話は聞かせてもらった…キヴォトスは滅亡する!!   作:ひな伯

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存在が本質よりも先に立つ

私達は先に在り、本質は後からついてくる
定められた目的が最初からあるわけではない
私達はただこの世界に放り出された
己が何者かを決めるのは、己なのだ


10.ミレニアム学園は滅亡する!! 中編 下

 

 今日は星が綺麗だ。

 

 ふと、そんなどうでもいいことを想った。

 

 身体が宙に浮いている。

 いや、トキは堕ちている。“アビ・エシュフ”の計器によれば、地上から84mも離れた宙の上に、何の支えもなく投げ出されている。あと一度でも瞬きをすれば、この身は重力に囚われ、地面に叩きつけられるまでのカウントダウンが始まるだろう。

 

 高層ビルの屋上から、自爆覚悟の爆発でダブルオーに押し出され、トキは今、まさに空から堕ちようとしている。

 

 危機的な状況であるのは、明白だ。

 

 けれどそんな逼迫した状況にもかかわらず、鋭敏な視覚センサーで捉えたキヴォトスの星々は、それを忘れさせるほどに綺麗だった。

 

 美しかった。

 

 トキは、星空に“眼”を奪われていた。

 

 「まさか空まで飛べるとかいわねぇよなぁ!」

 

 「――っ!」

 

 挑発するようなダブルオーの声が、トキを戦闘に引き戻す。

 

 見惚れている場合ではないと、トキは拡張された機械の腕をビルの壁面へ叩きつけた。

 

 けたたましい破砕音。

 

 壁面に“アビ・エシュフ”の腕がのめりこみ、金属と固いものが擦れあう嫌な音が続く。建材やガラスが破砕されることにより、衝撃がトキの身体に襲い掛かるも、確実に落下の速度をやわらげていく。

 

 (ダブルオーは……!)

 

 “アビ・エシュフ”が警告を発している。

 

 そちらを見れば、トキの視界に、こちらに迫りくる銃弾の未来予知が示される。

 

 “アビ・エシュフ”がトキを気遣うように振動を抑え込み、ようやく安定した視界のなかで見つけたダブルオーは、軽やかに壁面を駆け下りながら、こちらに銃を構えていた。

 

 (よくも、生身でそんな曲芸を!)

 

 人間離れしたその挙動に、生み出された危機的状況に、トキは顔を歪ませる。

 

 視界が脅威で埋め尽くされていく。

 

 上部から落ちてくるビルの瓦礫、側面から襲い来るダブルオーの弾丸、重力による地面との激突。あらゆる脅威が警告となって、世界を赤く埋め尽くす。

 

 “眼”がよすぎた。

 

 未来が見えすぎるがゆえに、“アビ・エシュフ”は現実を見失いつつあった。

 

 (――支障はありません!)

 

 だがトキは違う。

 

 重力に引きずられ、銃口を向けられ、襲い来る脅威の洪水に呑み込まれながらも、トキはその鋭敏な感覚と思考を失わなかった。

 

 トキはひたすらに冷静だった。

 

 銃弾の回避と迎撃を最優先に設定し、“アビ・エシュフ”をなだめるように繊細に制御をかけ、無理やりに姿勢を安定させる。

 

 そうして生み出したわずかな時間で、壁面を走るネルに向かい片腕のガトリングで掃射する。撃ちだせた数はわずか100発。秒数にすれば1秒にすぎない。

 

 しかしそれは、まさしく存在しないはずの反撃だった。

 

 「な…………ッ!」

 

 完全に意識外にあった反撃にもかかわらず、ダブルオーは即座に反応し軌道を変え、その弾丸を避けようとする。

 

 未来の像へ向けて正確に放たれた銃弾のなかでも、その身体に触れることが許されたのはたった2発。

 

 だがそれでも、トキには十分すぎた。

 

 被弾の衝撃でダブルオーの動きが鈍り、かすかに壁面から足が浮くその瞬間を、トキは見逃さなかった。

 

 「終わりです!」

 

 “アビ・エシュフ”のガトリングが唸りをあげる。

 

 トキは一瞬で高度を見極めると、壁面を蹴り宙に身を投げ出した。そして自由になった両腕で、ダブルオーに向けて6門のガトリングを一斉に撃ち込んだ。

 

 ダブルオーは自らの失態に顔をゆがめながら、銃弾を放ち反動で身をよじろうとする。だがそれは、もはや無駄な抵抗だと、どちらにもわかっていた。

 

 あの瞬間、すでに勝負はついたのだ。

 

 数えるのもばかばかしくなるほどの無数の銃弾がダブルオーの身体を捉える。身体に弾丸がのめりこみ、ダブルオーの意識が飛びかけるようにヘイローが明滅する様を、トキは鋭敏な視覚センサーで捉えていた。

 

 瓦礫片が地面に激突する轟音。生み出された土埃とともに、“アビ・エシュフ”は地面に着地した。自動迎撃システムがまばらな落下物を撃ち落とし、煙幕のように建材がふりまかれ、視界を覆っていく。

