超 究 極 メ カ 丸   作:からや

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メカ丸逆行もの。評価が来たら続くかも。
他作品の金属は次回予定。
東堂は解説役に据えやすい。


最悪の目覚め

 チャプ…意識が覚醒した直後、メカ丸――与幸吉の耳を揺らしたのは、己の身動ぎにより発生した生理食塩水の音だった。

 

 「ここは…」

 

 微睡みの中から、意識がより鮮明になってゆく。

 

 「……どういうことだ、俺はあの時真人にやられたはずだ。」

 

 思い出すのは絶対形態のメカ丸の装甲を破る、真人の不気味な笑顔。

 だが己の肌が感じる痛み、消えた下半身の感覚が、与幸吉の思考を現実へと引き戻す。

 

 「…意識だけが、過去に戻った?」

 

 そんな事はありえない、という己の理性を隅に追いやり、仮説を立てる。

 

 1,夢オチ

 2,己の天与呪縛の中に未来を知る、または過去からやり直せる祝福(ギフト)が含まれていた

 3,何らかの呪術で幻覚を見せられていた

 

 「そうだ、今は何年だ。」

 

 自ら作り出した傀儡、メカ丸に接続し、メカ丸の周囲を見渡す。

 

 「高専の教室…いヤ、コレは1年の時ノ…」

 

 辺りを見渡し、誰もいないことを確認すると、月日の確認のため、自分のスマートフォンを取り出す。

 そこに表示されたのは。

 

 2017年4月8日

 

 「つまりこの先の展開ハ…」

 

 与幸吉にとっては1年前の記憶。それを思い出そうとしていると、

 

 「あ!あなたがもう一人の1年生ですか?」

 「…何で傀儡なのかしら。」

 

 同じくこの年に高専に入学した三輪霞と禪院真依が教室の中に入ってきた。

 

 

 「……み」

 「あ、もう揃ってるのね。」 

 

 メカ丸が口(スピーカー)を開こうとした瞬間、1年生の担任の術師、庵歌姫が間髪入れず教室へ入ってきた。

 彼女は経壇に立ち、口を開く。

 

 「ちょっと早いけどもう始めちゃいましょうか。

 まずは自己紹介から。私があなた達の担任の術師、庵歌姫よ。歌姫先生でも、庵先生でも、好きな方で呼んで頂戴。

 階級は準一級。術式は……自分と味方へのバフね。あ、術式の開示までは個人に任せるわ。プライベートなところだしね。  

 好きなものはお酒、趣味はカラオケよ。

 これから1年間よろしくね。

 

 それじゃあまずは、禪院から自己紹介をお願い。」

 

 記一言一句、メカ丸の記憶の通りの自己紹介だった。

 コレにより、仮説1と3は間違っていると分かる。

 

 つまりこの現象は。

  

 (意識だけが過去に戻った…ということか。

 何にせよコレは幸運だ。戦闘経験、以前発明した傀儡の設計、そして未来の知識。このどれもが大きなアドバンテージだ。肉体を鍛える事が無かった以上、肉体が戻っても何らマイナスは無い。

 加えてもしかすれば、己の立ち回りで今度こそ渋谷の計画を止められるかもしれない。

 今度こそ皆に会う事がd)「次は君よ。」

 

 少々思考が深くなってしまい、真依と三輪の自己紹介が終わったことにメカ丸は気が付かなかったようだ。

 

 「あア、済まなイ。

 俺の名はメカ丸。

 呼び捨てで結構ダ。階級は2級、術式は見ての通り、傀儡操術。

 好きな事は…特になイ。」

 

 「えっ、メカ丸って本名?」

 

 当然の疑問が三輪から飛んでくる。

 常識的に考えれば自分の子供にメカ丸なんてつける親はいないだろう。

 

 「…この傀儡を操っている俺の名ではないが、この機体の名はメカ丸ダ。そう呼んでもらいたいイ」

 

 「ふーん、じゃあメカ丸って呼びますね。じゃあ何で傀儡越しに出席してるんですか?」

 

 三輪が素直な感想をもらす。

 

 「あ、三輪、それは私から「いヤ、自分で説明すル。」…そう。」

 

 天与呪縛の事を自分から言うのは辛いかと思い、歌姫がフォローしようとするが、どうやらメカ丸は自分で説明できるようなので一旦黙る。

 

