サイヤマンユニバースAF グレートサイヤマンVSダーク・サイヤマン   作:無敵のカイロ・レン(邪悪な願い)

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ビルス死す! おそるべしダーク・サイヤマン

 戦場は、死屍累々の有様だった。

 

 

 最初の犠牲者は、ウイスだった。

 破壊神ビルスのガイドにして、この第七宇宙最強の存在──非常事態ということで今回だけは特別に全王の許可を得て、自ら戦いの舞台に上がった彼は……ザイコーの繰り出した拳にその胸を貫かれたのである。

 

「あ……ああ……」

 

 たった一発のパンチで、一瞬で決まってしまった決着はあまりにも呆気なく、悟飯たちにとっては目を見開く暇さえ与えられなかったほどである。

 そんな一同にとって信じ難い光景を広げた張本人たるザイコーは、時間差で血を吐き出したウイスに対して耳打ちするように言った。

 

「孫悟飯はたった数年実戦から遠ざかっただけで大幅に弱体化した。お前たちも天使や神だからと言って、何億年も実戦から遠ざかっていればな。それとも、自分たちだけは特別だとでも思っていたか?」

「……貴方は……一体……っ」

「ルアリスも舐められたものだな。まあ、お前たちの全盛期がいつなのかは知らないが」

「が……!!」

 

 その手で心臓を握り潰したザイコーは、鮮やかな血飛沫を舞い散らせながらウイスの胸から右腕を引き抜いていく。

 糸が切れた人形のように崩れ落ちていく第七宇宙最強の姿を、悟飯たちは未だ信じ難い思いで見つめていた。

 

「あ……」

 

 それでも戦意だけは失わぬように拳を握り締めた彼は、震えた声で呟く。

 

「悪魔だ……!」

 

 神を超越した力を持ち、その力で偉大な天使を葬り去った存在に対して──彼らにはそれ以上の表現で言い表わすことができなかった。

 

 あんな奴を生かしておいたら、宇宙は破壊し尽くされてしまう。絶対に勝たなければならない敵が、そこにいた。

 

「いいぞ、少しはマシな顔になったじゃないか。俺が求めていたのはソレだ」

 

 もう後が無い状態に追い詰められたプレッシャーと、この身が震え上がるほどの果てしない恐怖。

 ウイスの死によって張り詰めた空気にザイコーは満悦し、悟飯たちの姿を嬉々として見つめ返した。

 身に纏う白装束を血の色に染めた悪魔が、手招きして挑戦を促す。

 

 しかしその瞳は──欠片も笑っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ──そうして始まった戦闘の結果が、今現在荒野に広がっている惨状であった。

 

 

 ウイスの脱落から始まったザイコーとの戦いは、いずれも人知を超えた力を持つ悟飯たちの技を持ってしてもまるで届かずにいる。

 心から余裕を捨てた彼らが本気で敵を殺す気で挑もうと、その力の差はあまりにも大きすぎたのだ。

 それは、破壊神ビルスも例外ではなかった。

 

「神の力を持ってしても……」

「通用……しないのか……!」

 

 オレンジピッコロは虫ケラのように岩場に叩きつけられ、究極の悟飯はまるでこちらを「ウスノロ」と嘲笑うような動きに翻弄され、膝を突いている。

 ザイコーは彼らに対して、パワーや技だけではなくあらゆる面において隔絶した実力の差を見せつけていた。

 

 そして──

 

「ふざけおって……!」

 

 二人と同じように地面を転がされていた破壊神ビルスが、怒りの形相で立ち上がったのはその時だった。

 

「俺が破壊神だ! ちゃああああっ!!」

 

 こんなことが、あってたまるか。

 こんなことが、あっていい筈が無い。

 この宇宙の摂理と戒律そのものと言うべき高潔なる破壊神が、たった一人の人間を前に手も足も出ないなどということは、決してあり得てはならない事態だった。

 そんな現実を「破壊」するべく、既に身体中の骨が叩き折られ、傷だらけの姿になっていた破壊神ビルスが全力の神のオーラを纏って果敢に飛び出していく。

 

 そうだ……まだ希望は残っているのだ。絶望的な状況に悲嘆していた一同を鼓舞するように響き渡ったビルスの叫びを耳にして、悟飯はハッと立ち直り顔を上げて振り返る。

 

「ビルス様っ!」

「第七宇宙の破壊神ビルスが相手だ!」

 

