メインシステム、戦闘モード起動   作:留式

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スターゲイザー
星を視るもの


 顔を液体に包まれている感覚(・・・・・・・・・・・・・)で、621は目を開けた(・・・)

 

 当たり前だが水の中だった。そこまで深くない。水面はすぐそこで、穏やかな波が光に照らされていた。

 

「レイヴン……ようやく目が覚めたのですね」

 

 静かな女の声がした。優しい声だった。

 

 621は上体を起こし、腰を上げる。いつもより目線が高い。胸元に突起が見えた。見慣れた──探査ACのコアの形状。

 

 上空には青空が広がっていた。それを通り越して視える、紅い星々の光も。しかし、ルビコンを周回するデブリの輪は残っていた。

 

 同時に、621は風と潮の匂い(・・・・・・)を感じる。しょっぱい(・・・・・)。味覚もある。

 

「コーラルは私たちを乗せ……星々に伝播しました」

 

 周囲は水辺だった。砂底で、所々にクレーターがある。ただひたすら、殺風景な景色が広がっていた。

 

「もはや……」

 

 しかし、殺風景な地上には生命があった。621の目の前で、それらが立ち上がっていく。光学センサを()()光らせながら。

 

「私たちはいつでも、どこにでもいる」

 

 人型の戦闘兵器だった存在。アーマード・コア。

 これからのACは、人類の新たな肉体として定義される。

 

 621は目の前で立ち上がった軽量逆関節ACに目をやった。

 

「『V.Ⅰ ペイター』……ふふっ……極上の響きだ」

 

 ヴェスパーズの若輩者。

 その奥には、彼が目指す未来の障壁が立ち上がっていた。紫色の重量二脚機。

 

「私こそが企業(アーキバス)です。もう一度、知らしめてあげましょう……レイヴン」

 

 その隣には四脚AC。蜘蛛のような頭が目を引く。

 

「待っていたぞ、G13」

 

 その手前には威嚇的な軽量二脚機。

 

「私はこれからも、未来を拓く。空を拓く。見ていてくれ、戦友(バディ)

 

 立ち上がっていく彼らの様子を見て、621は己の試みが成功に終わったことを実感した。

 人類は新たに隣人を得た。それだけだ。そのあり方は先鋭化したが、本質は変わっていない。

 

 人類が自由意志のもとに生き(闘い)続けようする限り、死ぬことはないだろう。折れさえしなければ。

 人生の全てを捧げるような意志が折れたとき、その人は死ぬのだ。コーラルに意識を散逸させて。

 

「レイヴン。共に新たな時代を……歩みましょう」

 

 621が描いたのは、そんな世界だった。折れるもんなら折ってみろ。()たちは闘い続けるぜ。

 

「よう……野良犬」

 

 背後から声をかけられて、621は振り向く。中量二脚機。やはり彼も「こちら側」に渡れたようだ。

 

「早速、おっぱじめようや」

 

「……ここにいるのは全員、諦めの悪い大馬鹿野郎(イレギュラー)だな」

 

 621は海中に沈んでいたバーストライフルを拾って水を抜き、動作するか確かめる。

 

「見ていてくれ。ウォルター、カーラ、チャティ……俺たちは笑い続けてやる。火を点け続けてやる。──そうだろ、エア?」

 

「もちろんです、レイヴン」

 

 そして、彼女は告げる。全てに火を点けるための言葉を。幾度となく使われるであろう、人類とコーラルの合言葉を。

 

「メインシステム、戦闘モード起動」

 

 

 

 ─〈完〉─




ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。
感想、お気に入り、高評価していただいた方、感謝に堪えません。
 
活動報告に長い駄文が置いてあります。
お時間ありましたら、ぜひ読んでみてください。
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