 

 視界不良の中、“アビ・エシュフ”が、ゲーム部の面々と連邦捜査部の先生を感知する。

 

 だがトキが彼女らに手を出す必要など、もうどこにもなかった。

 

 勝敗は、明らかだった。

 

 そこにあったのは、地に倒れ伏すダブルオーと、悠然と佇むトキの姿。

 

 それを見たゲーム部の面々に、絶望の表情が浮かんでいる。“アビ・エシュフ”に唯一対抗できる“最強”(ダブルオー)はもういないのだと、彼女たちは理解した。

 

 トキの胸が、すこしだけ痛んだ。

 

 (……これで諦めもつくでしょう)

 

 トキは勝利し、彼女たちは敗北した。

 

 その事実を、彼女たちも連邦捜査部の先生も、いい加減に理解してくれただろう。彼女たちの抵抗を、想いを、トキは力ずくで抑え込んだのだから。

 

 ならばもう十分だ。

 

 別段、憎いわけではない。選択を違えただけであり、その想いが理解できないわけではない。トキも、リオも、彼女たちを傷つけたいわけではない。そうするしかないだけなのだから。

 

 だからこそ、トキは立ち尽くしたまま、ダブルオーを連れて撤退していく彼女たちを見送った。

 

 (あとは……リオ様の準備を待つだけですね)

 

 トキはアリスの囚われている、中央タワーの入り口へと足を向ける。

 

 彼女たちの妨害がなくなった今、リオは防衛システムの調整を再開するだろう。ドローンはずいぶんと損耗させられたが、要である“アビ・エシュフ”は健在だ。 

  

 準備が完了次第、アリスのヘイローの破壊が始まるだろう。

 

 トキは支度がすむまで、リオを守ればいい。

 

 (―――?)

 

 いつのまにか、“アビ・エシュフ”からダメージレポートが届いていた。

 

 どうやら落下中の戦闘で、軽い損傷があったらしい。

 

 大したものではないとはいえ、手傷を負わせられていた事実への驚きはある。

 

 けれどトキは、リオに怒られなければいいなと、そんな場違いなことを思っていた。

 

 


 

 白い息が空へと立ち上っていく。

 

 それを追いかけるようにして、トキは夜空を見上げた。

 

 無人であるはずの要塞都市エリドゥには灯がともり、目を眩ませるほど煌々と輝いているというのに、多くの星々がそれに負けじとトキに光を届けている。

 

 やはり、今日は星が綺麗だ。

 中央タワーの入り口の前に、門番として佇みながら、トキは想いをはせる。自分が先ほど、打ち負かした彼女たちのことを。タワーの上層にいる、リオとアリスの内心を。

 

 (詮なきことですね)

 

 トキが悩んだところで何になる。

 

 二人の気持ちなどわかるはずもない。何かが変わるわけでもない。トキにできることなど、こうして寒空の下で立ちすくみ、門番となることだけだ。

 

 それを不甲斐ないと思うようになってしまったのは、知ってしまったからだ。誰もが悩み、想いを抱えていることを、知ってしまったからだ。昔のトキのように、任務の一言で割り切れれば、どれだけよかったことだろう。

 

 白い息がこぼれる。再び、空を見上げる。その輝きはトキの悩みなど気にもしていない。ただただその美しさを携えて、そこに在る。

 

 その無関心さが、トキはすこしだけ憎たらしく、羨ましかった。

 

 (……おや?)

 

 ふと、誰かが近づいてくるのを“アビ・エシュフ”が感知した。

 

 トキはまた彼女たちが戻って来たのかと、そちらに目を向ける。

 

 しかし、それが誰なのかを認識したとたん、トキは我を忘れて駆け寄っていた。

 

 「キバヤシ様っ……!」

 

 くずれ落ちるようにもたれかかってくるキバヤシを、トキは鋼鉄の腕で優しく抱き留める。

 

 その身体はどこもかしこも傷だらけで、何故かひどく濡れたあとがあった。顔は雪のように青白く、吐く息はか細い。意識を保つのもやっとなのだろう。その身体を預けるように、キバヤシはトキに縋りついていた。

 

 トキの腕のなかで弱々しく息をするその姿には、初めて会った時のような美しさはどこにもなかった。そこには、擦り切れるまで足掻いた者の、痛々しさだけがあった。

 

 消え入るような小さな声で、キバヤシが呟く。

 

 「遅くなって……すまない……リオに……会わせてくれ」

 

 「……承知しました」

 

 一人ではもう、歩くことなどできないだろう。

 

 トキはキバヤシの身体をそっと抱えあげて、中央タワーの内部へと向かった。

 

 誰も通すなと言われている。これは任務の放棄にあたるだろうか。入口を守れと言われている。彼女たちがやってきて全てが無に帰すだろうか。頭の中に浮かんだ言葉を、トキは打ち消す。