 「三輪、天与呪縛というものは知っているカ?」

 「あ、なんか最高師範が言ってた気がします。 

 生まれたときから課されてる縛りで何かを捨てて、何かしらの恩恵を受ける、って言ってました。」

 「そうダ、縛りによって俺は腰から下の感覚、そして両足と右腕が無イ。

 お世辞にも動ける身体じゃないんダ。」

 

 幸吉が生来背負っている苦労を少しでも察した三輪は、そんな事をメカ丸の口から言わせてしまった事を申し訳なく思い、

 

 「ごっ、ごめんなさいメカ丸!私、何も知らないまま…」

 「いヤ、構わなイ。こちらこそ、辛気臭い話を聞かせてしまったナ。」

 「……天与呪縛ね。」

 

 真依は…そうか、姉も呪縛を背負っていたな。

 

 「ま、そういう事情があって、メカ丸には傀儡越しの出席が認められてるのよ。」

 

 歌姫が一旦話を終わらせる。

 

 「それじゃあ、これからのスケジュールを伝えるわね。

 とりあえずあなた達の先輩、2年生と顔合わせ。今日は運良く全員いるからね。任務で一緒になることもあり得るから、いい関係を築いてきなさい。いやマジで。私の経験上。

 その後模擬試合。階級は決まってても、見なきゃ分からない強さというのもあるしね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 互いの自己紹介はスムーズに終了した。

 模擬試合の組み合わせだが、俺vs東堂、三輪vs加茂、禪院vs西宮だ。記憶のとおりだな。

 

 だが確か東堂は……

 

 「さて、出会ったからにはまずコレを聞いておかなくてはな。

 1年!

 どんな女がタイプだ!!

 

 出た。東堂の自称(ここ大事)品定め、女のタイプ。

 ……女子の前で聞くとか、紛うことなきセクハラだな、このハイセンスゴリラ。

 

 さて、以前は分からない、と答えたが……今はまぁ、そうだな…

 

 言いたくない。だがこのゴリラに嘘が通用するかは分からない。というか嘘をついた事がバレれば更に面倒くさくなることは確実だろう。ならば。

 

 「……俺の初恋の人ダ。それ以上の言語化は難しイ。」

 

 一年前も思ったが、この性癖の開示、酷すぎる拷問だな。

 ………何か言ってくれ東堂!何を目を閉じて顎に手を当ててまで考えることがある!

 そして三輪、真依!その「へぇ〜」みたいな表情はやめてくれ!

 そして東堂!何を顎に手を当ててまで考えることがある!頼むから何らかの反応を示してくれ!

 

 「1年、いや、究極メカ丸。

 

 いい趣味だ!

 「エ?」

 

 え?

 

 「いい趣味をしているな、メカ丸。京都の中では一番良い。

 オマエはきっと優れた術師になるだろう。期待しているぞ。」

 

 ……何がこのゴリラの琴線に触れたんだ。

 

 「ちなみに俺は!(ケツ)身長(タッパ)のデカイ女がタイプです!」 

 

 去年も思ったが…普通にキモイ。

 

 

 


 

 

 良い動きをする。

 

 「チッ、この状態で打つのは燃費が悪いガ…

 

 追尾弾〜三重奏(ヴィジョン トリオ)〜!」

 「!!」

 

 再び正面からの熱線と見せかけて恐らく操作可能の熱線を複数!そして本体は正面から斬り掛かってくる!だが!あの出力ならば俺の背中で受けきれる!

 

 「だがメカ丸!相手の土俵に立ちに来るのは感心しないなぁ!」

 

 純粋なパワー、機動力は俺に分がある!

 先程4回撃った出力の高い火砲、恐らく傀儡操術の術式効果に含まれるもの。呪力を感じたのもあり、呪力を熱線に変換したのだろう。

 そしてその全てを回避され、そろそろ呪力総量に限界が近づいてるんじゃないか?事実、近接をしてきたということは、もう大技を撃つほどの呪力がない、残っていたとしても不意の一撃で勝負を決めたいだろう。

 

 「そう考えるよナ」

 「ッ!」

 

 メカ丸が飛び退いた?――――ありがとう、高田ちゃん!

