「ねえ、キリヤ。お昼はどこで食べる?」
仲間の1人、同じ年のくのいちであるアヤメにそう聞かれて、これから身体を動かすのだから、食べない方が良いのではないか、と俺は思ったが口には出さない。久しぶりの筆記試験のせいか、たいした運動もしていないわりには腹が空いていたからだ。それもそうか、と1人納得する。俺の年は、今は14なのだ。育ち盛りである。
(そういえば、甘味処があったな)
長年の牢生活もあいまって、ふいに甘いものが欲しくなる。甘いものといえば、女子供が好きそうなものだが、酒も飲めず好きな食事も取れない場所にいると、大の男でも甘いものを欲しがるのだ。酒よりも甘いものを欲しがることすらある。
(――今更だが、シャバに戻っていたんだな)
「果物にしないか? 消化に良い」
「えー? いつも肉、肉、肉っていってたのに?」
俺はそういう人間だったのかと、不思議な気分だった。確かに、肉を好みそうなガタイである。身の丈は183。体重は89。正直言って、筋肉ダルマだ。俺の若きころは、せいぜい177、70であるから、人種の違いを感じてしまう。忍者であるから、もう少し絞ったほうがよさそうに思えるが、骨格が大きいので難しいか。
「でも、確かに試験直前だしな。あんまり消化に悪いモンを食べると、試験中に吐くかもよ?」
「それもそうだね……軽めにしとこうか? 一応、食べとかないと持たないからね。絶対」
「そうしとこう」
同じく仲間であり、これまた同じ年のテツの援護により食事は軽く済ませることに決定した。近くにある商店街を目指し歩く。水の国では、水と冠するだけあり、水産業が活発なようで、新鮮な魚介類を調理して出す店が非常に多かった。
(魚か……白身魚がよいだろうか? 赤身でもよいか)
寿司も良い。マグロの赤身ならば脂肪分が少なく、消化も良いだろう。ちょうどよく、鉄火巻きなるものが売り出されていたので、購入した。値段は38両也。お金の単位は、両で、1両イコールだいたい10円くらいだろうか。398などの微妙なお得感を出すのが難しそうである。また、商店街を抜ける途中、焼き鮭おにぎりが売っていたので、笹の葉に包んでもらい、携帯食として購入した。
「なんかさ……キリヤ、ちょっと変わったよね」
「ん?」
アヤメにそう言われ、まあそうだろうなと内心思う。中身が違うのだから。俺は、ついさきほどの試験前に、この身体の主となったばかりだ。元のキリヤという人物には、まあ悪いことをしてしまったとは思うが、恨むのは神にしてもらいたい。
「落ち着いたってカンジ……。中忍試験を受ける前はずいぶん暴れん坊だったのにさ」
そう言われ思い出す。11歳のころよりすでに暴れん坊で、忍者アカデミーのクラスメイトと喧嘩することはしょっちゅうであったようだ。なまじ体格がよいから、相手に大きな怪我をさせることが多く、まさしく問題児であった。下忍になり、任務を受け初めてからも、その傾向は続き、要するに血の気が多い人物であったようだ。
「何笑ってんのー?」
いつの間にか、笑みがこぼれていた。思い出せば思い出すほど、俺(近藤)の若き頃と被るや被る。俺と非常に似た性格過ぎて、生まれ変わりといってもおかしくない。
「まあ……色々あったってことだな」
追求の手をのらりくらりとかわし続け、あいまいなまま、二次試験の時間になった。試験会場は、水の国の中でも1、2を争う巨大湖、ルルール湖であった。