 

 そんなことは関係がない。

 

 エレベーターに入り、リオの待つフロアへのボタンを押す。ゆっくりと高度が上がるその時間が、もどかしくてしょうがなかった。

 

 「なにがあったのですか……」

 

 問いかけたわけではなかった。ただ苦しくてこぼした言葉だった。

 

 キバヤシは震えながら、それに答えた。

 

 「なにも…なかったと……言いたいが……はは……報酬がわりに……壮大な……自殺に……付き合わされた………」

 

 「………っ」

 

 「心中しかけた……甲斐は…あったさ……」

 

 それきり、キバヤシは身体をまるめて黙り込んだ。

 

 トキはその身体を抱きしめてあげたかった。けれど、“アビ・エシュフ”をまとってはそれもできなかった。それがひたすらに、もどかしかった。

 

 その代わりに、居るかもわからない神に願った。

 

 どうか今だけは、誰も邪魔をさせてくれるな。 

 

 どうか今だけは、彼女をまだ眠らせてくれるな。

 

 その祈りを断ち切るように到着を知らせる鐘がなり、ようやくエレベーターの扉が開く。

 

 トキは足早にリオの元へと急ぐ。

 

 「リオ様……!」

 

 開け放たれた扉に、リオが二度、目を見開いた。

 

 入り口を守るはずのトキがなぜここにいるのかという疑問で、一度。

 

 そしてその腕に抱えられている少女の姿を見て、もう一度。

 

 リオはすぐさまこちらに駆け寄ってきて、キバヤシに触れた。“アビ・エシュフ”をまとうがゆえに実感がなかったが、やはり酷く冷たいのだろう。

 

 苦々しげに顔を歪ませながら、リオは呟く。

 

 「外傷…それに低体温……ショック症状ね」

 

 リオはすぐさま端末を操作し始める。

 おそらく搬送用のドローンを呼んだのだろう。要塞都市エリドゥはもうじき戦場になる。ここに置いておくわけにはいかなかった。

 

 それが済むと、リオは長机の上にキバヤシを寝かせるよう指示した。

 

 医療物資を引っ張り出しながら、リオは言う。

 

 「ルリ、聞こえる? 今から服を脱がせる。恨まないで頂戴」

 

 その問いかけに対し、キバヤシはひどく緩慢な動作で、リオを見た。

  

 気だるげだった藍色の瞳が、リオを捉えた途端に輝きを取り戻す。キバヤシは無理くりに身体を動かすと、震える手で何かを差し出した。

 

 それは、ケースに入ったとても小さな機械だった。

 

 「これは……」

 

 リオがそれを受け取ると、キバヤシはよわよわしくも、得意げに顔をゆがめた。

 

 「ヒマリくんが……創ってくれた……中身も…手に入れた……」

 

 「喋らなくていい。これが何かも、使い方もわかる」

 

 リオはそれを懐にしまい込むと、キバヤシの服を脱がせ始める。

 

 死人のような肌の白さと、身体の傷が露になり、トキは思わず目をそらした。

 

 キバヤシはいったい廃墟で何と出会い、戦ってきたのだろうか。

 

 小銃で撃たれた程度ではびくともしない頑強なキヴォトス人が、ここまで傷つくのは、並大抵のことではなかった。

 

 トキがキバヤシを長机におろすと、リオはひとしきり濡れた服を脱がせ、手早く傷の処置を始めた。

 

 その間、キバヤシはうわごとのようになにかを呟いていた。

 

 「もう…アリスを……破壊しなくて……いい……」

 

 「……いいえ。アリスは破壊する。“AL-1S”が存在するだけで、“不可解な軍隊”は迫ってくる。“名もなき司祭”が狙い続ける。破壊しない限り、安寧などないの」

 

 「隠して……くれる……それが…やつら……から…アリスを……ケイを……護ってくれる……」

 

 「……ケイ? いえ、とにかく今は黙っていなさい。遅すぎる……まだ来ないの」

 

 リオが苛立って端末を見る。

 

 先生たちとの交戦で、ドローンや道路が多く破壊されたせいなのだろう。キバヤシを安静に運べるだけのドローンは、到着が遅れていた。

 

 かぼそく呻くキバヤシを、額に汗を流しながらリオが手当てする。

 

 トキはといえば、ただ立ちすくんでいた。

 

 どうすればいいかわからなかった。

 

 その青白い顔から息がこぼれるたびに、熱とともに命が失われていきそうで恐ろしくて、子供のようにその光景を眺めることしかできなかった。

 

 キバヤシはもう、まぶたを開けることすらつらいのだろう。

 

 それでもなんとかキバヤシは、リオの姿を見ようとしていた。

 

 「たまの……わがままくらい……聞けよ……それを……使ってくれ」

 

 「やめてちょうだい。わがままくらい、事が済んだらいくらでも聞く。アリスの破壊は、もう決まったことなのよ」

 

 「したく……ないだろ……そんな…………選択………」

 