 紅の光を纏ったビルスが光を超える速さで飛翔していくと、その拳をザイコーに向かって真っ直ぐに突き出す。

 その一撃には、今の悟飯が全力で放つかめはめ波よりも遥かに凄まじい威力が込められていた筈だろう。

 しかしそれさえもザイコーは、必要最小限の動作でひらりとかわしてみせる。

 ビルスが続け様に、空中で回転しながらアクロバティックな体勢から蹴りを放つ。上から下へ振り下ろしたビルスの右脚が、ザイコーの右肩を打ち据えた。

 しかしそれを喰らった筈の敵はその場から微動だにせず、それどころか「お前の攻撃はもう終わりか?」と、ビルスに対して不敬な眼差しを向けるばかりだった。

 

「っ……!」

「ビルス様! ちぇありゃああっ!」

 

 破壊神の攻撃が、全く通じていない。

 その事実に今度こそ動揺し、額から焦燥の汗を垂らしながら一歩後退するビルスの間に、救援に駆けつけたオレンジピッコロが割って入る。

 左右の手から連射していく気弾の雨に対して、ザイコーは余裕綽々と言った様子でゆっくりと歩を進めながら片腕だけで全て彼方へと弾き飛ばしていった。

 

 そして間合いを詰められたことにすら気づくことができない速さで迫ったザイコーが、痛烈なアッパーでピッコロの顎を打ち抜く。

 

「があっ……!」

 

 体格差で圧倒的に上回るピッコロの身体を軽々と打ち上げた後、ザイコーはそんな彼の姿には一瞥さえくれずにビルス目掛けて飛び上がり、一直線に急迫していく。

 ピッコロが割り込んだ隙に空中へと逃れていた彼に対して、ザイコーは呼吸を整える隙を与えなかった。

 

 

「ふおおっ!?」

 

 

 真正面から迫り来るザイコーの左腕に対して、ビルスは驚愕を返すことしかできなかった。そのラリアットに捕まるとされるがまま、瞬く間にこの星の空を一周していく。

 幾つもの山々を貫通しながら駆け巡っていく世界旅行の終着点として、同じ場所に舞い戻ってきた彼の身体は後方に聳え立つ巨大な岩盤へと叩き付けられていった。

 

 ザイコーはそんなビルスの顔面を、掴んだ右手で執拗に押し付けながら問い掛ける。

 

「どうした? 俺を破壊するんじゃなかったのか?」

「ぐっ……くうぅっ……!」

「俺は聞き分けが悪くてな……ベジータや親父殿とは違って、俺はお前のことを敬っていないし畏れてもいない」

「どあうあああああっっ!?」

 

 返す反抗の眼差しに未だ戦意が薄れていないと悟ったザイコーが、さらに一発、岩盤にめり込ませたビルスの腹に拳を打ち込む。

 

「だから、お前たちの思い通りにもならない」

 

 吐き出された血と苦悶の声に対して、彼の翡翠色の瞳は何の情けも浮かべていなかった。

 

「ビルス様まで……そんな……!」

 

 為す術もなかった。

 破壊神の破壊宣言から一分と経たず、ザイコーを前にビルスは完膚なきまでに敗れ去ったのである。

 ザイコーは再び破壊神の頭を掴み取ると、その顔面を手前に引き寄せながら小馬鹿にした言葉遣いで告げた。

 

「天使より弱い破壊神に、用はありませんよ」

「き……さま……っ」

 

 鷲掴みにしたビルスの身体を岩盤から引き剥がすと、ザイコーは地上から唖然とした目でこちらを見上げている悟飯の姿に視線を移す。

 ピッコロも先ほどのアッパーでダウンしている今、この場で動ける戦士は既に満身創痍の彼しか残されていなかった。

 

「そら、受け取れ」

「あ……」

 

 そんな悟飯に向かって、ザイコーはボロ雑巾のようにズタズタになったビルスの身体を放り投げる。

 心優しい悟飯は促されるままに、落下していく破壊神の身体を受け止めようと手を伸ばすが──次の瞬間、ビルスは爆発した。

 

「……っ!」

 

 彼の手がビルスに触れる寸でのところで、ザイコーがおもむろに放った気弾が彼らの身を襲ったのである。

 その一撃によって、既に意識も絶え絶えになっていたビルスの肉体は最期に断末魔を残すことすらできないまま、跡形も残らず消え去っていった。

 

 そして凄まじい爆発は、手を差し伸ばしていた悟飯の姿をも巻き込んでいく。

 

「うわあああっ!!」

 

 爆風の煽りを諸に受けた悟飯は吹っ飛ばされ、苦悶の叫びを上げながら荒れた地を転がっていく。

 そんな彼の意識もまた、今まさに失われようとしていた。

 命の終わりを見届ける死神のようにゆっくりと空から舞い降りながら、ザイコーは虚無の眼差しで見下ろして吐き捨てる。

 

