空中から攪乱を狙う。終盤は互いにブレードで切り結ぶ可能性あり……。

 ヘリコプターに揺られるACの中で、621は頭の中に戦闘プランを描いていった。

 

 目的地上空に到達、降下準備に入る。ACに繋がれていたプラグが抜かれ、ブリッジやオペレートアームが遠ざけられる。

 サイレンと共に赤色灯が回転、ACがクランプで持ち上げられる。機内の隔壁が開いて、カーゴランプの前まで運ばれていった。

 続いて後ろからスライドしてきた武装がACに搭載され、出撃準備完了。

 

『相手は試供サンプルとはいえ、ACには変わりない。気を引き締めていけ、621』

 

 ウォルターの見送りの言葉を背に、621はベリウスの汚染市街に降下していった。

 

 

 

 

 

 

『メインシステム、戦闘モード起動』

 

『ミッション開始だ』

 

 目標をちょうど見下ろすことができる地点で、621は戦闘モードに入る。

 

『目標を捕捉した。仕掛ける好機だ、621』

 

 目標までは直線距離でおよそ1400m。輸送ヘリの機外に単独で佇んでいた。

 アサルトブーストで1000mほど距離を詰める。FCSが目標を捕捉。すぐに二次ロックが完了し、レティクルが赤く染まる。

 

 621は再び浮上し、距離が300mを切ったところで左右の4連装ミサイルを発射した。同時にバーストライフルをチャージする。

 数秒後、ミサイルが命中。それに合わせて621はチャージしたバーストライフルを放ったが、タイミングが合わず命中しなかった。

 

『てっ……敵襲⁉』

 

 無線越しに、若々しい声が聞こえてきた。

 

 621は一度距離をとる。自由落下しつつ、遮蔽物に隠れる直前に再度ミサイルを発射。

 標的の移動先を読み、一方的に攻撃できる瞬間を作った。ミサイル8発が命中する。

 

『解放戦線……いや、独立傭兵か⁉』

 

『相手は輸送にアサインされた訓練生に過ぎん。だが油断はするな』

 

 情報通り、敵機はバーストアサルトライフルに高誘導ミサイルを交えてきた。

 621はバーストライフルを単発で撃ちこんでいく。これにリロードの早い4連装ミサイルが加わって圧をかける。

 

『やってやる……レッドガンズの正規パイロットに……この機体を届けるのが……俺の……! 俺だって訓練は受けてるんだ!』

 

 敵機のACSに負荷が溜まってきた。そろそろ頃合だ。

 

 621はブレードを構えて加速。そのまま振るのではなく、ブレードを解除して相手の移動先にクイックブースト。距離を更に詰めて再度ブレードで切りつけた。

 

 敵機はACS負荷限界、動きが止まる。621は続けてブレードを振るう。直撃。

 

『畜生……気ままな傭兵に……金だけで殺されてたまるか……!』

 

 硬直の解けた敵機がブレードを振りかぶって突っ込んできた。621はフェイントで相手の狙いを外し、回避。

 振り向きざまにミサイルを放ち、鉛玉をぶち込む。再び敵機が硬直した。

 

『……ACS負荷限界だ、直撃を狙え。これ以上付き合うことはない』

 

 敵機の背後からもう一度ミサイルを発射。当てる。硬直は短く、敵機が離脱を試みた。

 

 ACSを回復される前に撃破すべく、621は近接攻撃ブースト。そしてクイックブーストを繰り返し、敵機の正面に回り込んだ。

 

 ブレードを一閃。パルスエネルギーで構成された刃が、鋼鉄のACを切り裂いた。うめき声が聞こえた。

 

『ああ……俺も……』

 

 炎上し、スパークを起こしながら機体が崩れ落ちる。

 

『コールサインが、欲しかったなあ……』

 

 炎が上がり、周囲に破片が飛び散った。戦闘時間は40秒。

 

 ACはコア理論──至近距離で一気に高火力を叩きつけるという思想が根幹にある。そのため、AC同士の戦闘は短時間で決着がついた。

 

『……敵ACの撃破を確認した。仕事は終わりだ、621。帰投しろ』

 

 静寂の戻った汚染市街に、またひとつ、鉄の墓標が増えた。

 名前があろうとなかろうと、強ければ生き残り、弱ければ死ぬ。それがこの世界のルールだった。

 

 

 

 

 

 

 帰投した621のもとに、メッセージが届いた。ウォルターからだった。

 

『621、お前が撃破したテスターACだが、あれはベイラム専属AC部隊「レッドガンズ」に届けられるものだったようだ。彼らはベイラムの主力。所属隊員の実力は折り紙付きだ。頭に入れておけ、621』

 

 確か……汚染市街で漁った残骸の一つに、ベイラム所属機がいた。621は思い返す。

 G7 ハークラー、だったか。輸送中を襲われたらしいが、本来なら太刀打ちできる力を持っていたのだろう。

 

 どちらにしても、いずれ戦場で相まみえることになるだろう。

 彼らの実力はそのとき分かるはずだ。




 収入:95,000
 
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