 リオの手が、一瞬だけ止まった。

 

 「私は……リオに…押しつけたく……ないんだ……」

 

 ふたたび、リオの手が動き出す。ようやっと、ほとんどの傷が覆い隠される。

 

 「重荷を……わけてくれ……一人で……そんな……かなしい選択を……しないで……くれ……」

 

 「…違うわ、ルリ。全て私に責任がある。私にだけに、責任があるの。あなたには、なんの義務も、責任もない」

 

 「さみしいことを……いわないでくれよ……友達だろ……」

 

 「友達だというのなら、そんなふうに私を苦しめないで頂戴。もう終わるわ。じっとして」

 

 まぶたが閉じられて、藍色の瞳が見えなくなる。

 

 キバヤシが声のするほうに手を伸ばし、リオの手に力なく触れた。

 

 「そんな風に……独りに……ならないでくれ………」

 

 触れられた手を、そっとリオが払いのける。

 

 「こんな問いに、この結末に、貴方を巻き込むつもりはない。ここに……貴方はいなかった。そう思いなさい」

 

 支えを失った細い腕が、たどり着く場所を求めて宙をさまよっていた。

 

 「いかないでくれ………」

 

 キバヤシはもう何も見えも聞こえも、触れもしていなかった。白い頬に涙が伝うだけだった。

 

 「私を……独りに…しないで……くれ……」

 

 黒いヘイローが、ふっ、と消える。

 

 心臓が握りつぶされるような恐怖が、トキを襲った。

 

 泣きそうになりながらリオを見れば、主も又、感情的になるのをこらえていた。キバヤシをあたためるようにそっと抱き寄せ、哀しそうににつぶやいた。

 

 「いなくなったのは……あなたのほうでしょう」

 

 リオの端末から、地上にドローンが到着した通知が飛んでくる。

 

 自分の上着を脱ぎ、キバヤシをくるむようにかぶせると、リオは立ちつくすトキに命令した。

 

 「……ルリをはこんで。そっとね」

 

 「承知…しました」

 

 トキは再び、キバヤシを抱え上げる。

 

 先ほどとは違い、意識という支えを失っている身体がだらりと腕のなかで転がろうとする。

 

 あわててそれを受け止めても、“アビ・エシュフ”の腕からは、なんの重さも感じない。トキの心は、狂いそうになる。

 

 それでもトキは、なんとかエレベーターへと乗り込んだ。ゆっくりと鉄の箱が下降していく。

 

 腕のなかのキバヤシは、奇麗な創り物のように見えた。命がそこにないかのように見えた。

 

 どうしようもなく、怖かった。 

 

 「トキ……何も変わらないわ」

 

 “アビ・エシュフ”の通信を介して、リオが話しかけてくる。

 

 なんの話かも、思いつめた声の裏にある想いも、トキにはわからなかった。

 

 リオは淡々と言葉を続ける。

 

 「ミレニアムの、キヴォトスの滅亡を防ぐ確実な方法は、アリスの破壊よ。その前提は変わっていない」

 

 トキは思わず、リオに否を唱えそうになる。

 

 「ですが、キバヤシ様が届けたものを使えば……」

 

 「たしかに聞こえはいいわ。でもこれは“奇跡”のようなもの。何の保証もなければ、テストもされていない不確実な手段。私達が、この土壇場で選択を変えるリスクを採るほどの物ではないわ」

 

 「……はい」

 

 不服そうなトキを諭すように、リオは言う。

 

 「……私の選択は、多くの人の想いを踏みにじっている。アリスを護ろうとする人たちや、ヒマリや、ルリや、もしかすれば貴方の想いも含まれているかもしれない」

 

 その言葉に、トキは返事をすることができない。

 

 ただ、キバヤシの顔を眺めている。

 

 「でも――――」

 

 リオは言葉を止め、自分に宣言するように言い放った。 

 

 「たとえこれが独善でも……傲慢でも……私はこの手でレバーを引くわ。答えのない問の責任を、その結果に対する後悔を、他の誰にも負わせるつもりはない」

 

 「リオ様……」 

 

 「それに……友達一人が亡くなっただけでも心底へこむのよ、その子は。もしこれを使ってもどうしようもなかったら……アリスがまた暴走したら……もう立ち直れないかもしれない」

 

 エレベーターが地上へと到着し、扉が開く。トキはそのまま歩みを進め、寒空に身を戻す。

 

 「……こんな重荷を背負わせたくないの。わかってちょうだい」

 

 リオの言葉をききながら、トキは搬送用ドローンにキバヤシを預け入れた。その姿は、まるで棺に納められた死人のようだった。冷たい鋼鉄の腕で、トキはそっとキバヤシの頬に触れた。

 

 「キバヤシ様は……きっと悲しまれます」

 

 「……わかっているわ」

 

  責められているようなリオの声音に、トキは苦笑しながら答える。

 

 「リオ様の御心を、理解しきれているわけではありません」

 