 燃費が悪いという発言、そして近接を狙うのは(ブラフ)か!出力の高い攻撃を外したのも、俺に呪力切れを狙わせるため!まだまだ呪力は残ってるよなぁ!

 

 「大祓砲(ウルトラキャノン)!」

 「フッ!」

 

 今日1番の呪力出力!少しでも防御の反応が遅れていればダメージを食らっていたな。

 あれだけ出力の高い大技を撃っておきながらまだ余力があるとは…呪力総量でいえば確実に俺の上を行く。出力に関しても、傀儡を媒介にしている以上、実質出力に限界がないとは言え、あのスピードで傀儡に呪力を送れるのなら凄まじいものだ。

 

 「まだまだ撃てるゾ。」

 「グッド!ならば俺も、術式を解放しよう!」

 「ストップストップストップゥゥゥ!」

 

 む、歌姫に割り込まれてしまった。

 少し熱くなりすぎたか。学生同士の模擬試合で俺が術式を使ったことはなかったからな。

 しかしメカ丸はなかなかやる。膨大な呪力量に高い出力。1級でも傀儡によっては通用するだろう。

 

 「なんであなたたちは仲間内で嬉々として殺しあおうとするの!」

 「「いや、別に嬉々としてでは」」

 「だまらっしゃい!」

 「「ごめんなさい(イ)」」

 「心が! こもって! なぁい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歌姫は完全に説教モードに入ってしまい、完全に取り残された加茂1派。

 

 「……私の同級生がすまないな。我々はあちらで模擬戦をするとしよう。……そんな目で見なくても、アイツがおかしいだけだ。彼には同情する。」

 

 加茂のストレスは続く。

 

 

 


 

 東堂達との顔合わせは終わった。以前は東堂の質問に答えなかったが、答える事でまさかここまで面倒な自体になるとはな……

 これが未来に影響しないことを祈ろう。

 

 

 「…さて、今すべきことは…」

 

 夏油が真人を連れてこの場所に来るのは10ヶ月後、百鬼夜行が終わってしばらくしてからだ。そして俺を殺しに来るのはあと1年半後……それまでに真人と夏油に勝つ、もしくは体を治した後に逃げる算段をつけなければならない。

 

 既に簡易領域の量産は開始した。決戦前には十分な量が出来るだろう。以前はどうしようもなく準備期間が短すぎた。

 

 「…前回、俺は確かに真人の領域内で簡易領域を当てたはずだ。だがヤツは死んでいなかった。」

  

 有効打ではあった。だが前回で確信した。あのやり方では決定打になり得ない。恐らく真人は俺のミサイルが刺さった後、自分で自分を破裂させたんだろう。恐らくはタイミングは紙一重であった筈。だがそれで届かないのなら。

 

 「残った作戦は物量か、領域展開か…」

 

 だが夏油の術式は呪霊操術。そうなると今からメカ丸を大量生産しても夏油の手札をすべて削れるかは分からない。

 残されたのは領域展開。相手の術式を中和し、己の術式を相手に必中とする呪術の極致。

 

 結界術は……出来る。簡易領域は傀儡操術の解釈を広げ、再現することができた。

 だがそれはあくまでも『簡易』。本物の領域展開には程遠い。

 

 「ハァ………」

 

 ため息が出る。

 俺の簡易領域だって制作に半年も掛かった。それが領域展開ともなると…後1年半で足りるのか?

 

 「だが何としても…」

 

 ……そういえば歌姫は五条悟と知己だった筈だ。

 そして今の俺は夏油たちと縛りを結ぶ前だ。自分から五条悟に師事しに行くことも出来る。

 

 「盲点だったな。シン・陰流は門下生になることができない以上見て盗むしかなかったが…」

 

 現代最強に師事できれば領域展開の完成も夢ではないはずだ。というか五条悟と伏黒恵しか領域展開が可能な術師を俺は知らない。

 

 「ダメは元々、明日にでも歌姫に五条悟へのアポを頼んでみるとしよう。」

 

 そして、真人と夏油に対する勝率を格段に上げる方法が、領域展開以外にたった一つだけある。

 以前の俺では呪力切れなどの問題で解決できなかった、傀儡を作るうえでの最大のハードル。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高専入学前から任務で稼いでいた俺の貯金、1250万円、俺の全てを賭ける!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はビットコインを買った。

 

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