「大神官も天使も破壊神も死んだ。偽りの上位者が消えた今、この宇宙も少しは風通しが良くなるだろう」

 

 そこからが、俺たちの役目だ──そう呟きながらザイコーが右手を開き、差し向ける。

 傷ついた今の悟飯を葬り去るには十分すぎるほどのエネルギーが、黄金色の光としてそこに集束していく。

 

「ぐっ……! おのれ……っ」

 

 朦朧する意識を奮い立たせ、必死にもがきながら立ち上がろうとする悟飯だが、ダメージはあまりに重く、身体が言うことを聞かなかった。

 

「お前も正義の味方なら、平和な未来の為に死んでみせろ」

「……!」

 

 彼にとどめを刺す為、ザイコーはビルスを消し飛ばした光弾と同じ技を放とうとした。

 しかし次の瞬間、ザイコーの背後に出現した一人の天使によって、処刑は阻まれる。

 

「させません……!」

 

 天使ウイス──胸に大穴が空き、心臓も潰され、無惨な姿を晒している今もなお彼は生きており、ザイコーの動きを止める為に背中から羽交い締めにしてきたのである。

 

「ウイスさん!」

「……流石は天使、ゴキブリ以上の生命力だ。心臓だけじゃなく、頭も潰しておくべきだったな」

 

 人間ならとっくに死んでいる筈の重傷を負いながらも、彼はまだ生きていたのだ。

 しかしそれが気力だけで保たれているような生命であり、今の彼に先が無いことは誰の目にも見ても明らかだった。

 「その身体ではもう無理だ!」と、そう続けようとした悟飯の言葉を遮るように、ウイスはその腕でザイコーを押さえ込みながら高らかに叫んだ。

 

 

「今です! キビトッ!」

「何?」

 

 

 瞬間、倒れ伏した悟飯のもとに一人の男が姿を現す。

 キビト──この第七宇宙で、界王神の側近を務めている人物である。

 彼は自身の秘術である瞬間移動「カイカイ」によって、聖域界王神界から駆けつけてきたのだ。

 

 そんな彼は悟飯の身体を肩に担ぐと、激しく動揺した顔でウイスの目を見つめた。

 

「ウ、ウイス様……!」

「早く……悟飯さんを連れていきなさい!」

「……わかりました」

 

 僅かな会話だけでも、二人の頭では既に、お互いに尽くすべき最善の行動がわかっていた。

 そんな二人のやりとりにどこか呆れの滲んだ眼差しを向けながら、ザイコーが呟く。

 

「多くの人間を見殺しにしてきた天使が、今際の際には宇宙の命運を人間に託すか……相変わらず都合の良い連中だな。お前たちは」

「何とでも言いなさい。私はウイス……この宇宙の調和を守る者ッ!」

 

 顔を上げると、視界の端には孫悟飯を解放し、瞬間移動「カイカイ」の準備に入るキビトの姿が映る。

 微笑みを浮かべたウイスの顔は、その思惑を雄弁に語っていた。

 

 これでいい……と。

 これでまだ、希望を捨てなくて済むと──彼は後顧の憂いを断つ為の行動に出る。

 

 ただ天使として、己の信念と決意を込めて。

 

 

「ベジータさん……貴方の技、拝借させていただきます」

「っ!? 貴様!」

 

 

 その身に残った全ての力を振り絞り、ウイスの身体がまばゆい閃光を放つ。

 

 

 そして──盛大な爆発が地上に巻き起こった。

 

 

 その数瞬前には遺言の通り、孫悟飯を連れたキビトはカイカイによって地球からの脱出に成功した。

 壮絶な光の彼方に消えた天使の姿に彼は気づいていたが、その場からの離脱に全神経を注いでいた彼は振り返らなかった。

 爆発が、ウイスが自らの命と引き換えに放った最後の一撃であることを知っていたからだ。

 

 ファイナルエクスプロージョン。

 

 自身に備わった全エネルギーを解放し、自らの肉体を爆心として放つ最強最後の自爆技である。

 かつてベジータが魔人ブウ、トッポをを倒す為に放ったのと全く同じ技を、ウイスは自らの全てと引き換えに解き放ったのだ。

 

 キビトを行かせる為に。

 孫悟飯を、生かす為に──。

 

 

 そうして第七宇宙のガイド天使、ウイスの命はこの世から消えていった。




 キビトの役割をアンゴルにやらせるかで迷っていたら投稿が遅れました。
 起承転結の起が終わったので次回から色々明かされます。

 ダーク・サイヤマンはヒーローズ知らないけど超フルパワーサイヤ人4限界突破ベジットのデザインをクソカッコいいと受け入れてしまう感情をコントロールできない……
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