 ドローンが静かに走り去っていくのを眺めながら、トキは言う。

 

 「ですが……最後までお付き合いいたします。リオ様の選択を、重荷を……あの方の代わりに、私が支えられるというのなら」

 

 「……ありがとう、トキ」

 

 通信が切れる。

 

 もう一度、トキは空を見上げた。

 

 (この選択は、間違っているのでしょうか)

 

 心の中の問いかけが、ミレニアムの星空に溶けていく。

 

 命を秤につるすようなこの問いに、正しさなどあるのだろうか。

 

 どちらの選択肢を選んでも、間違いにみえた。

 

 それでも悩み抜いて、苦しんで、差し出された優しさを振り払って、リオは選択した。

 

 アリスを破壊して、全てを自分の手で終わらせることを選んだ。

 

 トキもまた、それに従うことを決めた。主を想うが故に、そこにある罪を担ぐことにした。

 

 ヒマリの責めるような言葉が、耳の中で響く。

 

 “ただの女の子を殺して、世界を救った気にでもなるというのですか”

 

 その言葉はどこか滑稽で、けれど嗤うには重すぎた。

 

 (もう――迷う猶予すらありませんが)

 

 “アビ・エシュフ”が侵入者の存在を感知する。

 

 満身創痍としか言い表せない身体を引きずって、ダブルオーがこちらにやってくる。

 

 腕は上がらず、足はひどく腫れ、どこもかしこも傷だらけになりながら、それでも射殺すようにこちらを睨んでいる。

 

 その背に遅れて、C&Cの他メンバーと、ゲーム部の面々と、“先生”が姿をあらわす。

 

 きっとそこには、トキの知らない想いがあるのだろう。アリスとの大切な日々が、C&Cとしての意地が、そこに在るのだろう。

 

 彼女たちもまた、自分の選択のために、全てをかけて立ち向かおうとしている。

 

 「トキ」

 

 「……イエス、マム」

 

 わかっている。

 

 全てをかけているのは、彼女たちだけではない。

 

 リオも、トキも、同じことだ。

 

 とっくのとうに、わかりきっている。互いに譲れるものなど、もうどこにもありはしないのだ。

 

 それ以上、言葉は不要だった。

 

 トキはただ、銃を構えた。

 

 彼女たちもまた、銃を構えた。

 

 「それじゃ…決着つけようじゃねぇの!」

 

 響き渡るダブルオーの咆哮とともに、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 


 

 “Cleaning & Clearing”は連携を常とする。

 

 その言葉の意味を、トキは今日だけで嫌というほど味わった。だからこそ、脅威度の判定は正確に下せている。彼女たちと“アビ・エシュフ”は、万全の“最強”(ダブルオー)がいて、ようやく拮抗する程度の戦力差だった。

 

 ダブルオーが弱っている今、トキは彼女たちを抑え込める。

 

 ―――はずだった。

 

 (これは…いったい――!)

 

 戦闘が開始した際、トキが真っ先に感じたのは異常だった。

 

 彼女たちの基本戦術は変わっていない。

 

 “最強”である“00”(ダブルオー)が吶喊し、“01”(ゼロワン)が小銃でそれを援護する。“02”(ゼロツー)が狙撃で反撃を抑え、“03”(ゼロスリー)が爆薬で止めを刺す。各々の長所を押し付けて、“アビ・エシュフ”を決して自由にさせない。

 

 そこに変化はなかった。

 

 となれば―――

 

 (“先生”ですか!)

 

 全てを計算しつくしたかのような乱れのないその攻勢は、まるで相手に“神”が味方しているかのようだった。

 

 圧倒的な力を備え、未来すらも予見できるはずの“アビ・エシュフ”が、選択肢を選び取る余裕もなく、ただそれを強引に選ばされ続けている。

 

 C&Cの各員が、まるで一つの生き物であるかのように、一糸乱れぬ息遣いのまま、トキと“アビ・エシュフ”を追い詰め続けている。

 

 なんとか牽制をかけつつ攻勢を捌いているが、それは相手の意によって踊らされているだけだ。

 

 これが連邦捜査部の“先生”の実力だと言うのなら、それはまさしく“理外の存在”だ。

 

 (このままでは、押し込まれる…!)

 

 背にある中央タワーへと、じりじりと追い詰められながら、トキは焦る。

 

 彼女たちの目的は、あくまでもアリスを奪還することだ。

 

 何を狙ってくるかは、トキにもわかる。

 

 このまま“アビ・エシュフ”を強引に抑え込んで、タワー内部へと押し込んでいく。ひとたび内部に侵入させてしまえば、リオとアリスを防衛するために、トキは内部に留まらざるを得ない。至近距離戦闘を強い続ければ、“最強”であるダブルオーが“アビ・エシュフ”を捉えることができる。

 

 それを理解しているが故に、トキは焦り、視野が狭まり、動きが鈍っていく。常に差し込まれ続ける“アビ・エシュフ”の警告に、トキは振り回される。

 

 (………っ)

 

 敗北への恐怖が、トキを捉えた。

 

 “アビ・エシュフ”の脚が止まろうとしていた。

 

 「――トキ。落ち着いて」

 

 リオの声が響く。

 

 過集中に襲われていたトキの耳に、主の声がする。たったそれだけのことで、トキの思考が開けていく。

 

 その瞬間、トキは冷静さを取り戻した。

 

 「データの分析はもう終わったわ。これで“アビ・エシュフ”は眼を取り戻す」

 

 リオはわずかな時間で、“先生”の指揮によって向上したC&Cメンバーの脅威度を測りきった。著しく精度を増した未来予知が、トキに再び選択肢を与えてくれている。

 

 自分もまた、独りで戦っているわけではない。誰よりも頼りになる主が、自分の背を支えている。

 

 トキの心は、すでに奮い立っていた。

 

 「――イエス、マム」

 

 意識が研ぎ澄まされていく。

 

 “アビ・エシュフ”を通じて、リオから未来が示されている。

 

 トキはもう、追い込まれるだけの獲物ではなくなっていた。

 

 トキの脚が、ふたたび軽やかに動きだした。

 

 「チッ……動きを変えやがったな!」

 

 “アビ・エシュフ”のガトリングが唸りを上げる。

 

 中央タワーから彼女たちを押し返すように、嵐のような弾丸がC&Cに襲い掛かる。

 

 正確性を増した未来予知により、トキは戦闘の主導権を取り戻す。常に最適の選択肢を取り続け、勝利へと向けと動き出す。

 

 トキの瞳に、力が漲っていく。

 

 視界のすみで、主砲の使用が許可されたことを示すグリーンライトが灯った。

 

 「“先生”による完ぺきな指揮を破壊するには、力技で亀裂を作り出さなければいけない。それを可能にする力が、“アビ・エシュフ”には備わっている。狙いはわかるわね」

 

 「イエス、マム」

 

 返答するや否や、トキはレーザーキャノンに電力を溜めはじめる。だがまだ撃たない。獲物も、撃つべき瞬間も、すでに決まっている。

 

 トキは息を吐きだすと、弾幕にむかい無理やりに飛び込んだ。

 

 「“!!”」

 

 ダブルオーが“チート”と称するほどの、異常な回避挙動と優秀な迎撃システムで攻勢をしのぎながら、トキは反撃ののろしを上げるべくガトリングを撃ち続ける。

 

 射線から逃れようとダブルオーが飛びのいた瞬間、トキは即座に狙いを切り替えた。

 

 狙いは、錯乱を仕掛けてくるゼロワンだ。

 

 「当たらないってば!」

 

 「それはどうでしょう」

 

 そしてそのまま、ちょこまかと動き回るゼロワンを追い回しにかかる。

 

 後方から襲い来るダブルオーと、ゼロスリーの射撃を見もせずに避けながら、必死な形相で回避を続けるゼロワンに、ひたすら火力を集中させ続ける。

 

 避けられたところで構わない。これは隊員の脅威を演出するための、ただのブラフなのだから。

 

 本当に狙いたいのは、ゼロワンではない。

 

 (――――来た)

 

 狙撃に対する警告表示と同時に、ゼロツーの狙撃地点が“アビ・エシュフ”から示される。

 

 トキは視野外からの狙撃を宙返りするように避けながら、レーザーキャノンの砲身をゼロツーへと向けた。

 

 「“――避けて!!”」

 

 「もう遅いですよ」

 

 電磁パルスが独特なにおいを放ちながら、閃光が夜空に伸びていく。

 

 それは瞬きをする合間にゼロツーの元へと到達し、星を地上に引きずり下ろしたかのような、けたたましい爆発音と熱を生み出した。

 

 (あと、みっつ)

 

 

 敵の要は、ゼロツーだった。

 

 本来、“アビ・エシュフ”を抑え込むべきダブルオーは、先ほどの戦闘で負傷している。

 

 万全の状態なら食らいつかれるかもしれないが、手負いであれば振り切れる。それが今までできなかったのは、ゼロツーによる視野外からの狙撃が、常に“アビ・エシュフ”の頭を抑えていたからだ。

 

 ゼロツーこそが、“アビ・エシュフ”を押しとどめる要だった。

 

 (――だがもういない)

 

 “アビ・エシュフ”は今、自由を取り戻した。

 

 「次はあなたです」

 

 「いぃっ!?」

 

 その光景に目を奪われていたゼロワンに向けて、トキは即座にガトリングを撃ち込んだ。

 

 人間離れした勘により卓越した回避を行えるゼロワンだが、それでも必ず息切れはおこる。トキは、どこまで逃げても追いすがる。隙を補ってくれるはずのゼロツーは、もうここにはいないのだから。

 

 “アビ・エシュフ”はその演算能力を気兼ねなく攻撃に用い、ゼロワンは無数の弾丸の内の一発に引っかかり足を止め、銃弾の雨にのみこまれて沈黙した。

 

 (あと、ふたつ)

 

 リオに示され、“アビ・エシュフ”が次に狙うべき相手を強調表示する。それに従うように、トキはゼロスリーに狙いを定めると、片腕のガトリングを撃ちながら高速で突進する。

 

 「好き放題しやがって!」

 

 しかしその横合いを殴りつけるように、ダブルオーが動線に割り込んだ。

 

 そんな一瞬の交差の隙に、“先生”が叫んでいた。

 

 「“そのまま抑えて!”」

 

 その声を聴くや否や、ゼロスリーが即座に中央タワーへと駆け出していく。

 

 “先生”は無理やりに、目標をトキからリオへ切り替えていた 

 

 「行かせるとでも――」

 

 「――あぁ? そりゃあたしのセリフだろうがぁ!」

 

 トキの足を縫い付けるように、絶え間ない銃弾が飛んでくる。

 

 執念がトキに向けられていた。

 

 片腕のすそをくわえながら、無理やり腕をあげてこちらに照準を向けるさまは、まさしく執念だった。 

 

 そのまま格闘戦を仕掛けるべく、ダブルオーが“アビ・エシュフ”へと躍りかかる。

 

 「その間合いは避けなさい、トキ!」

 

 「イエス、マム」

 

 リオもトキも、決してダブルオーの間合いに付き合うつもりはない。

 

 “AL-1S”破壊の前哨戦ともいえるこの戦いで、“アビ・エシュフ”を損傷させるわけにはいかないからだ。

 

 仕掛けられる接近戦を拒否するように、ダブルオーを回り込みながら、トキはゼロスリーに追いすがる。

 

 そして迂回を強いられたトキがゼロスリーを排除した瞬間と、タワーの入り口で爆発音が響いたタイミングは、まったくの同時だった。

 

 (……あと、ひとつ)

 

 無残に開け放たれた中央タワーの入り口に陣取りながら、トキは敵をしかと見据えた。

 

 入口が開かれてしまった以上、トキはもうタワーの傍を離れられない。それでも、残る相手は、ダブルオーと“先生”だけだ。後ろにはゲーム部の面々が控えているとはいえ、彼女たちでは相手にもならない。

 

 お互い、退くところは無くなった。

 

 決着が迫っている。

 

 長い長い夜の終わりが、目の前へと迫っている。

 

 トキは息を吐く。

 

 “先生”の支援を受けた“最強”を、果たして自分は止め切れるだろうか。

 

 手傷を負ってはならない。しかし、“最強”の間合いは避けられない。懐に入れれば、“アビ・エシュフ”の“眼”すらも追いつかないかもしれない。

 

 無理難題もいいところだと、トキは苦笑する。

 

 (それでも……なんとかしてみせましょう)

 

 トキがそう意を決し、ガトリングを構えた瞬間だった。

 

 「トキ、主砲の使用を許可するわ」

 

 リオの言葉が、耳に響く。

 

 トキは耳を疑った。

 

 その言葉だけは、聞くはずのないものだと思っていたからだ。

 

 タワーの上階には、リオとアリスがいる。中央タワー内部での主砲の使用など、当たり所によっては何が起こるかわかったものではない。ダブルオーたちも、それがわかっている。トキが撃てないとわかっていて、内部での戦いに持ち込もうとしている。それだけが、今のダブルオーの唯一の勝機だからだ。

 

 主の身も、目的も、全てを危険にさらすその選択肢は、存在してはいけないものだった。そんな非合理な選択を、リオはトキに差し出した。

 

 ならば、トキの返事は決まっている。

 

 「――イエス、マム」

 

 レーザーキャノンに電力が集まっていく。

 

 ダブルオーが中央タワーへと突進する。

 

 トキはそれを招き入れるように後退しながら、ガトリングを掃射する。

 

 銃弾を隠れ蓑に、レーザーキャノンの砲身がダブルオーを捉える。

 

 ダブルオーの顔が驚愕に歪む。

 

 そして、ふたたび閃光が迸った。

 

 


 

 ひどい有様だ。

 

 でかでかと穴の開いた壁面に、爆風でめちゃくちゃになったインテリア。電気を発するものは回路を焼き切られ、動くものは何もない。そこにはただ暗闇と静寂だけがある。

 

 土埃にせき込みながら、トキは身体を引き起こす。

 至近距離の爆発で吹き飛ばされこそしたものの、“アビ・エシュフ”はトキを守ってくれていた。幸いなことに、“アビ・エシュフ”に大きな損傷もみられない。

 

 (ダブルオーは……)

 

 あたりを見回してみれば、地に伏せたまま身じろぎすらしないダブルオーの姿が見つかった。ヘイローはすでに灯っておらず、完全に沈黙している。呼吸をしているのかも、怪しいくらいだ。

 

 まさか、死んでやいないだろうか。

 

 キヴォトス人の頑強性を知りながら尚、トキは不安を抱いてしまう。やったのは自分だが、それでも罪悪感のひとつやふたつ湧き出てくるくらいには、横たわるダブルオーはぼろぼろだった。

 

 (どのみち、これしか手段はありませんでした。……本当に、恐ろしい相手です)

 

 自分を言いくるめるように、トキは独り言ちる。

 

 リオが主砲を許可していなかったなら、どうなっていただろう。

 

 “アビ・エシュフ”の圧倒的な性能と、リオのサポートがあってなお、トキはここまで追い詰められた。

 

 あっさりと負けていたとは思いたくないが、やはり重大な損傷のひとつやふたつ受けていたかもしれない。“勝利”する道は、やはりこれしか無かったのだろう。

 

 大きく開いてしまった壁穴をながめながら、ため息をこぼす。

 

 ミレニアムの“最強”と連邦捜査部の“先生”。化物二人相手どって、大きな損傷もなく、こうして考え事ができている。

 

 それだけで十分だ。 

 

 通信に耳を澄ませば、リオと“先生”がなにやら問答をしていた。

 

 申し訳ないが、トキにはそれに耳をかたむける余力は、どうにも残ってなさそうだった。

 

 今はただ、少し休みたい。

 

 “アビ・エシュフ”に損傷がないとしても、トキはひどく疲れた。リオには悪いが、“AL-1S”の破壊の前には、少しだけ休憩を設けてもらおうと、トキは思った。

 

 そんなことを、思っていた。

 

 “アビ・エシュフ”が警告を発している。

 

 (―――え)

 

 「とらえた」

 

 その声と共に、すさまじい衝撃が加えられた。

 

 視界がぶれ、したたかに壁面に叩きつけられた衝撃で、トキの脳が揺れる。

 

 (……な……にが……)

 

 ぐらつく意識のなかで、リオが何かを叫んでいるのが分かる。

 

 「――から出て!! トキっ!」

 

 トキはその声に歯を食いしばり、顔を上げた。

 

 そこは、エレベーターの中だった。視線の先には、どう猛に笑う“最強”(ダブルオー)が立っていた。

 

 「ようこそ、あたしの間合いへ。歓迎するぜ……盛大になぁ!!」

 

 エレベーターの扉が閉まる。

 

 ハッキングでもされているのか、異常な速度と負荷をかけながら、エレベーターが急速に高度を上げていく。

 

 “アビ・エシュフ”が重力の変化と、上部への衝突の演算を開始し、リソースが奪われていく。

 

 どうやら嵌められたらしいと、ようやくトキは気がついた。

 

 (これが……“最強”と“先生”ですか。まったく……どうかしてる)

 

 笑いがこぼれそうだった。

 

 全ての状況が、仕立てあげられていた。

 

 “アビ・エシュフ”の未来予知を過負荷により麻痺させ、取り回しの悪いガトリングを閉鎖空間で封じた。

 

 そしてこの至近距離射程は、ダブルオーの最も得意とするレンジだ。わかっている。言われずとも、トキは理解している。

 

 (……かないませんね)

 

 もう負けだ。

 

 トキも、その背にいるリオも、それを理解していた。

 

 「さて…正々堂々、勝負しようじゃねぇか、後輩」

 

 こちらに銃を構えるダブルオーもまた、すでに勝ちを確信している。

 

 わかっている。

 

 戦いは終わった。

 

 あの瞬間、すでに勝負はついたのだ。

 

 勝ち目など、もうどこにも存在しない。これ以上は、ただの無駄な抵抗だ。

 

 そんなことは、わかっている。

 

 「……まだです」

 

 「……あぁ??」

 

 勝ち目がないなどわかっている。

 

 無駄な抵抗であることもわかっている

 

 だがそれでも、トキは、他にもわかっていることがあった。

 

 “アビ・エシュフ”のガトリングの砲身が音を立てながらロールアップする。

  

 ダブルオーが舌を打ち、銃を構える。

 

 トキもまた、銃を構えた。

 

 まだトキは、諦めたくなどない。

 

 リオを肯定することを、諦めたくなどない。

 

 トキはただ、自分が何をしたいのかわかっていた

 

 「まだ―――終わっていません!」

 

 トキの言葉と共に、銃声がそこに響き渡る。

 

 ダブルオーの銃弾の嵐が降りかかる。

 

 防ぎきれなかった弾丸が、身体を打つ。

 

 痛みに意識が飲まれていく。

 

 思考がだんだんと抜け落ちていく。

 

 それでもトキは照準を合わせつづけた。

 

 無駄だと知っていても、引き金を引き続けた。

 

 その意識が刈り取られるまで―――

 

 

 トキは引き金を引き続けた。

 

 

 




宿命づけられた予言の末路! しかし滅亡の予言は未だ到来してはいなかった…?

衝撃の真相を解明するべく、キバヤシはミレニアム学園の奥地へ舞い戻った――!
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